「カムイ外伝」
■作品基礎データ 「カムイ外伝」 2009年 日本映画 監督:崔洋一 原作:白土三平 『カムイ外伝』(小学館刊) 脚本:宮藤官九郎 崔洋一 監督:崔洋一 音楽:岩代太郎(「レッドクリフ」) 出演:松山ケンイチ |
mixi(ミクシー)「独身社会人映画ファンコミュニティ」に入ろう!
強靭な意志を持ち、剣の達人である忍者、カムイ(松山ケンイチ)は、
理不尽な殺戮もいとわない、掟に縛られた世界に嫌気がさし、
真の自由を求め、忍の世界を抜け出す。
しかしそれは裏切り者として、追っ手と戦う運命を背負うことでもあった。
かつての仲間、大頭(イーキン・チェン)やミクモ(芦名星)らに
執拗に追われながらも、生きるための逃亡の旅は続いた。
ある日、半兵衛(小林薫)という漁師を助けたことからその家族に迎え入れられるカムイ。
しかし、半兵衛の妻はかつての仲間で、
抜忍となった“くノ一”のスガル(小雪)であった。
カムイを追っ手と信じて疑わないスガルは、まったく心を許さない。
その一方で、密かにカムイに恋心を募らせていく半兵衛の娘サヤカ(大後寿々花)。
そんな時、吉人(金井勇太)の密告により、
半兵衛が時の藩主・水谷軍兵衛(佐藤浩市)に捕えられてしまう。
カムイとスガルはまずは半兵衛を救出するため、
共に処刑場へと向かい奇襲をかけることに。
思わぬ展開を楽しむアユ(土屋アンナ)や絵師の不気味な笑いがこだまする中、
あわやのところで半兵衛を助け出すことに成功する。
新たな生活の場を見つけなければならないカムイと半兵衛一家は、
荒れ狂う海に船を漕ぎ出す。
沖合で人食い鮫の群れに襲われる一行の窮地を救ったのは、
伝説の鮫退治の軍団、不動(伊藤英明)率いる渡り衆だった。
幸島へ向かう途中の不動は、カムイと半兵衛一家を自分たちの千石船に招き入れる。
鮫を次々にしとめていく渡り衆を歓迎する幸島の村人たち。
突然現れた謎の男たちにカムイは釈然としないものを抱くが、
渡り衆が自分と同じ抜忍であることを知り、不動を信じて行動を共にするようになる。
サヤカと心を通わせ、人と触れ合う温かさを知り、
カムイはつかの間の穏やかな日々に幸せを感じていた。
しかし忍群はすぐそこに迫ってきていた・・・。
「週刊少年サンデー」(小学館)(1965~67)、
「ビッグコミック」(小学館)(1982~87)に連載され、
69年にはアニメ化されるなど一世を風靡した白土三平の傑作漫画「カムイ外伝」が、
崔洋一監督(『クイール』『血と骨』)の手により、ついに実写映画化されました。
忍者の掟を破り、組織を追われた抜忍、カムイ。
これは、時の絶大な権力者や仲間であった忍者から追われ、
たった独りで生き抜いていく孤独なヒーローの物語です。
主役・カムイには、『DEATH NOTE 前・後編』(06)、
『L change the worLd』(08)、
『デトロイト・メタル・シティ』(08)など、
新時代を担う若手No.1俳優として注目される松山ケンイチ。
ヒロインのスガルには『ラストサムライ』で世界に名を馳せた小雪。
更に伊藤英明、佐藤浩市、小林薫。加えて大後寿々花、金井勇太、芦名星、土屋アンナ、
そして香港のアクションスター、イーキン・チェン。
脚本は宮藤官九郎と崔洋一。
【カムイ外伝とは】
伝説の漫画家、白土三平の傑作史劇のひとつ。
1964年に「カムイ伝」の連載が開始、
翌65年に同作の番外編として「カムイ外伝」が誕生した。
「カムイ伝」の累計発行部数は、第一部、第二部合わせて1000万部以上、
「カムイ外伝」は320万部を誇り、
日本を代表する史上最大の忍者コミックと言っても過言ではない。
反差別、反権力などの社会思想が色濃く映し出されている「カムイ伝」に対し、
「カムイ外伝」では、抜忍として逃亡を続けるカムイの内面を深く描いている。
