「スラムドック$ミリオネラ」

「スラムドック$ミリオネラ」映画チラシ■作品基礎データ
「スラムドック$ミリオネラ」
2008年イギリス映画
監督:ダニー・ボイル
脚本:サイモン・ビューフォイ
原作:「ぼくと1ルピーの神様」(ランダムハウス講談社)
    ヴィカス・スワラップ著


mixi(ミクシー)「独身社会人映画ファンコミュニティ」に入ろう!


インド中の人々が、今、テレビに釘付けになっている。
大人気番組「クイズ$ミリオネア」が、
番組の歴史上最高にエキサイティングな瞬間を迎えているのだ。
挑戦者はムンバイのスラム出身の18歳、ジャマール・マリク。
学校に行ったこともない彼は次々に難解な質問に正解を出し続け、
あと1問で2000万ルピーを手にするところまで来ているのだ。
いまだかつて医者も弁護士も、ここまで勝ち残ったことはない。
もちろん、番組のホスト、プレーム・クマールにとって、このなりゆきはおもしろくない。
クマールはこっそりと警察に連絡し、
1日目の収録が終了したところでジャマールを逮捕させてしまった。

どんなずるい手段を使ったのかと尋問され、拷問を受けるジャマール。
単に本当に答えを知っていただけだと主張する彼は、
これまでに出された質問ひとつひとつについて、
その答えを知ることになった過酷な過去を話し始めた。

ジャマールと兄のサリームは、幼い頃目の前で母を亡くし孤児になった。
ある日、ふたりは、ひとりぽつんと立っている女の子を発見する。
放っておけという兄の言葉に逆らって、
ラティカという名のその孤児の女の子を自分たちの仲間に招き入れてあげるジャマール。

友人になったラティカ、ジャマール、サリームの3人は、
自分たちを“三銃士”と見立てて、
想像を絶する究極に残酷な少年時代を手を取り合って生き抜く。
しかし、孤児たちを搾取する恐ろしい大人たちの元から逃げ出す途中で、
ラティカと兄弟は生き別れとなってしまう。

兄弟2人となったジャマールとサリームは、
電車の中で乗客から盗みを働いたり、
タージ・マハルで焼き付けの知識を得て観光ガイドのフリをし、
金を稼いだりして生き延びていた。

どんな苦労にさらされながらも、決して金銭への欲望にとらわれることなく、
まっすぐな心と誠実さを失わないジャマールと対象的に、
サリームは金とパワーに貪欲になっていき、兄弟の溝は深まっていった。
そんなジャマールの心の支えとなってくれたのは、
今はどこに住むのかもわからない、幼なじみのラティカだった。
彼女をどうしても見つけたい。
その一心からジャマールは、「クイズ$ミリオネア」に参加することを決意する。
インドのどこかで、
彼女が見ていて自分を見付けてくれるかもしれないという希望に賭けるためだった。

警察の尋問を受けるジャマールが、自らの過去を語るうちに、
彼がなぜ質問の答えを知っていたのかが少しずつ明らかになっていく。
ジャマールの話を聞くうちに、
最初は敵意に満ちていた警部も、次第に心を動かされていく。
このスラムの負け犬は、もしかしたら真実を語っているのかもしれない。
さらに会話を続けるうちに、
そもそもジャマールがなぜクイズ番組に出演しようと思ったのか、
その動機が明らかにされ、
警部はジャマールに「スタジオに戻って、最後の質問に答えなさい」と言う。
そしてジャマールは、全てを賭けた“ファイナル・アンサー”を出すために、
スタジオへと戻ることになる。

果たして最後の質問には、何が用意されているのか?
ここで正解が出せなければ、彼は元の生活に戻ることになる。
一方で、正解すれば、2000万ルピーという夢のような大金を手にすることができるのだ。
そして何よりも、
この〈スラムの負け犬〉ジャマールは、本当の目的を達成することができるのだろうか。
インド中が息を飲んで見守る中、
彼に出された最後の質問は、ジャマールの人生を試すような質問だった―。

2008年9月トロント国際映画祭で世界初上映となった本作
『スラムドッグ$ミリオネア』は、
翌朝には批評家や業界関係者の間で「傑作」と絶賛の評や口コミが出始め、
同映画祭において最高峰となる〈最優秀観客賞〉を受賞。
11月に全米で公開されると、
10館からスタートした公開が年内には600館規模へと拡大。
12月に発表されたナショナル・ボード・オブ・レビューでは
08年の最優秀映画賞に輝いたばかりか、監督賞、有力新人賞も獲得。
更には先日発表されたゴールデン・グローブ賞では見事
〈最優秀作品賞〉〈最優秀監督賞〉〈最優秀脚本賞〉〈最優秀作曲賞〉の最多4部門を受賞し、
アカデミー賞では8冠に輝いた
現在も日々世界中の映画賞を受賞し続けている!

