「ルパン」DVD脚本レビュー
★映画基礎データー★「ルパン」 2004年 フランス/イタリア/スペイン/イギリス映画 監督・脚本 ジャン=ポール・サロメ 原作 モーリス・ルブラン 出演 ロマン・デュリス |
mixi(ミクシー)「独身社会人映画ファンコミュニティ」に入ろう!
1884年。巧妙な盗人テオフラスト・ルパンを父に、
ドルー・スービーズ公爵夫人の妹アンリエット・ダンドレジーを母に持つ
アルセーヌ・ルパンは、ドルー・スービーズ公爵の城館で、
謎めいた絵画やフランス王家から伝わる見事な財宝に囲まれて育った。
まだ少年であったルパンは父親の指図で、
かつてマリー・アントワネットが所有しており今は公爵夫人の持ち物となっている、
宝石のちりばめられた豪奢なネックレスを
盗み出し、手渡す。
父親は相棒と共に夜の闇へと遁走するが、朝になって城館からほど遠くない場所で、
なぐり殺されたと思われる身元不明の死体が見つかる。父に違いない。
残された証拠一灰色の馬と指輪の印章がアルセーヌと母親を窮地に追い詰め、
喪も明けぬまま二人は館を追い出されてしまう。
時は過ぎ、二十歳になったアルセーヌ
(ロマン・デュリス「スパニッシュ・アパートメント」)は、
ラウール・ダンドレジーの名を名乗り、国の税関吏の姿で登場する。
乗船する船はまもなくル・アーブル港に着こうとしていた。
到着前に催された上流階級のニュー・イヤーズ・イブの宴は、
彼にとって盗みの才を披露する好機となる。
金持ちのお偉方からご自慢の宝飾品を盗み出すという計画。
しかし、とんだ銃撃戦を招いてしまう。
以後、母の死の床へと舞い戻ったアルセーヌだが、
ついに母が息をひきとるまで父親の殺害に関する母の秘密を聞くことはなかった。
幼なじみの従妹であり相思相愛の仲になったクラリス
(エヴァ・グリーン「キングダム・オブ・ヘブン」)
のおかげで法という強力な腕の中で守られる。
クラリスのロ添えで青年アルセーヌは、泥棒家業を離れ、公爵に武術を教える仕事につく。
ある日、アルセーヌは城館で謎解きの鍵となりそうな一通の古い文書を見つける。
そして聞き捨てならない会話を耳にし、名士たちの秘密の会合を知る。
それは王家の財宝をねらい、
フランス王権を主張するオルレアン公爵を王座につけようともくらむ陰謀だった。
一方、アルセーヌは不思議な儀式を目撃する。
それは一つの十字架がこの地方のいくつかの僧院に隠されている他の十字架のありかを示しており、
それぞれがパズルのピースとなっているのだった。
謎解きレースの火蓋が切って落とされた。
しかし敵は一人ではない。
狡狙で謎の多い人物、ボーマニャンもいる。
彼はかのカリオストロ伯爵夫人、
ジョセフィーヌ・バルサモともかつて内通していたというつわものである。
その女性、カリオストロ伯爵夫人
(クリスティン・スコット・卜一マス「イングリッシュ・ペイシェント」)のが今、
囚われの身となって一同の前に連れてこられた。
悩ましい美貌の伯爵夫人も、この策謀家たちの手に落ち、死刑の判決を受けてしまう。
アルセーヌは一計を案じて夫人を救出。
二人はたちまち恋におちる。
カリオストロ伯爵夫人への恋慕と行動への熱情に駆られて、アルセーヌはクラリスから離れ、
宝探しに乗り出す。世紀末を迎え、新世紀を目前にしたパリヘ。
十字架の一つを手に入れ、
強敵ボーマニャン(パスカル・グレゴリー「ジャンヌ・ダルク」)との対決で
かろうじて死をまぬがれ夫人のもとへと帰り着いたアルセーヌだったが、
次第にこの事件の裏で暗躍する夫人の正体が明らかになってくるのだった。
何でもアルセーヌ・ルパン生誕百年記念映画だそうです。
映画『 ルパン』の原題はそのまんま「ARSENE LUPIN」。
モーリス・ルブラン原作の 1924 年の小説
「 La comtesse de Cagliostro / The Countess of Cagliostro 」
(邦題:「カリオストロ伯爵夫人」(創元推理文庫 / [訳]井上勇 及び 偕成社 / [訳]竹西英夫)
をベースに、「813」「奇巌城」といった有名作品のハイライトがちりばめられています。
でも何故ゆえ、「カリオストロ伯爵夫人」なんでせうか?