今回製作された実写映画は、
「ビッグコミック」(小学館)に連載された「カムイ外伝」の内、
82年4月25日号から12月10日号までの全15回にわたり掲載された
「スガルの島」編を原作にとっている。
(※発行部数は2008年時点)
松竹の2009年9月期の大作ということで、
そういえば東宝が「TAJOMARU」。
東映が「火天の城」で三大邦画メジャーがそろって時代劇の大作を
打ってくるとは面白いですね。
興業的には客層の食い合いになっていずれも厳しいようですが。
トロントの映画祭に持っていかれたようで、その関係者がキネマ旬報に
「新しい忍者ムービーのサブジャンルの開拓」という記事を書いていて、
なるほど海外の評価はそういうことになるのかと妙に関心。
R指定は免れないものの、海と忍者というコンセプトは確かに面白いですね。
批判はあるものの、
松山ケンイチの空蝉の術とか、変異抜刀霞切りとかのワイヤーやCGを使った
デジタルのアクションシーンは、めちゃかっけー(かっこいい)です。
ネタバレ改行です。
小雪ら海人(うみんちゅ)の共同体というものがそれなりに描かれているのに、
最後に全滅、というのは悲しすぎます。
佐藤浩一のバカ殿の狂気が原作の世界観に合致しているのかもしれませんが、
カムイひとりが身を引いて去っていく、位のオチにしてほしかったなぁと、
感じています。
本スガルを演じた小雪のインタビュー
Q:スケールの大きい作品に仕上がっていましたね。
カムイの世界そのものを描くのは大変だと思うんです。
漫画の悲壮感とか、カムイが感じている孤独さとか、
そういったものをベースにして描いてしまうと、
リアルだけど本当に暗い映画になってしまう。
だからエンターテインメントとしては、
ちょっと希望を持てる生き方も提案しないといけなかったんです。
出来上がったものを観たときは、言葉にならない感動を覚えましたね。
Q:厳しいと評判の崔監督の印象はいかがでしたか?
優しいですよ、女性には(笑)。
いつも噴火しちゃうんで、噴火1分前になると周りの空気が変わっていくんですよね。
でも監督の場合、それで現場を引きしめるという意図があるんだと思います。
たまに、引っ込みがつかなくなって怒り続けているのを観たこともありましたけどね(笑)。
Q:崔監督は小雪さんを絶賛されていました。
アクションの吹き替えがほとんどなくて、ワイヤーでつられているのも、
全部小雪さんだとおっしゃっていました。
何であれをわたしが全部やったんだろう(笑)。
普通、見えないところはスタントマンにお願いするんですけど、
ファーストシーンのときにスタントマンがけがをしたんです。
それで、わたしがやるしかなくなっちゃったんです(笑)。
あのときは、ほんとにつらかったです。
今までで一番大変な現場でしたが、終わってみたら、
みんな生きていたので良かったです(笑)。
Q:スクリーンであれだけ活躍するご自身の姿を見ていかがでしたか?
もう自分のことに関しては足らない事ばっかりで。
もっとああすればよかった、こうすればよかったってことがいっぱいありますね。
アクションを通して、スガルに近づきたいという気持ちはありましたね。
常に、根底に疑心や死への恐れ、そして孤独を立ち姿だけで見せたかったので、
それはアクションと付随しているところがありました。
Q:アクションを通して、お芝居の幅も広がったのではないでしょうか?
アクションで芝居的な表現をするっていう面白さもわかったし、
芝居をしていく上で、こういうアプローチもあるんだということも知りました。
けり一つで喜怒哀楽を表せるのは、奥が深いですね。
練習をしているうちに、わたし自身が強くなりましたね。
そして、どんどん楽しくなりました。
だって毎日できることが増えていくんですよ!
