「恋の門」映画製作裏話

「恋の門」映画チラシ★映画基礎データー★
「恋の門」
2004年 日本映画
原作 羽生生純
監督脚本 松尾スズキ
出演 松田龍平

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蒼木門(あおきもん 松田龍平)は、石で漫画を描く自称「漫画芸術家」である。
当然、食えない。おまけに、ハタチを過ぎても童貞だった。
ある日の朝、初めてのバイト先へ行く途中、
道路にハート型のイイ石を見つけた門は拾おうとするなり、
出勤に急ぐOLのヒールに指をひどく踏まれてしまう。
ケガの治療をしていて初日から「ウレシー商会」に遅刻した門は、
幹部(尾美としのり)から罵倒される。
ところが、その会社で朝のOLと再会。
彼女の名前は証恋乃(あかしこいの 酒井若菜)と言った。
夜の宴会で嫌味なメガネ社員(村杉蝉之介)にからまれ、
殴りかかり、逆にボコボコにされてしまう。
帰り道、恋乃が自分のマンションで飲みなおすことを提案し、
二人は部屋で激しいキスをかわす。門、ついに童貞喪失か?

翌朝、目が覚めたら門はヘンなコスチュームを着せられていた。
恋乃はコスプレーヤーで、
剣術格闘ゲーム「ソウルキャリバー」の熱狂的なファン。
衣裳を手作りし、自らは「シャンファ」に扮し、
「ホン・ユンスン」が似合うボーイフレンドを求めて、
男性遍歴を重ねていたのだ。
恋乃は「ノイコ」名義でこれまでに漫画の同人誌を17冊自費出版し、
コミケと通販で売り,これまでに1千万円の黒字を出した、
と豪語するではないか。
同じ漫画家としてショックを受けた門は、
「ホン・ユンスン」のコスプレをしたまま遁走する。
「走って逃げてく、大人なのに」と恋乃。

「漫画」という共通の目的を持ちながらも、
「芸術」と「オタク」−真逆の感性を持った若い男女は猛烈に惹かれ合いなが
らも、
強烈に反発する。
二人に襲いかかる不幸や貧乏を経て、恋乃と門はついに“恋の門”を開く。
―というお話を「大人計画」の松尾スズキが初監督しています。

映画の掲示板に
「あほあほでエロエロで(不)純愛おバカ映画です。」という書き込みがあり
ましたが、
まったくその通りです。
映画祭でまちがっても賞をとることのない作品でしょうな。
ジャンルとしては「アイデン&ティティ」と同じく、
無名の下づみ若者のうれしはずかし恋愛映画、といった振り分けになりそうです。
ネタがバンド活動から漫画に替わって、楽屋落ちネタ満載で、
とことん笑えます。
ナニを間違ったか、この作品をヨーロッパの映画祭に出品したら、
若い人たちに馬鹿ウケだったそうです。
日本の漫画、アニメは世界を席捲しており、
コスプレーヤーもコミケもアメリカ、フランス他いろんな国にありましすし、
外国の映画祭では「ハウルの動く城」上映に宮崎アニメのコスプレーヤーが大挙
押しかけたとも聞いてます。
存外、ポップカルチャーネタ映画としていろんな国でウケるかもしれません。

原作は99年に雑誌連載がスタートし、
00年から単行本化された羽生生純の「恋の門」です。
いろいろ小ネタはあるのですが、終極いまふうに自意識過剰な門と恋乃ふたりの
惹かれあい反発しあう姿が見ものです。
その意味では、母のごとく主人公を抱きしめてしまう「アイデン&ティティ」の
ヒロインとは対照的です。
どっちが好みかというと、
そりゃ男性ならティティの方が居心地良いのでしょうが、
ドラマの登場人物としては恋乃の方が魅力的です。
原作の恋乃はそれと分かるような“女の計算高さ”があるようで、
後半、レイプされるなど自己顕示欲にダメージを受けるような
展開ともなっているようですが、
映画ではアニメ声の酒井若菜はそうとんがった印象が前に出ず、
強姦場面も無く、もっと明るい印象になっています。
自意識、自己顕示欲のテーマは突き詰めると出口が見つからなくなりがちなので、
映画のように主役三人が漫画新人賞に挑戦して明るくクライマックスというので
正解でしょう。

