「風が強く吹いている」

「風が強く吹いている」映画チラシ■作品基礎データ
「風が強く吹いている」
2009年 日本映画
監督・脚本:大森寿美男
原作:三浦しをん(新潮社刊)
出演:小出恵介 林遣都

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「俺がずっと探していたのは、君だったんだ」
ついに、ハイジ(小出恵介)は見つけた。共に夢を叶える仲間の、
切り札にして、最後の1人を。彼の名はカケル(林遣都)、18歳。
ハイジが4年生になる寛政大学に、この春から通う新入生だ。
高校時代に天才ランナーと呼ばれた彼の走りをその目で確認したハイジは、
戸惑うカケルを半ば強引に、自らが寮長を務める竹青荘に入居させる。
まかない付きで3万円という破格の家賃には、
陸上競技部に入部して毎朝5キロ走るという入居条件があった。
ハイジの作るうまい料理のために、喜んで走り続ける8人の住人は、
まだ誰もハイジの野望に気付いていなかった。

「10人で力を合わせて、箱根で頂点を目指そう!」
ハイジの突然の箱根駅伝出場宣言に、唖然とする9人。
それもそのはず、ハイジとカケル以外は全員、陸上とはかけ離れた者ばかりだ。
ニコチャン(川村陽介)は、2浪に1留で25歳のヘビースモーカー。
法学部のユキ(森廉)は、すでに司法試験に合格済みの頭脳派。
ヴィジュアル系の顔立ちから、その名がついた王子(中村優一)は、
愛する漫画の山の中で暮らす漫画オタク。
キング(内野謙太)はクイズオタクの雑学王で、
やたら日本語がうまいムサ(ダンテ・カーヴァー)は、
アフリカからの超マジメな国費留学生。
神童(橋本淳)は心優しい性格で、竹青荘の良心と呼ばれている。
新入生のジョータ(斉藤慶太)とジョージ(斉藤祥太)は、
女の子にモテることしか考えないお気楽な双子の兄弟だ。

「あなたに、走ることの何がわかるんですか?」
「素人が、無理です!」強く反対したのは、なぜかカケルだけ。
だが、ハイジには勝算があった。
「ニコチャンは陸上経験者、双子とキングはサッカー、ユキは剣道、
神童は往復10キロの山道を歩いて通学、ムサに秘められた潜在能力は測りしれない」
一応監督である竹青荘の大家・田崎(津川雅彦)のゆるい励ましも受け、
翌朝から箱根を目指す日々が始まった。
驚くことに皆、カケルと遜色のないペースで走っている。
「もしかして、行けるのか?」
カケルの期待を一瞬で壊したのは、青い顔で息も絶え絶えの王子だった。
最初の課題は、予選会出場条件の「5,000メートル17分以内」をクリアすること。
皆で真剣に走った結果、問題は33分の王子だけ。
しかし、どんな時も前向きなハイジは、
とりあえず走り切った王子を「凄い進化だ」と、称える。

「速さだけじゃダメだ。そんなのは虚しい」
記録会で、ぶっちぎりの速さを見せつけたカケルに、
名門校六道大学のエース藤岡(渡辺大)が声をかける。
彼とハイジは高校の同級生だ。
「奴も復調してきたな。膝の故障さえなかったら、毎年箱根で会っていた」
藤岡の言葉に驚くカケル。
彼の完璧な走りに刺激され、カケルの中に焦りと欲が生まれる。

漫画に夢中な王子と、呑気に酒盛りをする皆に、カケルの不満が爆発する。
「もっと練習しろよ!」
その時、ハイジが初めて怒った。
「漫画と同じように、走ることを好きになれと言ったそうじゃないか。
その言葉こそ、本当の君だ」
そう言いながら、バッタリと倒れるハイジ。
選手兼監督兼コーチ兼マネージャー兼管理人からくる過労だった。
ハイジは、病院に附き添うカケルに問う。
「長距離選手に対する、一番の褒め言葉って何かわかるか?」
「速い…?」
「俺は、強い、だと思う」