撮影前の練習を1か月半やって、撮影に入って半年くらい経つと、
人の動きが見えるんですよ。
切られる瞬間に、刀の動きが見えるようになって、
ぎりぎりで避けることができるようになったんです(笑)。
Q:アクションスターになれますね!
どうでしょう(笑)。
でも女の子が、スタイリッシュなアクション映画に出られるのは
すごくすてきなことだと思うんですよ。日本ではなかなかない事なので。
だから、スタイリッシュアクション映画みたいな作品に出てみたいですね。
Q:砂浜を走るシーンがとても印象的でしたが、女優さんである小雪さんは
もっと大変だったのでは?
海のシーンは本当に大変でした。夜明けまで撮影が続くんですけど、
やっぱり人間って夜は寝る構造になっているんですよね。
体が寝ているので、太ももは上がらないし、忍者って前かがみに走らなきゃいけないのに、
わたしも松山さんも気付いたら直立で走っていました(笑)。
足袋も一回走るごとに、駄目になっちゃって……。
一回ダッシュするごとに、汗だらだらで、もうアスリートのようでした。
カットがかかるとすぐに、筋肉を守るために氷水に足をつけていましたね。
Q:ハードですね……。
もう最後は氷水に足つけるのが嫌で、直接海に足をつけていました。
女優さんは、メークさんに霧吹きで水を吹きかけてもらうんですけど、
わたしは面倒くさくなっちゃって、海にジャバって顔をつけていました(笑)。
Q:共演者の松山さんも砂浜を走るシーンがありましたね。
彼はね、ある意味、病んでいました(笑)。
肉体の限界を感じていたからだと思うんですけど、
思い通りにいかなかったことで精神的に内にこもっている状態でした(笑)。
多分主役としてのプレッシャーもあったと思うんですけど、
いつもショボーンとしていましたね。でも、役としてはぴったりですよね。
だってそれがカムイですから。
Q:もうカムイと同化されてたんですね。
ぴったりでしたね。撮影中も、急にふらっといなくなってしまい、
みんなで「カームイ~」って呼んでいました。
でもその辺で、一人ぽつんと砂団子を作っているんですよね。
でも、その姿もまさにカムイでしたね(笑)。「
砂団子何個作れるかなあ……」ってつぶやいているのを見て、ちょっと病んでるかも、
この人って思いました(笑)。
Q:撮影のハードさが、本当に伝わるエピソードですね。
苦労も多かった分、思い入れも強いと思いますが、最後に観客の皆さんには
本作のどんなところを観てほしいですか?
松山さんが、撮影を思い出して落ち込んじゃう気持ちがわかるんです。
本当に大変だったし、彼も相当つらかっただろうから。
でも、そういう苦労をたくさん見てきたからこそ、
簡単に一言で撮影を振り返って大変だったって言えないんですよね。
役者もスタッフも本当に大変な思いをして作り上げた作品なので、
この映画にかかわった人全員の努力や熱意を作品から少しでも感じ取ってもらえれば
うれしいです。
崔洋一監督インタビュー
崔洋一(Sai Yoichi)
1949年生まれ。大島渚監督や村川透監督などの助監督を経て、
83年に『十階のモスキート』で劇場映画監督デビュー。『血と骨』(04年)では
日本アカデミー賞最優秀監督賞ほか多数の賞に輝く。
その他の代表作に『月はどっちに出ている』(93)『刑務所の中』(02)
『クイール』(03)などがある。
──まずは『カムイ外伝』を監督することになった経緯を教えてください。
崔監督:『血と骨』が終わってから、『血と骨』のプロデューサーと、
「次は何をやろうか」って話はしていたんです。
ただ、企画を出し合っても、なかなかうまくかみ合わない。
「作る意味がある」と思える企画でも、「やり抜こう」とまではいかなかったりして。
そんなある日、「『カムイ外伝』みたいなのはどうかな」ってプロデューサーに聞かれ、
3秒後には「やろう!」って決めてました。
正確に言うと、もっと短い時間ですね。
「カムイ外伝ってどうかな?」「やろう!!」って感じだったので、1秒ないくらい。
一応、公式には3秒って言ってるんですけど(笑)。
──10代の頃からリアルタイムで原作を読んでいたそうですが、
1人の読者から、監督として『カムイ外伝』に向き合ったことで、新たな発見や、
作品に対する見方の変化などはありましたか?
