「インファナル・アフェア 無間序曲」DVD脚本レビュー
★映画基礎データー★「インファナル・アフェア 無間序曲」 2003年 中国香港映画 監督 アンドリュー・ラウ アラン・マック 脚本 アラン・マック 、フェリックス・チョン 出演 エディソン・チャン ショーン・ユー |
ブラッド・ピットが制作、レオナルド・デュカプリオ主演でハリウッドでのリメイクも決定し、
日本でも大ヒットした『インファナル・アフェア』の第二章です。
今回は過去に戻り、連綿たる家系と宿命の原点に迫ります
二人の主人公、ヤンこと陳永仁(ショーン・ユー/トニー・レオン「HERO」)と
ラウこと劉健明(エディソン・チャン/アンディ・ラウ「LOVERS」)は
それぞれ警察に潜入したマフィアとマフィアに潜入した警察のスパイであり、
本当の自分とは正反対の身分で生活することになる。
その不条理から、彼らは生きながらにしてこの上ない苦しみを味わい
“無間地獄”にいるかのような人生を歩むことになる。
その地獄の道行きが「インファナル・アフェア」三部作です。
「インファナル・アフェア 無間序曲」は
第一作をさかのぼった歳月(1991〜1997)を背景とし、
「1991年」、「1995年」、「1997年」の3つの章で構成されています。
ストーリー冒頭で「無間」の意味が字幕で紹介されます。
冒頭の「阿者言無,鼻者名間,為無時間,為無空間,為無量受業報之界。
(“阿鼻”とは、時間、空間、量の際限も無く、苦しみを受け続ける地獄。)」
という言葉の頭2句は「涅槃経第十九」からの引用で、
「阿」と「鼻」はそれぞれ「無」と「間」に対応しており、
八大地獄(「等活地獄」「黒縄地獄」「衆生地獄」「叫喚地獄」「大叫喚地獄」「焦熱地獄」「大焦熱地獄」
「無間地獄」の八つの地獄。)の中でも最下層にあり、
最も苦しいと言われる「阿鼻地獄」、
別名「無間地獄」のことを指しています。
「阿鼻」とは原語を漢訳したもので、「永遠に助からない」という意味です。
一旦この地獄に入れば助かることはなく、
永遠に終わりのない厳しい苦難を受け続けることになるということです。
ここでいう“業”とは、人間一人一人が行う全ての事であり、
それが正しくとも、また間違っていようとも、必ず“報い”が返ってくるという意味になります。
おっかないですねぇ。笑
さてストーリーは次のように始まります。
1991年。尖沙咀(チムサアチョイ)に君臨する香港マフィアの大ボス、
ンガイ・クワンが暗殺された。
混乱に乗じて離反をもくろむ配下のボス4人。
組織犯罪課(OCTB)のウォン警部(アンソニー・ウォン)と相棒のルク警部(フー・ジュン)は、
抗争勃発に備えて厳戒体制を敷く。
だが新参の5人目のボス、サム(エリック・ツァン)だけは静観を決め込む。
因果応報を信じるサムは、時機を待つ気でいたのだ。
ウォン警部とボス、サムの脇役二人が先に登場し、Uの舞台が説明されます。
大体ここいらあたりまでで、冒頭三十分くらいです。
二人以外は知らない俳優が次々に登場し、ものものしくごたごたが始まりますので、
この作品で一番わかりにくい部分です。
はっきり言って寝ました。
しかし、寝てしまうと後が大変です。最終的にどういうドラマなのかは
理解できましたが、ここいら辺ですべってしまうとドラマにのめりこみにくくなります。
あとから考えますと、Uはヤンとラウふたりだけが主人公ではなく、
ウォン、サムを含めた四人が主人公なのですが、
なまじTを見ていたばかりに、「やたら長い序盤」という誤った見方をしてしまいました。
これからご覧になる方は、四人が主人公という事を覚えておいて下さい。
サムは四大ボスの勢力争いの後を見通し、
遠い将来有利な立場に立つためラウ(エディソン・チャン)を警察に潜入させようと考えていた。
ひそかに想いを寄せていたサムの妻マリー(カリーナ・ラウ)の口からそのことを告げられたラウは、
危険を覚悟で引き受ける。
クワンの跡を継いだ次男ハウ(フランシス・ン)は、
知的で物静かな外見の下に策略家と野心家の顔を隠していた。
4人のボス各々の弱みを握った彼は、
一夜にして新たな大ボスとしての地位を固めてしまう。
一方ウォン警部は、警察学校の優等生でありながら、
クワンの私生児であることが発覚して退学処分になったヤン(ショーン・ユー)の存在を知り、
秘策を思いつく。
その血筋を利用してヤンをハウの組織に潜入させるのだ。
無謀とも言える作戦だが、ヤンにとっては警官になれる唯一のチャンスだった。
こうして1992年、ラウとヤンは警察学校で一瞬すれ違う。
