「少年メリケンサック」
■作品基礎データ 「少年メリケンサック」 2008年 日本映画 原作・監督・脚本:宮藤官九郎 出演:宮崎あおい |
mixi(ミクシー)「独身社会人映画ファンコミュニティ」に入ろう!
レコード会社OL・かんな(宮埼あおい)が、
動画サイトで見つけた<少年メリケンサック>のライブ映像。
そこには凶悪な絶叫パフォーマンスのイケメンが!!
契約を取るため会いに向うと、そこにはなぜか酔い潰れた50歳すぎのオッサンが!!
「これ誰っ?!」・・・かんなが見つけた映像はなんと25年前の物だったのだ・・・。
かんなの驚愕をよそに、<少年メリケンサック>の人気はネット上で大爆発!
サイトはパンク寸前!
全国のライブツアーが次々と決まっていく・・・、このまま出たら暴動必至。
果たして、かんなと「少年メリケンサック」の命運は!????
全国ライブツアーは成功するのか???
全国民的な知名度を誇るNHK大河ドラマ『篤姫』主演の宮埼あおいが
宮藤官九郎と初タッグ!
佐藤浩市・木村祐一・田口トモロヲ・三宅弘城・勝地涼・ユースケ・サンタマリアと
個性がぶつかりあう豪華キャスト陣が宮藤ワールドで暴れまくる!
「少年メリケンサック」見ました。
映画の掲示板等では賛否両論で、
「あおいちゅゃんかわゆい」と喜ぶ奴もいれば、
「クドカンは終わった」とブーたれる奴もいる。
私は、面白かったけどな。
比較されるのは「デトロイト・メタル・シティ」あたりだと思うけど、
持ち味は随分違います。
「デトロイト」の原作者も認めている通り、
あれはバンドを風俗として捉えたもの。
クドカンさんのほうは、自分の原点としてのバンドを描いたもの。
だからコメディであっても、根の部分はずっと深くて暗い。
クラウザー二世があっというまにメジャーになって、
海外のスーパースターと対決するのに対して、
メリケンサックの面々は、ラストにいたるもドサ周り。
つまりバンドマンたちの業を描いた映画なのです。
あおいちゃんは、そんな彼らのマネージャーとして、
業の渦に巻き込まれちゃう。
彼女と彼らの成長のドラマのように見えて、
ぐるりと大回りして、元のところに戻っておしまい。
それを面白いと感じるか、
元の木阿弥と感じてしまうかで、作品に対する評価は正反対になります。
私は、面白かったけどな。
大抵のドラマは、成長脅迫というか、
立派にならなきゃなんないノルマを主人公が背負って話が進んでいるようなところが、
あるでしょう?
クドカンさんのドラマというのは、
テレビの「流星の絆」なんかも含めて、
全力で前向きに後ろ向いて走る、
どこへも行かない、どこにも行けない、
最後に脱力して終わるおかしさ加減を見せているのですね。
だからこの話のあおいちゃんとおっさん達が
エンドマークの先、
どこにたどりつけるのかという疑問に対しては
どこにもたどり着けないというのが正解なんだろうと思いますね。
こんな風に書いてしまうと、見たって仕方ない映画という風に
読めてしまうでしょうけど、
コメディでは、そうしたオチというのは、結構多いと思いますけどね。
関係者のインタビューからメイキングにまつわる部分を採録します。
まずは田口トモロヲ、三宅弘城、ピエール瀧 インタビューから
――「少年メリケンサック」のように、
40~50代の中年男性がパンクバンドを結成することについてどう思いますか?
