「華氏911」DVD脚本レビュー
★映画基礎データー★「華氏911」 2004年 アメリカ映画 監督脚本出演 マイケル・ムーア |
『ボーリング・フォー・コロンバイン』で
アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞やカンヌ映画祭55周年記念特別賞を受賞
した
マイケル・ムーアによる新作です。
9.11テロを軸に、
何故アメリカが標的になったのか、
テロ前後のアメリカの動き、
ブッシュ一族とビン・ラディンを含むサウジアラビア有力一族との関係などを
追う コメディタッチのドキュメンタリー「華氏911」。
ミラマックスの親会社ディズニーから配給拒否されたことでさらに注目を集め
ました。
『ボーリング・フォー・コロンバイン』を劇場で見て、
その主張に賛同しつつも本人が前に出すぎるマイケル・ムーア監督に嫌悪して
いました。
今年のオスカーの授賞式でオープニングのビデオで、
「ロード・オブ・ザ・リング」のパロディで
「この戦争は間違っているっ」と叫んで象に踏み潰されるムーア監督、
というのが出てきて、場内の拍手交じりの爆笑をかってました。
タランティーノのように絶賛する人もいれば、
ブーイングを鳴らす人も当然いるということです。
が、アポなし突撃レポートというのは、
何もムーア監督の専売特許ということ ではなしに、
アメリカのドキュメンタリーでは ファーストフーズの害を訴えるために、
マックのバーガーのみの食事を続ける自分の姿を延々と撮影する
といった“身体を張った”ドキュメ ンタリー
作家もいるそうです。
公明正大なマスコミ報道が幻想であるように、
ドキュメンタリーもまた、“偏向”であることからは免れません。
このあたりの議論については、きりがないので
好きにものをいえる環境が確保されていることこそが民主主義であろうというあたりで、
締めとくのが順当でしょう。
最初私がこの作品を見る前に感じたのは、
「どうしてこれが劇映画というジャンルで公開されなきゃならないんだ?」
という疑問でした。
テレビかDVDでしょ、本来。
「シュレック2」「サンダーバード」なんかと同じ
町のシネコンでどうして上映する必要があるんだ?
映画の中で主張され、 あるいはプレスに対してムーア監督が語るところによれば、
全米のテレビは“情報操作”されており、
この作品のような内容が放送される余地は無いようです。
ゆえに劇映画なのか?
「華氏911」はアメリカでこそ“凄みのある内容”かもしれなかったですが、
この程度の内容は既にいろんな評論に書かれていたことですし、
日本では先日もNHKで「富の攻防」というドキュメンタリーシリーズで、
映像としてネオコンとアメリカ階層社会の批判は出てきているし、
さらに同番組では、
イラク戦に反対したフランスが実は旧政権に投資していたか、とか、
今現在イランに大金をつぎ込んでいる中国とか、
ロシアやパキスタン、インドの様々な思惑がパッチワークのように入り組んで
いる
様子が放送済みなので、
新しい発見はほとんど無かったです。
ブッシュという判りやすい悪玉を叩くというのは、
映画の手法としては常套手段であろうと思われます。
前述のパッチワーク世界をそのまま一本の映画にしてしまうと、
“諸行無常”感が前に出てしまい、
観客が無力感とともに劇場を後にしなければならなくなる。
そうなっていないところに、
この作品が不思議とドキュメンタリーでありながら
エンターテイメントであることを感じますね。
個人プロダクションの製作で広範囲の情報を集めた努力は評価できます。
が、ムーア監督本人が姿を見せるのは、
議員たちに「あなたの子供をイラクへ」とパンフを突きつけるあたりだけとい
うのは、
いかにも食い足りないです。
「コロンバイン」が出ずっぱりだったのに比べて、
あんまり身体を張っている、という感じが無いです。
前に出すぎて嫌い、といいつつ出て来ないとやはり物足りない。笑
実際、イラクに出向いたのは契約したカメラマンらスタッフたちのようでしたしね。
もっともムーア監督がバクダッドで流れ弾にでも当たって死んでしまえば
作品そのものの製作がストップしちまうので仕方なし、か。
劇場公開のときは、
歌舞伎町の広場を入場待ちの長い長い行列ができてました。
セカチュウ以上の盛況です。
学生さんとかがカップルで押しかけて「華氏911」を見る、
というのがトレンドのようだったです。
まあ、本も読まずテレビのドキュメンタリーも見ない人たちが、
流行に乗ってでも、世の矛盾を垣間見る機会を得ること自体は悪いことではない筈です。
さてDVDではどのような評価を受けますでしょうか。