インド生まれの作家ヴィカス・スワラップによる小説
「ぼくと1ルピーの神様」を元に、
脚本を手掛けたのは、『フル・モンティ』でオスカー候補に挙がった
サイモン・ビューフォイ。
執筆前にリサーチのため3度インドを訪れた彼は、
スラムの人々の持つポジティブさ、コミュニティの意識に感銘し、
そのエッセンスをたっぷりと脚本に盛り込んだ。

監督は『トレインスポッティング』『ザ・ビーチ』『28日後...』など
毎回まったく違ったジャンルの作品を贈り出してきた個性派の
ダニー・ボイル。
インドの持つエネルギーをスクリーンに反映させたいと願ったボイルは、
出演者の多くを現地のスラムでスカウト。
リアリティを重視して、言語も全体の3分の1をヒンディー語で撮影した。
また、作曲には、インドの映画音楽を100曲以上作曲し、
「ボリウッドのジョン・ウィリアムズ」とも呼ばれるA・R・ラフマーンを起用。
その結果、まさに「今」のインドの躍動感と独特のエッジに満ちあふれる、
エキゾチックかつパワフルな映像が誕生することになった。

オスカー8冠の「スラムドック&ミリオネラ」が
いよいよ本邦公開というんで、
かっとんで見に行きました。

なるほど、たいした傑作です。

「ミリオネラ」というのは「クイズ・ミリオネラ」のことです。
みのさんが「ファイナルアンサー?」って尋ねる例の番組です。

あれは世界中でライセンス放送されていて、
インドの放送番組の出場者が主人公です。

特に前半の凄みのありすぎるスラムの描写に肝をつぶしました。
殺されそうな貧乏というのがあるんですね。

そして後半のインドの経済的繁栄に歩調をあわせるように、
兄弟が道を隔てていく様子は香港任侠映画もぶっちぎりの迫力。

そしてラストの逆転劇。
「クイズ・ミリオネラ」のルールに乗っかったどんでん返しなのだけど、
どん底の人生にも、望みの持てるオチにこころして泣けました。

そうです、こころして泣くべきです。
語るに値する真実はここにある。
どんな世界にも
希望はきっと輝いている。

面白いのが、エンドタイトルロールの出るところで、
いきなし「踊るマハラジャ」になるところ。
劇場の椅子から転げ落ちそうになりましたが、
でも踊る若い二人に、ぴょんぴょんと飛び跳ねる、
幼いふたりの姿がカットバックしてみせるそのセンスにシビレました。
なんていうか、明るくて、悲しいんだなぁ。

インドのハリウッドこと“ボリウッド”のことは、
バラエティ番組で知っていましたが、
これほどのものとは思いませんでした。
香港映画でも、韓国映画でもない、
アジアパワー炸裂の映画世界を垣間見ました。

映画の元ネタ
『クイズ$ミリオネア』は、
日本ではフジテレビで放送されていたクイズ番組である。
番組内で使われる「ファイナルアンサー!?」は流行語になり社会現象にもなった。
『クイズ$ミリオネア』は、英国のITVで放送されている
『フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア
(Who Wants to Be a Millionaire?)』の日本版である。
ミリオネア(Millionaire)とは「百万長者」「大富豪」の意。
フジテレビの放送以前に日本テレビの「世界まる見え!テレビ特捜部」で
他国版が紹介されたことがある。
日本版は2000年4月20日、フジテレビ系列で放送が開始された。
当初は毎週木曜日19:00 - 19:53に放送。
2001年4月から2007年3月29日まで毎週木曜日19:00 -
19:57にレギュラー放送された。
2007年3月29日放送分で7年間にわたったレギュラー放送が終了。

司会はみのもんた。
毎回、予選を勝ち抜いた一般視聴者10名(通常は18歳以上)が出演。
「早押し並べ替えクイズ」で最も早く正解できた人が、
司会のみのもんたの出題するクイズに挑戦する。
フジテレビV5スタジオで収録されていた。