田口「バンドの醍醐味って、たとえ間が途切れてもいろんなことが合致したときに
再集結してやれることだと思うんです。
それは最初に患った“青春”という病気を再発させたようなもので、
この病は治らないじゃないですか。
パンクやロックってそういうことだと思うんです。
ちなみに、ピエールさんは『電気グルーヴ』をずっと継続してやってますよね。
その前身で『人生』というバンドもやってたから、本当にバンド三昧だったよね」
ピエール「そうですね。ずっとテキトーなことばかりやってました(笑)。
バンドを続けながら制作会社でアルバイトをやってたこともありました」
――ジミー役の田口さんとヤング役の三宅さんは、
バンドメンバーとして長期間一緒に撮影してお互いにどんな印象を持ちましたか?
田口「彼のことは17~18年前から知ってるんですが、
相変わらずバカだな~と羨ましくなりました(笑)。
たとえば、木村(祐一)さんや(佐藤)浩市さんと楽屋にいるとき、
彼らは大人としての距離感を保っていたんですが、
三宅君はいきなり『木村さん、最近のお笑いはどうですか?』とか、
『浩市さん、競馬のCMに出てるからやっぱり馬肉は食わないんですか?』とか
聞いたりして、平気で土足で踏み込んでくる。
そうやって年上のおじさんたちの心を踏み荒らす感じが逆に良くて、
彼が接着剤になって皆が仲良くなれたんだと思います。
おバカなムードメーカーでしたね」
三宅「良い感じでまとめてくれたと思ったら“バカ”が入るんですね(笑)」
田口「KYの元祖みたいな人ですからね」
三宅「トモロヲさんとは昔から面識はありましたが、
一緒にお仕事させていただくのは初めてだったんです。
昔は会う度にイジメられていた気がするんですが(笑)、
久しぶりに会ったら優しくなったなという印象を受けました。
でもやっぱり慣れてくると、ちょこちょこ意地悪されるんですよ。
そういう昔のトモロヲさんが出てくると、なんだか懐かしくなりました」
――25年前の「少年メリケンサック」結成の仕掛け人であり、
現在は事務所社長の金子役を演じたピエールさんですが、大げさなくらい悪人面でしたね。
ピエール「昔はああいう人が結構いたんですよ。
80年代当時、僕とトモロヲさんはナゴムレコードというインディーズレーベルで
それぞれバンドを組んでたんですけど、
あの頃は怪しい事務所のオッサンがたくさんいましたから。
監督からも『とにかく胡散臭い感じで』と言われました」
――主演の宮崎さんは宮藤監督から「ネズミのような顔をして」など
かなり変わった演出をつけられたそうですが、
監督の演出で印象に残ってることはありますか?
三宅「僕は監督から現場でいきなり『パンツ脱いで』と言われたことですね(笑)」
田口「うーん。とにかく監督が一番楽しんでいたっていうのはありますね。
だから監督が笑っていれば『今のテイクは良かったんだな』と思ったし、
逆に笑っていないときは『イマイチだったんだな』と解釈してこちらも演じていました」
――ちなみに監督が一番ウケていたシーンは?
三宅「ジミーさんが車椅子で登場するシーンはかなり笑ってましたよね」
田口「途中で車椅子が段差に引っかかって、
無理矢理ヨイショーッと持ち上げると僕の首がグワンとグラつく、
というシーンをものすごく楽しそうに演出してましたね(笑)」
――ヒロインかんなは「パンクなんて大嫌い」と言っていますが、
今の若い女の子にパンクの魅力を伝えるとしたら?
ピエール「僕はむしろ今の若い子たちのファッション自体がかなりパンクだと
思いますけどね」
田口「パンクは誰にでもある心の底の衝動だから、
要は心に火が点くか点かないかだと思うので、
この映画をきっかけに観客の心にも火が点けば嬉しいです。
さらに、これを機に女子はパンクスと付き合わないとカッコ悪い、
みたいなことになればいいですよね」
ピエール「パンクスと付き合ってる女の子ってそそりますよね(笑)」
田口「でも初期はひどいもんだったよ。ひどい歴史だよ(笑)」
ピエール「確かにひどかった!