崔監督:そりゃあ、読者としてリアルタイムに読んでいるときの方が楽しいですよ。
頭の中で勝手に、自分が企画者であったり、プロデューサーであったり、監督であったり、
主人公のカムイにだってなりきっているわけですから。
今、映画を完成させて思うことは、
「これから僕は、昔の自分と同じように原作を愛読してきた何百万人ものファンと
向き合わなければいけない」ということ。これが、とても難しい。
原作では、カムイも彼に関わる人も、みんな飛び跳ねたり、
忍の世界で生きたり死んだりしている。
恋や愛があれば、憎悪や裏切りもあって、小動物が自由闊達に動き回る一方で、
立ち尽くすしかない人間たちが描かれていた。
そういう画(え)を映像化することは、頭の中ではイメージできても、
実際にワンカットずつ撮影し、1本の映画につないでいこうと考えると、
問題も山積みになる。読者としては、これほど奇想天外で面白いものはないけど、
作る側に回ってみると、困難なことだらけといった感じなんです。
だから、よく「この映画を見た何百万人ものファンが、
こっちに向かって一斉に弓を引いてくるかも」と冗談めかして言ってます。
そうなったら、「撃つなら撃ってみろ」と言うしかない(笑)。
──小栗旬さん、玉木宏さん、市原隼人さんをはじめ、ここ数年、若手男優の活躍が
目立っています。
そうした中で、監督から見た松山ケンイチさんの魅力は何でしょう?
崔監督:気骨があり、それでいて繊細な神経を持ち合わせていて、正直であることですね。
彼のいろいろな面がミックスして、僕の中で松山ケンイチ像が立体的になってくる。
そうした多面性があるところは彼の良いところだけど、かといって彼が、
どんな人物にも変幻自在になれるわけではない。そこが好きなんですよ。
演技の技術があって、うまくて、何でもできるってタイプじゃないところが。
──その松山さんに、カムイをどう演じてくれとリクエストしたのでしょう。
崔監督:「カムイになってくれ」と。
──松山さんの返事は?
崔監督:「う、う、うん」みたいな感じでしたね(笑)。これ以上やると、
現行犯逮捕します
──今回の撮影は、真夏の沖縄で過酷だったと聞きました。
そもそも崔監督の現場自体、過酷だという噂をよく耳に挟みますが。
崔監督:そんなことないんですよ(笑)。僕自身、60歳近い大人として、
それなりの常識は身につけているので。
ただ、常識があれば非常識だってあるわけで、
いろいろなことが行ったり来たりするんだと思うんですよ。
それこそ、うまくいく日もあれば、いかない日もあるし、僕の中にも、
楽天的な部分と神経過敏な部分とがある。
それが、撮影現場の雰囲気を醸し出していると言われれば、事実だと思います。
うまくいっているときは機嫌が良いし、
いっていないときはものすごく機嫌が悪いので。非常にわかりやすいんです。
──機嫌が良いときと悪いとき、どっちが多いのでしょう?
崔監督:それは、特に数えているわけじゃないので(笑)。
そう言えば昔、Vシネマが流行っている頃に、今回と同じ沖縄でロケをしたことがあって、
ある日、スタッフルームに行くと、地図上のロケ地でもないところに赤いマークが
いっぱい貼ってあり、みんなクスクスと笑ってる。
俺は地図を見ながら、「何だよ、このマークは。ロケ地と近いじゃないか」と
問い詰めるんだけど、それでも笑っていて。
で、さらに問い詰めながら気づいたんだけど、マークが貼られている場所は、
俺が怒って、誰かを殴った場所だったんですね(笑)。
──殴られた本人も、その場にいたんですか?
