「サマーウォーズ」

「サマーウォーズ」映画チラシ■作品基礎データ
『サマーウォーズ』
2009年 日本映画
監督:細田守
脚本:奥寺佐渡子
キャラクターデザイン:貞本義行
作画監督:青山浩行
アクション作画監督:西田達三
アニメーション制作:マッドハウス
声の出演:神木隆之介 桜庭ななみ

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高校2年の夏休み、
天才的な数学力を持ちながらちょっと弱気で人付き合いの苦手な健二は、
憧れの先輩・夏希にアルバイトを頼まれて長野の彼女の曾祖母の家に行くことに。

夏希の曾祖母の栄は、
室町時代から続く戦国一家・陣内(じんのうち)家の16代当主。
一族と束ねる大黒柱だ。
その日は、栄の誕生日を祝う、
個性豊かな「ご親戚」の面々が顔を揃えており、
そこで健二は突然、
夏希から彼女の「お婿さん」であると紹介を受けることに。

夏希のいうアルバイトとは、
栄や親戚一同に対して夏希のフィアンセのフリをするということだった。
とまどう健二だったが、
栄を安心させるためと半ば強引に頼みこまれ、
滞在中の数日間だけと、しぶしぶ承知する。
にぎやかな親戚の面々に気おされながらも、
大役を果たそうと奮闘する健二。

その夜、彼の携帯に、数学の難問が書かれた差出人不明のメールが届く。
数学な得意な健二は、夢中になり、
遂に答えを導き出すが…翌朝、世界は大きく一変していた。

健二を騙る何者かがきっかけとなり、
世界中を巻き込む大きな危機が訪れようとしていた。
「身内がしでかした間違いは、一家でカタをつけるよ!」
栄の号令のもと、健二と夏希そしてご親戚の面々が、一致団結して、
世界の危機に立ち向かう!

2006年夏、
わずか13本のフィルム、六館の上映から劇場公開された『時をかける少女』は、
口コミで全国に波及し、国内外の各映画・アニメ賞など23冠を獲得、
世界中の様々な人々に愛される作品となった。

その名作『時をかける少女』を手がけ、
一躍“時の人”となったのが、アニメーション監督・細田守だ。

脚本・奥寺佐渡子、キャラクターデザイン・貞本義行ら
『時をかける少女』を手がけたスタッフを再結集させ、
細田が次に手がけるのが、
ある地方都市の大家族が、
世界中で突然沸き起こった危機に対して戦いを挑む物語。

主人公を取り巻く家族、親戚の全員が主人公ともいえる、
新しい「大家族アクション映画」の誕生だ!

アニメ「時をかける少女」のスタッフが再結集、
というんで是非とも見たかった試写会です。

制作費は前作の2,3倍は軽く超えてるでしょうが、
重い感動作ではなくて、ずっと軽い作品でした。

二度目はですね、ですから、
「ナイトミュージアム2」の試写状を貰うために
出かけていったようなものですが、
しかし、ゆっくり改めてみると、これはこれでなかなか良い
“ひと夏の思いでムービー”ではないかと。

信州上田の旧家と仮想都市OZが舞台です。
陣内家、というのは、じんない、ではなくて、じんのうち、と読みます。
武田家の家臣で、徳川とも戦った、と劇中では説明されています。

OZの戦いで、
ご先祖様が戦ったと言う第二上田戦争の作戦が
真似されていますが、とするとこの陣内家のモデルは
間違いなく真田家ですね。

真田さんは、現在も十何代目かのご当主が健在のはずで、
かってに劇に使うわけには行かず、
すぐばれる事を承知の上で、
架空の家系をでっち上げたのでしょう。

声優陣が豪華で、俳優も複数キャストされていますが、
皆さん適材適所で単なる顔見世(声見世?)ではないですね。
良い仕事をしています。
ばあちゃんやくの冨司純子さんの笑い声なんて、絶妙ですわ。

サイバーテロと言うのは、テレビでも映像化されていますが、
ここでは近未来の話してはなくて、
現在の話として、子供から年寄りまでアバターをもって、
携帯片手にOZの世界で暮らしているということを前提にしているところが
未来風です。

うちの親なんかメールどころか、
そもそも携帯も使えんのだがな。

終わってみれば1時間40分ほど、
ピクサーのCGアニメが90分ほどですから、
それよりちょびっと長い程度ですが、
もっとボリュームのある作品を見た気になりますね。

敵役のA.I.がキャラとして単純すぎるので、
ちゃんと自分の言葉で主人公に語りかけてくるような奴だと、
グッと奥行きが出そうですが、
そうすると主人公と陣内家の人たちから、
ドラマが離れていってしまうので、
侘輔さん一人を悪党にして、それが改心して
クライマックスと言う風に構成したのでしょう。

アカウントとかアバター等の約束事は、
試写会に来ていた若い人たちの中にも、
正確に把握していない事もいるようなので、
スクリーンを眺めていけば、
なんとなく善悪が飲み込める程度の単純化も必要だったかもしれないです。

へたれの主人公が実は数学オリンピックの
日本代表のなりそこないと言う、数学オタクと言う設定は
映画では珍しくて、
そこが妙なとっかかりで活躍するというのは好きですね。

