「オリヲン座からの招待状」

映画チラシ「オリヲン座からの招待状」■作品基礎データ
「オリヲン座からの招待状」
2007年 日本映画
監督:三枝健起
原作:浅田次郎
脚本:いながききよたか
出演:宮沢りえ
               

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これも試写会で見ています。

「突然ではございますが、
昭和25年の開館以来半世紀以上にわたって
地元の皆様に愛され親しまれて参りましたオリヲン座は、
誠に勝手ながら今秋をもちまして閉館いたす事と相成りました」
そんな招待状が、ゆかりの人々の元へ送られてくる。
昭和30年代、先代の館主・豊田松蔵(宇崎竜童)が病に倒れ、
その弟子であった留吉(加瀬亮)が、
その志を引き継ぎ先代の妻・トヨ(宮沢りえ)と映画館を守る事となった。
古い時代、周囲の人々からは師匠のかみさんを寝取った若主人、
不義理な女将などと陰口を叩かれたりもした。
さらには映画産業が斜陽になり始め、
貧乏に耐えながらもひたすら映画を愛し、映画の灯を灯し続けた二人、
そして何よりも純粋にお互いを思いやり、愛し続けたのだった。

一方そんなオリヲン座を一番の遊び場としていた幼い子供がいた。
二人は毎日映写室の小窓から名画を覗いて成長した。
やがて大人になり、結婚して東京で生活を送っていたが、
いつしかお互いを思いやる心を見失い、別れを決意していた。
そんな祐次(田口トモロヲ)と良枝(樋口可南子)の元に、
まるで何かを予感させる様に、一通の招待状が届くのだった。

原作は浅田次郎氏の「オリヲン座からの招待状」(集英社刊)。
ベストセラー「鉄道員(ぽっぽや)」の最終篇に所収されています。
主演には山田洋次監督「たそがれ清兵衛」での
日本アカデミー賞主演女優賞を受賞の宮沢りえ。
相手役には、クリント・イーストウッド監督「硫黄島からの手紙」に出演、
周防正行監督「それでもボクはやってない」では主演の加瀬亮。
他に宇崎竜童、田口トモロヲ、中原ひとみ、樋口可南子、原田芳雄。
演出は三枝健起監督。
メインテーマは、ジャズアーティストの上原ひろみが提供しています。

オリオン座という名の映画館が閉館される、
その閉館記念上映に主人公たちが呼ばれるところからドラマが始まるというのは、
いま民放で放送中の連続ドラマ「歌姫」と同じなので、
同じ原作かと思ったのですが、まったく別物のようですね。
(あちらは舞台のドラマ化です。)
原作は30頁に満たない短編だそうで、
ロケは京都ならぬ横浜で五十余年も実際に活躍したかもめ座で撮影されたようで、
この点は立派。

あらかじめ書いてしまいますが、
浅田次郎の作品はあんまし好きではありません。
少なくとも映画なった奴は、ですね。
使い古されたファンタジーなり、SFなりのアイディア
(タイムスリップや死者の蘇り、天使と悪魔)を使って
ノスタルジックなドラマを感動的なもの、として読ませようとする手法は、
安易に使うとただのご都合主義なるので、
メジャーなSF作家やファンタジー作家は、そう見せないために
相当な制約を主人公に課しているし、
そもそもどんなトリックを使っているのか簡単にネタ割をしようとはしない。
それが浅田次郎の作品では大甘で、ゆるんだパンツのゴムごとくで、
見ていて実に気持ち悪い。
「ぽっぽ屋」あたりはこちらも浅田次郎を知らなかったので
まんまと騙されましたが、
「地下鉄(メトロ)にのって」「椿山課長の七日間」「憑神」と立て続けに
やられるとねえ。
それにしても短い期間に次々に映画化されたものです。
長編小説とは言え、無名の庶民が主人公で、
その身辺材料だけの世界観なので、登場人物も少なく、
場所の移動もたいしてなく、脚本が書きやすく、演出しやすく、制作費も安く済む、
という興業側にとって都合のよい原作書きなのでしょう。
たまにしかホームランが打てないバッターより、
コンスタントにヒットを飛ばして塁に出てくれる打者の方が、
監督としては使いやすいのと一緒ですね。
アカデミー賞より制作費の確実な回収がいつの世もプロデューサーの関心事ですから。

要するにプログラムピクチャー用の原作提供としてもってこいなんだな。
全部全部、プログラムピクチャーなんだ、と思えば
そんなに酷い作品はありません。
他愛の無いアイディアで、そこそこノスタルジーがあって、
程よく笑えて、泣きたい人専用“愁嘆場”が用意されている。
映画に意外性を求めない人にはぴったしです。
というより、驚きたくない人用に作られている映画なのではないかとさえ思えますね。

で、「オリオン座からの招待状」。
この作品の良い点は、
浅田次郎得意のファンタジーのアイディア、トリックが使われていないところです。
最近流行の“昭和三十年代”は出てきちゃいますが。
CGも出てきますが、「三丁目の夕日」ほどの奴はなくて、ごく地味。
単純に制作費の差でしょうけど、まあ、それで正解です。
舞台が京都である点が方言以外あまり出てないのが残念ですけど。
もともと映画館と隣近所しか出て来ないのは原作からしてそうなのでしょう。

松蔵(宇崎竜童)に義理立てした留吉(加瀬亮)が、
妻・トヨ(宮沢りえ)を護る、という構図は「無法松の一生」なのだけど、
直に映画館で「無法松の一生」を上映するあたりがいかにも浅田次郎ですね。
映画館には子供が入り浸っていて、みんなそろって誕生日祝いなんぞやって
「家族みたいだね」というダメ出しのセリフ付。
けど、劇中で出てくる「無法松の一生」のお祭りのシーンの方が
「オリオン座からの招待状」の本編よりはるかにエネルギーを感じさせ、
墓穴を掘っているのは皮肉です。
というより、戦前日本映画の最高傑作をまんま出すとは、
演出を誤ったとしか思えませんねぇ。

松蔵が死んで、テレビの台頭で映画が急速に斜陽して、
映画館が追い詰められていくのは歴史の通りですが、
これといった解決策が提示されているわけでもないのに、
エピソードが子供の方にシフトしてしまうのは、
見ていて消化不良を起こします。
店内販売の残り物で夕ご飯代わりにしてしまうところとか、
かなり可哀想で、心に残ってしまうのだけれどねえ。
(知り合いの映画館のフィルムを自転車で運び“自転車操業”するというのが
出てきますが、松蔵が元気な頃の話なので、解決策には当たりません。)

それと
成人した祐次(田口トモロヲ)と良枝(樋口可南子)が別れるというのが、
やはりパッとしませんね。
かえって年老いた留吉とトヨを懐かしみ、そのまま締めてしまった方が
中途半端にならなくていいように思えます。
加瀬亮と宮沢りえは及第点です。演技にもキャラにも特に新しい発見はないのだけれども。
映画の掲示板に「ニューシネマパラダイス」の改悪版と評する人がいて、
見も蓋もない事と言うなと思ったけど、
製作が東映なので、出てくる邦画の傑作集に東宝、松竹、ましてや日活作品がないのは
痛かった…


以下はネタバレとなるのでこの続きはmixi独身映画ファンコミニティの
「オリヲン座からの招待状」
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=25867229&comm_id=1299114をご覧下さい。



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