「トゥー・ブラザーズ」DVD脚本レビュー
★映画基礎データー★「トゥー・ブラザーズ」 2004年 イギリス/フランス映画 監督 ジャン=ジャック・アノー 脚本 ジャン=ジャック・アノー アラン・ゴダール 出演 ガイ・ピアース |
「トゥー・ブラザーズ」は
1920年代のカンボジア。ジャングルの荒れ果てた寺院で、
ふたごのトラ(クマルとサンガ)が生まれるところからはじまります。
兄のクマルは活発で、弟のサンガはおとなしい。
二匹が仲良く育ち始めてまもなく、
イギリス人の有名な冒険家エイダン・マクロリー(ガイ・ピアース)がやってきた。
長年アフリカでサファリをし、ロンドンの上流階級に象牙を売ってきたエイダンは、
顧客の嗜好がアジアの仏像に移りつつあることを知り、この地を訪れたのだ。
ジャングルの寺院で、エイダンは盗掘を開始。
現場に出てきた父トラを撃ち殺し、そばにいたクマルを拾って、近くの村へ。
村ではトラ退治の英雄と大歓迎され、村長の美しい娘ナイ=レアをみそめる。
だが、村長の密告で逮捕され警察署へ送られる。取り残されたクマルは、村長
の手でサーカスへ売られた。
カンボジア、タイにロケし、ジャン=ジャック・アノーによる原作を基に、
アノー自身とアラン・ゴダールが脚本を執筆。
アノーが監督・原作・脚本・製作と4役こなしています。
その他、アカデミー賞を総なめにした「ダンズ・ウィズ・ウルブス」のプロデ
ユーサー、
ジェイク・エバーツ等の一流スタッフが顔を揃え、人間とトラとの宿命的なドラマを、
『セブン・イヤーズ・イン・チベット』のジャン=ジャック・
親を殺され、引き離されたトラの兄弟の数奇な運命の巡りあわせと、
少年とトラとの友情を描く。
『メメント』のガイ・ピアースや『デリカテッセン』の
ジャン=クロード・ドレヒュスらが出演しています。
「セブン・イヤーズ・イン・チベット」は「タイタニック」と同じ年に封切ら
れたのが
不運でしたが、私はこっちの方が好きです。
2000年公開の「スターリングラード」も、ま、面白かったです。
そのジャン=ジャック・アノー監督が、どうしてこんなに甘い甘い作品を撮ったのか
不思議といえば不思議です。
死ぬの生きるのという話に嫌気がさしたのか?
それはそれで良いのですが、
だったら自然と力の象徴とも言える野生の虎を主人公にカメラを回そうという
企画じゃ
無かった方がよかったのではないかとも思います。
二頭の虎の立ち姿は雄雄しく、絵になるのですが、
単純な話、どっちがどっちやら区別が付かん。汗
後半、あわて片方に首輪を付けて無理矢理区別してますが、
ちと苦しげです。
冒頭の「父トラを撃ち殺す」というのも、あとからあらすじを調べて分かったことで、
やられたのは母トラの方だと思ってました。
三十頭からのトラを入れ替わり立ち代り撮影してますので、
もともと区別付きにくいんですけどね。
逮捕されたエイダンは、
地域の行政官(=フランスから派遣されてきた、植民地統括のための高級官
吏)の計らいで
釈放されるが、その代わり、トラを捕まえてきてくれと頼みこまれる。
行政官には下心がある。
ジャングルに観光道路を通し、本国から観光客を誘致して、この地を繁栄させ、
その手柄で栄転したいのだ。
だが道路を通すには、知事(=土候の息子)の承認が必要だ。
そこで狩猟会を開き、知事の機嫌を取ろうというわけだ。
穏やかなアジアの空気にふれ、殺生がいやになっているエイダンは、
しぶしぶ承諾し、母トラとサンガを罠に落として確保した。
現代の話ではありません。
植民地時代の話で、植民批判っぽい展開になる。
「これは虎を狂言回しにした。文明批判映画?」かと思ったのですが、
このあとは後ろの方で、
知事の馬鹿息子が檻の中のサンガを相手にぶつぶつ言うシーンがあるくらいで、
話としては途切れています。
翌日、狩りが始まった。罠から放たれた母トラはサンガを避難させ、エイダン
たちの目の前に出現。