1995年。潜入捜査のための厳しい訓練中に、
刑務所での喧嘩を機にサムの子分キョン(チャップマン・トウ)と親しくなり、
黒社会に溶け込み始めたヤン。
ウォン警部は、警視に昇進したルクの反対を押し切ってヤンをハウのもとに送り込む。
ハウは肉親のヤンを信頼し、重用する。
一方、組織犯罪課の警官となって2年目のラウは、
サムからの情報によって手柄を重ねながらも、マリーへの恋心は募るばかりだった。
そしてクワンが殺された4月11日の命日、すべてのドラマが動きだす…。
ドラマの引き金をひく、大ボスのクワンが登場そうそうよく役回りの掴めない内に死亡するため、
ちと背景が判りにくくはあります。
子分キョンはTでも出ていました。ヤンの正体を知らぬ、気のいいヤクザのにーちゃんです。
『インファナル・アフェア』第1章の企画は、
アラン・マックがアンドリュー・ラウのもとに脚本を持ち込んだ2001年にはじまっています。
2002年4月まで改訂作業が行われたが、
リサーチも含めると通算3年もの歳月が脚本のために費やされたといいます。
香港映画としては異例の長期です。
2002年末に第1章が香港で公開された後は、
早くも2003年中に第2章にあたる本作『インファナル・アフェア
無間序曲』と
第3章『インファナル・アフェア 終極無間』が香港で公開されています。
3部作の成立過程を、アラン・マックは次のように語っています。
「『インファナル・アフェア』3部作は、独立した3つの物語ではなく、
結末を持ったひとつの物語が巡りめぐって振り出しに戻るというスタイルになっています。
私たちが当初から考えていたのは第1章と第3章『終極無間』だけで、
両方の脚本を同時に執筆していました。
第2章『無間序曲』の企画は、第1章の撮影中に生まれたのです」
実際、アンドリュー・ラウとアラン・マックは第1章の後に、『終極無間』を作る予定で準備を
していたようです。
「ところが、ピーター・ラム(メディアアジア・グループ会長)が、
過去にさかのぼってはどうかと提案してきたのです。
最初、私たちは躊躇しました。
観客がすでに結末を知っている物語を書くなんて、そんな難しいことはできないと思ったのです。
しかし、筋よりもむしろ登場人物たちに焦点を当てて掘り下げ、
10年前の彼らが一体どんな人物だったのかを描こうと決心しました。
アンディ・ラウとトニー・レオンが演じた二人の男は、
人生のスタート地点でいかにして相互に潜入することになったのか。
また宿敵同士のアンソニー・ウォンとエリック・ツァンは、昔はどんな関係だったのか」
映画の冒頭で一番驚かされるのがこの警部とボスの関係ですね。
その関係に目を奪われがちですが、
ラウとヤンに対する接し方もかなり違っています。
それはTのドラマ進行に併せて、
警部とボスの人物が“成長”(良い意味と悪い意味の両方で)遂げているからに違いありません。
このあたりの脚本の書き込みは丁寧で、脚本家を志す方はよく注意して読み込むべきです。
UはVを差し置いて香港で数々の映画賞に輝いたようですが、
それは単にストーリー構成の巧みさばかりでなく、
人物の造形、性格の書き込みの緻密さに由来するものとみて
間違いありません。
第2章では、アンソニー・ウォン、エリック・ツァン、チャップマン・トウは
第1章に続いて同じ役を演じることになりますが、
アンディ・ラウとトニー・レオンの役には、
第1章ですでに彼らの若き日を演じていたエディソン・チャンとショーン・ユーが
必然的に起用されています。
フランシス・ン、フー・ジュンを加えた先輩男優陣の胸を借りて大役を務めることになったわけ
ですが、
瑞々しく初々しい二人の存在が第2章を大きく特徴づけることになっています。
スタッフの苦労どころは、1990年代前半の時代考証だったそうです。
当時の衣装や小道具のリサーチにかなりの時間と労力とのことで、
たとえば香港返還の翌1998年、新空港の開港にともなって役目を終えた懐かしい啓徳空港は、
実写映像とCGを巧みに合成して再現しています。
映画のフィナーレが1997年香港返還の瞬間なのですが、
港の黄金時代と言われる90年代の前半は、
同時に中国への返還を前にして最も激しく揺れ動いた時代でもあり、
そんな時代のうねりを登場人物たちに重ね合わせるのは“オイシイ”アイデアです。
映画はこういう抜け目無さがないことには。笑
ラウとヤンの若いふたりが線が細く、存在感がどうしても軽くなってしまっている点を
除けば、任侠映画として高い点が付けられる出来となっています。