「トリスタンとイゾルデ」
★映画基礎データー★「トリスタンとイゾルデ」 2006年 アメリカ映画 監督 ケヴィン・レイノルズ 脚本 ディーン・ジョーガリス 出演 ジェームズ・フランコ ソフィア・マイルズ |
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ローマ帝国の崩壊後、イギリスは事実上、
アイルランド王の権力下にあった。
各地に割拠する部族長の1人・マーク候(ルーファス・シーウェル)は、
幼いトリスタンの命を救い、孤児となった彼を大切に育てる。
9年後、立派に成長したトリスタン(ジェームズ・フランコ)は
アイルランド王の片腕、
戦いで負った傷から瀕死に陥り、
葬船に乗せられ海に流される。
敵国アイルランドの海岸に流れ着いた彼は、
アイルランド王の娘イゾルデ(ソフィア・マイルズ)にかくまわれ、
薬の知識を持つ王の娘である彼女の献身的な介護を受ける。
粗末な海辺の小屋で過ごす濃密な時間のなかで、
ごく自然に結ばれるふたり。
葬船がアイルランド軍に発見されたトリスタンは、この地を去らねばならなくなる。
アイルランド王は、兵力によるイギリス支配を目論むが、
王の片腕であるマロルド候は、戦いの末、トリスタンに倒されてしまう。
そこで計略を変え、
イングランドの諸侯に武術大会を呼びかけ、
優勝した騎士に娘のイゾルデを遣わすと言い出す。
マーク王の代理として出場したトリスタンは勝利を収めるが、
王の娘がかつての命の恩人であると知って驚愕する。
イゾルデはトリスタンの勝利によって、マーク王の后となるのだ。
イゾルデとマークの政略結婚。
それは、すぐそばにいながらみつめあうことすら許されない苦しみを、
トリスタンとイゾルデにもたらすものとなる。
そしてついに、ふたりがほとばしる情熱を抑えきれなくなったとき、
彼らの愛は、国を滅ぼしかねない危険なものへと変貌を遂げていく……。
「スパイダーマン」シリーズでブレイクしたジェームズ・フランコと、
「アンダーワールド」シリーズのソフィア・マイルズが主演しています。
制作は「グラディエーター」のリドリー・スコット。
リドリー・スコットはこの作品の企画を20年来温めていたといいます。
「モンテクリフト伯」のケヴィン・レイノルズが監督…といいますが、
初めて作品を見る監督です。
1500年前のケルト族の伝承が元で、「アーサー王伝説」の一部でもあるといいます。
そういえば、時代背景は「キング・アーサー」の頃と一緒ですね。
ローマ帝国がイギリスから撤退して、イギリスが統一されるまでの空白時代。
イギリスは諸侯が割拠しており、海峡の向こうのアイルランド王は、
茶々をいれて統一を妨げ、イギリスを勢力下においている。
で、アイルランドの支配を跳ね除けようと同盟作りに奔走しているのが
マーク王ということです。
王様といっても、地方豪族なわけだし、お城も砦のようなものだし、
民の暮らしも貧しく、「ベルバラ」みたいな奴を期待していると、
えらい見当違いなものを見せられることになります。
実際の撮影もアイルランドとチェコで撮られたそうで、
なんといいますか、全体の暗くて寒々しげな風景が出てきます。
後の世にシェークスピアが「トリスタンとイゾルデ」をネタに
「ロミオとジュリエット」を創作したということになっていますが、
あちらは純愛悲劇でこちらは騎士道モノですのでジャンルが違います。
ケルトの伝承はいろいろな形で本に纏められていますが、
異本が多く、大きく流布本(俗伝本)系と
騎士道本(宮廷本)系という二つの流れに分けられます。
俗伝本ではドイツの詩人アイルハルト・フォン・オーベルゲのもの
(1170年頃)が、また、宮廷本ではフランスのトマのもの
(12世紀後半)があるといわれます。
ワーグナーが「トリスタンとイゾルデ」をオペラにしていますので、
そちらのあらすじを紹介しておきます。
第一幕 船。
トリスタンは、
イゾルデとの婚姻を目論むマルケ王の使いとして
アイルランドからコーンウォールへの彼女の移送の任務を負わされる。
イゾルデとその侍女のブランゲーネはカーテンで仕切られた船の中央に座っている。
イゾルデはトリスタンがかつて彼女が看病した傷ついた騎士であることに気づく。
しかも彼は彼女の許婚マロルドを殺した仇であった。
彼女は恋と憎しみの間をさまよった末、
トリスタンを殺して自分も死ぬため、ブランゲーネに毒薬を作らせる。
魔術に通じたイゾルデの母はブランゲーネに薬の調合を教えたのであった。
ところが出されたのは毒薬でなく媚薬であった。
2人は突然惹かれ合い、愛の法悦に浸る。
第二幕 マルケ王の城。
トリスタンとイゾルデは、狩りに出た王の留守中に密会を図る。
ブランゲーネは逆心を懐くメロートが王に密告しないよう注意を促すが、
2人は愛の語らいを延々と続ける。
忠臣クルヴェナルが王の帰還を知らせるが、
時すでに遅くメロート、続いて王が現れる。
しかし王はメロートの不実を責め、
トリスタンはメロートに対し剣を抜くが、敗れて負傷する。
第三幕 ブルターニュにあるトリスタンの城。
クルヴェナルは傷ついたトリスタンを連れ帰っていた。
傷は悪化し、クルヴェナルはイゾルデに使いを送る。
牧人が城壁に立ちイゾルデの船が着くのを待ち、笛で到着を知らせる。
トリスタンは最後の力を振り絞って彼女に近づいて名を呼び、彼女の腕の中で死ぬ。
マルケ王は2人の仲を許すため彼女を追って来ていたが、
クルヴェナルはメロートと戦い相討ちとなる。
イゾルデもトリスタンの後を追って死に、後に王が残される。
…映画とはずいぶんあらすじが異なります。
オペラもいろいろある異本のひとつなので、これが
「トリスタンとイゾルデ」の決定版という訳ではもともとないのですが、
毒薬(媚薬)で運命が狂ってしまうところなぞ、なるほど
「ロミオとジュリエット」ですね。
映画版はイギリス建国史前史、といった感じで、
アイルランド王の計略とマーク王への忠義に若い恋人達が翻弄される
ドラマとなっていて、こちらの方がリドリー・スコットらしくてかっこいいです。
“地味で寒々しい”などと書きましたが、イゾルデの婚礼の夜の水上シーンなどは
とても美しく幻想的です。
また城内のローマ時代の秘密の地下回廊が、
お話に怪しい影を落とすなどのロマンティズムもあります。
騎士が身分の高い女性を崇拝し奉仕するのを「ミンネ」というのだそうです。
トリスタンのリゾルデに捧げる想いというのは、このリンネそのものなのでしょぅが、
吟遊詩人が語り継いだリンネはそのままでは現代に通じるものではないので、
今回の映画のような翻訳があって、初めて我々の心に響く
作品たりえるのだと思います。
公開期間は短かく、劇場で見る機会に
恵まれた方は少ないものと思われます。
なかなか見ごたえのある作品でしたので是非、DVDでご覧下さい。
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