崔監督:一緒に笑っていました。あと、忘れもしないんだけど、
イラン・イラク戦争の終わり頃に、米軍基地の前でトラックが走るシーンの撮影を
していたんです。道路使用許可証は取ってはいたんだけど、
ちょうど、担当が近くにいないときがあった。
そんなことも知らずに、堂々と機動隊の一個中隊の前で撮影していると、
中隊長がやってきて、「念のため道路使用許可証を見せてくれ」と。
それで俺が、「おい、道路使用許可証だって、早く持ってこい!」と製作部に言ったら、
慌てて担当者がやって来たものの、「あのー、あのー」と口ごもってる。
業を煮やして「いいから早く出せよ」と言ったら、
「担当が持ったまんま、次の現場に行ってまして」と。
それを聞いてカーッとなっちゃって、「てめえ、この野郎、出せって言ったら出せ!」と。
直接、撮影の邪魔になっていたわけじゃないけど、そのときの俺にとっては機動隊の一個中隊が目障りだったのでしょう。向こうにとっちゃ、
逆に「何だ、こいつら」って感じでしょうが。
それで職務質問代わりに軽く聞いたつもりが、いつの間にか、
俺に製作部の若いスタッフが殴られている状態になっていて。
さすがに中隊長も慌てたみたいで、「監督さん、それ以上やると現行犯逮捕します」って(笑)。
──今回はワイヤーアクションに初挑戦しています。そのことに関して記者会見で
「気分はジョン・ウー」と仰った後に、「やっぱり崔洋一は、どこまでも崔洋一」
と続けたのが印象的でした。ご自身が思う崔洋一像とはどんなものでしょう?
崔監督:それを振り返られないところが崔洋一なんだと。
振り返って、反省なんかしたら、すごくつまんないと思いますよ。
もちろん、死ぬまでに1回や2回は反省すると思うんですよ。
すべての人の意見を聞く瞬間もあるとは思うけど、
そういうときはきっと俺がやばいとき。
肉体か精神のどちらかが病んでいるんだと思いますね。
──骨太な作品を得意とする印象が崔監督にはあります。
先ほどの機動隊との武勇伝(!?)を聞くと、ますますその印象が強まるのですが、
監督自身、骨太な作品に対するこだわりはあるのでしょうか?
崔監督:そこは自分でも解明しづらいところですね。
自分とは何かがわかっていたら、たぶん、映画監督になっていなかったと思う。
ちょっと青臭いですけど、自分とは何か、そこに触れることが、
映画を作ろうとする重要な要因になっているんだと思います。
でも、本音で言えば、まさか自分が映画監督になるなんて思ってもいなかった。
たまたまアルバイトに行った先が、映画の撮影現場だった。
はじまりは、ただそれだけだったのですから。
松山ケンイチ『カムイ外伝』インタビュー
松山さん自身が感じたこの作品の魅力を尋ねると、
原作が発表された“70年代”という時代をキーワードとして挙げてくれた。
「70年代前半って、僕は生まれてもいないんですが、この頃の作品って“闘うこと”を
題材にしたものが多い気がするんです。
それは、実はいまの時代にはあまりないものだと思うし、
これまで自分の中になかった価値観に触れて、すごく新鮮な気持ちになりました」。
では、映画への出演を決める上で大切にしていることは?