「ここまで、一緒に来てくれて、ありがとう」
人が変わったかのように、過酷な訓練を重ねた王子は遂にタイムをクリア、
寛政大学は予選会に向けて、夏の合宿訓練を開始する。
近くでは、ライバルの東京体育大学も合宿、
カケルの高校の同級生・榊(五十嵐隼士)の姿もあった。
「そいつ監督を殴って、俺たちの最後の1年を棒に振ったんですよ」
挑発的な榊の言葉に「知ってるよ」と平然と答えるハイジ。
夏が終わり、秋になり、予選会の日がやってきた。
寛政大学は最下位の9位ながら見事に通過、ついに箱根への切符を手に入れる。
年が明けて1月2日、箱根駅伝のスタート地点、東京大手町。
1区を走る王子は、プレッシャーに勝てるのか? 風邪を引いた神童は? 
そして何よりも、ハイジの膝は──? 
「最高の朝だよな、カケル」
1本の襷にすべてを賭けて、ついにレースが始まった──。


原作は、直木賞作家・三浦しをんの同名小説。
主人公ハイジを演じるのは、『ROOKIES─卒業─』の小出恵介。
他人との衝突も多いカケルには、『バッテリー』の林遣都。
その他、『体育館ベイビー』の中村優一、「ROOKIES」の川村陽介、
『タッチ』の斉藤慶太、斉藤祥太、
ソフトバンクのCMで大ブレイクしたダンテ・カーヴァーなどが出演。
また、津川雅彦がチームの監督役に扮して脇を固める。
監督は、これがデビュー作となる大森寿美男。
NHK大河ドラマの「風林火山」、「クライマーズ・ハイ」、
映画『星になった少年』などの脚本家として知られている。
本作のもう1人の主役は、箱根駅伝。
コースの1区から10区までを忠実に再現、
3万人のエキストラを集め、40ヶ所にカメラを設置、
スクリーンにリアルなレースを再現した。

「風が強く吹いている」試写会で見ています。
私が当てて、人を連れて行った試写会です。
小出恵介くんが見たいといってました。
ほぼ全編出ずっぱりで満足したのではないでしょうか。

とっても面白かったです。
本編終了後、場内に拍手がありましたが、私も連れも一緒に拍手しました。

箱根駅伝は今年の正月、実家でテレビで見ましたが、
予選からして大変な盛り上がりである事は、この作品を見てはじめて知りました。
へなちょこ集団だった寛政大学陸上部のメンツが、
本戦出場を決めると、大学の校舎に横断幕が張られ、
ご町内をジョギングすれば、道行く人々からやんやの喝采を浴びる。
勿論勝ってこその駅伝だけど、
勝ち負けを超えたところに感動がある。

脚本家が監督デビューした作品だけあって、
全編怒涛の名台詞の嵐です。
漢(おとこ)ごころに男が揺さぶられるセリフの数々です。
小出恵介は声が良いですね。
青年の心情を伸びやかな声で訴えつづけ耳に心地よいです。

彼の相方になるのが林遵都。
中学のリトルリーグを描いた「バッテリー」。
高校の水泳の飛び込みの世界を描いた「ダイブ」。
そして大学駅伝の「風が強く吹いている」と、
体育会系映画主演まっしぐらです。
今回の駅伝選手もいいんだなぁ。
いろいろドラマはあるのだけど、
クライマックスで見せる彼の走り。
ヘリコプターショットで、あるいは中継車からのショットで、
ひたすら走る彼の姿がスクリーン一杯に映される。
ヒロインが「男の子が走る姿がこんなに美しいなんて」と
いうセリフがあるんだけど、
掛け値なしに素晴らしい見せ場になっています。

“箱根駅伝”という名称は勿論通称で正しくは
東京箱根間往復大学駅伝競走
(とうきょうはこねかんおうふくだいがくえきでんきょうそう)といい
例年1月2・3日に行われる関東地方の大学対抗の駅伝大会のことです。

東京都千代田区大手町・読売新聞東京本社前から
鶴見、戸塚、平塚、小田原の各中継所を経て神奈川県足柄下郡箱根町・芦ノ湖までの
往復コース。往路108.0km、復路109.9km、計217.9kmを走ります。
1月2日に東京から箱根への往路を、1月3日に箱根から東京への復路を走る
というルールになっています。
1920年2月14日に第1回大会が行われたそうです。
第1回大会は、アメリカ大陸の継走での横断を実施するための代表選考会でした。
1912年のストックホルムオリンピックに出場した日本人五輪選手第1号の金栗四三が
「五輪で日本を強くするには、長距離、マラソン選手を育成すること」と
発案したことがきっかけと言われています。
第二次世界大戦中に一時中断されたものの、1947年に復活し、
第32回(1956年)から、現在の1月2・3日の開催となったそうです。

