「ロード・トゥ・パーディッション」

「ロード・トゥ・パーディション」映画チラシ★映画基礎データー★
「ロード・トゥ・パーディッション」
2002年アメリカ映画
監督:サム・メンデス
脚本:ディビット・セルフ(「13デイズ」)
出演:トム・ハンクス ポール・ニューマン ジュード・ロウ
独身社会人映画ファンML に入ろう!! [MLの詳細]
メールアドレス

結構いろんな映画を見てきたつもりでしたけど「ロード・トゥ・パーディッション」で、トム・ハンクス、ポール・ニューマン、ジュード・ロウが殺しあう姿をスクリーンで見ることが出来るとは、思ってもみなかったです。

『アメリカン・ビューティー』のサム・メンデス監督が、世代の異なる3大スターと組んだギャング映画。大恐慌の時代に逃避行を繰り広げるマフィアの男と息子の触れ合いを描いています。

1931年、アイルランド系マフィアの幹部サリヴァン(トム・ハンクス)が、組織内の裏切りで妻子を殺される。からくも長男マイケルとともに難を逃れたサリヴァンは、組織が放った殺し屋マグワイヤ(ジュード・ロウ)の襲撃を交わしながら復讐の機会をうかがう。

手堅く作られた作品です。撮影、美術、衣装は美しく格調があります。が、脚本が平凡で予告編などからオチが読めてしまいます。三大スターはそれぞれに見せ場があり、それなりのレベルで仕事をしていますので、ファンの方々が失望することはありません。
しかし、三人が珍しく悪役、暗黒街の住人を演じているにもかかわらず、いつものとおりの演技なので新しい役柄を開拓した発見が感じられません。
評判とおりアカデミー賞を取るかもしれませんが、これは他に有力な対抗馬が無い場合に限られるのではないでしょうか。



ジョン・ルーニー(ポール・ニューマン)とコナー(ダニエル・クレイグ)親子とサリヴァンとマイケルの二組の親子が出てくる。
その対比でドラマは展開します。

ダニーの通夜の席で兄フィンがルーニーを批判するスピーチをしかけて、サリヴァンに車で送りかえらされてしまう。

マイケルと弟のピーターと寝床で、父サリヴァンの仕事とは何なのかと話をしている。マフィアの幹部というのが何者なのか、子供たちには良く分かってないからなのですが、好奇心に駆られたマイケルがサリヴァンの車のトランクに忍び込んだばかりに悲劇が始まってしまう。

コナーとフィンの話し合いにサリヴァンは立ち会うのですが、コナーが短気を起こしてフィンを撃ち殺してしまう。サリヴァンはやむを得ずフィンの手下達を殺すのですが、その一部始終をマイケルに目撃されてしまう。サリヴァンは息子に目撃されたことに衝撃を受けます。
当然、マイケルに口止めするし、話を知ったジョン・ルーニーもマイケルに口止めする。

しかし、コナーはサリヴァンを罠にはめて殺そうとして失敗。

慌ててサリヴァンが帰宅すると案の定、ピーターと妻が殺されている。辛くも難を逃れたサリヴァンとマイケルが車で町を離れます。



悪いのはコナー一人です。ジョンは馬鹿息子の暴走を止められないし、サリヴァンにひたすら同情している。
物足りないですね。ジョンは田舎とはいえマフィアのドンなのですから、もっとこわもてする感じがほしいです。
ポール・ニューマンは好々爺しすぎてしまって、サリヴァンに金を渡して外国に逃げるように言うことしか出来ないのですね。

血族優先なら、サリヴァンを殺すために自ら乗り出すべきだし、逆に組織優先なら、馬鹿息子を粛清するくらいの迫力が欲しく、そのどっちでもないコナーは見てて歯がゆいです。

サリヴァンとマイケルはシカゴのドン、フランク・ニティに会いに行きます。フランクはアル・カポネの逮捕後、シカゴに君臨しているイタリア系マフィアのドンです。
サリヴァンは以前フランクの下で働いた経験があるようで、庇護を求めるのですが、既にコナーの手が回っています。
そこにはジョンもいて、ルーニー一家はサリヴァン親子を敵にまわすことにしたとわかります。