そんな質問を「仕事を選ぶほどはオファーはないですよ(笑)」とかわしつつ、
何者かを“演じる”ことの面白さをこう表現する。
「そのキャラクターが、自分にはないものや理解できない部分を持っていると、
演じてみたくなりますね。
逆に、絶対に自分にしか出来ないようなキャラクターにしたいという思いもあります。
そうやって、常に挑戦しながらキャラクターを作り上げていくということを、
どこかで意識しているのかもしれません」。
このあたりに、原作に負けないキャラクターを作り上げていく秘密がありそうだ。
だが、今回のカムイという役に関してはこれまでに演じてきた役とは勝手が違った。
「これまでは、自分がそのキャラクターであるということを100%信頼して演じていました。
でも、今回に関しては明らかに違う気持ちで生きているキャラクターで、時代も異なる。
自分と似ている部分が全くなくて、“向き合う”ということが出来なかった。
常にどこか疑心暗鬼になっていて…撮影中に挫折感や
『この役を演じ続けることはできないんじゃないか?』という恐怖を感じたのも
初めてのことでした」。
加えて、撮影現場でケガを負ったという事実も、重圧となって松山さんを苦しめた。
「肉体的にももちろんですが、もう二度とケガで撮影を中断させるわけにはいかない、
という変な精神状態で。
カムイと似ている部分が全くないって思っていましたが、
“追い詰められる”という意味では同じでしたね。
逆に、なろうと思ってもなかなかそんな精神状態になれるわけでもないので…
…それが良いのか悪いのかわからないですけど(苦笑)」。
それでは、クランクアップの瞬間はさぞかしホッとしただろうと思いきや、
「そういう気持ちもあんまりなくて。自分がカムイを演じてどうだったんだろう?
って思いがいまだに続いてますね」。そこが松山さんらしいと言えばそうなのだが…。
最後に、松山さん自身が好きなシーンを聞いてみた。
例によってしばらく沈黙を置いて出した答えは、激しいアクションの場面ではなく、
意外なシーン。
「やはりこの作品は、アクションだけでなく人間ドラマがすごくしっかりしてるんです。
すごく悲しい人間ドラマですけど。
(小雪さん演じる)スガルとのシーンで『おれは(刺客の)追忍ではなく、抜け忍だ』
って正直に打ち明けるんですが、スガルは『いや、お前は追忍だ』と拒否する。
そこはカムイの不器用さと忍びの世界の厳しさ、
社会の厳しさが感じられる良いシーンだな、と脚本を読んだときから思ってました」。
同じく松山ケンイチインタビューより
Q:この映画への出演が決まったときのこと、
そしてオファーを受けた理由について聞かせてください。
僕のところにカムイ役のオファーが来て、
尊敬する崔監督と一緒に仕事ができるということや、
自分にとって初めてのアクションシーンがあること。
後は、日本人の役者なら誰でも一度はやってみたいと思う時代劇で、
しかも日本を代表する忍者の役だということ。
どれをとってもすべてのことが魅力的でしたね。ぜひやりたいと思いました。
Q:緊張やプレッシャーはありませんでしたか?
正直、僕にとっては、初めてのアクションでしたから、撮影の前はすごく怖かったですね。
もちろん緊張もしました。
Q:実際に撮影が始まった感想はいかがでしたか?
自分が想像していた以上に、アクションシーンは大変でしたね。
砂浜を全速力で駆け抜けるシーンがあったり、砂浜で戦うシーンがあったりと、
砂浜での撮影が多かったんですが、砂浜だと足が砂にとられてしまうので、
思ったように速く動けないんです。練習をしていたときはうまく動けていましたが、
本番では思ったようにいろんな動きができなくなってしまい、
悔しい思いをたくさんしました。本当に大変でしたね。
Q:崔監督は厳しい監督で有名な方ですが、どんな印象を持たれましたか?
僕も、最初はすごく怖い監督なのかと思っていました。
でも、撮影が終わった今は、恐いとかそういうことは全然なくて、
反対にすごく母性のある監督だと思いますね。
Q:母性ですか?
クランクインしたばかりのころは、緊張しながら演じていたんです。
でもずっと緊張しているとどんどん疲れてきますよね。
それで、どうすればいいのかわからなくなってしまったときに、
頼れるのは監督しかいないと思って、監督に相談したことがあったんです。
そしたら、一からすごく丁寧に教えてくれたんですよね。
そういうことを、撮影中に何度か繰り返しているうちに、
この監督はすごく作品を愛していて、作品にかかわる人をすごく大事にしていて、
愛を持って接してくれているんだということに気付いたんです。
Q:共演者の方々の話や、崔監督の話からも、
真夏の沖縄でのロケは大変過酷だとうかがいました。
正直、撮影のときに逃げ出したくなったことはありましたか?
