「オールド・ボーイ」映画製作裏話
★映画基礎データー★「オールド・ボーイ」 2003年 韓国映画 原作 土屋ガロン 嶺岸信明 監督 パク・チャヌク 脚本 ワン・ジョユン パク・チャヌク 出演 チェ・ミンシク |
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2004年、カンヌ映画祭グランプリを受賞。
ハリウッドのユニバーサル映画がリメイク権を獲得し、
ジョニー・ディップ、ブラット・ピットらを主役候補に制作進行中。
本作も全米、ヨーロッパ各国で続々公開。
カンヌ映画祭審査委員長クェンティン・タランティーノが「グレイト!」と絶賛、
「壮絶な復讐」と「究極の愛」の“痛い”系映画の最高峰です。
日本のカルト漫画「オールド・ボーイ」を原作に、
『JSA』のパク・チャヌク監督が「シュリ」のチェ・ミンシクを主演に、
『春の日は過ぎゆく』のユ・ジテ、
『バタフライ』のカン・ヘジョンが共演した韓国アクション・サスペンス映画です。
1988年、
ある雨の夜一平凡なサラリーマン、オ・デス(チェ・ミンシク)は
今日 も酔って暴れ、警察の世話になっていた。
友人のジュファンは酒癖の悪いデスに手を焼きつつ、
やっと釈放されたデスを送っていこうとする。
デスには愛する妻と幼い娘が−、今日は娘の誕生日だ。
プレゼントも買ってある。
だがデスが家にかけた電話にジュファンが替わって話している隙に、
デスの姿は消えていた……。
気がつくとデスは狭い監禁部屋にいた。
そこにはベッドとテレビが1台。
窓はなく外との連絡は遮断されている。
分厚いドアの下に小窓があり、
そこから出前の中華料理が運ばれるのみ。
ここは一体どこか?自分はなぜ監禁されたのか?
定期的に催眠ガスが流れ、眠りに落ちると髪が切られ、
着替えもさせてくれ掃除もしていってくれる。
ただ日々だけが流れていく。
そしてデスはある日、
テレビのニュースで妻が惨殺されたことを知る。
しかも容疑者は自分。
半狂乱に陥り自殺も試みるが、そのつど意識を失い手当てが施される。
3年が経過し、デスはテレビを見続け、
自らの過去を振り返り獄中記を書き始める。
6年が経った頃、デスは脱出を企て鉄製の箸で壁を掘り始める。
−体誰が自分を監禁したのか?
ここから抜け出して、自分を陥れた者に復讐することだけが、
もはやデスの唯一の生きがいだった。
そのために肉体を鍛え、
テレビを通して世の中の情報を得なくてはならない。
1年に1本、左腕に刻んだ入れ墨の数が増えていく。
そして15年が経ち、脱け穴が開通した頃、
デスは深い眠りに落ち、催眠術をかけられた後、突然解放された……。
原作では主人公の五島は10年間監禁され、
映画では15年監禁されてます。
原作の監禁期間はバブルとその崩壊に当たり、日本の世相が大きく変貌した
時期に重なります。
一方、韓国では1988年からの15年間は、
ソウル五輪からワールドカップまで急激な国際化の15年間で、
社会が一変した時代です。
原作は社会変貌とその流れに翻弄されたふたりの主人公が敵対するドラマで、
映画は時代の流れの中にあって普遍の条理に立ち向かわざるを得ない
ふたりが主人公です。
どちらもタイムトラベラーのような存在ですね。
15年前に公衆電話のあった場所に建つ、
高層マンションの屋上で突如解放されたデスは、
なぜか高級スーツと腕時計を身に着けていた。
街中で「オヤジ狩り」に遭うが、密室での鍛錬の成果で叩きのめしてしまう。
しかしデスに帰る家はない。妻を殺害した逃亡者なのだから。
金もなく鮨屋の前で佇んでいると、
ホームレスの男が近づいてきて小切手の詰まった財布と携帯電話を差し出し、
「俺に何かを聞こうと思うな。俺は何も知らない」と眩いて立ち去る。
鮨屋に入り女性の板前と話していると、携帯が鳴る。
「お前は誰だ!」デスの問いかけに、
電話の声は「俺のことより“なぜか”が重要だ。今までの人生を全て復習しろ」
と告げ電話を切る。
デスは注文した生ダコに喰らいつき、突然その場に倒れこんでしまう。
目覚めるとデスは板前の女の部屋にいた。女の名はミド(カン・へジョン)。