関東学連に加盟している大学に参加資格がありますが、
5年や10年ごとの記念大会では関東以外の大学が招待されることもあります。
―ということは、関東ローカルの長距離走大会なのですね。

林 遣都のインタビューからメイキングに関する部分を採録します。

<プロフィール>
林 遣都(ハヤシ ケント)
1990年12月6日生まれ、滋賀県出身 、O型。 趣味はギター、特技は
野球・書道。
3000人もの応募者が殺到した映画『バッテリー』(07)のオーディションで
見事主役を射止めてデビュー。
以来、映画『ちーちゃんは悠久の向こう』(08)、『ダイブ!!』(08)、
『ラブファイト』(08)と主演をこなし、
この秋にはTBSドラマ『小公女セイラ』にもレギュラー出演。
来年には行定監督最新作『パレード』(10)も公開予定。

映画『風が強く吹いている』は同世代の方たちとの共演ですが、
いかがでしたか?
■林:「お芝居の話はしないんですが、お互いに刺激し合って得るものが大きかったです」

今回は駅伝選手の役ですが、どういうトレーニングをされたんですか?
■ 林:「実際にある大学の駅伝のチームに参加させていただいて
同じメニューをこなしました。
それが一日腹筋何百回とかっていう、とてつもなく厳しいメニューで・・・。
撮影中は箱根駅伝の経験者の方がつきっきりで作ってくださった、
これまたとてつもなく厳しいメニューをこなさなくてはいけなくて、
昼から撮影なのにも関わらず朝から起こされたりしていました。
そんな感じで半年間、逃げ出したいときもありましたけど、常に走っていましたね」

毎回厳しいトレニーニングをされていらっしゃるせいか、
体つきが変わってきていますよね。
■ 林:「僕は運がよくて、前の作品がなかったらこの作品はできなかったと思える、
その繰り返しなんです。例えば、「ダイブ!!」の体作りがあったからこそ
「ラブファイト」のボクシングのトレーニングに耐えられたし、
ボクシングで体を絞ったからこそ駅伝選手を演じられたと思うんです。
ボクシングをやっていなかったらあんなにリアルな腕の筋は作れなかったので、
本当に運がよかったと思います」

毎回大変ですね……。
■林:「(適度に)逃げる方法も覚えましたから(笑)」

箱根駅伝のシーンはとてもリアルでしたね。実際に9区を走られたんですか?
■ 林:「監督、スタッフのみなさんが、小道具をはじめ、
隅から隅まで実際の箱根駅伝と同じ環境を作りあげました。
監督がとにかくワンカットワンカットをリアルにというスタンスだったので、
あの環境があったからこそ僕らも走りをリアルにしなきゃいけないと思わされましたね。
僕は実際に9区を走っているんですが、
箱根経験者の方に細かくご指導いただいて実際のスピードに近いスピードで走りました」

日本映画には珍しく、本作『風が~』は夏と冬の2シーズンに分けての撮影を敢行。
かなり長いスパンで1つの作品に関わることになった林さんだが、
その間、やることは山積みだったとか。
「夏の撮影が終わって冬の撮影まで、半年弱くらいあったんです。
その期間は準備期間として使えましたけど、
スタッフから渡された(筋トレなどの)メニューが尋常じゃないくらいのハードさで。
毎日10km走るのは当たり前なんです。
さすがに学校やほかの仕事もあったので、毎日完璧にはできませんでしたけど…。
でも常にこの作品のことが頭にあって、
遊んでいたとしても“こんなことしてて大丈夫なのか?”って思ってしまって、
思いっきり楽しめませんでした…」。
これまでの作品の役作り=体作りで相当シャープな肉体を保っている林さん。
この取材当日の彼も、最近で言う“細マッチョ”な理想的体型だったが…。
「撮影中はかなり痩せちゃいましたね。
ボクシングをしたときは筋肉で、逆に体重が増えたりしたんですけど、
駅伝…つまり“走る”ことって一番辛い。
トレーニングがきつ過ぎて、食べられなくなっちゃうんです。
だから体を絞りたい人は、実は走ることが一番いいんじゃないかって今回思いました。
でも結果的には痩せたことが、本当の駅伝選手の体型に近づけたので良かったです。
ただ走ってるときは、正直…あんまり楽しくなくて(笑)。
ただひたすら走り続けているだけなので、
自分の成長も分からないし、飽きみたいなのも来るんです。
体力的にはもちろんですけど、精神的にもきつかったですね」。