神木隆之介&桜庭ななみ インタビュー
――細田守監督との仕事はいかがでしたか?
桜庭:「わたしは声優初挑戦だったので、何度もテイクを重ねてしまい、
周りの方にはご迷惑をおかけしましたが、監督は少しだけでもいいところを見つけて、
ほめてくださる素敵な優しい監督です。細かい演出も分かりやすかったです」
神木:「僕も緊張しましたが、細田監督が怖いぐらいにほめてくれるんです(笑)。
たまに失敗をしたとしても
『いまの感じよかったけれど、もう1回行ってみよう!』みたいな感じなんですよ。
ななみ先輩もおっしゃったように、僕もテンションが下がることなく、
アフレコを乗り切れたと思います。
僕はコミカルなシーンもあったので、
絶対にテンションが下がったらいけなかったんです。
それと、健二は最初はひ弱ですが、
後半はどんどん強くなり成長していく主人公なので、
声に芯を持たせて演じるように言われました」
桜庭:「神木君は気を使ってくださって、私が1つ年上なので、
ずっと『ななみ先輩』って呼んでくださって、
緊張しているわたしをリラックスさせてくださって、
すごいやりやすかったです(笑)。
実はそう呼ばれるまで、最初は全然話せなかったんです」
神木:「最初は『桜庭さん』だったけれど、距離があるような気がして(笑)。
途中から『ななみ先輩』って呼ぶようにしました。
そうしたらすんなり話せるようになったんです」
桜庭:「私がいつもテレビで見ていた大先輩の神木さんから『ななみ先輩』だなんて、
不思議な感じでした(笑)」
――「サマーウォーズ」にはいろいろなメッセージが託されてますが、
今回一番学んだことは?
桜庭:「この『サマーウォーズ』を通して、家族がいれば乗り越えられるという、
家族のパワーや大切さをあらためて感じました。
周りに話せないことでも、家族なら話せますし、支え合ってこその家族ですよね」
神木:「それと、映画に描かれているOZ(オズ)みたいなインターネット上の
仮想空間の世界については、インターネットの良い部分と悪い部分を描いた上で、
基本的にはいろいろな人たちと関われるという意味で、
いいこととして描いていると思いました。
全否定はせず、でも、危険な部分もあるよって。
わかりやすく描いているところがいいと思いました」
桜庭:「わたしもそう思います。
わたしは悪いサイトや悪い人たち引っかかっちゃうような予感がするので、
ちょっと怖いですけど(笑)。
ただ、インターネットには良い部分がたくさんあると思うので、勉強したいと思います。
そういうことも含めて、この映画は家族の大切さや、あきらめない気持ちなど、
たくさんのことを学べると思うので、みんなで観てほしいですね」
神木:「すべての世代の方たちが共感するテーマと、
物語がスピーディーに進んでいくので、
熱い夏にはピッタリの作品になっていると思います。
ぜひご家族で観に行っていただきたいと思います!」