挑戦者は司会者が出題する四者択一(4択)方式による全15問のクイズを答えていく。
途中、1問でも間違えるとその時点で終了。
その時点で獲得した賞金は保証分を残し失われる
(保証分は5問目正解で100,000円、10問目正解で1,000,000円)。

「ライフライン」という3種類の救済措置があり、各1回ずつ使用できる。
答えがわからない場合、もしくはこれ以上挑戦の必要がないと判断した場合、
「ドロップアウト」を宣言することで挑戦終了となり、
その時点での賞金を全額持ち帰ることができる。

解答者は会場に1名を応援として呼ぶ事が出来る。応援者は成り行きを見守る。
この番組は世界的に視聴者参加クイズ番組であり、
レギュラー放送で著名人が登場するのは日本版だけである。

クイズの解答に制限時間は一切ない。
クイズの解答を口頭で答えると、司会者に「ファイナルアンサー?」と返される。
解答を確定させるには、これに対し「ファイナルアンサー」と宣言する必要がある
(後述の「ドロップアウト」宣言時も同様の流れである)。

ファイナルアンサーを宣言するまでは、解答は何度でも言い直すことができる。
クイズの解答に自信がある場合などは、「Bの豊臣秀吉、ファイナルアンサー!」といったように、
司会者の返しを待たずにいきなりファイナルアンサーを宣言することもできる。
これは易しい問題でよく行われる。

ファイナルアンサーを宣言するまで、後ろを振り返ることは禁止されている。
しかし、このルールは厳格に適用されてはいなかったようで、
このルールで失格となった解答者は今のところ存在しない。

ライフライン
答えが分からない、もしくは自信がない場合などのために、
ライフラインという3つの救済措置がある。
使えるのは全問を通して1度ずつに限られるが、
1問中に複数のライフラインを使用することは可能である。

フィフティ・フィフティ(50:50)
4つの選択肢のうち、誤っているもの2つをコンピュータが選び、消去してくれる。
もちろんその結果、選択肢は二者択一(五分五分)となる。
使う直前にみのが「どれとどれで迷ってますか?」と尋ねて来ることがよくあるが、
そこで答えた2つが残ってしまうことがよくみられる
(もちろん、逆に両方とも消されたり、都合よく選択肢が残ることもある)。

テレフォン
解答者本人があらかじめ指名し、スタジオ外にスタンバイしている協力者4人
(テレフォンブレーン 以下TB)に電話をかけ、30秒間相談することができる。
テレフォンブレーンは資料などを使って解答を調べても構わない。
ただし、問題の内容も解答者自身がすべて口頭で伝えなければならないため、
解答者が焦って早口になってしまい問題の内容がなかなか伝わらなかったり、
最終的に答えが出ないまま時間が足りなくなることがしばしばある。

前述の通り資料などを調べることは可能で、
もちろんパソコンでウェブサイトを検索するのも認められているが、
実際にパソコンが使用される例はあまりない。
実際に検索しても、関係のない検索結果ばかり表示され、
間に合わなかったといった例もある。

なお、番組中では触れてはいないが、
テレフォンブレーン側の受話器にスピーカーなどを接続して
全員に聞こえるようにする行為(フッキング)は禁止されている。
電話の声を直接聞けるのは4人のうちの1人のみである。

原則としてテレフォンブレーンは、
テレフォンが使用されないと画面に映ることはないが、TB未使用で終了
(ほとんどが不正解による)した場合でも、
数秒間だけ残念がっている姿が映されることもある。

オーディエンス
その問題の答えをその場で観客全員に投票してもらい、
棒グラフによる投票結果を見ることができる。
もちろん、一番得票数の高い選択肢が必ず正解とは限らない。
前半の比較的易しい問題では、正解の選択肢に圧倒的(80%以上)に票が集まり易い。

難問が多い後半では票が大きく割れることもあり、
最多票を裏切ったり、最多票を答えて不正解退場になるケースも少なくない。

ドロップアウト
出題された問題がどうしても分からない場合、
答える前に「ドロップアウト」を宣言すると、
その時点でクイズをやめることができる。
この場合、獲得した賞金を全額持ち帰ることができる。
たとえば、13問目(500万円)の問題でドロップアウトをした場合、
直前に正解した12問目の賞金額(250万円)を獲得できる。

ドロップアウトは問題と選択肢を見てから宣言ができる。
よって問題の後半でライフラインを使い切り、
勘に頼るしかない状況になって賞金が減少するリスクを減らしたいために
宣言する使われ方がほとんどである。
ドロップアウトが確定した後のお約束として、
ドロップアウトせずにその問題に答えた場合の選択肢をみのが尋ねる。
ドロップアウトしてよかったことがほとんどだが、
もちろん実は正解していたというケースもある。

