「スチームボーイ」映画製作裏話

「スチームボーイ」映画チラシ★映画基礎データー★
「スチームボーイ」
2003年 日本映画
監督 大友克洋
脚本 大友克洋 村井さだゆき
出演 鈴木杏 小西真奈美
               

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19世紀の産業革命のイギリスを舞台に、
驚異の発明“スチームボール”をめぐる少年の勇気と希望の冒険物語「スチームボーイ」です。
監督は『AKIRA』で全世界に認められた大友克洋。
主人公レイの声は『花とアリス』の鈴木杏。
スチームボールを開発させた財団の令嬢スカーレットを『阿弥陀堂だより』の
小西真奈美が
担当しています。総作画枚数18万枚の緻密に描かれた映像とその迫力は必見で
あります。

公開初日の「スチームボーイ」の舞台挨拶で、プロデューサーより続編制作決
定の発表があり劇場は大いに盛り上がったとか。
脚本と映像を別々に採点するとなると、脚本3点、映像85点、というところで
すか。
ストーリーボードが先行して描かれ、膨張しすぎたアイデアを整理収束させる
ために脚本が書かれたようです。『AKIRA』そのときと同じですね。大友克洋先
生、進歩はないといえばない。笑

ところがその映像のイマジネーションが、とても素晴らしいです。
イマジネーションから活劇の場面が生まれて、
主人公たちの躍動するキャラクターが生まれている。
主人公たちが縦横に走り回るためのステージとして美術設定がつくられ、
戦いの動機付けのための基本設定がつくられ、ラストシーンにたどり着くまでの、
活劇から活劇へ繋がる行間を埋めるために脚本が書かれた、そんな感じでしょうか?

 19世紀半ば、世界初の万国博覧会を目前にしたイギリス。
研究のため渡米中の発明家・父エディと祖父ロイドの帰りを待つレイ少年もまた、
発明が大好きな男の子だ。そんなある日、レイのもとに謎の金属ボールが届く。
祖父のロイドからだ。
荷物の到着を追いかけるようにして、父と祖父をアメリカへ招いたオハラ財団の
使者と名乗る男たちが現れ、ボールを奪おうとする。
自作の一輪自走車に乗り、ボールを抱えて逃げ出すレイ。
だが蒸気歯車メカで追いかけてくる男たちに捕まり、万国博覧会のパビリオン
に閉じこめられてしまう。そこでレイはアメリカにいるはずの父エディと再会
し、金属ボールの秘密を知る。
超高圧力の蒸気を高密度に封じ込めた球体。
それは人類の歴史を塗り変える力を秘めた驚異の発明〈スチームボール〉だっ
たのだ! 
財団はその力を兵器として世界中に売りさばこうとしていた。
「おじいちゃんは、戦争のためにスチームボールを発明したんじゃない!」

 レイと財団のボールをめぐる争いは、やがてイギリス軍までが出動する大騒
ぎになる。
その騒動の中、オハラ財団のパビリオンに偽装されていた移動要塞《スチーム
城》が
イギリス軍の前に現し、ロンドン市街へと暴走をはじめるのだった
刻一刻と《スチーム城》の動力部の爆発が迫る。その爆発はロンドンを壊滅さ
せかねない。
科学とは、人類の希望なのか、それとも禁断の知識なのか。
レイは《スチーム城》の暴走を阻止すべく《スチームボーイ》となって大空へ
飛びたつ!


1996年の秋、
それまでこう着状態になっていた『スチームボーイ』の企画は、
『MEMORIES』のプロデューサー渡辺繁さんの協力申し出で、
大友さんが『スチームボーイ』の権利を自分で買い戻され、96年の12月に制作
の再スタートをきった。
ストーリー骨格は大友さんと村井さだゆきさんが脚本という形でまとめたが、
最終的には大友さんがコンテを長い時間かけて作った。
それが4年前くらいで、そのコンテが最終決定稿となった。

その前はハリウッドと合作でという話を進められていたが、
最終的に日本単独の製作体制で行くことになった。
ハリウッドとの合作ではジェームズ・キャメロンがプロデューサーになる話も
あったが、
キャメロン当人より、「尊敬する大友さんに指図することなんてできない」と
いうことで頓挫、
その後、成立に向けてメジャースタジオを一通りまわりましたが、
大友さんの作家性を活かしながら作るには、
やはり日本で存分な環境を整えるのが一番ということに落ち着いた。
それが決まったのが99年の年末頃で、ようやく正規の制作がはじまった。

