「TROY トロイ」DVD脚本レビュー

「TROY トロイ」映画チラシ★映画基礎データー★
「TROY トロイ」
2004年 アメリカ映画
監督 ウォルフガング・ペーターゼン
原作 ホメロス
脚本 デヴィッド・ベニオフ
出演 ブラッド・ピット エリック・バナ  オーランド・ブルーム

               

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「トロイ」については、
“長い”“合戦シーンが盛り上がらない”等、他のメーリングリストや掲示板で
あまり良い評判を聞かなかったので
期待しないで見ると、
“不出来というほど悪くないじゃないか”という気になりました。
原作にはオリンポスの神々が続々登場して、
トロイにはアフロディテ、スパルタにはヘラとアテナが肩入れし、
背後にはゼウスの“人類人口削減構想”なる大陰謀があるというお話で、
アキレウスだって女神テティスと人間の間の子だし、
戦争の原因になる美女ヘレネもレダとゼウスの間の娘で、
半神半人がうようよ。
そのまま映像化すると「アルゴ探検隊の大冒険」みたいな映画になってしまう筈。
それはそれで楽しいエンターテイメントになりそうですが、
ウォルフガング・ペーターゼン監督は、神々の登場場面をすっかり削ってしまい、
人間の古代戦史ドラマとして演出しています。

古代ギリシア。
トロイとスパルタの同盟を結ぶため、
スパルタを訪れていたトロイの王子パリス(オーランド・ブルーム)は
スパルタの女王へレネ(ディアーヌ・クルージェ)と恋に落ちてしまい、
王メネラオス(ブレンダン・グリーソン)からこっそりとヘレネを奪ってしまう。
パリスの兄へクトル(エリック・バナ)は弟の無謀な行為に激怒するが時すでに遅し、
メネラオスと兄、ミュケナイ王アガメムノン(ブライアン・コックス)は、
スパルタの名誉を守る為、すぐにギリシャ各地の王たちを集結させ、
トロイからヘレネを奪い返そうと兵を挙げる。
      
アガメムノンには、トロイを奪い、自分の帝国の覇権を確かなものにしたいと
いう欲が隠されていた。アガメムノンはギリシア一の勇将アキレウス(ブラッ
ド・ピット)を呼び寄せるため、王オデュッセウス(ショーン・ビーン)を使者に送る。
アキレウスはアガメムノンの強欲に愛想を尽かしていたが、オデュッセウスと
母テディスの予言によって、トロイへ出陣していく。不滅の名声を求めるが故。

登場人物たちの利害はバラバラで、バラバラのままトロイとスパルタの戦いが
始まります。「ロード・オブ・ザ・リング」が利害のバラバラだった登場人物
達が、一致団結そのまま暗黒勢力との終末戦争を戦い抜くのとは違って、
アキレウスはじめ神々しい輝きを持った英雄、麗人、王たちがそれぞれの煩悩にと
らわれ、相打ち自滅していくギリシャ悲劇です。
指輪物語が人が神に昇華していく話とすれば、「トロイ」は神が人に堕ちて行く話です。
必ずしも醜く浅ましい姿ばっかりでなく、人間的なもろさゆえの美学というの
も感じられるのですが、
大量兵員を動員しての大戦ですので、細々としたエピソードは端折らねばならず、
基本設定を説明して、長時間を労してなお大味の展開にならざろう得ないとこ
ろが苦しいです。

地中海にあるマルタ島にトロイの都市全体のオープンセットが建築されました。
マルタ島の労働者を500人以上雇い、イギリスからは200人近い職人を呼び寄せ、
2003年の年頭からトロイの建設に着手したそうです。
マルタ島特有の強い風、猛烈な暑さと湿気のため、
ペーターゼンは毎朝の天気予報を確認するまでは、
その日の撮影を行うか否か決断することができず、
撮影スケジュールに大きな影響を及すこととなったという話です。
2度のアカデミー賞受賞歴を誇るピーター・ヤングの手によって、
宮殿とトロイの都市の2つの巨大な入り口に、最終段階の手ほどきが加えられ完
成しています。

しかしながら、城の外壁とスパルタ軍の千隻の軍船の押し寄せる海岸は、
マルタ島では収まりきれず、
アメリカとの国境から1100マイルの場所にあるバハ半島の最南端、
メキシコ領ロス・カボスに2800エーカーの敷地を地ならしして建設されています。
メキシコ・シティからやって来た230人の労働者が雇われ、
ギリシャ軍の船、崇高なアポロン神殿、荘重なトロイの外壁が建設されています。
完成までには4ヶ月の期間と200トンもの石膏が費やされ、
平均して40フィート、中央の入り口ゲート近くでは約60フィートの高さの城壁が
500フィート分建設されました。
後のデジタル処理で両方向に何マイルにも引き伸ばされスクリーンに登場しています。