だが実際の撮影では、“ランナーズハイ”も経験したという。
「あのときは、気づけば相当の体力がついていたんだなと実感しました。
もう止まらない! って感じで、どこまでも走っていけそうな感覚。
もちろん初めての経験です」。

キャストの中では最年少。
しかも彼が演じたカケルは“天才ランナー”ともてはやされてきた花形選手でありながら、
その性格はかなり生意気! 
ダメダメな先輩たちにも度々食って掛かるなど、かなり強気な男の子なのだ。
「(役者の)先輩方に囲まれて、最初はやっぱり緊張しました。
でもカケルも最初は浮いてるし、ちょうどよかった(笑)。
カケルがなじんできたのと、僕がみんなになじんできたのがそのまんまな感じで。
男だらけだったので、みんなで筋トレをしたりして楽しかったです」。

周りにすごい人がたくさんいるので焦ります
その中でも後に『パレード』で続いて共演することになる、
ハイジ役の小出恵介さんとの出会いは大きいものがあったようだ。
「本当にさすがだなと思ったのが、小出くんは夏の撮影と比べ物にならないくらい、
体を作ってきたんです。
ストイックな人なんだなぁと。
役的にはハイジとカケルって強い絆で結ばれていくけど、
僕も小出くんも実際はすごく人見知り。
だけど“人見知り同士だとラクですよね。
無理して会話しなくてもいいって、お互い分かってるから”って話をしました(笑)。
僕は役の上でも、実際も、小出くんとは心と心が繋がってるんだと勝手に思って
演じてました。
実際、映画の中で見せる小出くんの走りはとてつもなくすごかった! 
本当に尊敬するし、憧れる役者さんです」。

「走ることになると周りが見えなくなるカケルの気持ちは分かる」という言葉も印象的。
「僕はカケルのような天才ではないけど、目の前にやるべきことがあると、
すぐに周りが見えなくなるんです。
それはお芝居だったり、こうした取材も同じで。
うまく自分では切り替えをしているつもりなんですが、
特にそれが作品になるとなかなか難しい…。
これまで作品ごとに気持ちは切り替えてきたつもりでいたんですけど、
たまに深く考え出すとデビュー作(『バッテリー』)から全く切り替えられて
ないんじゃないか? とか。
いや、それは言い過ぎかな(笑)。でも常に、後悔と葛藤の繰り返しですよ」。

一見、この上なく順調にキャリアを積んできているように映る彼。
だがその内面はそんな単純なものではない。
「最近は焦ってますね~。このままではダメだ! と。
周りにすごい人たちがいっぱいいるので、
そういう人たちを見ているとどうしてもいまの自分に満足なんてできません。
でも映画の現場はやっぱり大好きだし、落ち着くんです。
控え室から映画のセットに歩いていく瞬間、いつもワクワクする(笑)。
なぜだか分からないんですけど」。

大森寿美男監督のインタビューを採録します。

――初監督となると、覚悟と意気込みも大きかったでしょうね。

 「『走る』映像に説得力がなければ何も伝わらないと思いました。
意気込みを感じる余裕はなく、
大規模な箱根駅伝本選をどうやって再現すればいいのかという不安のほうが大きくて、
撮影も至難と覚悟していました」
「箱根駅伝という題材に真っ向から挑み、真髄を伝えたいという思いから、
どうすれば作品が成立するかスタッフと一緒にそれだけを考えていました」

――箱根駅伝を題材とした原作の映画化ですね。

 「脚本依頼の形で原作と出会いました。僕も子供の頃から箱根駅伝が好きで、
いつか箱根駅伝を映画に作れたらという夢はありました」
 「でも、脚本を執筆し終えても、
映画化は不可能かもしれないという気持ちがどこかにありましたね。
弱小チームが1年で箱根駅伝に出るなんてありえない話。
それをどうやって感動までもっていくか考えた時、逃げず、ごまかさず、画の力で、
それが実話であり、事実であるように見せるしかないと思いました」
「ランナーに密着する映画にしたら面白いかもしれない。
そこまで作りこめたら、映画としての力が持てるという直感がありました。
原作の<語る>箱根駅伝を、<見せる>力で凌駕しなければ…と」

――<見せる>ためにどこに焦点をあてられたのですか?

