「容疑者 室井慎次」DVD脚本レビュー
★映画基礎データー★「容疑者 室井慎次」 2005年 日本映画 監督・脚本 君塚良一 出演 柳葉敏郎 |
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2005年2月某日−警視庁・室井管理官(柳葉敏郎)が、
自らが捜査の指揮をとった殺人事件の捜査の責任をとらされ、
逮捕されてしまう。
室井を救おうとする若き女弁護士・小原久美子(田中麗奈)。
そして、警察の不正を暴くという大義名分をかざして室井を追い詰める弁護士(八嶋智人)。
そこに警察庁と警視庁の確執が絡み、新城(筧利夫)や沖田(真矢みき)らの尽力も虚しく、事態は最悪の状況に。
一方、新宿北署の現場の工藤刑事(哀川翔)たちは、殺人事件の真相を追う。
そして、今まで語られることのなかった過去が明らかになったとき、室井はさらなる窮地へと追い込まれる。
室井は、果たしてシロかクロか?
97年1月フジテレビ系列で放映されたドラマシリーズ「踊る大捜査線」。
この春公開された「交渉人 真下正義」に続く「踊る大捜査線」スピンオフ企画の第2弾です。
「交渉人―」が、地下鉄パニックという近未来SFものそこのけの内容であったのに対し、
予告編を見たときから室内劇に近い誤認捜査嫌疑を巡る警察内部の権力抗争を背景にした法廷もの、
という地味地味路線で、
これでまともに興行成績が挙げられるのかしらんと思っていたのですが、
ふたを開ければ、「交渉人―」の高配給を受けて公開初日より記録的なロケットスタートを切ったとか。
テレビと連携したものの強み?
しかしねぇ、テレビ局の手がけた映画でもこけた奴は幾らでもあります。
大資本や大メディアで簡単に興業が支配できるほど映画は甘くはないと思ってますけど、
映画の掲示板などを見ますと、ムキになって噛み付いている人がいて毎度ご苦労様なことです。
監督・脚本はシリーズの脚本をテレビの連続シリーズより手がける君塚良一氏が担当しています。
この人はもともと萩本欽一氏、きんちゃんのもとで構成作家をしていた人ですが、
テレビドラマの脚本の仕事も長いですね。
ドラマ「ずっとあなたが好きだった」で“冬彦さん”を登場させて話題をさらってます。
そういえば佐野史郎さん、検事役で柳葉さんを取り調べていますな。
君塚氏が監督をやるのは二度目です。
カメラアングルや編集に凝ったりしない人みたいですね。
今回は雨や雪など自然現象に頼り気味ですが、地味な内容をかなり真面目に演出しています。
だだっ広い野外ロケより室内シーンの演出が冴えてるように見えますが、
たまたまこの作品で見せ場が室内に寄っているだけかもしれないです。
拝島の弁護士事務所とか、新宿北署などの少し広めの場所では、
すかさずクレーンを使って広さを出してますけど、逆にロケで雨が多いのは、
心理描写というより空間を埋めたがってるように感じたんですけどね。
新宿駅周辺でドラマが展開して、ほとんどそこから移動していないのですが、
これはそっくりオープンセットです。福島県いわき市内に建設されたもので、
四月より二月間メインキャストのロケが行われています。
新宿住民の私の目で見て判るのは、スタジオ・アルタ前と新宿北署がオープンセットで、
あとは福島県下のロケのようですね。
劇中聞き込みの行われる歌舞伎町や新宿二丁目あたりが現実の新宿とはまったく別の町です。
前半のクライマックス、アルタ前での追いかけっこが現物でのロケ不能の為、
オープンセットの建設になったのでしょうが、そんなに公道の撮影許可をとるのって大変なことなんでしょうか?