おかしなラバーソールの靴を履いたフナみたいな顔した女の子たちが
たくさんいましたからね(笑)」
田口「シジミみたいな女の子ばかりだったよね(笑)。
そういう歴史があって、だんだんクオリティが上がってきたんですよ」
三宅「AVの歴史と一緒ですね」
一同「(爆笑)」
次は宮崎あおい、勝地涼のインタビューから
Q:本作はパンクがモチーフとなっていますが、もともとなじみはありましたか?
宮崎:
聴いたことがある程度だったので、映画を通してこれがパンクなんだって思いました。
その後、パンクを聴くようになったのかと聞かれたら、聴いてはいないですね(笑)。
少年メリケンサックのメンバーがパンクをやっているのはわかるんですけれど、ど
の音楽がパンクなのかはいまだにわかっていないんです。
勝地:
パンクとロックの違いがよくわかっていなかったですね。
僕らが普段あまり触れていない音楽でした。パンクとロックは境目が難しいんですよね。
両方とも激しいイメージなんで(笑)。
Q:宮藤さんはほかの監督たちと比べ、どういった魅力的があるのでしょうか?
宮崎:
一緒に仕事をしたのは今回初めてでしたけれど、
あれほど現場を楽しんでいる方も珍しいと思いました。
もちろんほかの監督さんも楽しんでいると思いますが、隠すことなくゲラゲラ笑うし、
監督が楽しいと周りの人もリラックスできますよね。
あの空気の良さは、宮藤さんが作り上げたものだと思います。
自由な世界が心地良かったです。
勝地:
宮藤さんは俳優もやられているので、演出も実際に自分で演じてみせてくれるんです。
それがとてもわかりやすく、テストの段階から映画の世界観を作ってくださるので
助かりました。
表情までキャラクターに成り切ってくれるので、一緒の世界にいてくれるような気がして、
俳優としては安心できましたね。
Q:恋人同士を演じられた感想は?
宮崎:
勝地君とは5回目の共演になるので、
恋人役を何の気兼ねもなしに演じることができました。
遠慮なくできるし(笑)、相談もほとんどしなかったんです。
勝手に自分たちで好きなように演じて、勝地君の演技にわたしが応えて、
わたしも彼の演技に応える感じで、会話よりも演技でキャッチボールをしていた感じです。
勝地:
初共演の女優さんとは、今回の『少年メリケンサック』のようなラブラブなカップル役は
難しいと思います。
友だち同士の役ならともかく、ベースでお互いのことを知っていないと
今回のバカップル役は難しかったでしょうね。
Q:『少年メリケンサック』を通じて、次の仕事で生かせそうな発見はありましたか?
宮崎:
すべての仕事が次の仕事につながるような新しい発見があると思いますが、
特に今回は、わたしがこれほど弾けた人物を演じ切ることができたのも
宮藤さんのパワーのおかげだと思います(笑)。
そういう部分がわたしの中にもあるんだって気付かせてくれたので、
すごく大きな財産になったと思います。
勝地:
脚本で読んでいたときの感情より、現場でもっと生々しくなっていったんです。
宮藤さんの演出でどんどん変わって、どんどん具体化していく過程を経験して、
もっと自分も思い切ってやっていいんだって感じました。
歌のシーンでも、ヘタでも一生懸命やるから面白いんだと。
改めてそういうことに気付かされましたね。
宮藤官九郎監督と宮崎あおいの福岡市天神のイムズでのインタビューから
―宮崎さんと宮藤監督は“初タッグ”。オファーの理由は。
宮藤 この映画は「真夜中の弥次さん喜多さん」に次ぐ2本目の監督作品。
自分の好きな世界を、わりとそのままストレートに描いた。
パンクという僕の一番好きなテーマで映画をつくる上で、
なるべく、かんなというヒロインはパンクが何か分からない、
パンクというイメージから遠い女性がいいと思った。
なおかつ、キャラクター的にいろんな部分を持っている。