声の主演ふたりに細田監督3人そろってのインタビュー

――まず細田監督にお伺いします。
プレスシートを拝見したところ、『時をかける少女』が終わって
すぐこの作品に取り掛かったそうですが、
具体的にいつごろから構想を練られていたんですか?
細田監督:(『時をかける少女』は)2006年の夏に公開されたんですけど、
それからずっとこの作品しかやってないですね。
――すぐまた同じスタッフで次の作品をやろう、ということになったんですか?
細田監督:そうですね。ありがたいことに、「また付き合ってやるよ」と言われ。
3年前の夏ですよね……。(2人は)3年前の夏って何やってた?
神木さん:3年前……中1でしたね。『遠くの空に消えた』の撮影をやっていました。
なので3年前の今ごろは、北海道に行っていましたね。
――ロケですよね?
神木さん:はい。2カ月ぐらい行っていました。
細田監督:桜庭さんは3年前の夏何やってた?
桜庭さん:私はずっと部活をやっていました。
細田監督:何部?
桜庭さん:テニス部です。
細田監督:じゃあ夏合宿とか行ってたんだ。
――劇中で“花札”が重要なアイテムとして登場しているのですが、
花札を題材に選ばれたのはどうしてですか?
細田監督:うーん……。桜庭さん、家で花札ってやった? 
おじいちゃんとかおばあちゃんから教えてもらってない?
桜庭さん:全然教えてもらってないです。
細田監督:神木くんは?
神木さん:僕は『東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~』というドラマで
花札をやっているシーンがあったので……。
細田監督:あったね! オカンがやってるんだよね。
神木さん:はい。それでルールを教えてもらったんです。なので遊べますね。
細田監督:なるほど。花札を選んだ理由なんですが、
花札って“家族でやるゲーム”というイメージがあると思うんですよ。
おじいちゃんやおばあちゃんが孫にこっそり教えるとかね。
花札って賭博(とばく)のイメージもあるので、
学校には持っていきづらいじゃないですか。
するとね、遊ぶ場所が家族の中だけになっちゃうんだよね。
それで、お盆やお正月の時に親戚で集まって花札をやるという感じが僕の中であって。
あとまぁ、もう1つあるのは、花札って言ったらやっぱりあれだよね。
僕の大好きな任天堂の元にあるものだから(笑)。
――任天堂がお好きなんですか?
細田監督:えぇ。任天堂のゲームがキライな人なんていないでしょう(笑)。
そんな人間がいたら見たいぐらいですよ。
花札があったからファミコンがあって、ファミコンがあったから今、
子どもたちもこうしてキャッキャ言える。その大元は花札なんですよ。
……って、こんな話でいいんですかね?(笑)
――ゲームの話は大歓迎です(笑)。
細田監督:神木くんって待ち時間とかゲームで遊ぶの?
神木さん:最近はあまりやっていないんですけど、
DSで言うと『大合奏!バンドブラザーズ』とか、
『クイズマジックアカデミーDS』とか持ってます(笑)。
細田監督:桜庭さんは?
桜庭さん:私最近ゲームやるんですよ。
細田監督&神木さん:何やるの?
桜庭さん:私『リズム天国』しか持ってないんですけど、ホントに楽しいんですよ。
細田監督:じゃあ1年ぐらい同じソフトを遊んでるの?
桜庭さん:半年ぐらいですね。
細田監督:じゃあそれまで遊んだことなかったの?
桜庭さん:全然やっていなくて、なんで弟がゲームやるのかわからなかったんです。
東京にきてから電車に乗るようになって、そういう時にゲームをやるようになりました。
細田監督:確かに確かに。田舎だと自転車こいでたりしていて
ゲーム機を持てないじゃないですか(笑)。
東京だとね、いくらでもやる時間あるもんね。
あとこういう仕事してると待ち時間も多そうだけど、
そういう時ってゲームやっててもいいの?
神木さん:ちょっと前はみんなで『マリオカートDS』をやってました。
最近はしゃべってるか、お菓子食べてるか、うたた寝しているかですね(笑)。
細田監督:相当疲れてるね、それ。
神木さん:学校のテストがあったので……(笑)。
――キャスティングの時のことをお聞きしますが、
神木さんと桜庭さんはすぐに決まったんですか?
細田監督:出会ってすぐ決まりましたね。
映画の役者さんってたくさんいらっしゃいますけど、
映画の主演とかヒロインやる人ってさ、
その登場人物に近い人がやるべきじゃないかなって思うんです。
主役やヒロインは特にね。
そうした方が、映画の内容が誠実になる気がして。神木くんに最初に会った時、
健二そのものだと思ったんですよ。
天才性のようなものを持ちながら、一方で控えめなところもあって。
普通天才って自意識過剰なものでしょう? 
それと対極にあるような人なんだよね。すごく勉強熱心で。
それがすごく健二っぽいなと思って。逆に、他の誰に頼めるんですかという感じでしたね。
 スタジオで“録りの声を聞かせてください”って確認するんですが、
間違いないという感じでしたよホントに(笑)。
神木さん:ありがとうございます。
細田監督:(健二と)髪のハネ方までそっくりです。
今はすごくキレイになっているんですけど。桜庭さんも同じように、
会った瞬間に「これは夏希だ」と思ったんですよ。
夏希って美少女だからカワイイ声を出す人っていっぱいいるんだけど、
でも単に美少女なだけじゃ夏希を表現できないというか。
夏希の罪のない素朴さのようなものがないといけなくて、
そういう素朴さを持っている人をずっと探していて、出会ったという感じなんですよ。
わけ目以外は全部同じだと思ったんです(笑)。夏希は(わけ目が)逆なんですよ。
それ以外は寸分違わず夏希だと思いましたね。
――神木さんと桜庭さんにお伺いしますが、
実際に役を演じてみて難しかったところなどはありますか?
神木さん:健二と僕は同じ年ぐらいなんですけど、
いかに“普通”の男の子を表現するかというところが難しかったですね。
どういうものが“普通”なのかわからなかったんですよ。“普通”って人それぞれだし。
だから自分を参考にしようと思ったんです。
いつも通りの自分を健二にリンクさせればいいのかな、と思いました。
だから、今回は“僕だったらこうする”という芝居が多かったですね。
親戚一同の前では基本恐縮するような言い方で、
佐久間に対する電話の仕方は気楽になっているいつも通りの自分というか、
友だちと話すような話し方でと、違いを出すようにしていました。
――桜庭さんはいかがでした?
桜庭さん:すべてが初めてだったので、難しいしわからないというか。
まず、どのタイミングでしゃべっていいか、
マイクとはどういう距離でしゃべればいいかもわからないし、
口に声をあわせることもホントに難しくて……。
――夏希を演じるうえで心がけていたことなどはありましたか?
桜庭さん:最初オーディションの時に、
監督から「夏希はお姉さんのような感じで」と言われたんですが、
自分の中にお姉さんキャラを持っていなかったので、周囲を見て研究しました。
収録初日はブースに(キャストが)全員で入って収録したので、
ものすごく緊張したのを覚えています。
細田監督:他の役者さんとか激ウマなわけじゃないですか。
そこに入ったら……確かにねぇ(笑)。
でも俺、それがよかったと思うし、
一生懸命やらきゃと桜庭さんが頑張るところが、
夏希の一生懸命さにそのままつながっている気がするんですよね。
くどくどと「夏希はこういう人で、こういう性格で、こういう趣味で」と
言わなくても、選んだ時にもう夏希なんだから。
夏希がやりたいようにやってくれれば(笑)。
でもそのいっぱいいっぱいだったところが、夏希が一生懸命やっているように聞こえて、
全然問題ないんですよ。問題ないどころかすごくかわいかったですよ。
――収録は何日ぐらい行われたんですか?
細田監督:メインで収録したのは6日間ですね。
その後、ちょこちょこと収録しましたが。
――収録の初日と最終日で、アフレコは上達しましたか?
桜庭さん:最後になるにつれ、口に合わせられるようになりました。
そして、“ここをこうやってみようかな”と思えるようにもなりました。
細田監督:神木くんどうですか、
(桜庭さんが)最初と最後ですごく変わっていると思わない?
神木さん:そうですね。役に対して芯が通っているというか、
自信がついたように見えましたね。
細田監督:うんうん。映画ってさ、
同じ感じで行くよりも最初と最後で違う方がいいんだよね。
特に桜庭さんのように新しい人はさ、その変化が魅力になるというか。
――その変化も見どころの1つということですね。
東京国際アニメフェア2009のステージで、
仲(里依紗)さんが「監督はすごく優しいですよ」
と大プッシュしていたと思うんですが、収録中の監督はいかがでしたか?
桜庭さん:優しかったですね。
少しでも何かしらいいところを探してテンションを下げないように
しようとほめてくださいました。
細田監督:楽しかったのって、
他の役者さんたちの雰囲気もすごくよかったからじゃないかな。
1人1人で録るよりもみんなで録る楽しさというか。アニメでは珍しいんですけどね。
あのブースの楽しい雰囲気がうらやましかったな(笑)。
神木さん:楽しかったですね。映画の中の家族の中にいるような雰囲気でしたし、
みんなで一致団結しました。
細田監督:仲さんが、僕がよくほめると言うんだけど、
すごくいいなと思うからそれをそのまま言うだけなんだよね。いや、ホントですよこれ。
「これちょっとまじぃなー」と思った時に、
その気持ちを隠して「よかったねー」って言えないんだよ。
なるべく思っていることを言おうとは思っているんです。
でも「まじぃなー」とはあまり思わないんですよ。
「ちょっと口と合わないねー」とかは言ってると思うけど(笑)。
ホントにいいと思うので、いいとしか言えないんですよ。他の監督って違うの?
神木さん:あまりあそこまで毎回ほめてくださる方はいないかも……しれないですね(笑)。
細田監督:ホントに!? みんな監督然としてるの? 
「お前ここちょっとどうなの?」メガネクイックイッ、みたいな?
神木さん:さすがにそこまではいかないですけど(笑)。
でもやっぱり毎回いいって言ってくださる方はあまりいないと思います。
だからうれしかったですね。
細田監督:みんなもっと言えばいいのにね。感動したって。

