「竜馬の妻とその夫と愛人」
★映画基礎データー★「竜馬の妻とその夫と愛人」 2002年 原作・脚本:三谷幸喜 監督:市川 準 出演:鈴木京香 木梨憲武 中井貴一 江口洋介 |
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人気脚本家・三谷幸喜が2000年に原作・脚本・演出を担当して話題を呼んだ舞台劇「竜馬の妻とその夫と愛人」が、CM・映画で活躍する市川準監督によって映画化されました。
ヒット作「みんなのいえ」に続いて映画の仕事に挑んだ三谷幸喜は
「僕は脚本家で、日頃からできるだけ色いろな演出家の方と仕事をしてみたいと思っていましたから今回のお話は大変光栄」と記者会見で答えてますが、
本音かどうかは不明。
出たがりの三谷氏は作品中にも突然姿を出しています。
お話は竜馬の死後、残された人達のごたごたです。
明治12年。
勝海舟(橋爪功)らは維新の功労者・坂本竜馬の十三回忌を行う準備をします。
"伝説の妻"である竜馬の妻"おりょう(鈴木京香)"は竜馬の死後、
海援隊と衝突し、その後の消息は不明瞭のまま。
元海援隊隊員で、おりょうの妹と結婚し、
今は海軍中佐となった覚兵衛(中井貴一)は勝におりょうに十三回忌に出るよう説得を命じられて横須賀に出向きます。
"おりょう"は既に松兵衛(木梨憲武)というみすぼらしいテキ屋と再婚していましたが、平凡な暮らしに嫌気が差して、すっかりすさんだ様子。
近頃では竜馬そっくりな虎蔵(江口洋介)という愛人まで作っていると知って、
頭を抱えてしまいます。
おりょうは竜馬の死後、冷たくあしらわれた海援隊をいまでも恨んでいるようで、
テコでも十三回忌には出てくれそうもありません。
話を聞いた勝は、覚兵衛に今一度説得する様命ずるとともに、怠惰な暮らしを改めもせず、固辞するなら、斬れとぶっそうな指図を。
実は松兵衛と結婚する時、周囲とのとりなしに奔走し、
松兵衛に軍の仕事を紹介した覚兵衛は大慌て、
松兵衛の尻を叩いて、虎蔵とおりょうを別れさせるよう談判させます。
この3者の談判シーンがひたすらおかしいです。
しかし圧倒的なセリフ量でえんえんと見せるシーンなので、
役者さんたちががんばってるな、とエールを贈る事は出来ても、
舞台芝居そのものじゃないかと思ってしまいます。
映画ポスターも無地背景に役者の立ち姿でなんだか、舞台ポスターみたい。
では映画的な魅力は無いのかというと、カメラの寄りのシーン、
黄昏から夜半に掛けてのシーンがとても美しく撮れています。
普通、アップが綺麗などと書くと、「じゃテレビじゃないか」と反論されそうですが、
例えばおりょうのうなじとかの艶っぽさは、実に映画的です。
またおりょうが虎蔵と入り浸る飯屋の内外のごたごたした人の出入りが、
そんちょそこいらのテレビ時代劇とは歴然と品格がちがっていて実に風情があります。
脚本と配役の話をすると、まず"おりょう"鈴木京香がイイです。
史実でも知られる通り、彼女は竜馬と出会わなければ場末の女中で終わった人です。それが歴史上の偉人と出会いともに生きることで輝いた。
竜馬とともに死ねればそれが1番の幸せだったかもしれない、燃え尽きちゃった女、そのもののひとりで生き残ってしまった悲しみが美しい…。
その夫"松兵衛"木梨憲武がまたいいです。
とにかく金なく、力なく、根性無く、将来性もなければ、展望もなにもない、
ただおりょうさんにべたぼれというだけの男です。
「だって俺、生きてるじゃないか。奴は死んじまったけど、俺いきてるじゃないか」というのが精一杯の抵抗です。
永遠に振り向いてくれない女をただただ愛する男です。
それは悲劇だし、丸っきしコメディだし、
でその両方がこの役の演じどころで、うまいこと見せてくれています。
で、すっかり"松兵衛"に観客が感情移入しきった所で、最後に背負い投げを食らわせる。
ネタ晴らしになるので書きませんが。
まあ、三谷幸喜というひとは食えない人です。
それが映画でも寸分の狂いも無くツボを当てています。
どんなに感情移入しても決して当事者になれない登場人物で、
全体の狂言回しが"覚兵衛"中井貴一です。
中井さんは芸歴が長い分、
どんな芝居でも観客に手のうちが知られてしまっている様なところがあります。
いつものとおり、「周囲に押しきられてオタオタする中井さん」を演じていて、
実は4人の主演者の中では1番芝居は退屈ですが、
"覚兵衛"はこの作品世界での三谷幸喜自身の分身ではないかな、
とも考えられそうです。
「みんなの家」で棟梁と建築士の息投合する姿に頬ずりしちゃう主人公の脚本家の姿にダブルのですよね。
ネタ晴らしというほどのことではないのですが、
松兵衛の尻を叩きつつも実は自分自身がおりょうにぞっこんです。
それは見てりゃすぐわかってしまうことなのだけれど、
本人だけが人に知られまい、と必死なとこがきゃわいいです。
それは恋であって愛ではない。
この作品は登場人物みんなが他の誰かに恋をしている。
寝床で男と女がばこばこやっても愛じゃないんです。
これは面白いですね。
そういう関係を邦画で描くのは珍しいと思います。
"おりょう"の愛人"虎蔵"江口洋介のことを書くのは難しいですね。
ひとつまちがうとただのねたばらしになるから。
1番意外性がありました。
江口洋介がこういう人物を演ずるとは思いませんでした。とだけ言っておきます。
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