破たんしたりとか、彼氏といる時はものすごくでれでれしてほしいとか、
オジサンたちには叱り飛ばしてほしいなと。
そういう幅が求められる役だったので、
これはあおいちゃんがやってくれたらいいなと思いました。控えめにオファーしました。
宮崎 私はずっと宮藤さんの作品を見ており、すごいファンです。
今回、お話をいただいたことに最初は驚き、信じられない思いでしたが、
絶対に出たいと思い、すぐに返事しました。
―宮崎さんは、これまでのイメージを壊すような、はじけ方をしていたように見えたが。
宮崎 役作りとか、普段からあまりしないほうですし、今回もしませんでした。
台本を頭に入れて現場に行って、後は現場の中で生まれることが大切だと思っています。
事前に監督とお会いしたが、その時もあまり話をせず、
「まあ、現場に入ってからで」という感じでした。
そして、現場に入ってから、少しずつ監督からこうしてほしいという要望があり、
それに100%返せるようにと思ってやりました。
―宮崎さんの共演者は、佐藤浩市さんや田口トモロヲさんら、4、50代の“オジサン”
たち。また、音楽関係者が表に裏に参加していたが、現場の雰囲気は。
宮藤 和気あいあいとやれました。バンドの方々はああ見えて、結構、
大人の方々で良識ある対応で、すごく気を使ってもらった。監督としてたてていただいた。
宮崎 みなさん、すごく優しかった。私はすごく年齢も離れていて、なんか、みんな、
お父さんみたいな感じでした。
お芝居が始まれば、私がお母さん的で、普段は優しいお父さんが4人いる感じでした。
―すごいと感じたのは、そういうオジサン4人に負けないパワフルな演技だった。
宮崎 みなさん大先輩ですし、学ぶところ多かったですけど、
同じ作品を作っている仲間という意識でした。
みなさん、その場、その場での感情をすごく大事にされていた方だったので、
テストを重ねるごとにちょっとずつお芝居が変わったりとか、
相手のお芝居が変われば私のお芝居が変わるという、生の感じがとても楽しかったです。
―音楽担当をザゼンボーイズの向井秀徳さんが務めたり、銀杏ボーイズが出演したりとか、
そういう人選にも宮藤監督のこだわりが感じられる。
宮藤 向井さんは佐賀の方ですよね。向井さんとは前作の「弥次喜多」から一緒なんです。
基本的には前作とは異なる新しいスタッフで臨みました。
出演者も基本的にはかぶってなく、「初めまして」から始まりました。
だけど、みなさん、すごく男らしいというか、
監督として僕が何をしたいのか熱心に聞いてくれた。
いろんなことを聞いてくれた。僕はそれがうれしかった。
僕より若いスタッフが、パンクについてよく知らなかったのですが、
それをストレートにぶつけてきた。「これはパンクですか」「パンクだと思うよ」とか、
そういうところから始めたので、すごくやりやすかった。
スタッフと話し合いながら、イメージを固めていった。
音楽のうち「メリケンサック」に関しては、銀杏ボーイズに作ってもらい、
それ以外は全て向井さんに作ってもらった。
スタジオで一緒に絵を見ながら、楽器をあてながら、
こういう感じでいこうとか言いながら作った。
一緒に話し合いながら、ものを作れるのはいいものだと思いました。
―この映画の魅力、宮藤監督の素敵なところは。
宮崎 こんなに面白い日本映画はなかなかないと思います。
自分が出ていなくて、お客さんとして観に行ったときに、
自分が出ていなかったことに嫉妬してしまうぐらい、面白いと思いますし、
そんな作品に自分がかかわれることが、すごくうれしかった。
監督の魅力ですが、居心地がいいんです。
一緒に地方をまわって、そんなに会話しないんですが、一緒にいて楽な気分になれました。
それはオジサンたちも一緒で、居心地よく、自然とみんなが一緒にいれる感じでした。
あと、監督は面白いですよね。
