「炎のメモリアル」DVD脚本レビュー
★映画基礎データー★「炎のメモリアル」 2004年 アメリカ映画 監督 ジェイ・ラッセル 脚本 ルイス・コリック 出演 ロベルト・ベニーニ |
ボルティモアの穀物倉庫で大規模な火災が発生した。
仲間と共に現場へ駆けつけた消防士のジャック・モリソン
(ホアキン・フェニックス『グラディエーター』『サイン』『ヴィレッジ』)は、
爆発の危機をはらんだ建物の中に飛び込み、
12階に取り残された生存者の救出に全力を尽くす。
「オレから目を離すな。信じるんだ」。恐怖に脅える生存者を力強く励まし、
窓からロープで脱出させるジャック。
その直後、背後で爆音が轟き、床の穴に呑み込まれたジャックの身体は、
数階下のフロアに投げ出されてしまった。
もはや自力での脱出は不可能。
仲間の救援を待つあいだ、
ジャックの脳裏には、人命救助の熱い志を抱いて消防の仕事に就いた、
あの懐かしい日々の思い出が蘇ってくる。
“9.11同時多発テロの現場で英雄的な活躍を繰り広げた消防士たちへ
心からのリスペクトを捧げたい。“
と宣伝文句にありますけど、
別段ニューヨークのツインタワービルがクライマックスというわけではありません。
特定のモデルがいるというわけでもないようだし、
イメージとしての“戦う消防士”のヒロイズムを描いてます。
テーマは“レスキュー”。
…の筈ですが、実際には“殉職”ではないかな?
“男はいかに死すべきか”という浪花節に話が行き着くので、
人命救助に自己犠牲などとんでもない、と
考える人には見ても仕方ない映画です。
原題は「Ladder 49」。劇中に登場する主人公が所属する消防隊の部隊名です。
それじゃ地味すぎるというわけか、邦題では「炎のメモリアル」と、
やや感情過多なタイトルがついてます。
確認できてないのですが、
ホアキン・フェニックスは役づくりのため消防アカデミーで半年間の訓練を受けた後、
ラーダー隊の救命活動にも参加したとも聞きます。
大規模な火災現場で爆発に巻き込まれ、絶望的な状況に陥った消防士のジャック。
燃えさかる炎、充満する黒煙との壮絶な戦いの場面で幕を開けるドラマは、
なんとしてもジャックを生還させようとする仲間たちの決死の救出活動を
スリリングに描き出すいっぽうで、
ジャックの脳裏に蘇る思い出の数々をたどり、
彼の愛すべき人間像を浮かび上がらせていく。
いたずら好きの先輩たちから、からかわれどおしだった新人時代。
初めてホースを握り、火を消し止めたときの興奮。
生涯のパートナーとなるリンダとの出会い。
親友の殉死に無念な思いを噛みしめた夜。
子供の寝顔をみつめながら、
仕事を取るか家庭を取るかのジレンマに揺れ動いた日々。
仲間と家族に支えられながら消防士として成長を重ねてきた彼は、
いま、倒壊寸前の建物の中で、生き延びるための最後の戦いに渾身の力を振り絞る。
そのフェニックスを文字通りサポートするのは、
人間味溢れる消防署長のマイク・ケネディに扮したジョン・トラボルタです。
ジャックを一人前の消防士に育て上げていく過程で、
兄貴分としての温かな人柄と、
リーダーとしてのカリスマ性の両方を持った好人物として、
久々にジョン・トラボルタが善玉をやっています。
脚本は、『遠い空の向こうに』でヒューマニタス賞を受賞したルイス・コリック。
監督は、『マイ・ドッグ・スキップ』で
放送映画批評家協会賞の作品賞をはじめとする数々の賞を受賞したジェイ・ラッセル。
撮影監督のジェームズ・L・カーターと、
プロダクション・デザイナーのトニー・バロウは、
共にラッセル監督と『エバーラスティング/時をさまようタック』でコンビを組んだ間柄です。
「映画史上最大の炎を作ろうと考えた」というラッセルの指揮のもと、
火災現場の再現に取り組んだ彼らは、
防毒マスクを装着して撮影に挑み、
デジタルに頼らない本物の炎が舞うダイナミックな映像を作り上げています。
ゆえに「バックドラフト」のような曲芸まがいの(?)“炎の舞”は出てきません。
消防士はアイルランド系が多いのは日本でも知られた話ですが、
消防署もアイルランド風。
みんなが集まって当番制で食事を用意するダイニングは
家庭のダイニングの雰囲気がそのままです。
これは意図的にぴかぴかの消防署ではなくしているのだろうとも思われます。
トレードマークともなっている大きなヘルメットも厳ついハンマーも
実用性から言えば狭い場所での使用は邪魔臭く、むしろ危険にさえ見えますが、
むしろ誇りをもって身に着けているのでしょうね。
レスキューと消火の消防士は当然別の職種ですが、
映画で見た限りでは、ホース係だった主人公がレスキューに配置換えを
もう申し出た後、特別メニューの救命訓練などは受けずにレスキューのグループに
入っています。
使用する機材も重機クレーンなどは使わずマンパワーで、
命綱をビルの壁面などに吊るしています。
作品の基礎になる部分ですので、
事前にリサーチ済みで事実どおりなのだろうと思いますが、
かなり厳しい仕事なのにこんなに簡単に取り組むのは不思議でさえあります。
日本の消防署はどうなってるんでしょうね。
そういえば、タイトルバックで「後援」や「推薦」に日本の消防庁の
関係機関の名が大挙登場してます。
映画会社がお願いしていることは確かでしょうが、
消防関係機関が推薦するのはそれなりに理由が伺えます。
スペクタクルとして大小さまざまなシチュエーションの火災が出てきますが、
ドラマとして見せたいのは消防士と家族の関係ですし、
社会にどう消防を理解してもらうか、ですのでね。
もうひとつ本音を書いてしまうと新人募集への効果かな?
「きみも男なら消防士になろう。消防士の世界はこんなにも素晴らしい」。
マッチョで人間的に不器用な男たちの人情味のある世界であることは疑いも無いので、
あつい生き様を求める人にはもってこいの職場ではあります。
ねたばれ改行です。
主人公が高層ビルの規模のある大倉庫で人命救助の直後、
生命の危機におちる。どうやって助けようと言うところで回想が始まって、
新人消防士の主人公が配属先の消防署に初めてやってくるところにまで戻る。
で、いろいろ経験を積み、結婚もして子供も生まれる。
殉職した同僚の遺志を継ぐようにレスキューになる。
という展開の所々で話が現代にかえって、
ビルの中の主人公と、彼を助けたい仲間たちの葛藤が出てくる。
どうしても主人公の生還にクライマックスが行ってしまうのですが、
これはそうでないとまずいのでしょうか?
別に時間軸順に話が進んでいっても構わないように思えますし、
オチがオチだけに、個人的には「泣けないラスト」になっていたように感じます。
“9.11テロに倒れた多くの消防士にこの作品を捧ぐ”
となって、つまり鎮魂テーマ以外のサブテーマが胡散してしまうように感じられたのです。
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