 30年代のシカゴの街が出てきます。フルCGだと思ったのですが、今風のビルを幾つか“消した”だけだそうです。
シカゴのような大都会で昔の風景を切り取ることの出来る場所があるとは意外です。
美術や撮影のよさは既に書いたとおりですが、青春映画ではないのでオールディーズなどは出てきません。
時代を感じさせるジャズなどあれば更に良かったように思いますが、私が気がつかなかっただけで三十年代の音楽が使われていたか知れません。

親子がシカゴをあとにして後、マグワイヤが現れるんですが、フランクが差し向けた殺し屋なのですね。
コナーではなくて。ジュード・ロウは頭はげにしたり、歯を黄色に汚く染めたりして醜悪な殺人鬼に化けていましたが、あれは本当に必要なメイクだったんでしょうか。

好みの問題かもしれませんが、美青年が人を殺して写真とって、うっとりと写真を眺めている方が怖そうです。
演技の方はいいです。異常な人物を異常なまま演じている。変に同情の余地なんか無くて、あの役はそれで正解です。

 タイトルのパーディションというのは町の名前なのですね。
伯母のサラがいる湖のほとりの町で、サリヴァン親子はそこまで逃げていこうと旅をする。

 トム・ハンクスは黒いコートを着てマシンガンをぶっ放すのでギャングそのものですが、悪役の臭いがありません。
「虎ノ門」で井筒監督はそこを不満だとしています。
有名評論家の佐藤忠男氏は、マフィアは移民の自衛組織から始まったと、この映画はそのマフィアの側からドラマを描いているのだからトム・ハンクスが悪党顔に見えなくて当然だ、という意味のことを言っています。

 生活のためのヤクザ稼業なのですが、やっぱり社会悪には違いないので、殺人のシーンが多くて、かなり残酷です。
「死人が多すぎる」と映画関係の掲示板では難色を示すファンが多いです。

 私もサリヴァンを悪役に見せる必要は無いと思いますが、殺人は非日常的な異常な事態なのですから、尋常で無い緊張感というのがもっとほしかったです。
血のりの量は少なくていいから、“殺気”が欲しかった。これはサスペンス映画の盛り上げ方に通じると思うのですが、もっと死のイメージのダークさが欲しかったです。
影とか音とか、いろいろ手はあるはずですが。

間接的な表現で殺人を見せる場面というのが幾つかあるのですが、どうも単にR指定を回避したかっただけみたいで、迫力に繋がってないのですね。
親子のやり取りとかのドラマは期待通り良く出ていますので、如何にも惜しいです。

 以下ネタばれ改行です。









サリヴァン親子は、銀行を襲ってアル・カポネの隠し預金を次々に奪います。 
フランク一家とルーニー一家の仲間割れを狙ってのことですが。カポネの入獄中の留守をフランクが預かっているという基本的な力関係の説明が欠けているので、ちょっとピンと来にくいです。これは私の不注意で気がつかなかっただけでしょうか?

ともあれ、サリヴァンの狙いは当たって、ルーニー親子を倒します。
そのあとパーディションにたどり着いたサリヴァンがふたたびマグワイヤに襲われます。
他の映画の掲示板にもあったのですが、このくだり、サリヴァンは不自然なほど隙だらけです。
カポネとフランク一家こそ用心せねばならないことは彼なら知っていて当然でしょうに。
パーディションについたとたんにくつろいでしまうなんて。

しかし、このドラマはあくまで二組の親子の話ですので、片一方の親子が画面から退場してしまったところで、自然と幕引きになるのは致し方ないことかもしれません。

どうも辛口の批評となってしまいましたが、サリヴァン親子の心情描写は意外性は少しも無いのですが、過不足なく描かれ劇場を出る時は、気分よく不満の無いあと味となっています。


トップページ(映画の日特選、小説と脚本の比較レビュー)に戻る。