行動とかも。しゃべっているとこ、表情もなんか飽きないし。
私は監督のことをずっと観察していました。
言葉のチョイスもそうですし、脚本もそうですし。
台詞の一つ一つ、並び方全てが、私のツボでした。
今までもファンだったけど、一緒にお仕事させてもらい、
監督としてすごく的確な指示をなさるし、もっともっと好きになりました。
―あらためて、パンクとは何か。
宮藤 この内容で、この映画を製作し、こんな台本で映画をやっていいと言った東映が
一番パンクだと思う。東映以外に考えられないですよね。
パンクって結局、これだと言い切れないものだと思っています。
ライブを重ねるうちに、田口さん演じるボーカルの滑舌がよくなり、何を歌っているか、
歌詞の意味が分かってしまい、かんなが逃げ出す瞬間がありますが、
そこが一番パンクかなと。
「どうだ、こんな歌詞歌っているんだぜ」じゃなく、「やべえ」と逃げるとこ。
子どものいたずらじゃないけど、何かが刺さるというか、
「なんだこのオジサンは」というところが一番パンクかなと。
宮崎 すごく、すごくいい意味での自己満足かなと。楽器とか壊すじゃないですか。
もったいなくないですかとパンク好きの女性に聞いたときに、
「自分ができないことを代わりにやってくれる、すかっとする」と。
ああ、そういうことなんだなと。
壊したり、叫んだりしている人を見て、周りが気持ちよくなったりとか、
そんなパワーがパンクにはあるのかと思います。
―今の音楽に対するメッセージとかもあるのか。
宮藤 いろんな音楽好きの人がいると思うが、それが僕らの世代ではパンクだった。
一番流行にいる人たちが食いついたのがパンクだった。
今までの既成の、予定調和のものを壊した。
ただ、それは30年前の話で、今もパンクをやっているというのは、
精神的な意味でパンクではないのかなと。
今の若い人はすごく優しいものを求めている。
今のロックの人たちは何も着替えず、メガネもかけたままで、すっぴんで出る。
僕からしたら、すごく格好いいと思ったし、ありのままでいいんだと。
もはや、それが主流になって、
ロックフェスで革ジャン着ているのが俺だけだったりとかで、
逆に、それがうれしくなったりもしました。
―「ユリイカ」など数多くの映画に出演してきたが、これだけ弾けたのは初めてか。
宮崎 演じているときは何も思わなかった。映画が完成し、
いろんな取材を受ける中で、初めて、私、すごいことをしたのかも、
と気がついたぐらいです。
やっているときは、普通にやっていました。
今までの作品と、姿勢の上では変わらなかったと思います。
―1982年の映画「爆裂都市」(陣内孝則初主演作)でパンク好きになったというが。
宮藤 観たのは中学生のころ。みんな怒っているパッケージに驚いた。
今観たら、ストーリーもあってないようなもの。そして、すごいテンション。
それを人間として未熟な時期に観たので、なんだか分からない衝撃を受けた。
その中に出てくる「ロッカーズ」とか「スターリン」とか、あの映画の人たち、
あのまんまじゃいないかと思って。本当に豚の頭投げてんじゃないかと思って。
本当に投げているんですけど。
そして映画のコピーが「暴動の映画でない、映画の暴動だ」。
いまだに意味分からないですけど、とにかくすごいんだということが僕の中にあります。
東京に出て、ナンバーガール時代の向井(秀徳)さんと対談する機会があり、
その後の打ち上げで、「宮藤さん、『爆裂都市』をリメークしてください」と。
その時は「無理です」と答えましたが、一部に熱狂的なファンいるんだと思いました。
リメークするなら、銀杏ボーイズの峯田君に出てほしいと思いましたが、
さすがにこのままではやれない。
でも、パンクを正面からやった映画はそんなにないと思うので、やれるんじゃないかと。
パンクも30年の歴史があると格好いいばかりでなく、理想も現実と違う。
