「ラヴェンダーの咲く庭で」DVD脚本レビュー

「ラヴェンダーの咲く庭で」映画チラシ★映画基礎データー★
「ラヴェンダーの咲く庭で」
2004年 イギリス映画
原作 ウィリアム・J・ロック
監督脚本 チャールズ・ダンス
出演 ジュディ・デンチ マギー・スミス

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1936年。イギリス、コーンウォール。
ナチスドイツと大英帝国が開戦直前だった不穏な時代にもかかわらず、
美しい景観や柔らかな日差しに恵まれた海辺の小さなこの町は、
外界と遮断されているかのように静かな時を刻んでいた。
アーシュラ(ジュディ・デンチ)とジャネット(マギー・スミス)、
初老にさしかかろうとする2人の姉妹も、
両親が残してくれた屋敷と財産に恵まれて、町の人々と同じようにつつましく、
庭の花々の手入れや読書を楽しみながら穏やかに日々を過ごしていた。

ある嵐の翌日、アーシュラは屋敷の眼下の浜辺に、
正装した若い男性がずぶぬれ姿で倒れているのを発見する。
彼女は急いでジャネットと一緒に屋敷へ連れ帰り、
ミード医師(デヴィッド・ワーナー)を呼び自宅に連れ帰って看病する。
衰弱し足に骨折を負っていた彼はしばらくして意識を取り戻すが、
英語が理解できないらしい。
ジャネットが古いドイツ語の辞書を取り出してどうにか聞き取ったところ、
どうやら彼はポーランド人で、渡米途中に船が難破しこの海辺へ流れ着いたらしいのだが、
近隣の海で外国航路の客船が沈んだという報道はない。

数週間が経ち、手振り身振りに加え片言ながら会話ができるようになると、
アンドレアが才能溢れるヴァイオリニストであることが分かり、
かつて静寂に包まれていた家の中は楽しい空気と
美しいヴァイオリンの音色で満たされていく。

ヴァイオリンをピアノに置き換えると、つい先日、世間を騒がせたヨーロッパの
ピアノマン騒動そのものであります。
もちろん、映画はピアノマンが発見されるよりずっと前に公開され、
事件を基に作られたものではありませんが、
劇場にはあの事件が良い宣伝になって、女性客がわんさと押しかけていました。
騒動そのものは狂言だったわけで、まあ、今となってはお笑い種ですが。
ですが、この作品の良さは損なわれるものではありません。

最近、大人の女性が楽しめる映画ないとお嘆きの淑女のみなさま、
英国王室御用達の当作品をとくと御覧あれ。
実際、ロイヤルプレミア試写会ではエリザベス女王も観賞され、大層お気に召されたとのことです。
いわば大人の御伽噺なのですが、この作品といい、
「ヒトラー 最後の12日間」といい、
ヨーロッパ映画の奥深さに感じ入るしだいです。
やはり、文化や歴史は制作費を積んだところで容易に手に入るものではないなぁという
歴然たる事実をため息まじりに確認したということです。
(ルーカス作品には精神文化に対する敬意があり、
スピルバーグ作品には異文明に対する畏怖の念があり、
それをアメリカという若い国の若々しいヒューマニズムに立脚して描いているのは、
改めて言うまでも無いことです。その若さもまた、金では買えぬ貴重な“輝き”です。)

そして、家の中に才能豊かな若い男性が存在するという事実が、
ふたりの姉妹の生活に、とりわけアーシュラに恋ごころを抱かせてしまうのだった。

短い夏の間に、アンドレアは音楽の才能と
その人柄で町の暮らしにも馴染んでいったが、一方で少しずつ不協和音が鳴り始めていた。
それは、オルガという若い女流画家(ナターシャ・マケルホーン)の存在だった。
世界的に著名なヴァイオリニストを兄に持つ彼女は、
ぜひ兄へ彼の才能を知らせたいとアーシュラとジャネットに手紙をしたためる。
が、若く美しいオルガへの嫉妬とアンドレアを失うかもしれないという恐れから、
2人はとっさにこの手紙を隠してしまうのだった。

