「ニライカナイからの手紙」DVD脚本レビュー
★映画基礎データー★「ニライカナイからの手紙」 2005年 日本映画 監督脚本 熊澤尚人 出演 蒼井優 |
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「ニライカナイからの手紙」プレミア試写会で見てます。
ミニ・ライブに出演者の舞台挨拶、抽選会など
上映前イベントだけで50分近くもあったというプレミア試写会です。
蒼井優(『リリィ・シュシュのすべて』『花とアリス』TV「タイガー&ドラゴン」)を
生ではじめて見ました。
なんか思ったより背の高い子でした。
小顔なので小柄な人のように感じるのですね。
以前、「僕の彼女を紹介します」のチョン・ジヒョンがYOSIKIさまと
同じ身長なのにめちゃくちゃ可愛かったのと同じです。
そーか、小顔だと、どでかい女の子も可憐に見えるんだ。
オーラというのは殺気のようなものも含まれているのだろうと思いますが、
だとすると殺気の無い優ちゃんには立ち上るようなオーラは感じられません。
アクセサリーの類はつけていなかったようですが、
花びらのような服を着ていてそりゃあかわゆいったらありゃあしない、です。
竹富島の人たちに見送られながらフェリーに乗り込む2人の人物、
竹富郵便局長の尚栄(平良進)と娘の昌美(南果歩)。
涙を必死にこらえながら、昌美の娘、6歳の風希が見送っている。
「お母さん、手紙書くからね…」
その言葉を最後に、故郷竹富島を去って行った昌美。
それからの母子をつなぐものは、年に一度、
風希の誕生日に必ず送られてくる母の手紙だけになった。
舞台は石垣島から更に西へ行った竹富島です。
以前、うちのメーリングリストで石垣島へダイビングに出かけた時、
途中泊で渡った島です。
ここは星砂でも有名です。
見覚えのある街の風景、浜の様子、牛車や人々が出てきます。
カメラマンだった父・大輔の遺品のカメラで、
透明なガラス玉を被写体に撮影を始めた風希(蒼井優)。
東京帰りの元モデル・レイナ姉のビーチハウスに自分の写真を並べるようになっていた。
大学進学に向けて、補習中心になって行く高校。
空いた時間にレイナ姉の店に遊びに行きながら、
少しずつ東京への想いをふくらませていく風希。
「私…写真を勉強するためなら、東京に行きたいな…」
14歳の誕生日の手紙に、
20歳になったらちゃんと説明すると書いた母・昌美。
もちろん、風希のこころの中の東京には母の姿がはっきりとあった。
クランクインに際し、御祓い行われるのは良く聞く話ですが、
場所が沖縄県八重山諸島だけあって、御祓いは御嶽(ウタキ)、
と呼ばれる霊所で行われたようです。
御嶽(ウタキ)、は竹富島では「オン」とだけ発音されることが多いとか。
竹富小中学校(生徒が少人数になったので、
竹富では小学校と中学校がひとつになっている)の裏手に広がる森、
清明(シンミ)御嶽に神司(カンノツカサ)と呼ばれる
3人の女性たちがやってきて御祓いを取り仕切る。
さらに西塘(ニシトウ)、世持(ユムチ)と三つの御嶽を回り、
清められた米でお神籤がひかれる。
映画の成功は80パーセントとのご託宣があったとか。
竹富島には高校が無いので、
高校生は沖縄本島に下宿するか、
船で石垣島の高校に通うことになるようです。
画面ではリゾート施設を学校に見立てて撮影しているようにも見える
八重山高校は、エンディングの字幕からも分かるとおり、
ちゃあんと現地ロケがされています。
フェリーが着く港からほど近い場所にあるそうで、
ブーゲンビリアやハイビスカスが咲き乱れ、
石垣市の市蝶にもなっているホワイト&ブラックの日本最大の蝶、
オオゴマダラも見られるそうです。
うらやましい限りです。
映画に登場する民宿「南風」(パイカジ、と読む)は実際には松竹荘のことで、
スタッフは仲盛荘、内盛荘、そして松竹荘と三つの民宿に分泊したとのことです。
画面からも分かるとおり
竹富島では、集落の間の道路にも白い砂が敷き詰められています。
これは砂利の砕けた砂ではなくて
珊瑚が砕けてできた白い砂です。
その白い砂とコントラストをなしている石垣のような塀も、
実は珊瑚の変化した姿です。
映画の冒頭で竹富の朝、まるで儀式のように、
村人が通りに出て一点の轍も残さず掃き清めるところから映画が始まりますが、
これにはちゃんと理由があります。
私も村の観光案内の牛車に乗った折に聞いたのですが、
この美しい珊瑚が砕けた砂は、細かくて、ほとんど形を持っていない通常の砂と違い、
復元力がないそうです。
そのため、一度自動車が通り過ぎると、いつまでも車の轍が残ってしまいます。
ですから竹富の住人たちは、いつも丁寧に道路を掃いているのだそうです。
現在、島民のほとんどが観光業に従事しているのだそうで、
昔ながらの朝の掃き掃除にも、観光客のための景観維持という
現実的な動機もあるようです。
竹富郵便局は、竹富島名物なごみの塔前に作られたセットです。
観光客が間違えて手紙を出しそうになるほど、完ぺきなセットでしたが、
カメラに映らぬ通りの側に
「これは撮影用のセットで、郵便の取り扱いはしておりません。」という札まで
立ててあったようです。
尚栄役の平良進は
『豚の報い』(99/崔洋一監督)『ナビィの恋』(99/中江裕司監督)など、
多数の映画作品で沖縄を代表する重鎮です。