雨のシーンのため放水車の多数待機が必要でもあったですね。
アルタが表のシャッター降りたっぱなしでしたね。中身を作り込むと余計に予算がかかりそうだわ。
新宿北署というのはフィクションです。
新宿駅の北側といったら、大久保界隈です。都内有数のチャイナタウンです。
職安はありますが、警察署は無いです。
少し前までイラン人が麻薬売ってたりして評判悪かったです。
あんな礼拝堂に間借りしたような警察署があったらファンになって通っちゃいます。
現実の新宿署は新都心の端っこにある五階建てくらいの小奇麗なビルです。
車の免許の更新に行ってますので間違いないです。
歌舞伎町の中に“大交番”という警察署の規模を誇るでっかい交番があります。
機動隊の放水車などの車庫がありますが、これはあくまで交番です。
全共闘時代、デモ隊鎮圧のために配備されたお巡りさんの大規模詰め所で、
今も現役稼動しています。
テロなど起きたらこの大交番と都庁の防災本部(「ゴジラVSキングギトラ」で作戦指令基地として登場してます。)が
前線基地になるんじゃないかと睨んでます。
「交渉人―」で真下を派遣しているのが室井さんなので、
ドラマ的にリンクしているものかと思っていたのですが、
室井管理官の逮捕容疑となる事件はまったく別件です。
警視庁と検察庁の上層部でもめるのは、テレビシリーズのころからあった話で、
今回の作品はその決定版とも受け取れます。
上層部同士が裏で手打ちをして事は収束しかけますが、
拝島(八嶋智人)という悪役弁護士が、遺族をたきつけて訴訟沙汰に持ち込み、
トカゲの尻尾切りで室井さんが捕まります。
監督・脚本の君塚氏は確か40代前半。
キャリアの年配組も敵なら、
拝島のような利己的な若い世代も敵扱いなんですよね。
彼がしょっちゅうやってる殺人ゲームの画面は映画のオリジナルです。
「踊るー」なら提携したがるゲーム会社は幾らでもいるはずですから、
DVDでもなければ確認できないようなちっこい画面の作りこみにこだわるのは
スタッフの好み。こいういのは「踊るー」の恒例ですね。
弁護士・小原久美子の机の上のアップは室井さんの写真の切り抜きに田中麗奈が
語りかけるシーンのみですが、「容疑者―」の公式ガイドブックなどを読みますと、
テレビシリーズや「交渉人―」などにリンクする小ネタ・グッズが山盛りのようです。
彼女の津田法律事務所所長 津田所長(柄本明)が「潜水艦事件」に関わりあるという設定です。
映画化不可能とされていた「亡国のイージス」もあっさり海上自衛隊の新鋭イージス艦でロケした映画が出来ましたしね。
次は是非、潜水艦にもスクリーンに登場してもらって…。
取調べ中の室井のところに突如3アミーゴが現れて唯一笑える場面となり息抜きできます。
あそこで出てくる「和久さんが心配している」というセリフはもともと脚本には無かったようです。
柳葉さんの要望でその場で追加されたセリフだとか。
上層部は露骨に“室井斬り”を企てますが、
新城(筧利夫)や沖田(真矢みき)らが今回、室井救済に尽力します。
あんなに仲悪かったのにねえ。
特に真矢みきは前回「レインボーブリッジを封鎖せよ」で
テレビシリーズも含めて初の女性敵役として登場しているだけに、
私は今作品では逆に小さく善玉になってしまって個人的には退屈でした。
エゴOL刑事街道をひた走り、時代を築いてほしかったですな。笑
新宿北署、工藤刑事役の哀川翔と柳葉さんは言わずと知れた「一世風靡」時代のツレ同士ですけど、
映画の本格的共演は初めてのようです。
公開前後、ふたりしてバラエティに盛んに出で宣伝してました。
その割りに、劇中の絡みはクールでした。
私は、新宿署の連中はルックスが個性的な割りに、
わりと分を守って大人しい脇役に徹していたように感じたのですが。
ねたバレ改行です。
寡黙なはずの室井さん、
野口江里子の件を取りざたされると逆上して拝島に掴みかかります。
そのあと、にわかに饒舌になって小原久美子に自分の過去を語ってます。
この豹変について柳葉さん自身はインタビューで、
“室井の持っている根本的な性格は「自分を信頼してくれる人を裏切らない」というところ。
「室井さんだけの問題じゃない」という発言をして室井の頬を平手で打つような小原に対して、
自分に真剣に関わってくれている、自分のために尽力してくれる人間に、
寡黙でいることはいけないことだと気づいたから”と答えています。
まあ、役者さんの生理としては、最後まで黙りっぱなしは苦痛でしょうから、
そういう展開になって当然と思うでしょうが、脚本的には、やはりあそこで辛抱の糸が切れたような印象がある。
どうしても演出的に持たなくなって、セリフで説明し始めた、ということですね。
まあ、百歩譲って、久美子への告白は目をつぶるとして、
へんてこなのは、新宿北署で辞職願を出したことをぶち上げておきながら、捜査会議を始めちゃうところ。
ここはせめて、立ち去ろうとする室井を、工藤が引き止めて会議をおっぱじめるくらいのことに持って行ってくんないと。
ああ、でもやるぞってみんなが立ち上がった途端に、別の人が
いきなり真相暴露しちゃうのがあんまりです。
工藤たち新宿北署での刑事達が馬鹿みたいじゃないですか。
拝島を久美子がかろうじて返り討ち。
「低脳どもがっ」って誰のことよ?
そこまでの経過がドラマであって、事件の真相はどうでもいいような
二股女と馬鹿男ふたり。
本来、ちっこい事件がキャリア達の抗争で、大騒動になるのって、
「踊るー」の連続シリーズ完結後の特番のひとつ、
大塚寧々に逃げられたばっかりに騒動に発展する「秋の犯罪撲滅スペシャル」と同じ着想です。
泣きのドラマが隠されている真相解明は、ひとつ間違えると二時間ミステリーです。
こっちの方が「踊るー」ぽくて実は正解なんでしょう。
桜井杏子役の木内晶子は、MOVIE1にウェイトレス役でちょこっと出ているのですが、
このウェイトレスが桜井杏子と同一人物という設定になっています。
MOVIE1 で事件にちょこっと巻き込まれた事が、彼女の性格形成に影響してるようです。
ラストであらわになる彼女の壊れっぷりが、いきなりホラーです。
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