出題される問題が易しい序盤のうちは、
どんなに解答者が迷ってもみのはすぐに正解の発表を行うが、
後半の問題となり難しくなるにつれ、
正解の発表をあえて遅らせて解答者の動揺を誘う演出が行われる
(問題の正解は「ファイナルアンサー」決定直後に知らされる)。
この行為は通称「みの溜め」(この用語は番組内のナレーションでも用いられている)
と呼ばれ、あとの問題になるほど溜める時間が長くなっていく。
特に最終問題では、流れ続けていたBGMが一旦止まり、
会場も静寂に包まれ、「みの溜め」の時間はより一層長くなる
他国版では、何問目であろうと司会者が溜めることがない国も見られる。
みの曰く、間がないと1時間もたない為、
あえて間を作ってみたところイギリスから指導に来ていたプロデューサー3人が
気に入ってくれ、あの形となった。
また、前述のようなBGMが一旦止まり会場を静寂に包む演出は、
他国版にない日本独自のものである。

賞金100万円以降の問題では、
ファイナルアンサーを宣言した直後にみのが「この○○万円には戻れません」
(もうドロップアウトできず、正解か不正解のどちらかであるという意味)
と言いながら小切手を破く演出もあり、「みの溜め」と共によく用いられた。
みのはこの演出のために、
番組出演中はスーツの内ポケットに小切手を何枚も忍ばせている。
またこの状態でCMに入ることがあり、視聴者にも緊張感を与えるが、
放送終了時間間近だと不正解だと容易に推測できる
(ただし、初期の半年程度は週またぎの挑戦が認められていて、
挑戦中に放送時間切れのサイレンが鳴った場合は、
翌週の放送でその続きから挑戦できていた)。
放送初期は放送終了時刻になっても解答者の挑戦が続いていた場合、
そこで中断し、次回に続きを放送していたが、
日本版では放送中期以降は行わなくなり、
最後まで放送できるように編集で調整されていた。
挑戦者一人のために後に完全版を放送したこともあった。

15問全てに正解すると天井から銀色の紙吹雪が大量に降り(全世界共通)、
賞金10,000,000円を獲得できる。
獲得の瞬間、画面下に「○○(解答者名)(改行)MILLIONAIRE」のテロップが出る。

製作費は約1400万ドルという低予算、
劇中の言語の3分の1は外国語(ヒンズー語)、
そしてスター俳優は一切出ていない作品ながら、
見事アカデミー賞8冠に輝いた本作。ボイル監督は成功の理由をこう分析する。

■ Danny Boyle 
1956年10月20日、英マンチェスター生まれ。
舞台監督やテレビ映画の演出家を経て、
95年、「シャロウ・グレイブ」で映画監督デビュー。
1作目に続きユアン・マクレガー主演の「トレインスポッティング」(96年)で、
薬物中毒の若者らを斬新な映像で描き、日本でも話題を呼んだ。
ほかに「普通じゃない」(97年)、「ザ・ビーチ」(2000年)、
「ミリオンズ」(2004年)など。


「受賞した瞬間を今でも思い起こすよ。
この映画の成功はストーリーによるところが大きいと思う。
一人の少年、つまりはスラムドッグという勝ちそうもない弱者が、
自分の夢のために絶え間なく努力をして、
逆境から学んだことを活かしながらすべてを乗り越えていき、
最後に大きなものを勝ち取るというストーリー。
これは、我々が住むこの世界のどこかで必ず起こっている話だし、
国や宗教にかかわらず皆が共感する話だと思うんだ。
それに世界同時不況という厳しい局面の中、
人々がその長い旅の後に希望を求めていたり、
オバマ大統領が当選したことに見られるような変化を望んでいたりと、
より外のものに対してオープンになっている傾向も影響していると思う」

そう語るボイル監督に、
本作の映画化を決意させたのは「フル・モンティ」のサイモン・ボーフォイが脚色した
シナリオ。監督は原作よりも先にシナリオを読んだという。

「とにかく素晴らしいシナリオだったんだ。
ムンバイの貧しいスラム街出身の青年が夢のある世界に入り込んでいくところに
惹かれたし、貧しい世界と豪華な世界の対比も面白かった。
単に小説の脚色ということではなく、
ほとんどサイモン自身の芸術作品になっていたよ。
もちろん小説のアイデアを活かしているんだけどね。
彼の脚本には方向性があるから好きなんだと思う。
まるで建築家のように、設計図を描き、始まり、中盤、終わりを作り、
そこにシーンを積み上げていく。
建築するように積み重ねながら、しばらくするとどこに向かっていくかが見え始める。
そういう脚本が好きなんだ。
方向性がなくフワフワしているような、調子ばかりいい脚本は好きじゃないね」

