「隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS」
■作品基礎データ 「隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS」 2008年 日本映画 監督:樋口真嗣 脚本:中島かずき 出演:長澤まさみ |
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群雄割拠の戦国時代。
小国の山名は、隣接する大国・早川攻略の第一歩として、
まず反対側の隣国・秋月に攻め入る。
不意を突かれ陥落した秋月城内で、
山名の軍勢は秋月の軍資金「黄金百貫」を血眼に探し始める。
山の民である武蔵(松本潤)と新八(宮川大輔)は、
軍資金探しのため強制労働をさせられていた城内から逃走。
迷い込んだ滝のほとりで隠された「黄金百貫」を発見して喜んだのも束の間、
突然現れた二人組に捕まってしまう。
二人組は、実は秋月の侍大将・真壁六郎太(阿部寛)と
秋月の姫君・雪姫(長澤まさみ)で、
山名の先にある同盟国・早川に軍資金を持って逃げて
秋月再興の時を探る密命を受けていた。
武蔵は六郎太に斬られたくない一心で、ある秘策を提案する……。
泣く子も黙る黒澤明の「隠し砦の三悪人」のリメイクです。
TOKYO FM ホールに試写ではアナウンサーの司会者が
「大変な競争率」と話があり、さもりなんと自分のくじ運の良さに感動しました。
その期待は、冒頭10分ほどで自分の勘違いだとわかり、
20分ほどで失望になり、30分を過ぎる頃には怒りに転じてしました。
映画の掲示板に
「ここまで変えてしまうなら、黒沢映画のリメイクなんて名乗らないで、
真さらな新作として公開すべきだ」という書き込みにとっても共感します。
ただこの作品がいち早く、アメリカでキャスト・監督の挨拶付きプレミア試写が、
打たれ、そこにスターウォーズのフィギアなどを手にした司会者が
登壇するなどした様子が報道されると、内容改変の謎が納得できました。
今回のリメイクは、
黒沢ファンのために、
あるいは旧作の「隠し砦」を知る人たちのために作られた作品ではなく、
スターウォーズ・ファンのため、
あるいはスペースオペラの好きな人のために東宝が作られせたアイドル映画だ、
ということです。
世界公開を前提に、
セリフに頼らず映像のみでも判るほど単純なストーリーと、
必然性もなく派手目なアクションで見せます。
映画はまあ、こけたら無意味ですから、
当てるためなら黒沢の名だって墓から盗んでくるくらいの
根性を見せる事も製作者たちには必要なのでしょう。
ただ願わくば、その根性を目先のお金儲けのためでなく
50年のちにも面白かったと語られるような映画を
作るためにこそ発揮していただきたかったです。
主演の松本潤くんが、本作を足がかりに世界で仕事をしたいと言っていた姿に、
ものの哀れを感じました。
ま、私の個人的な感想はともかく、
インタビューを通じて樋口真嗣監督の言い分を聞いてみましょう。
“時代劇というジャンルには、以前から興味があったんですか?という問いかけに
「そうですね。なかったといえば嘘になりますけど、
どうしても時代劇ということではない。
ただ日本人が作るエンタテインメントの形として時代劇は突破口になるのではないかと、
ずっと思ってました。」
と答えています。
前作から軽く50年はたっているし、
黒澤明を知らない人たちに観てもらうために工夫をして当然でしょう。
見ていて気になるのは、
若い観客に向けてアピールしてやろうという臭いがぷんぷんするとするということですね。
「意識しているわけではないですけど、
若い、黒澤明を知らないユーザーに注目して欲しい、ぜひ観てもらいたい題材だし、
そのためにいろいろな工夫というか、変更をしました。」
具体的には?
「キャストを若返らせるとか。
あくまでも、若くて未来が決まっていない者たちの物語にした。
彼らはこれからどうなるんだろう、というような、不確定な若さが登場人物に必要だった。
どうしても前作のような藤原(釜足)さんや千秋(実)さんのようなおじさんが農民だと、
彼らの人生は誰が見ても変わらないと思うんですね。
ところがやはり武蔵(松本潤)という若い主人公を設定すると、
彼はこれからどうなるんだろうという、ある意味スリリングな部分を含めて、
もしかしたら悪くなるかも知れないし、
正義に走って侍に近づこうとするかも知れない。
そこにどれくらい観客が共鳴できるかというのがこの物語の肝だったので。」
自分の欲に走っていた若者が、だんだんそれを捨てて人を守る部分が目覚めていく、
という成長の物語にすることで、逆に“スターウォーズ”になってしまったのだが、
ま、それはともかく意図的に人物の若返りが図られた。
「そこは恐らく若くないとできなかったところです。
若いほうがその変化をよりダイナミックに観客に伝えられるのではないかと。」
シナリオの比較で言うと
オリジナルはロードムービー的な部分が強く、
新作はアクション・エンタテインメントになっている。
「まあ、一番の違いは、姫が途中で捕らわれてそれを取り戻すというプロットです。
前作にはありませんでしたが、
前作の後半、農民たちがすごく受動的になって物語に参加しなくなってしまう。
そこが僕は不満だったんです。
身分とか関係なく、やはりこう能動的に動いて欲しいんですね。
登場人物である以上。能動的に動く理由とは何かなと思ったときに、ぱっと思いつくのは恋愛だったんです。」
松本潤と長澤まさみだからラブストーリーでしょう?