仮想都市OZのCGを手がけたデジタル・フロンティアさんのインタビュー

―OZはすべてCGですか?
堀部さん(以下敬称略) 主要キャラクターは作画で、そのほかのアバターはCGです。
OZの大枠は上條安里さんのデザインで、
カラフルで楽しげな雰囲気は最初からありましたね。
下澤 アバターのバリエーションが欲しいという監督の要望で、
最初はパーツを組んでいたんですが、それだとバリエーションが出づらいので、
主人公や家族のアバターの雰囲気を残しつつ、
うちのデザイナー120人ぐらいがひとり2体以上デザインしてます。
個性が自然と出てますね。

主要アバターのキャラクターデザインは岡崎能士さんと岡崎みなさん。
―CGと手描きの作画を合わせるのは難しそうですが?
堀部 通常の3DCGよりも情報量を削ったり、コマを落としたりという処理をして、
アニメの動きや色合いにCG側からあわせるように注意しています。
下澤 作画のキャラクターがでてくるときはレイアウトを描いていただいて、
それにあわせて3Dキャラクターを配置するんですが、
描かれているパースと3Dで配置したときの整合性がとれないことも多くて、
結構レイアウトには苦労しましたね。
―デジタル・フロンティアさんはモーションキャプチャーを使った作品も多いですが?
堀部 今回はモーションキャプチャーは使っていません。
アバターは手付けのアニメーションで動かしています。
モーションキャプチャーで人の動きを取り込むとどうしても生っぽくなってしまって、
今回のようなメリハリの利いたコマ落としの動きにはあわないんです。
下澤 アバターにはヘビなんかもいて、単純に人のカタチとは限らないですし。
堀部 アバターは背景の群集的にいるんですが、
手付けで動かしているんで観戦している連中とか、
よく見ているといろんなリアクションをしていますよ。
―いちばん苦労した場面は?
下澤 技術的にいちばん難しかったのは巨大化したラブマシーンですね。
基本的にはパーティクルという手法で、たくさんの粒を飛ばしているんですが、
それだとどうしてもデータ量が重くなってしまうので、
テクスチャーに動画を貼り付けて、うまいぐあいに重ねたりしています。
思い入れがあるのは、夏希の変身ですね。
豊嶋 あの場面は『セーラームーン』を意識してるんだよね。
下澤 いい大人が集まって「セーラームーン見た?」というような打ち合わせがあって(笑)
豊嶋 細田さんが言っているのは、大人のためのマニアックなものというより、
小さい女の子が見て楽しめるようにしたいと。
全体的に女性にちゃんと受け入れられるアニメにしたいって。
『サマーウォーズ』は、細田さんがCGをうまくとりこんで進化した
アニメをつくったなと思います。

【プロフィル】 細田 守(ほそだ・まもる)
1967年9月生まれ、富山県出身のアニメーション映画監督。
金沢美術工芸大美術工芸学部卒業。東映動画(後の東映アニメーション)に入社後、
1999年
『劇場版デジモンアドベンチャー』など監督作多数。2005年からフリー。
劇場アニメ『時をかける少女』(2006年)は高い評価を受け、
日本アカデミー賞・最優秀アニメーション作品賞、
アヌシー国際アニメーション映画祭・長編部門特別賞など国内外の多数の映画賞に輝いた。

細田守監督インタビューを纏めて幾つか

―『サマーウォーズ』は「日本の田舎の家族がインターネット上の敵と戦う」という話だそうですが、
田舎VSネットという対比がすごいですね。
“デジタル”と“親戚”ですからね。この対比はなかなかないと思いますよ。
ふたつに共通しているのは、
どちらも実は結構身近で誰もが恩恵を受けているものだってことです。
「私ネットが好きです」って言わない人でも必ず携帯電話もってて、
必ずメールもやってる。
同時に、家族や親戚がいない人もひとりもいないんです。
いなかったらその人生まれないんですから。
僕らの日常から忘れがちだったり、特別な分野のようですが、
みんな共通して両方をもっている。
身近にいるんだけど忘れがちな価値みたいなものをふたつ対比させて、
そのなかでおもしろいアクション映画ができたらなと、それが発想のもとです。
―ネット上の舞台は、仮想都市OZ(オズ)ですが。
“バーチャル”っていうと現実のできそこないみたいなイメージがありますが、
実際みんなが求めているネットワークってコミュニケーションですよね。
僕らみたいに映画を作っていても、
映画って“受け手”と“送り手”みたいな関係性だけあるかっていうと、
本当は作品を通して受け手どうしが「ここってすごいぐっとくるよね」とか
「あ、俺はここだな」、「俺も俺も」ってコミュニケーションの道具としての
作品ってこともあるわけじゃなですか。
コミュニケーションの仕方が、学校で休み時間に話すか、
画像上に文字を書き込むかの違いだけで、
やっぱりみんなコミュニケーション好きなんだよね。
現代はいろんな人と話す機会があるぶん、
みんなと話したいとか、みんなと何かを共有したいとか、
同じ気持ち、同じ感動、同じ怒りを共有したいって気持ちがより強いんじゃないですか。
だから(ネットと現実の)カテゴリーっていうか、
垣根みたいなものは本当はないはずなのになといつも思いますよ。