そのギャップも面白いと考えました。
―九州のファンにメッセージを。
宮崎 この映画にはパンク以外の歌もいっぱいあります。
それらの詩は宮藤監督が書いています。
すごくいい歌が多く、私はマサル君(恋人役・勝地涼)の歌が大好きでした。
音楽という部分でも、パンクが苦手な人でも楽しんでもらえる映画になりました。
こんなに面白い映画、なかなか生まれてこないと思うので、
映画館でみれる機会を逃さないで欲しい。
宮藤 映画の中での「メリケンサック」のツアー、本当は福岡も入っていたんです。
台本が長いからカットしてくださいと。
名古屋、大阪、広島、博多、そして東京に帰るという設定でしたが、
メンバーがまとまり、博多でいいライブをするというシーンがあるはずでしたが、
いいライブはいらないんじゃないかと。それで博多が外れてしまいました。
日本でのパンクはスターリンとかいろいろありますが、博多のロックは、
シーナ&ロケッツとか、いわゆる「めんたい」と呼ばれる人たち。
そういうロックが日本では早くから生まれた、なじみのある街なので、
九州の人にはぜひ観てほしい。
主人公は、パンクを知らない所から始まるので、なじみのない人でも楽しめると思います。
そして宮藤官九郎監督の単独インタビューから
Q.作品のアイデアはどのようにして生まれたのですか?
まずは、何らかの理由で数十年ぶりにバンドが再結成させられて、
予算が少ないのでおじさんたちが小さい車にギュウギュウ乗ってツアーに出ている様を
最初に思い浮かべたんです。
パンクバンドにしたのは、自分もやっているし、やはりパンクが好きだから。
例えば二十歳くらいの若い人たちなら、どんな過酷なツアーも未来があるから乗り切れる。
でも、あえて夢も未来もないおじさんたちがツアーに出る、という話にしたかったんです。
で、どうやったらそういう状況を作れるかとずっと考えた末、
主人公が動画サイトで25年前の現役時代のバンドを発見して、
若いバンドだと勘違いしてツアーをブッキングしたら実はおじさんたちだった……と
いう話にいき着いたんです。
Q.確かにこれまで日本映画で、バンドをやっているおじさんたちのロードムービーは
なかったですね。
格好いい男の子が出てくるような、若いバンドの物語はよくある。
ロックやパンクは、若い人たちのものだと今まで世間では認知されていたと思うんです。
でもパンクも、生まれてもう30年以上経ちますし、
日本でパンクバンドをやっていた初期の人たちも、やっぱりもう50代ですから。
そういう意味で言うと、必ずしももう若い人たちだけのものではないのかと……。
これはロックとかパンクとか、
バンドとかいうものの格好いい部分をむしろ描かない映画ですね。
Q.監督ご自身も音楽活動をなさっているせいか、
現在の音楽シーンに対する風刺を感じました。
確かに自分も音楽をやってるけど、音楽業界に対して憤りを感じてるわけではなく、
わりと引いて見てるんですよ。
ミュージシャンの知り合いも多いですし。
売れている人たちが素直にうらやましいし、すごいと思います。
でも、僕は100パーセントミュージシャンではないので、
そういう状況を客観的に見ながら、知らず知らずのうちに作品に生かしてるんですね。
Q.今最も勢いのある女優の宮崎さんがヒロインですが、起用した経緯は?
好きな女優さんだったんで、いずれお仕事ができたらいいと思ってました。
バンドを発掘する主人公は若い女の子がいい。
さらに、パンクというイメージからなるべく遠い人をと考えたとき、
あおいちゃんが適役かと。それまで実際どういう女の子かよく知らなかったんですけど、
おじさんたちにはものすごく冷たくて、自分の彼氏の前ではデレデレするような、
ギャップのあるキャラクターにはまるような気がしたんです。
Q.実際に宮崎さんとお仕事されて、いかがでしたか?