デスが気絶している問に獄中記を読んだミドは、
デスを慕って復讐を手助けすると言う。
まずは自分が監禁されていた場所を突き止めなくてはならない。
唯一の手がかりは、監禁中に食べ続けた餃子に紛れていた伝票の切れ端にあった
「青龍」という文字。
デスはミドと共に中華料理店の餃子を食べ続け、
ついに「紫青龍」という店を突き止める。
まだ映画の序盤ですが、ねたバレ改行です。
「紫青龍」が出前を運んでいたビルの7.5階に、監禁部屋は存在していた。
「憎いけれど殺せない奴、殺すだけじゃ足りない奴」を
秘密厳守で長期監禁する監禁ビジネス業者のビルだったのだ。
“7.5階”だなんて「マルコビッチの穴」だけど、
これは原作にもそのまま出てくるそうで映画のパロディということではないようです。
それにしても監禁ビジネスとは、おぞましい話です。
ヤクザの副業みたいな感じだか、見ていたこちらが凹みました。
海外にそういうの実在しそうではありませんか。
デスは金槌で管理人パグの歯を抜く拷問を行い、
自分を監禁するように依頼した男の録音テープを手に入れる。
屈強な大勢のボディガードを殴り倒し、血だらけで外に出たデスは、
見知らぬ通行人に介抱されタクシーに乗せてもらう。
しかし、その男は別れ際「あばよ、オ・デス」と不敵に笑うのだった……。
ざんばら髪のチェ・ミンシクが金槌手にして構える宣伝スチールは、
この乱闘前後に出てきます。
あれで人間の歯をむしっちゃうんだからねえ。
監督は演出プランを検討する上で一万枚ものイラストを描いてます。
乱闘シーンもコンテでは百カット前後あったようですが、
実際にはノースタントで2分40秒の乱闘が一気に撮影されています。
アクションのスマートさより、
主人公の情念の濃さを見せる場面となっています。
血だらけで出てくると、背中になんか刺さったままなんですよね。
話は脇にそれるのだけど、
これまで韓国映画は本編の編集はともかく、
タイトルの出し方などが垢抜けない印象を持ってましたが、
「オールド・ボーイ」は字幕の見せ方一つ見ても上手いですね。
日本のテレビCMクラスの切れのよさで全編を見せています。
ここいら辺もカンヌでよいポイントを挙げている部分だと思いますね。
内容を度外視してもデジタルアート関係の仕事をしている方々は
見るべき映画です。
テープの声は、デスを15年監禁した理由として
「口数が多すぎるから」と告げていた。
翌日、デスは旧友ジュファンを訪ね
テープを聞かせるが、心当たりはないと言う。
ジュファンが経営するネットカフェの回線を通じて、
ミドが使っていたチャットにアクセスすると、
「エバーグリーン」と名乗る男が返信をしてくる。
ミドは「エバーグリーン」と通じているのか?
そもそも初対面の男を家に入れるお前は誰だ?
ミドさえも信じられないデスに、
ジュファンから「エバーグリーン」の身元を掴んだと連絡が入る。
その住所はミドのマンションの向かいの部屋だった。
そこにいたのは、長身の謎の男(ユ・ジテ)とその手下。
男はデスに、7月5日までに監禁の謎が解けたら自分が死ぬ、
解けなければデスとミドを殺すと「死のゲーム」を持ちかける。
激高したデスは男に迫るが、殺してしまえば謎は分からないままだ。
男は、デスが拷問をするなら、
心臓のペースメーカーをリモコンで止めて今すぐ自殺すると言う。
「15年間お前を見守ってきた。
監禁と妻子を失った苦痛を忘れるのに、復讐は最高の薬だ。やってみろ」
男はそう告げて去っていく。
ミドの悲鳴を聞いてデスが部屋に戻ると、
監禁部屋の管理人パグと仲間たちがミドを縛り付け半裸に剥いてデスの居所を
聞き出そうとしていた。
デスに抜かれた歯を金歯に治したバクは報復のためにデスの歯を抜こ
うとするが、謎の男の手下が持参した札束と引き換えにその場を去る。
ミドを痛めつけたパグに「お前の手を切り落としてやる」と叫ぶデス。
やはりミドは、あの連中とは関係ない。
残り5日で謎を解けなければ、ミドも殺されてしまう。
レンタカーで出発した二人は、日付が7月1日に変わる頃、
モーテルの部屋で結ばれる……。
なんで手下は札束を出したのか?