映画の企画趣旨としては、怪盗紳士として売り出す前のルパンを描きたかったという話。
つまりエンドマークが出て、
初めてそこに私たちの知る“大怪盗アルセーヌ・ルパン”が現れる、という趣向です。
ですから、へなちょこ若造のルパンをもいっちょまえの悪党に育て上げちゃう
悪女カリオストロ伯爵夫人の登場になったのでしょう。
ですから成人直後の客船のカジノで貴婦人たちの胸元から宝石をくすねる初登場シーンが、
にやけてにやけて馬鹿丸出しです。
ここで登場する貴金属類は、
カルティエのアーカイブジュエリー「カルティエコレクション」から映画のために、
王冠からブローチ、ソトワール、ライター、時計にいたるまで全て本物が提供されているのだそうですが、
劇中での扱いがあまりにぞんざいの為、本物なのにガラス細工の小道具にしか見えません。
これじゃもったいないですねぇ。ため息。
『 ルパン』の制作費は 25,000,000 ユーロ(1ユーロ=¥ 137 換算で約 34億2千5百万円)とも
いわれますが、そのお金はどこへ消えてしまったのでしょうか?
映画の後半、舞台はノルマンディーからパリへと移ります。
カフェ・ド・ラペは再びオペラ鑑賞の後に上流社会の人々が集まった頃の姿で現れ、
カルティエのブティックは、1世紀前の姿で登場します。
ルパンが乗る車やオートバイ、CGで描かれるセーヌ河にかかるポンヌフ建設風景など、
1900年代パリをスクリーンに蘇らせる為に相当額がつぎ込まれたようです。
フランス公開ののち日本以外にもイタリア、アメリカ、韓国でも配給されたようですが、
でっかいヒットになったという話はついぞ聞きません。
映画の掲示板でも「おしゃれで面白い」とするもの、
「グロくて、イメージぶっ壊された」とあるものと極端に評価が割れています。
ルパンのイメージは人により千差万別で、
「ルパン三世」のようなお気楽コメディのようなものから、
古式ゆかしいゴシックロマンまで幅がありすぎてとらまえどころが無いのが一番大きな理由だと思いますね。
各自の心の中にある漠然たるルパンのイメージに近いか遠いかで作品が評価されてしまう。
でもまぁ、監督はそこいら辺のリスクを覚悟の上で映画化に取り組んでいるはず。
私の見たところ、冒険活劇から謎解き、恋愛、世紀末退廃、と描きたいものが
たくさんありすぎてごたごたした印象です。
スービーズ男爵の一人娘クラリスに純愛を捧げる青年アルセーヌ。その一方で
男爵一味と対立するカリオストロ伯爵夫人の危機を救ったことから、
夫人の抗いがたい魅力に負け、恋におちる。
夫人への恋慕から、莫大な宝石のありかをめぐる抗争に巻き込まれた。
天性の美貌と才知に長けた悪の華、伯爵夫人とは何者か?
中世お修道院の共有財産ともいうべき財宝の行方は?鍵を握る3つの十字架を手に入れるべく、
ルーヴル美術館に忍び込み、
仮面舞踏会でクラリスに曰くつきの宝石「王妃の首飾り」をつけさせ、物議をかもす。
抗争の決着の場、カフェ・ド・ラペに夫人が仕掛けた爆発により、
夫人はルパンも、十字架も略奪する。
はたして、若き日のアルセーヌ・ルパンは財宝の謎をときあかすことができるのか、
密かにルパンの子を宿すクラリスヘの思慕はいかに?