似たような話は押井守氏の「イノセンス」の作品紹介の折にも紹介していますが、
どうも日本のアニメクリエーターとハリウッドは相性が悪いようです。
宮崎駿監督のように、ディズニー相手でも“金を出させて口は出させない”と
いうところに
たどり着ければ、話は早いのですが、
悲しいかなまだまだ日本側にそれだけの信頼がない、ということなのですね
天下の大友克洋に九年も浪人させていたなんて、とんでもない損失です。

企画当初のウリになっていた“デジタルなアニメーション”制作も、
九年前なら新鮮でもいまでは当たり前になってしまって、宣伝力にならないです。
映像の得点が85点とまりにのは、この点ですね。
映像のインパクトなら「アップルシード」に負けてます。
もともとあった大友ワールドの擬似科学を万博の頃のロンドンを舞台に描かせた
そのセンスそのものがいまのウリとして残った部分です。

美術の木村真二さんが、舞台になるイギリスへロケハンに行ったのが、いまか
ら8年前の話。
10日間でロンドン、マンチェスター、それからヨークという古い街を見学。
美術館や、スチームエンジンを見るために産業技術博物館みたいなところにも
取材しています。
レイが働いていた工場にはいくつかモデルがあるそうで、
マンチェスターで博物館として現存しているのだそうです。

ヨークの田舎風の建物が特に参考になったようで、
ストーリーボードは、イメージボードと合わせて100点くらいが描かれています。
ストーリーボードというのは引いた状態の画を描くのだが、
実作業に入るときに「寄り」とか「身近なもの」といった部分もスタッフに伝
える必要から、
レイアウトが上ってきてから、もう一度本番用や背景として使えるものを描い
て見本として渡すことも
あったようです。

映像のイマジネーションが豊かな割りにストーリーが無理矢理で、
強引に万博会場の市街戦に話を持っていってます。
脚本の村井さだゆきさんが参加されたのは、かなり後からだったようで、
村井さんが。参加した段階で脚本は既に第20稿に行っていたそうです。
『スチームボーイ』は企画自体に紆余曲折があり、そのたびに脚本も書き換え
ていたので、
その過程でいろいろと複雑な要素が混ざってしまっていました。

はっきり言って「ぐちゃぐちゃ状態」。
それを修正したり、削ったり、大友さんが本来やりたいことをまとめることが
ライターの作業ということに。

本来のクリエイティブな仕事からはかけ離れたところからスタートして、
何度も書き直して、最終的に上がったのは小直しも入れて第26稿で、1〜2年く
らいかかったそうです。
ストーリーと始めと終わりは決まっていて、でも、間の異物は取り除かなくて
はいけない……ということで。例えば、最初はヒロインがエマとスカーレット
の2人だったものが、
大友さんも女の子にはあんまり興味がないから、最終的にエマは最初に出てく
るだけのキャラで、
スカーレットがヒロインという今のかたちになったそうです。

まあ脚本については、九年の紆余曲折の被害を一番こうむった部分ですね。
これからご覧になられる方々は、その辺を承知の上で劇場にお出かけください。
…これじゃ、ほとんど悪口だ。笑

面白かったのは「スチームボール」のボールそれ自体の設定です。
ねたばれ改行です。




















スチームというとボイラーで湯を沸かして、
水蒸気の圧力でタービンを回すとうのが通常のイメージですが、
映画冒頭で鍾乳洞で井戸掘りのようなことをしています。
スチームボールは超高圧スチームを噴出させる装置ですが、内燃機関ではなくて、
もっと化学的な反応を封じ込めている装置のようです。
燃料を燃やさないのだから、熱くない。
逆に超高圧の気化熱から来る放射冷却機能の方が強烈で、
スチームを浴びるとバリバリバリーーッと凍り付いてしまう。
このバリバリバリーーッが映画の後半を盛り上げてくれて、ロンドン中が冷凍
怪獣に襲われたように、
船でも橋でも手当たりしだいに凍り付いて、衝撃と共にチリのように砕け散る
サマが痛快です。
熱いスチームが噴き出してロンドンを焼き尽くす、溶かしつくす、というバー
ジョンも考えてみましたが、
核兵器のイメージになりそうで世界配給を狙うなら“冷凍怪獣スチーム城”の
路線が正解のようです。バリバリバリーーッ

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