―今回は『時かけ』よりCGが多くなると聞きましたが、
OZを描くのにCGが必要だったのですか?
9年前に『デジモンアドベンチャー/ぼくらのウォーゲーム!』っていう
映画で一回ネットワークものをやったことあるんです。
9年前のインターネットって覚えてます? 
当時、2000年問題っていうのがあって、モデムでイチニパッとか言ってて、
ISDNすげーって、そんな時代ですよ。
画像ひとつ落とすのにタバコ一本吸うくらいの時間がかかって、
従量制だから落とし終わったら即回線切って。その当時、
僕、女の人の頭の上の画像をそうとう見てましたね(笑)。
その映画作りが終わって半年ぐらいたってからADSLが出てきていきなり早くなって、
いきなり動画が見れるみたいな話になって。今、光でしょ。
もうひとつ大きな変化は使ってる人が違うよね。
9年前はパソコンを買うのにもろもろ含めて50万くらいしたから、
ネットをやってる人って趣味の人が多かったけど、今は携帯電話でいいんだもんね。
たくさんの人が身近に使えるようになったというのがえらい違いで、
しかも自分がネットでコミュニケーションとってますっていうのを
まったく意識しないでやってる。
今回の『サマーウォーズ』のOZは、
全世界の10億人がアカウントをもっているサービスという設定。
現実にあるいちばんでかいのはマイスペースで1億5000万人だそうです
(※注:ユニークユーザー数。登録ユーザーでは2億人を超えている)。
10億人が参加している世界ってどういう世界かっていうと、
2ちゃんねらーだけでは10億人にならない。
女の子や子供が垣根なく参加できるような空間で、
ネットワークっていうとサイバーなイメージがあると思うけど、
もっとポップでカラフルな世界。
ひとりに1個、自分の分身、アバターをもっているんですが、
アバターを10億人ぶん表現するのをですね、手描きでやれというのですか(笑)。
ここはCGしかありえないでしょう。
今回の映画では10億体のアバターがぐあーっと登場しますから、
CGで表現するところですよね。
今まで大群衆が出た映画はあるかもしれないけど、10億人が登場する映画はないだろうと。
まあ、実際は3万人ぐらいなんですけど(笑)。

― 一方の田舎ですが、これは特定のロケ地があるのですか?
作品上でもはっきりと出てきますが、長野県の上田市が舞台です。
主人公たちの家は、元戦国武将の400年続く家なんです。
戦国武将の真田家のあった場所が長野県上田市で、
真田幸村は大阪夏の陣で活躍した人なんですけど、
お父さんの真田昌幸は、上田市で徳川軍と戦いを2度もやっている。
真田家というのは小さな戦国武将なんですが、
その後全国を統一する徳川軍が攻めてきて、2度も勝っているんですよね。
上田市の人は何かそういう大きな相手に屈しない心意気があって、
それが今回の主人公たちに通じるものがあるんですね。
でかい相手にぜんぜんびびらない。長野県上田市はとってもいいところですよ。
そんな田舎を舞台にデジタル機器がたくさん出てくる。
簡単には手が届かない、30億円くらいの、ちょっと高いコンピューターも出てきます。
田舎の元戦国武将の屋敷の座敷にスーパーコンピューターをおいて、
戦国武将の末裔たちが戦う。
座敷にスーパーコンピューター、これぜひ観ていただきたい。
こういうインテリアありでしょみたいな(笑)。
スーパーコンピューター、フル稼働してるんですけど、
冷やさなきゃいけないじゃないですか。
長野県上田市は涼しいところなので、クーラーがある家が少ない。
冷却はどうするのかっていうと、氷で冷やす。
座敷、スーパーコンピューター、氷、ここをぜひ見ていただきたい。

今回のテーマを「家族」としたのは?
 「前作『時をかける少女』を作った時は女の子の内面を考えて作った。
そんな映画を作ると、青春ものが好きなんですね、
こういう良い恋愛青春小説があるけれどどうですか、などと薦めてくださる方が多かった。
でも、自分としては一回作ると引き出しが空っぽになるぐらいやるので、
その分野については当面何にもなくなっちゃう。
そういう意味では次はスカっとしたアクションものを作りたいと思っていた。
ただ、超能力者やいかにも世界を救いそうな超人的ヒーローではなく、
日本人がもし世界を救うとしたら、どういう人だろうと。
アメリカ人だったら大体、中年が世界を救ってきたわけだが、
日本人なら……と考えた時に、突然、家族・親戚(しんせき)がフッと思い浮かんだ。
普通の親戚たちが集まって力を持ち寄り世界を救うというのは、
すごく日本人的で、しかもアクション映画の主人公が親戚というのは
すごく面白いんじゃないかと(笑)。それが発端です」
 
海外での映画祭での体験も影響したとか。
 「幸運なことに『時をかける少女』は世界各地の映画祭に招待してもらえた。
世界の映画作家たちが何をモチーフに作っているかを見たら、
どの国も大概、それは家族だった。
家族という切り口から世界や現代をどうとらえるかについて映画を作っている。
振り返ってみて、じゃあ今の日本でそういう作品があるかなと考えてみたら、
思い当たらなかった。もちろん家族をモチーフにした映画はたくさんある。
でもシリアスな社会問題の切り口としての家族であったり、
もしくは『三丁目の夕日』みたいな、いい家族が昔は日本にはあった……みたいな感じ」
 「では、自分が家族をモチーフに映画を作るとしたら……と考え出した。
世界の縮図は、やっぱり家族。家族を考えることで、
色んな世界の問題について考えるきっかけにもなるんじゃないかと」