ってんで東宝からそういう要請があったんではないかと我々はかんぐるのだけれども、
それはともかく監督は
「自分が松本くんの武蔵になって姫を守ってあげるという行動に自分をだぶらせる。
武蔵かもしれないし、六郎太(阿部寛)かもしれない。
新八(宮川大輔)かも知れないですけど。
どれでもいいですけど、どこかに自分をだぶらせることができるんじゃないかと。
やっぱり体験的に観ることができる映画が僕は大好きだったので。」
と語っています。
関心があるのは樋口監督が“黒澤”とどう向き合ったか、なのだが?
「研究というか、メンタルな部分で勇気づけられたというか。
50年前の先輩はどのような作り方をしたのだろうかと思ったときに、
大変だったのは僕たちだけじゃない(笑)と勇気づけられることが多かったですね。」
恐怖ではなく、勇気、と。笑。
技術的なことでは
黒澤監督の作品はシーンの切り替えのところで横からのワイプ
(注:次のシーンの映像が横からスライドして現れるように見せる手法)が
使われているのに対し、新作では、
紙の向こうからジワーっと映像が出てくるような手法を使われているのたが
「実は最初はまったく同じスタイルで、ボケたワイプを使ってやってみたんですが、
それはあまりにも同じだなと思って。
『隠し砦の三悪人』でもそうだし、『スターウォーズ』でも同じだったんですね。
同じだとほんとにコピーのように思えてきてしまって、
もうひとつ工夫をしたいなと。
あれは実は、和紙に墨で書きなぐったものを素材として使っているんです。
墨で書いたものが滲んでいるんです。」
馬の音とか甲冑の音とか、音響面でもジャンルだと思うのだが。
「その辺も相当工夫というか、目立っていろいろなアイデアを作り込みました。
今日本でおそらく一番マネーメイキングなサウンド・エフェクトマンが
いるんですけれども、柴崎憲治という男なんですけど、
彼は大島渚さんの『御法度』という映画で、
初めて日本刀に対して金属の重たい質感をつけたんですよ。
それまでクラシックな時代劇の刀のキーンキーンという音だったんです。
それがガキンガキンという強い金属の塊がぶつかりあうような音を、
彼が初めてその時にクリエイトして。
それ以降そういうのが流行したんですけど、
それと同じような、革命的な新しい鎧の音や馬の息遣いとか、
これから何十年か先、流行になるような新しい音を作ろうと話し合って。
だから、あれは全部現場の音ではないんです。」
どのような差があるのだろう?
「本物より重たいもので音を作ってるんです。
当然そうなんですけど、ある程度軽くないと甲冑って動けないんで、
実はそれほど聞こえのいい音ではないんですね。
軽い音なんですけど、それではちょっと映画にならないんで、
通常であれば着ることが出来ないくらい重たい——、
西洋甲冑ってありますよね
——それを用意してスタッフの1人に着せて音を作ってるんです。」
思ったより工夫が凝らされていることに感心させられました。
あんまりフィルムを見たときには気が付けなかったのが残念。
ところで
黒澤監督は甲冑のデザインにかなりこだわりがあって
国宝まで持ち出したという話もあるのだが、
樋口監督はデザインにはこだわられたところはあるのだろうか。
ネタバレになるのだけどが、『スターウォーズ』ですよね?
「はい、オマージュです。
基本的には、日本にあった甲冑の部品を使って組み合わせているんですよ。
悪い人間の象徴ということで作ると、
どうしてもはあの形が一番説得力がある。
観客にとっても説得力があるし、もしかしたら、
かつて『隠し砦の三悪人』が『スターウォーズ』になったように、
我々が『スターウォーズ』から影響を受けた痕跡を残したかった部分も。
遊んではいますけど、嘘はついてない(笑)。」
樋口監督はCGを得意だが、今回は様々な手法のブレンドになってる。
「基本的にCGだけというカットはないんですよ。
全部なにかしら本物というか、ミニチュアだったり、
爆発も別々に爆発をさせたフィルムを組み合わせていて、
厳密に言うとCGではないんですよ。
CGを使ったのは弓矢とか新八の投げるつぶてぐらい。
エレベーターの壁(を隠す部分)であったり。
そのぐらいしか実はCGと呼べるものはないんです。
あとは全部本物を組み合わせる形でデジタル技術を使っています。」
武蔵と新八が走っているところで砂煙がすごくあがっているが。
あれはCGでは?