 「10人が1本のタスキをつなぐ話ですから、1人でも目立たない人がいると、
価値が薄れます。とにかく10人の生活を画で<見せる>ことにしました。
キャラクターを<見せ>ていけば、多くを語らずとも、映画として成立できるはず、と。
本選撮影で時間がかかるのは台本の段階で解っていましたが、
どうやって彼らが箱根に立ち向かっていくかを表現するのが一番難しかったですね」
「本選までを簡潔に描くと、苦もなく出場したようになってしまう。
でも、彼らの『走り』が成長していれば、省いた時間に乗って見ていける。
その為には、予選会の時の『走り』が見違えるようになっていなければなりません。
箱根駅伝に出る選手のレベルの『走り』に見えるようになるまで、
芝居の前に鍛錬してもらうことが重要かつ絶対条件でした」


――俳優が『走り』のトレーニングを始めると同時にクランクインし、
無謀な夢に挑戦する若者たちが育っていく姿を撮っていかれたのですね。

 「最初に、劇中の夏合宿のシーンを実際に合宿しながら撮りました。
その後、冬のクランクインまでの半年間で、
個別に体形作りのトレーニングを続けてもらいました。
当初は、およそ長距離走者には見えない走りかたでしたからね、
一瞬、絶望感におそわれました(笑)」

――その状態から、筋肉や走りかたを習得していったのは彼らの努力の賜物ですね。
 「陸上競技専門のランニングコーチをつけました。
演技で長距離ランナーのフォームは作れない、長距離ランナーになるしかない、
とにかく走りこむ、
そうすれば身体が自然に合理的にフォームを作っていくと言われました」
「目線や腕の振りかた、足の出しかたなど技術的なことは教わりましたが、
役者が映画で見せたフォームは、走りこみをしていく中で、
彼らの身体が自然に習得して作りあげたものです」
「それがまた、林君(カケル:林遣都)は本物のランナーよりも完璧で美しい。
林君の『走り』が手に入ったこと、映画でその『走り』が見せられたことで、
映画も成立したかなと。
それにしてもここまで見事にそれぞれのキャラクターにハマるとは
思いませんでした(笑)」

――ロケ地は日本全国各地にわたっています。ご苦労も多かったでしょうね。
 「撮影の苦労は一番印象深いです。まず道と人ですね。
制作部は撮影許可を取るために奔走する日々が続きました」

 「国道15号、134号、1号にわたる箱根駅伝10区間全217.9km、
東京の大手町と箱根の芦ノ湖畔往復という実際のコースの道は
まったく使えませんでした。
予選会会場の昭和記念公園、鶴見、小田原、芦ノ湖の各中継所は、
撮影許可がとれましたが、交通量の多い主要国道の上下線を、一時的にとはいえ、
封鎖して撮影することができなかったので、道をどうするかが大問題でした」
「とにかくエキストラが集ってくれて、
交通規制に協力してもらえる場所をということで、
全国のフィルムコミッションに相談しながら探しました。
北九州、福岡、大分が熱意を示してくれたので撮影できましたが、
33日のべ3万人のエキストラに<応援>という演技指導した助監督たちも
演出部も大変だったと思う」

――走りの臨場感を収めるための技術、そしてリハなし、
本番1回での撮影に挑戦ということで、テストを重ねられたと伺いました。

 「どのスピードで、どの角度から、どの距離で、
どう撮るか考えなければなりませんからね。
秒速5.5mで走るランナーの表情を撮るために、数台のカメラを搭載した車両も
工夫しました。35ミリのフィルムも9台ぐらい使っています」

 「HDも10台ぐらい。35ミリはポジションを決めて、そこから一発ねらい。
あれだけの距離ですから、全部で40箇所ぐらい、移動しながら撮っていきました。
HDは人ごみの中で臨機応変に、選手のアップや観客の熱気を撮りました。
予選会と本選あわせてカメラは40台ぐらい使いました」
「一流のカメラマンに集っていただいたので、とても贅沢な撮影でした。
撮影協会の全面的な協力なくしては、この映画はとれなかったですね」

――ヘリからの空撮映像や実景撮影もありました。
「空撮は、実際の箱根駅伝の中継をしている会社に依頼し、
本選を撮影しているカメラと競合しながら撮りました。
実景撮影を入れたのは、僕らの手作り分だけでは、
箱根駅伝のスケールまで表現しきれないと思ったからです」
「実景撮影と僕らが作った映像とを、
境目がないように巧く組み合わせてスケール感を出すという命題が
最初からありましたから、
その点は最も神経を使いました。走る選手をカメラ・パーンで撮るとき、
選手が聴く歓声や、呼吸、足音も同時に録りたくて、
録音部もマイクを持って走っていましたよ、ランナーと一緒に(笑)」

――本作の見どころ、及び、テーマは?