いっけんぶっきらぼうな演技をしていますが、
この方、
99年3月、沖縄県指定無形文化財琉球歌劇保持者認定を受け、
02年、沖縄タイムス芸術選賞大賞を受賞している
沖縄演劇界にはなくてはならない存在です。
その平良進をして悩ませたのが八重山なまり。
劇中にも登場する「寄り合い」という言葉、
沖縄本島ではモヤイと発音し、八重山ではa音が強くて、
ほとんどモアイに聞こえます。
私たちには沖縄言葉はみんな語尾が「サァ〜」と聞こえますけど、
本島と八重山ではいろいろ違うようですね。
ついでに書いてしまうと、沖縄はソフト開発者の多い土地とも言われますが、
この作品がロケされた04年12月現在、
竹富島には光ファイバーやADSLなどは通っておらず、
ネットの高速回線はISDNまでだそうです。
映画のタイトルバックに登場する西桟橋に立つ赤い郵便ポストは
花谷秀文をリーダーとする美術チームの手で完璧に作られた大道具で、
材質は木、しかし、どこからどう見ても古びた鉄のかたまりに見えます。
竹富編で登場の小道具類は東京から持ち込まれたものではなく、
島で現地制作されました。
竹富郵便局のセットになっていた民家は同時に、
美術チームの作業場としても使われていたそうで、
レイナ姉(ねえ)役のかわい瞳ちゃんが浜辺の店に並べているオリジナル、
ハンドメイドのアクセサリーが美術スタッフの手で
制作されました。
風希の父役の遺影や劇中、風希が撮影する透明なガラス玉の写真も、
ここでカメラスタッフの手によって作られています。
レイナ姉のビーチハウスはアイヤル浜にありますが、
浜に続く小さな道は、多くの蝶たちの蝶道となっているのだそうです。
本土では見られない大型のシロチョウ類や、
無数に飛ぶスジグロカバマダラやオオゴマダラ、
水色と黒のコントラストが幽玄なリュウキュウアサギマダラ、
羽を開くと美しい紫色が鮮やかなメスアカムラサキ…。
小さなシジミチョウたちもたくさん飛んでいるそうです。
隆起珊瑚礁でできた島、竹富島は、あらゆる蝶や花たちの楽園なのです。
実際私もその浜の近辺で星砂採取をやってます。
映画では繰り返し安里家の風希とオジイの朝食シーンがでてきますが、
そこで出てくるのが沖縄の典型的な朝食メニュー、
ポーク卵と小鉢にアーサ入りの味噌汁であります。
そういえば私たちがペンションで頂いた朝食もそんな風でしたねぇ。
映画の後半、高校を卒業した風希は上京する。
舞台は一転、東京へ。
レイナ姉の紹介で写真家・崎山の元で、カメラマンになるための修行を始めている風希。
スタジオ兼事務所で住み込みのアシスタントとして、多忙な毎日を送っている。
そんな中、19歳の誕生日の手紙を持って、幼なじみのカイジが上京する。
都会の日々の中で、いつか自分の誕生日さえ忘れていた風希。
「来年はもう20歳。…覚えていますか、14歳の誕生日のとき、全部説明するって書いたこと…
来年、20歳の誕生日、東京の井の頭公園に来て下さい」
いよいよ、あんなに会いたかったオカアに会える、と風希は胸膨らませる。
蒼井優は「花とアリス」でも大きな一眼レフを構えて観客を笑わせていますが、
ここでも父の遺品のカメラのファインダーを覗いています。
美少女といかついカメラは絵になるらしい。笑
全体で二時間ちょっとの作品です。
登場人物も少なく、
山場ひとつオチひとつのシンプルな構成です。
竹富の海と空は絶えず青々と登場しますが、水泳や水遊びの場面は出てきません。
幼い風希が母と砂遊びするのみ。
地元の沖縄の若者は水着は使わずTシャツ姿で泳ぐという話を
歌番組の沖縄タレントがしゃべってましたが、
画面で確認できなかったのが惜しいといえば惜しいです。
竹富ロケは04年11月から12月に行われています。
そして東京ロケも12月に行われていますが、ここでは時間経過を見せるため、
夏の服装での屋外ロケも含まれます。
竹富の光あふれる世界から、ファインダー越しに小さく光が見える東京への
舞台変換はなかなかに効果的です。
風希が弟子入りするカメラマンはスタジオで美人モデルを写す専門家なので、
ドラマは完全に人口光の下で進行し、
おまけに風希があてがわれた住み込み部屋も、
スタジオの資材庫にベッドを持ち込んだという部屋。
ガラスのはめ込んだ冷蔵庫と一緒に美少女を日の当たらぬところへ
しまっておくなんぞ、監督の趣味を感じますが。笑
それがアシスタントの先輩の叱咤激励で父のカメラを手にして、
一年後に母と再会できる筈の井の頭公園の周辺で、
通りすがりの親子ずれなどに声をかけてスナップを撮り始めるところから、
自然の光の下に彼女は立つことになります。
無意識の光あふれる竹富から、
意識して光を探す井の頭へ。
そこに彼女の内面的な成長があるのですが、
それをセリフでなく、フィルムに映る光の量で見せるというのは、
映像の力こそ、映画であるという原点に立つもので、
新人の熊澤尚人監督の視点確かさ、力量を感じます。
手紙にまつわる謎は、お方の方の予想通りですが、
変にひねったりせず、素直にストレートに訴えているところに
好感を持ちました。
主題曲「太陽(てぃだ)ぬ花」で指している花は、
ハイビスカスとかではなく、
母が好きだという東京の桜になってしまいそうなんですが、
その解釈で良いのでしょうか?
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