「王妃の首飾り」は、マリー・アントワネットゆかりの品で、
チョーカー、ソトワール、ラヴァリエールが見事に組み合わされた歴史的ジュエリーのことです。
映画用にカルティエはデッサン画を提供し、
それをもとにかなりの手間隙をかけて首飾りのレプリカが製作されているようです。
この首飾りは「ベルサイユのバラ」でも紹介されたルイ王朝最大のスキャンダル、
「王妃の首飾り事件」に出てくる例の首飾りですね。
1785年7月12日、マリー・アントワネットに王室御用達宝石商から手紙が届きます。
文面は160万リーブルの首飾りを王妃が買い上げたことに感謝する内容。
身に覚えのないアントワネットはまったく理解できず、手紙を焼き捨ててしまう。
名門ヴァロア家の血筋でありながら9歳にして孤児となり世の辛酸をなめた
ジャンヌ・ド・ラ・モット=ヴァロアは、
この160万リーブル(時価192億円)、647のダイヤモンドが散りばめられた、
2,800カラットの首飾りを王妃が買ったとみせかけて、その首飾りを頂いてしまおう、
という計画を実行します。
そもそも、この首飾りは、
ルイ15世が愛人デュ・バリー夫人のために作らせたものだったが、
王が亡くなり、愛人は宮廷から追放、
買い手を失った宝石商人達はマリー・アントワネットに売込むが、
アントワネットは故夫人とは犬猿の仲であった上に、
新鋭軍艦が何隻も買えるほど高額の首飾りの引取りをあっさり拒否。
破産してしまうと考えた宝石商人達は、王妃に取り入ろうと躍起になっていた。
ジャンヌは、それぞれの思惑を巧みに操るが・・・
1786年、5月。高等法院にて「首飾り事件」の判決が下り、ジャンヌは有罪となり、投獄される。
そして1793年、革命裁判にかけられたマリー・アントワネットも即日ギロチンの露と消え、
結局このネックレスは、誰の首を飾ることは無く、人知れず散逸したというエピソードです。
この実話をもとに、映画「マリー・アントワネットの首飾り」
(2002年、ヒラリー・スワンク主演)として映画にもなっています。
公式サイトの解説によるとルパンは
“政治的陰謀によって引き裂かれた悲劇的な幼年時代を乗り越え、怪盗紳士として名をあげ、
みずからの運命の主人公となっていく。”のだそうで、
過去の呪縛をふりほどき、数々の試練を果敢に経験する中で、
自分の持てる幾多の才能をどう活かすか探っていく。
といった経過が青年ルパンとしてのドラマということになります。
当人にさして自覚は無いようですが、これも“自分探しもの”の変形といっていいんでしょう。
ボーマニャンとのあれこれはドラマが暗くなるばっかりなんですけど、伯爵夫人同様、
ルパンのトラウマとして位置づけられているんでしょうね。
アウトプットとして、「殺しはやらない」という彼の矜持に繋がっていく。
クラリスの運命も含めてよっぽど嫌な目に会っていますから。
登場場面からして偽役人ですが、変装の名人振りは
割と理由なしに出てきます。
顔から煙をはいて変装がばれそうになるくだりはへんてこです。
「ルーブルの怪人」で一躍人気監督の仲間入りを果たしたジャン・ポール・サロメが
監督しています。
作品イメージとして「マイノリティ・リポート」をあげています。
時代劇にあまんじたくないのはわかりますが、
どこがどうして「マイノリティ・リポート」なのかは意味不明です。
40歳のモーリス・ルブランがアルセーヌ・ルパンを"創造"したのは1905年。
第一次世界大戦を挟んだヨーロッパの古き良き時代<ベル・エポック>の真っ只中にあって、
気取ったダンディズムと富豪をからかうアナキズムがうけていました。
がルパン当人は自動車・飛行機・映画といった近代機器を好んで使い、
富豪が嫌いな癖して貴族趣味という自己矛盾の塊のような奴です。
映画の中でも矛盾は矛盾としてそのまま提示されています。
近代ヨーロッパが現代へと転換していく激動の時代を、怪盗ルパンは駆け抜けているのですが、
冒頭の蒸気船から、中段の機関車、馬車も走れば自動車も登場と
激変する世相の中で彼の時代があったことを映像で見せています。
しまいの方のオートバイにのるルパンはご愛嬌ですけど、
前半と後半がばらばらではないか、という意見に対しては、
変わり行く時代の中で、自己をどのように形作っていくのか、
それが見せたいのですから、違っていて当然なのですよ、と返事をしておきます。
でもルパンの名が花の名前からとられたものだというのは、本作ではじめて知りました。
かぐわしき花の大泥棒ですね。笑
トップページ(映画製作裏話、映画と原作比較レビュー)戻る。