「いえ、CGではないです。
あれはロージンバッグといって、
ピッチャーが球のすべりを止めるために使う白い粉が入っている袋がありますよね。
あれと同じ様な袋を彼らの体中につけているんです。」
それがパーっと出るように?
「そうですね。あそこはシルエットを強調するために、
ロージンバックで輪郭を際立たせています。
一番大変なのは演じている本人たちなんで。埃まみれで呼吸すら出来ないくらいです。」
六郎太役は、前作で
三船敏郎さんの演じられた役ということで比較されがちだが、
配役を阿部寛にされたというのはなぜだろうか?
「身長と……、まあ大きさでいうと三船さんよりもかなりでかいんですが(笑)。
存在感をなにで見せるかというと、
本当に現実的な大きさで見せるのが一番いいのではないかと。
そうしたときに大きくて強そうで、
命令を守る誠実で忠実なボディガードとして見せたかったので、
そうすると誰かなと。
前回の六郎太というキャラクターは、
結構姫をおいてけぼりにして戦いに行っちゃったりするんですよね。
途中の戦いの場面では、おまえは姫を守らなくていいのか? と僕は思う(笑)。
そんなわけで、自分のために戦う男ではなくて、
あくまで姫を守るために存在するような。
今回、六郎太というキャラクターを忠実に掘り下げて。
そうしたときに阿部寛さんが一番最適だと。
あと本人が何よりも馬に乗れたり、古武道のマスターだったり、
今の日本では一番三船に近いというか、ある意味、
三船も超えた部分があるのではないかなと。」
掘り下げられているのだろうか?
ただの忠臣、見ようによってはでくの坊のように見えるのだが。
それより、今回、旧作を原作として、
劇団☆新感線の作家の中島かずき氏が脚色している。
同じ黒澤のリメイクでも「椿三十郎」が旧作シナリオをそのまま
使っているのと対照的だ。そのことで
お笑い的な要素がかなり入っています。ちゃんと笑えるかどうかかなり疑問な
“脚色”ではあるが…。
「コメディ・リリーフというのはどうしても必要なんです。
さらに役としてだけではなくて、いるだけで面白くなくてはいけない。
実は黒澤監督の映画でも必ずコメディアンが
物語に出てくる。
それは昔の左卜全さんとか、最後の所ジョージさんとか、
その時代を代表するコメディアンが必ず黒澤監督の映画に出ていた。
キャスティングのバランスは黒澤監督はうまかったと思うんですね。
そういうのは積極的に真似させていただきました。
じゃあコメディアンといっても誰がいるか。
それで今回、宮川くんを起用した。
彼はコメディアンでありながら舞台俳優としても相当場数を踏んでいるので、
まったく心配はしませんでした。
それと、こいつは誰だというサプライズが欲しかったんですね。
観ている人が誰だかわからない男がすごい存在感だというサプライズを作り出すことが、
映画のキャスティングの醍醐味だと思うんです。
そのために、いろんな人たちを説得しなければならなかった。
みんなは知らないけど、
こいつは素晴らしい俳優なんだと説得するのが一番大変だったかも知れない(笑)。」
さて長澤まさみだが、もともとオリジナルでも男勝りな姫という役だが、
現代風にするために工夫されるところはあったんのだろうか?
「そうですね。単なる男勝りではなくて、
どこかで自分の居場所に疑問を抱いているということで悩んでいる。
その悩みを誰かの影響で解決していくというような成長の要素を姫にも入れたかった。
それをどうやって恋愛の要素と絡み合わせて結実させるかというのがあったんです。
2人が近づき、身分を越えて、男と女として並んだあたりは、
もしかしたら強引に現代的にしちゃったかもしれないです。
ふたりが火祭りで踊るあたりは時代劇的ではないけれど、
もしかしたらエキサイティングになるのではないかと結構無理にやってみました。」
ラブストーリーの定石かもしれないが、
旧作から一番遠ざかっていった部分で、
新作を評価しない人たちには、一番つまんないところである事はまあ確か。
本作はアメリカでプレミア試写会が組まれたりと、
ハリウッドへの進出を前提に作られているようだ。
「いやー、ねぇ、やっぱりハリウッドというのは
正直いろいろな形があると思うのでわからないですね。
別にアメリカに限らずどの国でもそうですけど、
観客に喜んでもらえるのが一番作っててよかったと思う瞬間で、
これ以上幸せなことはありません。
(アメリカ試写会では)すごくストレートなリアクションが帰ってきて
うれしかったですね。なにより観客に感謝したい…
以下はネタバレとなるのでmixi独身映画ファンコミュニティ
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にて「隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS」の頁をご覧下さい。
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