「トンネル」映画製作裏話

「トンネル」パンフ表紙★映画基礎データー★
 2001年 ドイツ映画 167分
 モントリオール国際映画祭受賞作
 監督 ローランド・ズゾ・リヒター
 脚本 ヨハンナ・W・ベルツ
 出演  ハルノー・フェルヒ、
     ニコレッテ・クレビッツ

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「トンネル」は冷戦時代のベルリンにおける実話に基づいたサスペンス・ドラマです。
145メートルものトンネルを掘り、愛する者との再会を果たそうとする人々の戦いが、スリルたっぷりに展開します。
実際、判明しているだけでも50のトンネルがベルリンの壁突破のために掘られているようですが、
大抵途中で挫折、もしくは発見され、人間が逃げることが出来たのは5つほどとか。
亡命した人数の方は不明ですが、
145メートルの長さはその脱出トンネルの中でも最長だそうです。

ベルリンの壁が作られた1961年、東ドイツの水泳選手ハリーは反共分子として監視下にあり、
偽造パスポートで西側に脱出。
地下水道を使って脱出した友人達と合流。
ハリーは東ベルリンに取り残された愛する妹を救うため、友人らと東側に通じるトンネルを掘ることを決意。
彼の周りに、東に妊娠した妻を残したエンジニアや、片足のアメリカ兵、謎の女などがあつまり、
東の国家保安省を相手に集団亡命作戦を決行します。
仲間を募ろうというので、オーディション(?)をするくだりは笑わしていただきました。
一人で一ダース以上も亡命させたい家族親戚のいる男とか。
反対に「別にいない」と呟いて、疑われちゃう奴とか。
亡命活動に共感して、行動を共にする人たちのことを当初、主人公たちは戸惑いの眼で見ているんですね。
「やばいぞ、過激派だ」という顔をする。あなたたちだって立派な過激派でしょうに。(笑)

途中、アメリカのテレビ局がドキュメンタリー撮影と交換に資金提供をしたり、
仲間同士の対立や助け出す家族の側にスパイ疑惑が出たりと、
これが実話とは思えぬほど、ドラマはダイナミックに二転三転します。
実際、話に出てくるテレビ局のドキュメンタリーは63年に放送され、今日もなおフィルムは欧米で上映されているとか。
(当時エミー賞のドキュメンタリー関係3賞を受賞)
実際、現実は小説より奇なりを地で行く面白さです。

ドイツ映画というと、「ベルリン 天使の詩」他一連のベンダース監督モノや、「Uボート」「ネバーエンディング・ストーリー」の
ウォルフガング・ペーターゼン監督位しか知らなかったのですが、本作品のローランド・ズゾ・リヒター監督のような優れた映像作家が
いることを知り、日本にほとんど紹介されていないことを残念に思っています。

このフィルムは前後編180分のテレビドラマとして制作され放送。
実にドイツ国民の十人に一人はその番組を見た、とパンフに書いてありました。
当初から35ミリで撮影されており、海外向けには編集版が配給されています。

61年のある朝、ブランデンブルク門が東側の兵士によって封鎖され、
はじめは小銃を手にした兵隊の人垣の壁が、有刺鉄線の柵になり、レンガの壁が築かれ、
コンクリートの壁になって、監視塔が建てられ、警察犬や戦車が動員される。
主人公達があれこれもめているうちに、どんどん壁が強固になっていく様子が平行して描かれ、
ドキュメンタリー調になってリアリティを盛り立てています。

掘り進むトンネル内の緊張感は「Uボート」に負けませんが、
笑いもあれば涙もありの緩急のある脚本です。
ラスト土壇場で緊張の糸が切れてアクション物に切り替わる演出は心憎いばかりです。
敵味方九人の主要人物がみな魅力的です。
それぞれ本音と建前、愛と憎しみといろいろあって見せ場が一人一人用意されている。
そして主役のハルノー・フェルヒ、相手役のニコレッテ・クレビッツをはじめ役者達がみないいです。

悪役を国家保安省のクリューガー大佐(ウーヴェ・コキッシュ)が一手に引き受けてます。
もっと階級の上下の者が出てきたりして、東側の社会が見えてくると更によかったかもしれませんが、
でも流血シーンなどの過激な描写がなくとも、全体主義の圧制の雰囲気が十分出てて怖い。
これはアメリカ人のヴィック(マフメット・クルトゥルス)が倉庫みたいな場所で、
裸になって、義足まで取らされた姿で大佐の前にたたされるあたりとかで、
目に見えるもの以上にイマジネーションを掻き立てられる見せ方の上手さでもあります。

ロッテ(アレクサンドラ・マリア・ララ)とカロラ(クラウディア・ミヒェルゼン)の女同士の対立と友情がいいですね。
一人ではなくてそれぞれに家族がいる。だからこそ、
そう、妻だからこそ、母だからこそ、譲れない、引き下がれない。女の「ここが土壇場」、というのが切々と伝わります。


ねたばれ改行です。








カメラはほとんど固定カメラでフラットに撮影されてますが、
フリッティ(ニコレッテ・クレビッツ)の恋人が壁の間際で射殺されるところなど、
壁の向こう側とこちら側でやりとりする二人、それを真上から撮って、手前にカメラが降りてくる所とか、
ここぞというシーンで
巧い事、クレーンを使ったりしてます。
そのあとで、フリッティとハリー(ハルノー・フェルヒ)がアパートのキッチンで、
ものも言わずにファクしちゃうところとか、お色気もある。(爆)
ナイトシーンやトンネル内などのライティングで光の指す方向など、別にケレン味はないのですが、
丹念に確実に演出されています。

脱出劇も全部が全部、成功と言うわけではないところがリアリティがあります。
水道局員に化けて、警備兵あいてに芝居を打つなどしてがんばったクラウスニッツ(フェリックス・アイトナー)が、
ハリーと一緒に開通したばかりのトンネルで、東側の様子を偵察に行くと、
よりにもよってラジオから、母親の自決のニュースが流れてくる。
クラウスニッツが取り乱して発砲しそうになるシーンは心臓に悪いシーンでした。
カロラとマチス(セバスチャン・コッホ)の東西に分かれた夫婦の話もよく出来てました。
それとロッテとだんなのテオ(ハインリヒ・シュミーダー)のもめごととシンクロしてるので、
ラストでマチスがマチスJrを抱くシーンが泣けるんですよ。


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