ドイツ語という共通言語を持つオルガとアンドレアは自然と話をするようになり、
手紙の一件はアンドレアの知るところとなってしまう。
姉妹に対して不信感をぶつけるアンドレア。
折悪く、美しいオルガに袖にされたミード医師が彼女を独占しているアンドレアを
煙たがり、外国語を話すオルガとアンドレアに対して
警察署長にスパイ嫌疑を吹き込むのだった。

別れは突然訪れた。
オルガの兄、ボリス・ダニロフがロンドンに滞在すると電報が届いたのだ。
この偉大なヴァイオリニストの滞在は1日だけとあり、
オルガは今すぐ発たなければ間に合わないとアンドレアを説得する。
彼はアーシュラ達に伝言すら残せずに旅立つことに後ろ髪を引かれながらも、
夢への切符を手に列車へ乗るのだった。
姉妹は村人からオルガとアンドレアがロンドン行きの列車に乗ったと聞かされ、
埋めようのない喪失感を味わう。
そしてロンドンに渡ったアンドレアは…。

“騎士”の称号は“ナイト”ですが、これは男性に対する称号で、
“女騎士”となると
“デイム(DAME)”というのだそうですね。
この作品はOBE、DBEなど大英帝国の勲位を受勲しているイギリスが誇る2人の名女優、
ジュディ・デンチとマギー・スミスが姉妹に扮して主演するのがウリです。
ジュディ・デンチは「007」でボンドの上司“M”役、マギー・スミスといえば
「ハリー・ポッター」シリーズで、マクゴナガル教授役でおなじみの女優です。
ふたりの「ムッソリーニとお茶を」「眺めのいい部屋」に続く共演作品になります。

若きヴァイオリニスト、青年アンドレアには「グッバイ、レーニン!」の
ドイツの新鋭俳優、ダニエル・ブリュール、
美貌の女流画家オルガに「トゥルーマン・ショー」のナターシャ・マケルホーン。
えーとこの人は「ソラリス」で主人公を惑わせるソラリスの女も演じましたね。

英国領 西インド諸島生まれの小説家で英国人俳優レズリー・ミッチェルの叔父、
ウィリアム・J・ロック(1863- 1930)の『Faraway Stories』という短編小説集の一編、
「Ladies in Lavender」が原作です。
いまのところ、日本での出版の予定は無いようですが…。
ロックの作品は、
「シュヴァリエの放浪児」(36) 「借りた人生」(32) 「二人の道化師」(25) 「女は誓いぬ」(21)
など20本を超える作品が映画化されているそうです。
さすがに古くて見たことある奴はひとつもありませんが。

音楽は、作曲家・指揮者として活躍し、
エリザベス女王やチャールズ皇太子の御前演奏も担当する世界的な音楽家
ナイジェル・ヘス。
ヴァイオリンの吹き替えは日本でも人気の“イケメン”ヴァイオリニスト、
ジョシュア・ベルが担当してます。
チャールズ・ダンス初監督作品ですが、
『ゴスフォード・パーク (2001) 』
『スイミング・プール (2003)』等、数十作に出演のベテラン俳優です。

映画の原題は「 Ladies in Lavender」 直訳すると「淡紫色の服を着た婦人たち」
のことでずばり二人のヒロインを指しているのですが、邦題では
ラヴェンダーのイメージだけとって「ラヴェンダーの咲く庭で」としてます。
原作小説では姉妹の年齢設定は 48 歳と45 歳なのですが、
映画ではジュディ・デンチもマギー・スミスも製作時の実年齢は
1934 年 12 月生まれの 70歳です。ですから原作より二回りほど上になっているのです。
脚本ははじめからジュディとマギーを前提に書かれているようですが、
原作どおりの世代の女優さんを配役するとなると、若い男を挟んで
もっと生々しい感じになったんじゃないかな。
映画の掲示板には、もっと若い方が良いとする書き込みも結構ありました。
分からなくは無いですが、性的な部分の無い良い意味で
枯れた感じが上品な味わいとなっている作品ですので、
もっと違う世界になっていたことでしょうね。

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