ボイル監督と同様にオスカーを受賞したボーフォイのシナリオだが、
主人公ジャマールをはじめ、兄のサリーム、初恋の人ラティカら3人の
メインキャラクターの性格が類型的との声もあった。

「それは正にその通りなんだけど、
この兄弟2人と女1人というキャラクターのパターンは
ボリウッド映画では非常に多く見受けられるものなんだ(笑)。
兄弟の方は、最後に再会することもあるんだけど、大抵は母親を失っている。
そして兄弟のどちらかは、もう2度と傷つきたくないということで、
暴力を他者に向けることで自分を守ろうとする性格となり、
もう1人はキレイな心を保ちながら、
すべてを乗り越えて他人の中にも善を見出すことが出来るキャラクターという
パターンなんだ。
本作のマリク兄弟のパターンはまさにそれを踏襲している。
その他、ボリウッド映画でよく出てくるパターンが"ロスト・ガール"という要素。
主人公が好意を持っている女性が突然目の前から消えてしまい、
探し求めるというパターン。これも今回の映画には含まれているよね。
あとサイモンは
『ムンバイで撮ると、どうしたって(チャールズ・)ディケンズ(※)
っぽくなってしまうんだ』って言ってたよ。
というのも、ムンバイというところは、現在凄まじい成長を遂げていて、
多くの人間が行き交っているだけに、
キャラを強く押し出して叫ばなければ、自らの存在をアピールできない街なんだ。
だから、ストーリーテリングの上でもキャラクターたちを強く出して、
動きを大きくする必然性があったんだよ。
これはディケンズの小説に出てくるキャラクターにも共通することで、
メロドラマチックであったり、
現実だったらこんなことありえないっていう偶然が頻発するんだ」

本作には舞台設定、キャラクター、音楽など、
これまでのボイル映画にはない新しい要素がふんだんに盛り込まれているが、
ボイル監督がデビュー作から一貫して描き続けている"サバイバル"に関する映画でもある。


「ご指摘の通り、僕はキャラクターたちを極端な状況に対峙させることが好きで、
人生の細かい機微、ディテールにはあまり興味はない。
例えば、『28日後...』のように、
ハッと起きるとロンドンに人っ子一人いないという状況。
こういう方が自分は好きなんだ。
それは今回の『スラムドッグ』においても同じで、
子供たちが楽しく遊んでいると母親が殺されたりとか、
息子が死にそうになったりとか、
もちろん実際の人生でそういったことが起きたらとんでもないことだけど、
そういうドラマの中で、キャラクターをそういった立場に置くのが好きなんだ。
その極端な状況に置かれれば、
人はそこからなんとか抜け出そうとするし、解決しようするものなんだよ。
僕の映画のほとんどは、そうやってストーリーが進んでいく。
だから僕にとって"サバイバル"というのは大好きなテーマなんだ。
ちなみに9月からこの『スラムドッグ』の宣伝を続けているんだけど、
気がついたのが女性を主役にした映画をまだ撮っていないということ。
もちろん重要な女性キャラクターはいままでたくさん登場してるけど、
まだ主役にした映画は撮ってないから、それにチャレンジしたいなと思っているんだ」

オスカーを受賞して、新たな代表作となった本作だが、
作品を完成させて監督自身が変わったことはどんなことなのだろうか?

「まず、60年前まではインドが大英帝国の植民地だったということで、
労働者階級出身であるにもかかわらず、
心のどこかで優越感を持っていた恥ずかしい自分を再教育しなければならなかった。
人口6000万人のイギリスと比べて、12億人も人口がいるというインド。
彼らが自分から学ぶものなんて何もないだろうけど、
反対に僕は彼らから様々なことを学ばなければならなかったんだ。
それから、ムンバイというところは、
本当に極端なものが隣り合わせに存在している世界で、
まったく説明できないようなことがたくさんあった。
すべてにおいて色々と説明をしたがる我々西洋人の常識をぶっ飛ばしてくれたんだ(笑)。
だから、あるがままを受け入れるということを学んだかな。
今回の撮影は他のときと違って、コントロールが一切効かなかった。
常に変動し続けていて、何も決まっているものがないから、
劇中のつながり(コンティニュイティ)を失うことがあったり、
同じテイクを何度も撮るということが出来ないという状況だった。
しかも環境的には街の通行人の数は多いし、インフラもまともに整備されていない。
そんな中で、コントロールを手放さなければならないということを覚ったんだ。
だけど、その代わりに得たものが鮮烈な"生"、生命感だったんだ。
この経験は、
映画公開後の今もアカデミー賞なんかも含めていろいろなことが起こっているけど、
凄く役に立っているんだよ」