ありましたね。やっぱりそう思ってしまうくらい、精神的にも追い詰められていました。
だから撮影が進むにつれて、自分の弱さが浮き彫りになりました。
役者としての課題も、たくさん出てきましたしね。
Q:それでも松山さんを、「頑張ろう!」という気持ちにさせた原動力は、
何だったんでしょうか?
僕は一度、この作品をけがでリタイアして撮影を止めてしまったことがあったんです。
その借りは絶対に返さなきゃいけない! という思いと、
もうこれ以上ほかのスタッフさんやキャストさんや監督に、
ご迷惑をかけるわけにはいかないという気持ちがあって…
…とにかくそれだけだったと思いますね。
Q:カムイというキャラクターは、原作でもとても奥深いキャラクターとして
描かれていますが、どのような気持ちで演じられていたのでしょう?
カムイのキャラクターについては、毎回、撮影のたびに必死に考えていましたし、
それはすごく難しかったですね。
だから、カムイを安心して演じられたことなんて一度もなかったですし、
気持ちよくやり切ったという感じは今でもないです。
Q:この難しいキャラクターを理解して、演じることはできましたか?
(カムイは)奥深いキャラクターだから、
僕はこの一回の撮影で彼のことをすべて理解したとは思っていません。
もしかすると、半分も理解できていないのではと思うんです。
だから、もし機会があるのなら、何回もカムイを演じて、
カムイを理解していきたいという気持ちは今でも持っていますね。
Q:カムイはどんなにつらいことがあっても、どんなに迫害されても、
生きることをあきらめません。
彼が持つ、生きることへの執着にはどんな印象を受けましたか?
僕はそれを一番疑問に思いますね。
カムイが持っている生への執着を、
やっぱり観ていただく皆さんにも感じていただきたいです。
そう考えると40年前の原作を実写化して、今、公開する意味があるんだろうと思いますね。
Q:カメレオン俳優と言われる松山さんだけあって、
どの作品でもまったく違う顔を見せていますね。
松山さんが演じられるときは、100パーセント役に成り切るのでしょうか、
それとも、自分の中の、松山ケンイチの何かを残しているのでしょうか。
自分の中の何かを残して、演じていると思っています。
演技をする上で、理論とか理屈とかっていうものも考えますけれど、
実際に撮影の本番になったら忘れちゃって、
自分の感覚だけで演じているところはあるかもしれないですね。
僕がそのキャラクターを演じる上で、自
分が演じるキャラクターが自分と100パーセントすべてが違っているなんてことは
有り得ないと思うんですよ。よほどのことがない限り。
絶対どこかで共通しているからこそ、
自分がそのキャラクターを演じることができるんじゃないかと思っているんです。
だから、僕もどこかでカムイと似ているところはあるのかもしれないですけれど、
具体的にそれを見つけることは、あまりできなかった気がしますね……。
Q:本作を通して、松山さんが役者として、
一人の男として成長した部分はどういうところだと思いますか?
まず、『カムイ外伝』という作品に出会えて、
カムイというキャラクターをやらせてもらったこと自体、
自分にとってすごく大きなものだと思うんです。
でもここで学んだものとか、男として成長した部分というのは、
その瞬間何かあるのかもしれないですけれど、僕はすぐ忘れてしまうので……。
これからいろんな作品に携わりながらも、
結局同じことを繰り返していくんだろうと…
以下はネタバレとなるのでmixi独身映画ファンコミュニティ
http://mixi.jp/view_community.pl?id=1299114
にて『カムイ外伝』の頁をご覧下さい。
トップページ(映画制作裏話、映画と原作比較レビュー)に戻る。