酒井若菜、「木更津キャッツアイ」で
マンホールに落ちたり海に投げ込まれたりの虐待されまくりのヒロイン、
モー子でブレイクしたばっかりに、
「恋の門」でも役柄的にかなり踏んだり蹴ったりされてます。
ルックスがちょっと地味なんですよね。
同世代のタレントさんたちに埋没しないように体張ってるのかもしれませんが、
こんな仕事ばかりしてると中年以降に身体がぼろほろになりそうです。笑
ススギ監督は彼女をテレビドラマ「マンハッタン・ラブストーリー」で
見初めたそうです。

門の父(大竹まこと)は地方の日本画家で、
日本芸術院賞を獲るほどの名士であった。
そんな父に反発した門は、「2年で漫画家として有名になる」と宣言して、
家出してきたのだ。
恋乃は「ホン・ユンスン」の衣装を返してもらい、
門が大切にしていた石を返すために、
門が置いていった荷物の中にあった葉書を頼りに、アパートを訪ねる。
そこは浴衣の男(忌野清志郎)、イラン人、シュミーズの女、
オカマといった不思議な人々が住むレトロなアパートで、
門の部屋は石だらけであった。
石はすべて門の作品なのですが、
「水道工事のおっさんに“東京の恐山”と言われた」と門は恋乃に言っています。

門は自分が石で描いた漫画の批評を恋乃へ求める。
分からないなりに必死に応えようとする恋乃。
その姿に門は欲情し、恋乃を抱こうとするが、
恋乃からあの夜は途中で大好きなアニメ「不可思議実験体ギバレンガー」が
始まったために、二人は結ばれなかったことを打ち明けられる。
そして、アニメソング界の人気者・安部セイキ(皆川猿時)様のファンの集いの
一泊ツアーに参加して、「あたしのことをもっと知って欲しい」と誘われる。

「一泊ツアー」というのを聞き違えて、「なに、一発ツアーっ」と目をむいて
大声を挙げる松田龍平が恥ずかしくて可笑しい…。
しかし松田龍平くん、いいですねぇ。
それこそデビューの「御法度」からしてたいした
存在感でしたが、少し前の「恋愛寫眞〈レンアイシャシン〉」
でも相手が広末だったにも関わらず、ちゃんと見られるものにしてくれたのは彼あったればこそで。
「恋の門」もコメディからはみ出し、恋愛映画、青春映画としてもボーダレスな主人公ですから、
センスの無い男の子がやると、分裂病のように見えてしまう。
ちゃんと魅力ある若者にしているのは彼の功績です。

「不可思議実験体ギバレンガー」のキャラクターデザインはスズキ監督自身が、
演出を「エヴァンゲリオン」の庵野監督がやってます。
庵野監督「茶の味」とか、最近こんなのばかり…。
この劇中アニメの制作に一千万近くつぎ込んだそうです。馬鹿ですねえ。笑
テーマソングまであって、アニソンの巨匠、影山ヒロユキが歌ってます。

門は“一発”ツアーの費用2万8千円也を捻出するために、
漫画バー<ペン>に行く。
ウインドウに魅力的な石が飾ってあり、バイト募集の貼り紙もあったからだ。
バーの本棚は漫画本でびっしり、
壁には漫画の原画が作者の言い値で展示されていた。
速攻でアパートヘ帰り、作品を持ってきた門は、
マスターの毬藻田(松尾スズキ)から
「おまえ、恋人はいるか。その女を愛しているなら、
今すぐこんな馬鹿げたものを作るのはやめて、まともな職を探せ」と厳しい批
評を受ける。
しかし、門は「俺は恋人も漫画もあきらめない」と見得を切り、
その日、二度目の逃亡をする。
<ペン>の常連でアーティストの園決理(小島聖)が、
門を自転車で追いかけてきて、
「明日から働きに来るように」とマスターからの伝言を言い、
いきなり脳が爆発するようなキスをして去っていく。
毬藻田は、かつて少年誌で売れっ子の漫画家であった。

小島聖は橋の上で自転車から飛び降り、「オホホホホッ」と高笑いしながら
門の周りをぐるんぐるん大車輪して旋回し、
松田君の顔が破けちゃいそうな激しいキスをします。
ほとんどショッカーの怪人です。
要は一目ぼれしたという描写なのですが、小島聖、
前々から怪しい女だとは思いましたが、行くところまでイッてます。
わけわかんなくて痛快です。