いくつもの偶然が重なってオスカー受賞という栄光を勝ち取った本作。
監督によると、本作製作過程には運命に導かれたとしか思えない瞬間が
数多くあったという。

「実は今回の作品は、
もともとワーナー・インディペンデント・ピクチャーズ(以下、WIP)という
ワーナー・ブラザース映画のインディペンデントレーベルが配給する
予定だったんだけど、編集中にこのWIPが閉鎖されて、
アメリカでは"ビデオスルーかも"なんていう話になったんだ。
そのときに、どういうわけかフォックス・サーチライトが手を差し伸べてくれて、
劇場公開出来ることになった。
自分にとっては、この経緯と出来事が、まさに"運命"としか思えなかったんだ。
"運命"なんていうと、
わりとチャーミングでロマンティックな印象を受けることが多いけど、
より深遠な、複雑なものであることを今回のインドでの映画製作で実感したんだ。
インドに赴くまで、運命なんてそこまで信じていなかったんだけどね(笑)」

※ イギリス・ビクトリア朝時代(1837〜1901)の国民的作家。
代表作に「オリバー・ツイスト」「クリスマス・キャロル」「デビッド・コパフィールド」
「二都物語」「大いなる遺産」など。

 米資本映画以外での作品賞受賞は「ラストエンペラー」(1988年)以来、
21年ぶりの快挙。
どうして「スラムドッグ$ミリオネア」がハリウッド映画人にも支持されたのか。

 「勝ち目のない負け犬が勝利をつかもうとするのは古典的で、
世界中の人が好きなタイプのストーリーです。
観客に希望を感じてもらうことが大切で、
まさに希望を体現しているのが主人公のジャマールじゃないかな。
恵まれていないからこそ、みんなが応援したくなる」。

 当初、監督依頼に乗り気ではなかった。

「クイズ番組の映画だと聞いて躊躇(ちゅうちょ)したのですが、
脚本がサイモン・ビューフォイと聞いて気が変わった」。
日本でも大ヒットした「フル・モンティ」(97年)の脚本家で、
ボイル監督は彼が書いた今作の脚本を10ページほど読んだ時点で、
引き受けることを決めたという。
「『フル・モンティ』は小さな題材にもかかわらず、
温かくてみんなを包み込むようなところが素敵だなと思っていた。
まさに同じ感じを『スラムドッグ』にも抱きました。
ストーリー自体のスケールは小さいけど、
世界の全員と分かち合えるような発信の仕方がすばらしい」

 もう一つ惹(ひ)かれたのが、舞台となったインド西海岸ムンバイの街だ。

「エネルギーに満ちあふれていた。映画作家にとっては『宝箱のような場所』です。
貧困を超えたスピリチュアルなものをとらえられるように気をつけて撮りました」。

小回りのきくデジタル撮影にしたのもそのためだ。
しかもジャマールの青年時代役(デーブ・パテル)だけが英出身で、
ほかの出演者は全員インド生まれと現地色を強めた。
 最も気に入ったロケ地がチャトラパティ・シバージー駅(旧ビクトリア・ターミナス駅)。

「インドの心臓ともいえる駅です。
ジャマールが悪党から幼なじみのラティカを奪われる場面もここ。
すごく混んでいて撮影は大変だけど、昔から鉄道や駅が好きでね。
ただ、悲しいことにテロが起きましたよね…」。

日本人ら約160人が犠牲となった2008年11月のムンバイ同時テロで、
この駅は標的の一つとなった。

 「映画を見た人には駅での出来事は悲しい思い出ではなく、
明るいイメージとして心にとどめてくれるかもしれません」と…



以下はネタバレとなるのでmixi独身映画ファンコミュニティ
http://mixi.jp/view_community.pl?id=1299114
にて『スラムドック$ミリオネラ』の頁をご覧下さい。



トップページ(映画制作裏話、映画と原作比較レビュー)に戻る。