構えないというか、物おじしない人。
現場では台本に書いてあるものをどんどん崩していくんですけど、
あおいちゃんはそれに対する反応が早くて冷静で。
役に入ると宮崎あおいというものが完全に消えてしまう。何でもやってくれるんですよ。
身を守ろうともせず、すごく自分に委ねてくれる感じがして、
一緒に仕事をしてラクでしたね。
Q.普段はダンディーな佐藤さんの、ダメおやじぶりも見事ですね。
浩市さんは、考え抜いて、すごく計算して演技をされる方なのかと思っていたら、
今作に関しては意外とパッションを大事にしてくださって。
あおいちゃんと一緒で、楽しみながら勢いで演じてくれました。
テークによって全然違う表情をするし。
多分ほかの作品では、そういうことをしていないと思うんですよね。
破天荒なミュージシャンの役で、
その瞬間だけで生きてるようなおじさんを演じたからこそ、
できたと思うんですけど……ノリで芝居をしてくれる方だったのが、
すごく意外で嬉しかったですね。
Q.佐藤さんの演技に対するアプローチが予想と違っていた?
最初は、いかにも佐藤浩市がパンクを演じてます風になったら
どうしようかと思ってたけど、実際はまったくそうでなかった。
決めるところはもちろん決めてくださいます。
だけど、あんなにエモーショナルな方だとは思ってなかったですね。
浩市さん演じるアキオが「おまえらのことぶっとばすかもしれないぞ」と
言うシーンの撮影のとき、ずっとカッカしてる感じが本人から伝わってきて……。
こんなこと言ったら失礼ですけど、すごく初々しいというかみずみずしかった。
本当にこういう人だから、これだけ引っ張りだこの役者さんなんだろうと。
作品に対して、とても誠実なアプローチをしてくれていたと思います。
Q.宮藤さんの作品には豪華キャストが集結する印象がありますが、
キャスティングの際に重要視するポイントは?
うーん、何でしょうね。
自分にとって新鮮な方に、
今まで演じたことがないであろう役をやってもらうってことぐらいですかね。
人見知りなんで、できれば初めましてじゃない人の方がラクではあるんですけど、
それに甘んじてもいけないかと。
今回、キャストで僕の希望が通ったのは、最初から脚本があったからだと思うんですよね。
この台本のこの役ですってオファーの仕方だったんで、
話も早く進んだんではないでしょうか。
Q.映画を観終わった後、すごくパワーをもらえて、パンク精神を感じました。
この映画を観る方に、どんな風に感じてもらいたいと思っていますか?
いや、まあ、笑って観ていただければそれはそれでいいですし。
それこそ……「篤姫」しか観ていなかった人でも(笑)。
パンクって結局すごく説明しづらい。
というか説明できるものはパンクじゃないと思ってますが。
「パンクって何なんでしょう?」という問いに対して言うと、
僕にとってはこの映画そのものが答えなんです。
観た人が笑ったり、元気になったり、ジーンときたり……という風に
心を動かしてくれればいいかと。
逆に言うと、これを観て心が動かなかった人は、多分、僕と合わないんでしょうね(笑)。
僕のことキライでしょうねっていうぐらい、この作品は自分自身である感じがするんです。
パンク風なものを扱いながら、どこかでちゃかしてるというか。
だけどやっぱり好きだし……何かこう、言い訳できないし、するつもりもないというか。
だから、この映画を観て一つも面白くないって言われたら、ああそうですか、って…
以下はネタバレとなるのでmixi独身映画ファンコミュニティ
http://mixi.jp/view_community.pl?id=1299114
にて『少年メリケンサック』の頁をご覧下さい。
トップページ(映画製作裏話、映画と原作比較レビュー)に戻る。