結婚して、家族はやっぱりステキだと思えた
この映画が描いているのは、家族といっても親類も含めた大家族。
普段、親類付き合いは煩わしいと感じている人も少なくないのでは。
 「僕自身も、親戚というのはなんか煩わしいなあと思っていた。
全く無視もできない存在だし、よくわからない理由による昔のもめ事を
いつまでも引っ張っている親類がいたり、面倒臭いな、なんて思っていた」
 「実は、前作が終わってから結婚をした。
そして、彼女の家のご両親や親戚の方々にあいさつにうかがった時に、
自分が持っていた家族、家庭像とか親戚像とえらく違う家族たち、親戚たちがいるんだ、と知った。
結婚って、面白いことに一挙に親戚が倍に増える。
そして、親戚の仲が良いのが、すごくうらやましくて……。
仲の良い家族はやっぱりステキだなあと思えて、その感触を頼りに映画を作ってみたくなった。
自分の実体験に基づくことも大きいかもしれない」

 映画では、そうした古来のネットワークである血でつながった大家族が、
最新のオンライン世界で始まった世界的危機に立ち向かう。
映画に登場するネット上の「仮想都市OZ」のイメージは、
一時大きな話題になったネット上の仮想世界の「セカンドライフ」などが
ヒントになっている?
 「ぼくはあまり『セカンドライフ』は参照していない。
どっちかというと自分の身近なところでは、
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の「ミクシィ(mixi)」のほうが
大きい。
この映画の中では、各自の電話番号がキャラクター化したような、
自分の分身の『アバター』というものが出てくる。
ミクシィの中でも、自分のページのトビラ絵というか画像を設定できて、
自分の顔の代わりにペットの写真を載せる人やイラストを使う人もいる。
そういう楽しさはそのままに、ミクシィがより便利に、
より高機能化したらどうなるんだろうと日頃から思っていた」

 今回の映画は、ネットのもろさなども描きながら、
最後はネット社会のつながりも世界を救う力になっていく。
 「インターネットって割とマイナス・イメージで語られることが多いが、
もっとポジティブな面というか、実はグローバルな世界なんだというのを
そのまま形にしたかった」
 「どうしてもね、最初の着想の“デジタルと親戚”というか
“インターネットと家族”みたいに対比させると、
大体ネットが悪くて家族こそ本物といった道徳の授業のようになってしまう。
それはおかしい、とずっと思っていた。
ネットの世界だってその中で実際にそれによって励まされている人は多くいると思う。
私の嫁も、嫁の母親とミクシィの中でテレビドラマの感想などを
日記に書いて語り合っていたりする。
全然、二項対立的に挙げるようなものではないと思う」

 ヒロイン・篠原夏希役を演じた女優の桜庭ななみさんに、
「この映画をどんな人に見て欲しいか」と聞いたら、
「家族と離れて暮らしている人や、
家族と気持ちが離れちゃっているような人に見て欲しい」と語っていた。
あえて細田監督に同じ質問をしたい。
 「2つある。『時をかける少女』は主人公が高校生の女の子だったので、
高校生に向けて作った。
今回は物語を進める主人公としては高校生の男の子の健二君がいるが、
やっぱり家族みんなが主人公だと思う。
0歳児から90歳までがみんな集まって活躍する。
だから家族みんなに見て欲しいと、いうのが一つ」
 「もう一つ最近思うのは、
アクション映画って暴力的イメージが嫌な女の子はなかなか見に行けなかったりする。
でも、この映画ってひょっとしたら、
家族で見に行けるアクション映画なんじゃないか。
小さい子とお母さんたちが見ても全然難しくない。
世代の違う人と一緒に行っても楽しめることを心がけて作ったから。
そして、この映画は90歳のおばあちゃんが出てくるので、
ぜひ90歳のおばあちゃんに見て欲しい(笑)。
年配の女性が見ても、すごく喜んでもらえるものになっているといいなあと思っている。
暑い夏の映画は、見てスカっとして元気になれる映画がふさわしい。
そういう映画になっているのでは?」

―「時をかける少女」が終わってすぐに「次はアクションものを作りたい」
ということでこの「サマーウォーズ」を作られたそうですが、
視聴対象として考えている客層などはあるのでしょうか?

細田監督(以下、監督):
だいたい僕は主人公と同じような感じの人に見て欲しいというのがあって、
前作の「時をかける少女」は主人公の真琴みたいな高校生の女の子に見て欲しいと
思って作ったんですよ。
実際に高校生へ取材もしたし、
街で高校生を眺めながら彼女たちは何を考えているんだろうと思いを巡らせたりしつつ、
この高校生たちのためにと作り上げました。

―なるほど。では、「サマーウォーズ」では主人公の健二のような高校生の男の子が
メインターゲットですか。

監督:
「サマーウォーズ」の場合は、物語の主人公は神木隆之介君演じる健二なんですが、
このポスターに映っている陣内家全員が主役みたいなものなんです。
だから、例えば5~6歳の子から90歳のおばあちゃんまで見て欲しいという気持ちです。
さすがに90歳のおばあちゃんが映画館へ見にくるのは、
場内に階段があったりして危ないかもしれませんけれど、見て欲しいと思いますね。
ターゲットはいろいろな世代ということになりますね。

―「サマーウォーズ」を作っていく上で苦労した点はありましたか。

監督:
「時をかける少女」は登場人物が絞られた中での映画でしたけれど、
今回はこのように総勢28人の大家族が出てきて、しかも一人一人が活躍するシーンがあり、
最後はみんなが集まるからどのカットにも全員映っているとか、大変ですよね。