知事に左耳を射抜かれるが、まんまと逃走。知事のめんつは丸つぶれに。
岩穴に隠れていたサンガは、行政官の息子ラウールに拾われ、生活をともにする。
一人っ子のラウールにとって、サンガはかっこうの遊び相手として、片時も離
れようとしない。
だが行政官邸の飼い犬を噛み、行政官夫妻の意向で、知事に献上される。
泣き叫ぶラウールの声は届かず、二人は離れ離れに。その後、知事はサンガを
果たし合い用のトラに調教させ、クマルはサーカスの従順なトラになっていく。
サンガがラウールと同じベッドで寝ていると、
ラウールの母がやってきて両方にキスをするという場面があります。
いくらなんでもこれはやりすぎというもので、
飼い犬を噛んで家を追い出されるくだりで、
「はじめから無理はわかってたでしょうに」という気にさせられました。
人の身勝手で翻弄されるちび虎たちの運命ですが、
結局どちらもプロの調教師の手に渡ってしまうので、
結果的に運命が食い違った、という風に見えないのですね。
鞭で飼いならされて弱気になってしまったクマルと、
少年との友情を根に持ちながら果たし合いように荒い気性のままに調教される
サンガは、
どちらも「人間と本気で戦えない」という共通項があって
人間世界との軋轢でドラマが進む以上、
つまらないです。
これはどちらかが人食い虎の野生をもっていてくれないと。
セリフがしゃべれず、表情も掴みにくい虎では微妙な差が映像だけで表現する
のはきついです。
「ノベライゼーションの方が面白かった」とする映画の掲示板の書き込みは、
このあたりの機微を文章の方が表現しやすかったからということではないでしょうか。
一年後。クマルが、サーカスで恐ろしい火の輪くぐりを仕込まれていると、
知事舘の執事がやってきた。知事がトラの果たし合いを企画している。
知事のトラ(=サンガ)の相手になる、どう猛なトラがほしいと言う。
団長はクマルを二つ返事で売り払った。
園遊会の当日。
果たし合いが始まるが、二頭はもみ合いのあいだに、
互いを離れ離れになった兄弟だと認め、歓喜のあまり遊びだした!
見物席のラウールは「あれはサンガだ!」と大喜び。
騒然とする見物客を尻目に、兄弟は揃って知事舘を脱出。
各所に出没して市民を恐怖に陥れる。
行政官はエイダンを呼び出し、二頭を始末してほしいと頼む。
翌日、ふもとの村からガソリンを摘んだトラックが出発した。
なかの一台には指揮官のエイダン、行政官、ラウールが乗っている。
エイダンの双眼鏡に、困惑する兄弟の姿が映る。やっと会えた兄弟に火の手が迫る──。
ここも凄いですね。
エイダンは虎たちを狩り出すために山に火を放つ。
もちろんクライマックスを盛り上げるためですが、それにしても
ハンター風情が山火事を仕掛けるというのは大変な暴挙ではないでしょうか。
30頭を集め交代で演じさせたトラの演技は、微妙な表情さえも感じるほどですが、
シーンにあわせて、性格や能力の違うトラを見事にキャスティングしたのは、
世界的なトレーナー、ティエリー・ル・ポルティエ。
「グラディエーター」でラッセル・クロウと格闘するトラのシーンを担当した人です。
専門家の一致した見解では、
20世紀初期に10万頭以上いたトラは今およそ6千頭に減り、
その半数はインドに生息しているといいます。
8亜種のうち3亜種がすでに姿を消し、
バリ島では最も小型の種が40年代に姿を消したそうです。
カスピトラはロシアからトルコにかけて広く分布していたが、60年代に絶滅しており、
ジャワトラは30年前に姿を消しています。
次に姿を消すおそれのある亜種は子午線上のアジアのトラであるといいます。
彼らの勇姿がスクリーンの中でしか見られなくなってしまいそうだ、という事
実は
取り返しの付かない重大問題で、
本作品でも何かしらのかたちで、この危機についての言及があれば、
また違う感慨をもってこの作品を鑑賞することもできたのだろうと思います。