アガメムノンの強欲ぶりは漫画チックで、悪役ですのでいっそこのくらい単純化
されている方が、かえってすっきりしていいんですが、
すっきりしきれてないのがパリスとヘレネのカップル。
騒動の第一級戦犯の筈なんですが、自覚の無さも第一級です。
オーランド・ブルームはインタビューで「パリスは愛のために戦っているんだ」と
答えていますが、彼は戦っていたんでしょうか?
ただオーランド・ブルームは自分の役を楽しんでいたのではないかと思います。
毎度毎度正義の味方で大活躍というのは、飽きるでしょうから。
基本的にパリスという人物は、父親のトロイ王プリアモス(ピーター・オトゥール)
同様、古代人の思考パターンで動く人物ですね。
別にそれが悪いというわけではないのですが、
アキレウスやへクトルが近代人の“自我の目覚めと苦悩”をまとったような
人物造形がなされているのと対照的で、脚本的にいささかバランスが悪いです。

やっかいなのはヘレネで。原作ではもっと冷淡な人物のようですが、
映画ではかごの鳥の悲哀を前に出しています。戦争になっていたたまれなくなるまでは
いいんですが、あやうく夜逃げしちゃいそうになるというのはね。
現代的な感情を持ち合わせているようなのですが、
行動力はまったくない古代のお姫様のままですので、見ていて煮え切らないです。

メイク過剰でプリアモス王がかのピーター・オトゥールだと
気がつくまでに少し時間がかかりました。
さすが天下の大ベテランだけあって、凡愚な王様でもそれなりの風格を持って
演じています。プリアモスは神官であって、政治家としては息子へクトル王子
の足を引っ張ることにのみ貢献していますし、
軍の最高指揮官としては言語道断で、
海岸近くのアポロ神殿をスパルタ軍に略奪されたと怒っては、
無意味な城外戦闘を神官たちと一緒に主張して、へクトルを驚愕させたり、
海岸に打ち捨てられたように置かれている木馬を、
戦利品として城壁の内側に運び込ませた張本人でもあるわけだし。
でもなんか憎みきれないですね。
単身アキレウスのテントに忍び込むくだりは、実は原作「イリアス」でも名場面の
誉れ高い有名なくだりだそうですが、
見ていてそれなりに感動的に演出されていました。

王子へクトルを誉める方は多いですが、この役はこの映画の中で
一番見せますし、エリック・バナもいい仕事しています。
「ハルク」で主役を張ったそうですが未見です。出来はどうだったのでしょうか。
古い親父や馬鹿な弟にさんざ足を引っ張られながらも、
五万に上るスパルタ軍を一手に引き受け雄雄しく戦っている。
邪魔な親父と弟を早いとこ、ぶち殺してしまえばあるいはトロイア国は生き残ることが
出来たかもしれませんが、長男坊は一切を背負ってがんばっちゃうのですね。
女房子供と船にでも乗って逃げてしまえばよいのに、
あくまでトロイアにとどまって、トロイアのために戦う。
わが身一つで好き勝手に戦場を暴れまわっているアキレウスが最後の敵とは
皮肉な話です。
そこがこの映画のロマンティズムなのですが。

ブラピ演ずるアキレウスをどう評価するかは難しいです。
「イリアス」はそもそもアキレウスの怒りがテーマの一大叙事詩なのだ、
という解釈もあるようですけど、延々と何怒ってるんでしょうね?
40にして筋肉マンに肉体改造した
ブラピも二時間半はふくれっ面してましたが。
 アガメムノンの強欲のためになんぞ死ねるかっ
というのは当然なのですが。
―でも贅沢ですね。
一般の無名兵士は王様が何考えようが、お構いなしに戦って死なねばならない。
名前だ、名誉だと突っ張っていられるなんてとてつもない贅沢です。
オデュッセウスは、そこいら辺を突いてアキレウスを説得している。
「君が戦えば、名も無き夫たちを無事、妻たちのもとに帰してやれるんだ。
アガメムノンの恥知らずのことなど放っておけ」
ショーン・ビーンがいいなぁ。「RONIN」とかちゃんと見てないので、
この人のことはよく知らなかったのですが、
王様でありながら、戯曲「オデュッセウス」でも知られるようにトロイの戦いの後、
帰国までの間、とんでもない苦労を背負う羽目になる気の毒な男を
そこはかとない悲哀のこもったまなざしで演じています。
でも“トロイの木馬”のアイディアは、
他でもないオデュッセウスのアイディアなのですよね。
なかなか食えない男です。そこが面白いんだけど。
ねたばれ改行です。

     






アキレウスが愛に目覚めてしまって、
戦争に勝ちながらアキレス腱を射抜かれて人間として死ぬというのは
本来絵になるはずですが、
恋人役のブリセウスを演ずるローズ・バーンが見た目からしてしょぼいし、
原作どおりとはいえ、彼女をあんぽんたんのアガメムノンと取り合うという
ドラマの作り込みがダサいです。
少なくともヘクトルさんくらいにかっこ良く描かれていると
ラストがしまったんですけどねえ。
すっかり観客からも見下されてしまっているパリスに
最後の最後であっけなく逆転負けするというのは嫌いじゃないですけどね。


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