―確かに、主人公として健二がいますが、陣内家の人々はそれぞれが生き生きと
動いていて、それこそ全員主人公と言ってもいいぐらいでしたね。

監督:
そうなんですよね。全員動かすのは大変でしたけれど、
みんなを動かすと一気に沸き立つ雰囲気が伝わってくるようで、
アニメーターの人たちが苦労した分、勢いが画面で表現できていると思います。

ー作業は大変だったけれど楽しくやれたという感じでしょうか。

監督:
現場はスケジュール的に本当に終わるんだろうかとか色々と大変でした。
でも、アニメの中であまりじっくり描かれない家族のお話をやっていることもあるし、
しんどい中でもスタッフのみんながノってやってくれました。
アフレコも今回はみんな一緒に集まってお芝居して、
まるで家族のような一体感を出せていると思います。

―「サマーウォーズ」で、ここは今回かなり挑戦したぞというポイントはありますか。

監督:
「デジタル世界」と「家族・親戚」という組み合わせが、
今までの映画史の中でも珍しいのではないかと思います。
「デジタル」「家族」を、どちらが良い悪いということではなく、
両方とも大事な僕らのネットワークだということでデリケートに描きました。
家族たちを主役にしてアクション映画を作ったという、
このことがまずチャレンジでしたね。
今までアニメでこういった作品が無かったので「アニメで家族?何それ?」と
アニメ好きに言われるんじゃないかなと、作っているときはすごく不安でした。
最近始まった試写では「面白いじゃないか」と言ってもらえて
「うまくいったところがあるかもな」と思っていますが、
まだ公開前なので不安といえば不安です。
作品としては若い女の子がいっぱい出てくるわけじゃなく、
いるのは30代40代のおばさんばっかりという今のアニメ向きではない題材ですが、
ぜひこのチャレンジを認めていただければと思っています。

―「時かけ」ではフレッシュさを出すために
本職の声優ではないキャストを多数起用したとのことですが、
本作のメインキャストも本職の声優ではない人が起用されているのは
同じ意図があるのでしょうか。

監督:
「フレッシュさ」というよりは「キャラクターらしさ」ですね。
例えば、神木(隆之介)くんは健二そのもの。
この企画がスタートしたのは3年前だからまだ神木くんは12~13歳ぐらいだったので
まさか神木くんがこのキャラクターを演じることになるとは思わなかったですよ。
神木くんが16歳で健二と同じぐらいの年頃で、
しかも芸歴14年なのにとても謙虚な性格というところが、
もう神木くん以外にこの役を演じる人はいないだろうというぐらいにそのものなんです。
陣内栄という90歳のおばあちゃん役はまだおばあちゃんというには
お若くてお願いするのが失礼なぐらいですが富司純子さんに引き受けてもらって、
背筋のしゃんと伸びたキリッとしたおばあちゃんを演じてもらいました。
どの役も、キャラクターと役者さんの人間性が一致するような人にお願いしたという
感じです。

―なるほど。

監督:
今回のキャストでは永井一郎さんや中村正さん、信澤三惠子さん、
山像かおりさんなどの名優に来てもらっていますが、
その中で全然アニメ作品での演技経験がなかったのが夏希役の桜庭ななみさん。
彼女の演じる夏希というのはキャラクター全員を見てもらうとわかるんですが
唯一の若い女の子、美少女ヒロイン役ということで、
アニメ世界に美少女ヒロインなんてたくさんいるから演じる人は
すぐに見つかるだろうと思っていたんです。
そしていざオーディションをやってみると、
今回はオーディションの質がとても高くて実際に上手な人がたくさん参加
してくれたのですが、なかなかピンと来る人が見つからなくて。

―どこかちょっと夏希とは違うな、ということですか。

監督:
そうなんです。やる前は美少女なんてすぐに見つかるだろうと思っていたけれど、
それは僕の勘違いで、夏希がただの美少女ではないということが
オーディションをやっているうちにわかってきたんです。
ただかわいく演じられても困っちゃう、
男の子を巻き込む17歳の先輩の素朴な罪のなさみたいなものが必要で、
あまり"美少女声"すぎると合わないんですよ。

―かわいいだけではダメなんですね……。

監督:
見つかるまで、ずいぶんオーディションをやりましたよ。
桜庭さんがオーディションにやってきた時、あまり経験がないはずなんですが、
二言三言聞いた瞬間に「あ、この子が夏希だ」ってピンと来たんです。
「時かけ」の時も、仲里依紗さんの声を聞いた瞬間に
「これは真琴だ」ってすぐにわかりましたね。
どうも、上手か下手かではなく、役そのものかどうかという所なんだと思います。
夏希という役を作ってもらうのではなく、
夏希の素養を持っている人を探し出すということなんですね。

―その仲さんが本作では陣内由美という、
38歳の子持ちのおばさん役をやっているわけですが、これもそういった理由ですか?

監督:
仲さんは「時かけ」では主役の真琴と一致すると思ったんですが、
それから3年経ってすごくうまい女優さんに成長しています。
うまい女優さんは自分と役柄が多少離れていても合わせられるもので、
仲さんが自分とはかけ離れた38歳で子持ちのおばさんを生き生きと演じているというのは、
それだけ仲里依紗が上手な証拠だと思うんです。
どうしても由美のような役だとオバサンっぽい、
年をとったような声をイメージしてしまうんですが、
実際の30歳40歳というとそんなに年を取っていないんですよね。
だから、むしろ若い人じゃないと今の中年、大人の声は出せないなと。
チャレンジながらも仲さんに演じてもらって、
リアルな30代っぽさを出せたのではないかと思います。

―確かに、見ていてまったく違和感がありませんでした。
話は変わりますが、東京国際アニメフェア2009のステージイベントで3Dのお話があり、
映画「アップルシード」の3D質感には驚いたというような発言がありましたが、
今回OZ世界をCGで表現したことでそういった質感というのに近づけたりしたの
でしょうか。