門がアパートヘ戻ると、「来週、有明ビッグサイトのコミケに出店します」と、
恋乃から手紙が来ていた。
門がコミケヘ行くと、
恋乃は「ノイコ」の信者である佐良岸美(江本純子)から暴言を吐かれ、泣いていた。
そこへ娘を溺愛する恋乃のパパ(平泉成)とママ(大竹しのぶ)が現れる。
「イデオン」の「コスモ」と「キッチン」に扮した二人は、
コミケ歴20年のベテラン・コスプレーヤーであった。

コスプレしたパパママとメッセの外の石段で門が対話する場面にクレームをつけた
コミケファンがいました。
コスプレで会場外へ出るのは係りが制止したろう、というのです。
かつて会場確保に主催者たちが苦労した時代の名残りで、
コスプレのまま会場周辺を徘徊するのを厳しく自粛してるのです。
会場内で岸美がくわえタバコなのもおかしいとも。
ドキュメンタリーと映画とは異なりますので、
見るほうもこれはいったん現実から離れたものだと見るべきですけど、
先の小島聖とか、現実離れしたストーリー展開なので
出てくるものすべてを鵜呑みにする人のほうが少ないとは思いますがね。
作品の性格上、原作ファン、コミケ・コスプレファン、大人計画ファンの
3方向からクレームが付きやすいのですよ。
これはスズキ監督、羽生先生ともども困ったようで、
披露上映会でほのぼのと完成を喜んでいた監督と先生らに
きついことを口に出して言うファンがいて「会場に木枯らしが吹いてしまった」
と苦笑いしています。
みなさん、なかよく「恋の門」を楽しみましょう。

何とかお金を工面した門は、
「セイキドキドキ!あわび狩りツアー」で伊香保温泉へ着く。
セイキと恋乃をはじめとするコスプレーヤーたちの
ハイ・テンションに付いていけない門は酔い潰れる。
夜中に起きると、恋乃がこたつで漫画を描いていた。
門は「花びらをさ、こうすると立体感が出る」とアドヴァイスする。
恋乃は普通の漫画も描ける門に驚く。
いい雰囲気になってベットインしたものの、
門は酔いが回って、「きて」と言う恋乃の顔にゲロを吐いてしまう。
翌朝、こたつの上には「旅に出ます」と、門の書き置きがあった。
放浪中の門は、
無銭飲食で場末の飲み屋の店主(小日向文世)に倉庫に拉致される。

この倉庫が何故かSM館で、ボンテージファッションの小日向さんが大暴れ。
あんなかっこであんなことしちゃ、NHKのドラマに出られなくなりますよ、
小日向さん。

ポケットに園の名刺を見つけ、電話をかけお金を払ってもらう。
園は代わりに門の体を要求する。
園の部屋で竜貞喪失した門は、
息子のキンゴ(高橋征也)から母親が1年ほどアムステルダムヘ行くことを知らされ、
キンゴの面倒を見るはめになる。
恋乃は門の行方を捜すために、<ペン>を訪ねる。
そこで毬藻田がギャグ漫画「まいどのプッツン」で一世を風靡した
憧れのデン・マリモであることを知る。
意外なことに、毬藻田もノイコの同人誌を持っていた。
二人はいい雰囲気になるが、
園にそっくりな妹と名乗るメジナ(小島聖)に中断される。

もともと背木という若い漫画家の卵が出てくるのですが、
それを消して中年親父を前に出している。
毬藻田は原作にも登場しますが、はるかに小さい役回りです。
スズキ監督が自分の居場所を劇中にこさえたんだと思いますね、
若菜ちゃんとキスしたかったかどうかは別として。

<ペン>からさほど遠くない路上で石の漫画を売る門とキンゴを、
恋乃は見つける。
逃げる門。
ビルの屋上まで門を追い詰めた恋乃に、
門は旅先で作った、
二人の出会いのきっかけであるハート型の石を半分にカットした
ペンダントをプレゼントする。
恋乃は「一緒に住もう」と提案する。
門の部屋で二人が結ばれそうになった刹那、
ラブコメの王道よろしく邪魔が入る。
門の実家からの電話であった。