ここで主人公が治療のために足止めを食ってしまうとタイムリミットの5日に
間に合わなくなってしまう。
謎の男にとっても、デスが間に合ってくれないと困るのですね。
監禁されていたときのデスが、ふと自分の腕をみると穴が開いていて、
蟻が出入りしている。
顔面に無数の蟻が這い登ってきて「うわーっ」と悲鳴を上げるという
幻覚を見る場面が前の方であります。
ミドが地下鉄でひとり泣いている場面が出てきて、
車両の反対側に等身大の蟻が座っているのが見えるという場面が出てきます。
ミドのセリフがかぶって、
「蟻っていつでも集団でいるでしょう? 孤独だと蟻の幻覚を見るらしいのね、
私は見たことないけど」と。
もちろん嘘で、彼女は巨大蟻に付きまとわれちゃうくらい孤独な女の子です。
ミド役のカン・へジョンは高校時代からモデルなどをやっていたようですが、
本作品がスクリーンデビュー作です。
のべ300人の候補の中からオーディションを勝ち残り出演を果たしました。
そう美人という訳ではないのでのですが、スクリーンで見る彼女は、
かわゆいです。
「あしながおじさんの存在を信じている女の子」とカン・へジョンはミドについて
語っていますが、
命以外何も持たず、復讐の鬼と化しているデスと喧嘩しつつも、
ひたすら慕い続ける。
彼女の思慕には本人も気づかぬトリックが隠されているのですが、
しっかしね、そのトリッキーな部分は所詮、取っ掛かりに過ぎず、
彼女がデスを愛する本質には関わりないです。
経済力とか、肩書きとか、年齢とか、そういった属性を全部取っ払っても
なお好きと言うのは不思議だし、そういう愛も在るのだと信じたいです。
それは現実的にどの程度ありうるか?はなくて、ロマンの領域ですね。
過去はもちろん、将来のことさえ必要無く、今現在がすべてで、
唯、愛しているということは、それ自体感動的でさえあります。
二人はモーテルでも監視されていた。
催眠ガスで熟睡させられ翌朝目覚めると、テーブルの上に奇妙な箱があり、
中にはパグの左手が入っている。
解放されて以来ずっと盗聴、尾行されていたことを知ったデスは、
靴の裏に仕込まれた盗聴器を取り除く。
「エバーグリーン」を手掛かりにインターネットで検索すると、
「サンノク高校ホームページ」が引っかかってきた。
デスやジュファンが通っていた高校だ。
デスはミドと母校に向かい、
卒業アルバムの中に謎の男とよく似たイ。ウジンという後輩の写真を見つける。
だが昔ウジンと関わった記憶はない。
ジュファンに電話して聞くと、やはり知らないが、
デスの転校後に亡くなった姉のイ・スアは自分と同じクラスで
ひどいアバズレだったと言う。
次の瞬間、ジュファンは謎の男=ウジンに刺し殺される。
デスに盗聴器、を外されたため、二人の会話を聞きにジュファンの店に潜んでいたのだ。
7月2日、ジュファンを殺された怒りを抱えながら、
デスは金歯のパクが残した歯科医の名刺を手掛かりに、
移転したパクの監禁部屋へミドを連れていく。
デスはこれ以上ミドを巻き込まないために、
7月5日まで閉じ込めておくようバクに依頼する。
謎の男=ウジンの手下に手首を切り落とされたパクは、
デスに協力しミドを預かる。
7月3日、
デスは卒業アルバムに挟まれていたチラシを手に美容室「水車」を訪れる。
同級生の美
容師に、スアがなぜ自殺したかを訊ねると、
友達に電話で聞き、理由はデスが一番よく知っているはずだと言う。
翌日、デスは高校を再び訪ねて記憶を掘り返し、
ある答えに辿り着く。
そして運命の7月5日−監禁された理由を導き出したデスに、
ミドは「謎が全て解けたのなら、ウジンが追ってこない所に逃げるのよ」
と囁くが、
今や復讐心はデスの−部となっていた。
デスは高層ビルのペントハウスに住むウジンのもとに一人で乗り込んでいく
パク・チャヌク監督に原作を紹介したのは、『殺人の追憶』のポン・ジュノ監督だったそうです。
なかなかに興味深い話ですが、
そこですぐさま映画化に向かったというのではなく、
映画化権を取得したプロデューサーが、改めてパク・チャヌク監督を尋ねています。
観念的な動機で柿沼が五島を監禁する原作を、
韓国風の血縁の問題に置き換えた脚本をモノにすることが出来、
映画化が実現しました。
(改訂の過程はメイキング本に詳しいので興味のある方はそちらをご覧下さい。)
復讐劇の果てに、デスとミドが雪山を背景に抱き合ってお仕舞いですが、
場所は韓国国内という設定でしょうが、
実際にはニュージーランドでロケされています。
エンディングにふさわしい絶景が都合よくソウル近郊にあるはずもなく、
ロケ地を求めて南半球まで遠征するというのが、
創作物である映画の映画たる由縁だし、
カメラを回した途端、季節はずれの雪が降り出してあっという間に銀世界になり、
そのままロケを敢行して、想定以上の美しい山河の描線をフィルムに収めることが
出来たというドキュメント性も映画の映画たる由縁であろうと感じました。
ユジン役のユ・ジテは「同じことをもう一度やれといわれても無理」と
インタビューに答えています。
傑作映画の誕生は、
スタッフ、キャストの渾身の努力と天の采配が相伴って始めて実現するものです。
カン・へジョンの次作は、本作同様パク・チャヌク監督と、三池崇史監督、
香港のフルーツ・チャン監督によるオムニバス・ホラー、『美しい夜、残酷な朝』です。