監督:
これはもう別の話になってしまいますね。
「アップルシード」はコンセプトがうまくて、
デジタル・フロンティアというCG技術バリバリの会社が、
トゥーンレンダリングでキャラクターを表現するという、
これまでは方法としてはありかなと思っていても誰もやっていなかったことを
堂々とやってみせたというコンセプトの勝利だと思うんです。
でも今回のCGはそれとは違い、トゥーンレンダリングで表現することを前提として、
CGのレベルの高さをどう表現するかというところで、
最高レベルの仕事をしてもらいました。
OZはごちゃごちゃしていないすごくシンプルな世界なんですが、
シンプルだからといって簡単に作ったわけではなくて、
白い色の中でも微妙にグラデーションしていたりすごく手間がかかっています。
アバターも10億体ぐらいいるという世界ですから。

―アバターは10億体それぞれ1体1体違う顔なんだと、アニメフェアでうかがいました。

監督:
アニメフェアの時はまだラッシュフィルム段階でしたが、
完成すると本当にすごいですよ。
これを映画館の大画面で見るとグワーッっと迫ってくるのでエラいことになってます。
アニメーションの中でCGが使われていてスゴいスゴくないなんて
他の作品で言われていたりしますけれど、
「サマーウォーズ」は本当にすごいですよ。
「サマーウォーズ」でのデジタル・フロンティアの仕事っぷりはスゴい、
「これでも食らえ!」って感じです。
今までアニメだとCGが浮いているとか、
マッチングさせるのがどうこうなんて話をしてますが、「これを見ろ!」と思いますね(笑)。

―作中に登場するOZというのはmixiやMySpaceのようなSNSの
イメージだそうですが、
作中でラブマシーンというAIが登場してOZをめちゃくちゃにしてしまうのは、
現実世界でのSNSやインターネットへの警鐘のようなところもあるのでしょうか。

監督:
警鐘というのはなくて……僕はずっとMacユーザーで、
Windowsほどセキュリティを気にせずに済むのでそういうのはないんですよ。

―ああ、なるほど。

監督:
どっちかというと、ネット世界はそういうトラブルも含めて楽しさがあると思うんです。
僕がもし最初からWindowsを使っていたら「ネットって怖いんだぜ」
という映画になったかも知れませんが、
Macだとそういうトラブルが起きても呑気な気分になってしまって。

―なるほど、作中でもOZがめちゃくちゃになってしまいながらも
どこか雰囲気が明るいのはその影響もあるんでしょうね。

監督:
Windowsだとファイルが流出してしまった事件とかありましたけれど、
そういうのがあるんだなぁと思いましたから。
Macはもう、例えば動画なんてほぼ見られませんし(笑)。

―セキュリティ面は安心かも知れませんが、ちょっと不便ですね。
次は作中のことになりますが、
ラブマシーンは最初は健二のアバターを乗っ取っていますが、
やがて独自のアバターを手に入れています。
この独自アバターが神話に出てくるような外見で、
しかも後光まで背負っているのですが、
なぜメカメカしいデザインではなくてこういったデザインになったのですか?

監督:
ラブマシーンをどういうデザインにしようかと考えたときに、
アカウントを奪っていくAIだから奪ったものはどこかに収納するだろうと考えたんです。
実はモデルは大日如来なんですが、
大日如来って背中に後光や炎を背負っていて
いっぱい装具をつけていてカッコイイなと思い、
OZのキャラクターデザインをした岡崎(能士)さんと話をしていたら
岡崎さんも仏像の中では大日如来が好きだったらしいです。
それで、デジタル世界を脅かす敵が仏教的なビジュアルだと新鮮で面白いだろうと。
巨大化すると後光が観覧車のようにデカくなって、
雲をまとっているから仏画のような世界ですよ。
後半はどこか仏教的な雰囲気が漂っていますよね。

―これまでにファンの方に言われて嬉しかったことというのは、
どういったことでしょうか?

監督:
やはり楽しんでもらえて、「スカッと面白かった」とか
「すごく楽しませてもらいました」と言ってもらえると嬉しいですね。
今の映画は難しい話が多かったりするけれど、自分自身はスカッとする物語や、
見終わった後に楽しくなるようなものを目指しているので、
そういう楽しさを受け止めてもらえると嬉しいです。

―すでに多くのインタビューで答えられている質問だと思いますが、
「これだけは言っておきたい」ということはありますか?

監督:
このインタビューはネットに載って皆さんがお読みになるんですよね。
「サマーウォーズ」のようにウェブを舞台にした映画というのは、
この夏のハリウッド映画のラインナップを見ても、珍しいと思います。
ウェブを見ている人にとって近い世界での冒険活劇ですから、
普通の人ももちろん楽しめますが、
ウェブに対して親和性の高い人はさらに楽しめる要素がいっぱいあると思うので、
ぜひ見に来て欲しいと思います。

―最後に、「時かけ」は日本の女の子のバイタリティーを表現したいということで
作り上げたというお話があり、
今回の「サマーウォーズ」では大家族のバイタリティーを描きたいということでしたが、
次回作についてなにか構想はありますか?

監督:
次はですね……「時かけ」を皆さんに見てもらえたから
「サマーウォーズ」を作れたというのがあるので、
「サマーウォーズ」がヒットすれば次の作品を作るチャンスが訪れると思います。
そういう連続なので、この作品を楽しんでもらい、
また何か新しく皆さんを楽しませるようなものを作れればいいなと。
次にチャンスがもらえたとしたら、やっぱり…

以下はネタバレとなるのでmixi独身映画ファンコミュニティ
http://mixi.jp/view_community.pl?id=1299114
にて『サマーウォーズ』の頁をご覧下さい。



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