実家へ帰ると、門の父は突然倒れ右半身不随となっていた。
それにも関わらず、左手でめちゃくちゃな画を描いている父。
感動する門。
焼き場で父の骨を拾っていた門に、
忘れていた子供時代の想い出が蘇る。
「この石は本当はうんと小さな粒子でできているんだ。
そしてその同じ粒でおまえたちもできている」と、
少年の門に優しく話す若き日の父。
門の石へのこだわりは、父から授かったものだったのだ。

二人は、恋乃のマンションでやっと結ばれた。
しかし、翌日、恋乃は衝撃的な事実を一つ残して全部告白する。
「パパの会社が危なくて、
資産運用で買っていた私のマンションを出なくてはいけない」、
「会社も、昨日、クビになった」、
「ノイコの同人誌で売れたのは、最初の1冊だけ」、
「借金を返そうと思って、
退職金をはたいて始めたネット商法の霊元の水がインチキだった」
恋乃は門のアパートヘ引越し、
半分石/半分恋乃の漫画本で埋まった部屋で暮らし始める。

門は石を片付けますが、その分、恋乃が漫画の山を持ち込んで部屋の中は
ふとんひとつに二人が雑魚寝状態。
「だって漫画を捨てたら、私が私じゃなくなっちゃう」
恋乃は涙目で訴えます。

関係ないけど私、いまビデオのストックを整理してます。
VHSどころかベータだけでも二百本以上あったんですよね。
DVD−Rにダビングするものもありますが、
結局、大半は捨ててます。
時間も手間もかけて数年ごしで集めた映画録画ですが、
整理を始めたら“卒業だな”という気になりました。
卒業できない人は、恋乃のようにコレクションの山を抱えてジプシーすること
になります。
コレクションは、こだわりだし、こだわりというのは煩悩でもある。
ベータは先日ようやく残数108本を切りました。除夜の鐘ですな。
恋乃の涙目を見て、ふとそんなことを考えました。いろいろ痛い映画なんですよ。
話を「恋の門」へ戻します。

毬藻田は、<ペン>の常連で当時の担当編集者の野呂(塚本晋也)から、
『少年チョップ』の新人賞に応募しないか、と持ちかけられた。
優勝金200万は、審査員でもある野呂と毬藻田で山分けする。
毬藻田は、金目当てでなく、
妻が去ったあとに初めて現れたミューズのために
漫画家として再起したいと参加を決意する。
あおられた門も「ちゃんと紙に描く!」とレースに加わる。
同席していたメジナが
「どっちかが入選したら、落ちたほうが絶対服従って賭けはどう?」
と邪悪な提案をする。
毬藻田は「俺が勝ったら恋乃さんをもらう」と言った。
門の部屋で報告を聞いた恋乃は「人身売買」だと怒る。
そして、「あたしも描く。あたしが勝てば、問題ない。
そしたら、門くんは一生コスプレ!」と宣言する。
締め切りは1週間後。
門、恋乃、毬藻田の、恋と未来を賭けたマンガバトルが始まった。

三人が三様の漫画創作のシーンがこのあと続くのですが、
思ったより“絵”になってるので感心しました。
映像的にとても持たないだろうと考えていたら、
恋乃はパソコンでラブコメを、門はペンでガロ系を、
毬藻田は墨でギャグ系を。
がしがし描いているうちに三人そろって「気持ちいいーっ」と叫びだす。
「ピンポン」でも窪塚洋介が中村獅童と打ち合う最後の試合中に忘我の境地を
さまようというのが出てきましたが、あれを漫画でやってしまう。
コンクールの勝敗というのは、割とはっきり出るのですが、
そんなことはそのときの三人には関係なくなってしまうのですね。
漫画を描くことそのものが気持ちいい、と。
他人から見れば馬鹿みたいでしょうが、ハマルっていうのは、
結局、そういうことなんだろうと思います。

 最後の祝賀会の2次会のコスプレパーティーで、
恋乃のエメラルダスを含め女の子たちがそれなりに可愛かったのに対し、
男どもがいかにも汚らしげだったのが不愉快である、
という意味の男性コスプレーヤーの指摘には少し同情してます。
「そこのデブっ」と怒鳴りつけられてぴょん吉のTシャツ着た映画関係者が
ばんっばんっばんっばんって顔を上げる。

は? 恋乃の最後の隠しごとってなんだ? そりゃスクリーンで確かめて下さい。


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