 「『走り』にすべてをこめました。
最後に、カケルの言う言葉がこの映画のテーマそのものです。
駅伝はチームプレイだけど、走る時は1人。そこが駅伝の特徴であり魅力だと思います」
「僕らの人生でも、最も大事な絆は、人に頼ったり、救いを求めたりするのではなく、
互いの力を引き出しあうような絆だと思います。
どんな人生にもあてはまる絆のありかたみたいなものを、
この作品から感じとってもらえるといいなと思っています」

――では最後に、ご自身は、走るのはお好きですか? 

 「走るのは苦手で、走れないですけど、好きか嫌いかと問われたら好き。
走るのは好きですね(笑)」

小出恵介のインタビューを再録します。

同年代のキャスト、いい意味でのライバル心が力に
「自分にはないことだらけなんですよ(笑)。
あんなに僕は懐も広くないし、あんなに器がデカくないし、
全員をこうやって受け止めるっていうのは出来ないし…
自分の中のそういう部分を探して、必死でハイジに近づいたという感じでしたね」。
ハイジというキャラクターについて聞くと謙遜する小出さん。
それでも実際スクリーンに映るハイジは、まさにハマリ役と感じてしまうほど、
誰もが信頼したくなるリーダーであり、チームのまとまりはリアリティがある。

「男が集まってスポーツをするというのは、
やっぱり『ROOKIES』もそうでしたが、
ある種ドキュメンタリー的な要素がすごく出てきますね。
みんな実際一緒に練習に励んだり、一緒につらい思いをしたりしているので。
今回もすごく大変でしたけど、その分頑張れたという部分もありました。
『アイツが頑張っているんだから、俺も頑張んなきゃ』っていう気持ちって、
すごく大切ですよね。特に同年代ですし、いい意味でのライバル心もあり、
そういうのが力になるんだなって改めて思いました」。
もちろん、本作のキーは「走り」。
「最後に走ってる姿で、観てる人が一緒に嬉しくなり、
一緒に感動できなきゃダメだと思ったんです。
実際に走るのは僕たちなので、ちゃんと走りを練習して、
ちゃんと走る姿で感動を届けられなきゃなって思いました」と小出さんが話す通り、
全員の見事な走りによって、観客はドラマに引き込まれていく。

そのための練習はとにかくハードだった、とふり返る。
「昨年の夏に最初の撮影があったのですが、その前にみんなで合宿をしました。
白樺湖での高地トレーニング。朝から晩までずっと走りっぱなし。
合宿以外ではみんなで集まって練習するときもあれば、
スケジュールが合わないときは個人個人で練習することも。
撮影中も朝や合間にみんなで走ったりしていましたね」。

何か大きな一歩を踏むために走る
特に冬の撮影は何よりもつらかったそう!
「冬の朝の6時くらいから、すっごく寒いけどジョグして温めて、体作って、本番走って。
で、また次の本番まで時間があるので、一回冷えた体をまた温めて…っていう、
その繰り返しなんですよね。最後、体はボロボロになってました」。

また、本作のもう一人の主役、天才ランナー・カケルを演じる林遣都さんとの
掛け合いも大きな見どころだ。
「林くん自身が一生懸命にカケルという人間と向き合っていたので、
僕はもう安心しきっていました。
彼はカケルをすごく頑張って、カケルになりきって真っ直ぐ向かってきますし、
僕は割と受け止める立場の役だったんですけど、
それをビシビシ感じるのは気持ち良くて、掛け合うのが楽しかったです。
本当に一生懸命で真っ直ぐな俳優さんですね」。

本作を通じて、「男が何かを背負って走ってる姿は美しい」ことが伝わるはず、
とインタビューを熱い思いで締めくくる小出さん。
実際に自身、いままでは「テレビがついていたら見る」
レベルだった箱根駅伝に対して、見方が大きく変わったという。
「この間、ある大学の合宿にお邪魔して見学をして、学生たちと話したんですが、
僕が想像していたより何倍も走ることに懸けてる思いは強い。
改めてカッコイイな、と思いました。(映画の中の)このメンバーもそうですが、
走ることを生きがいとしてるわけじゃなくて、
自分の人生の中で、何か大きな一歩を踏むために走ってる。
それが…

以下はネタバレとなるのでmixi独身映画ファンコミュニティ
http://mixi.jp/view_community.pl?id=1299114
にて『風が強く吹いている』の頁をご覧下さい。



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