「君とボクの虹色の世界」DVD脚本レビュー

「君とボクの虹色の世界」映画チラシ★映画基礎データー★
「君とボクの虹色の世界」
2005年 カナダ映画
監督脚本主演 ミランダ・ジュライ

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無名の新人女流監督のメジャーデビュー作品です。
サンダンス映画祭で発見され、
カンヌ映画祭に出品されます。カンヌでカメラドール(新人監督賞)と
評論家週間のグランプリを受賞。
インディペンデンス系の作風。
学生映画のような脚本。
名の知れた俳優は一人も登場せず、
ロス市内で撮影されていますが、観光スポットなどは登場せず、
普通のショッピングモールや宅地ばかりが出てきます。

トップシークエンスのツカミがばっちりでした。
タクシードライバーのヒロインが老人客の付き合いで靴を買いに行く。
その帰り道、駐車場で車に乗ろうとすると、
向かいの親子連れの父親が、子供と話しながら車に乗るところが見える。
父親は買った金魚をビニール袋ごと車の屋根に置いて、エンジンをスタートしてしまう。
ヒロインと老人客は親子連れに声を掛けるが気がついてもらえない。
あわててタクシーで乗用車を追いかける。
「クラクションを鳴らしてはいけない。ブレーキを踏めば、金魚は袋ごと落ちてしまう」
と老人客。ヒロインは無言でうなずくとアクセルを踏んで乗用車の前に出ようとする。
「はかない命…」とどちらかが呟く。
口をパクパクやっている金魚のアップ。
ビニール袋の外側で流れる街の風景。

ハイビジョンで撮影されたそうです。
試写会ではフィルムに起こされたものを見ましたので、
色使いの妙などは良くわかりませんでした。
コピーに“ポスト・ソフィア・コッポラ”と書かれていました。
まるで違う作風だろうにと思いましたが、
“女流の新人監督”ということだけで、こういうコピーになってしまったのでしょう。
若い女性の感性で突っ走ってます。

クリスティーン・ジェスパーソン(ミランダ・ジュライ)は
シニア専用タクシーの女性タクシー運転手だ。
年配の客を相手に、買い物なども付き合っている。
人々とより深い関係を築きたくて、クリスティーンは写真のコラージュ
(貼り付ける画法)やひとりビデオづくりをしたりしている
自称アーティストでもある。

人恋しいのか、惚れっぽいのか、クリスティーンは
客の付き合いで出かけた靴屋のセールスマンをしている
離婚したばかりの男性リチャード・スワージー
(ジョン・ホークス)に関心を持つようになる。
リチャードは妻パム(ジョネル・ケネディ)と離婚したばかりで、
二人の息子たちと古ぼけたアパートに移転してきた。
リチャードのこれまでの古い生活はぼやけて消え失せていき、
新しい暮らしにはまだ心の準備が出来ていない。
リチャードはその狭間にいる。

 クリスティーンは何番目か分からないほどのデジタル作品を
地元の博物館に持ち込んで自分の作品に気づいて欲しいと思っている。
他の誰も言ってくれない事を言ってくれる風変わりなリチャードにも注目してもらいたい。
絶望的な金魚の命を救いたい。
彼女は現代の人々の不安定さや挫折感を共有している。

当のリチャードは二人の息子との新生活を軌道に乗せるのに大変だ。
長男ピーター(マイルス・トンプソン)は14歳で、
少し年上の地元の女の子たちレベッカ(ナジャラ・タウンゼント)と
ヘザー(ナターシャ・スレイトン)というティーンエイジャーの
‘実験道具’にされている。
一方次男ロビー(ブランドン・ラトクリフ)は6歳か7歳で、
年上の見知らぬ人物相手と、インターネットのチャットに夢中だ。
彼らは公園で会うことになるのだが。

 リチャードの近隣に住むアンドリュー(ブラッド・ウィリアム・ヘンケ)は、
レベッカとヘザーにへんてこなメッセージを残しはじめる。 
そしてピーターの友達シルヴィ(カーリー・ウェスターマン)は、
母親の愛情を求めて、全てが完璧という未来の家庭の妄想を抱いて、
せっせと嫁入り道具(?)揃えに余念がない。
そんな彼らが全員ハッピーエンドになるとは限らないけれど、
あくまでも優しい目で、現代の悩める人々の秘密や人間性を描いている。
監督のミランダ・ジュライは、
映像、アート、音楽、ファッション、アクセサリー、小説と
様々なジャンルの垣根にとらわれることなく活躍している。
彼女はライブ感あふれるパフォーマンスや、
ウェイン・ワン、ポール・オースターとのコラボレーションで知られる
新進の若手アーティスト。

映像を使ったアーティスト活動を行ってきた彼女が、
自ら映画制作を行うきっかけとなったのが、
2003年1月にサンダンスのスクリーン・ライターズ・ラボに参加したこと。
1ヶ月間の課程で、脚本を執筆し、7シーンの撮影を行い、
翌04年にはその脚本をサンダンスの脚本賞に応募し、
サンダンス/NHK国際映像作家賞を受賞する。
その賞金とNHKのサポートのもと「君とボクの虹色の世界」が撮影され、
(ゆえにハイビジョンで撮られた訳だ。)
2005年にサンダンス映画祭でプレミア上映される。
そして映画的視点の独自さが評価され、
「君とボクの虹色の世界」のために急遽、審査員特別賞が設けられた。

映像アーティスト、などと書くと、
得体の知れないポップアート、パンク調の映像が飛び出してくるのではないかと
想像してしまいそうですが、
映像はごく普通です。
ポップアート系の美術館が出てきて、
女性学芸員が男性作家の作品を見て褒めちぎると、
「そりゃバーガーショップで売っていた、本物のバーガーの包み紙さ」と
まぜっかえされて愕然とする場面などが出てきて、
醒めた目線でカメラを回している。
そこはかとないユーモアもあって、
電話で「ぺペロンチーノ」とかひとこと叫んで電話を切る場面は、
悲鳴を上げるほど可笑しい。
一見、しらけているように見えて、その実、
ヒューマンです。
ラスト近くでバス停から旅立っていく老人は、
アメコミを実写で撮った「ゴースト・ワールド」のソーラ・バーチがバスに乗って、
街を出て行く場面を髣髴させます。
まだ掴めないのだけれども、どこかに望みはあるのだろうな。
彼らは絶望していない。
でも一作目でこれだけ飛ばしてしまうと、二作目は難しいでしょうね。
映画はこれ一本きりで、元のアーティストに帰っていってしまうかもしれない人ですね、
ミランダ・ジュライという人は。

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