「埋もれ木」DVD脚本レビュー

「埋もれ木」映画チラシ★映画基礎データー★
「埋もれ木」
2005年 日本映画
監督 小栗康平
脚本 佐々木伯 小栗康平
出演 夏蓮 浅野忠信

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デビュー作『泥の河』以来、深い人間洞察と高い芸術性によって、
作品を発表することに国内外の注目を集めてきた映画監督小栗康平。
デビュー作で米アカデミー賞外国語映画部門へのノミネート五作品に選出され、
90年の『死の棘』ではカンヌ映画祭において“グランプリ”と“国際批評家連盟賞”をダブル受賞し、
96年の『眠る男』では第20回モントリオール世界映画祭で審査員特別大賞を受賞しています。
そして待望の新作『埋もれ木』の登場となります。
勇んで出品したカンヌだか、ベネチアだかの映画祭では賞の対象とはならず、
小栗作品としての世界観の完成度の高さは一段と高いものの、小さく自閉しちゃった作品であると感じました。
同様のことを筑紫哲也さんも自分の番組の中でしゃべっているので、
あながち私ひとりの勘違いではないと思います。

作品コンセプトについて、監督は次のように語っています。
“先行きが不透明なまま、もう大きくはなにも変わらないと思えるような現代社会。
しかし現実とは、それほど変更不可能な「硬いもの」だろうか。『埋もれ木』は、目の前にあるこの現実を、
変わることができる「やわらかいもの」としてとらえなおしてみたい、と構想した。“
HDカメラを使用して新しい映像の可能性を模索し、ファンタジーとしての領域を広げようと試みた。といいます。
邦画で全編でHDカメラの運用で製作された映画はこの作品が初めてであろうと思います。
なるほど
ガメラがゴジラか、というほどデジタル合成場面が多用されているにもかかわらず、
画面はいたって端麗に静かなるファンタジーとして仕上げられています。

映画の舞台は山に近い小さな町。主人公“まち”は高校生である。
多感で、まだ自分の居場所がわからない。
ある日、女友達と短い物語をつくり、それをリレーして遊ぶことを思いつく。
スタートは町のペット屋さんが“らくだ”を買って“らくだ”が町にやって来た、
などという無邪気な夢物語。
RPG(ロール・プレイイング・ゲーム)を楽しむように、彼女たちは次々と、そして唐突に物語を紡いでいく。
まちたちが語るファンタスティックな物語は、自分が見えないまま“未来に向かう物語”である。
 一方、町に住む大人たちにも物語は存在する。
しかしそれは生きてきたリアリティに裏づけされた自分史で、いわば“過去の物語”。
この二つの物語は直接には交わらず並列して進んでいくが、
それぞれの中でなにかが合流し始める…。

主人公の“まち”は、全国から応募した7000人の中から夏蓮(かれん)という
14オの女の子が勤めています。そんなに美少女というわけじゃないですが、
程よい存在感があり、感じよく作品世界の中にたたずんでいます。
周囲を囲むのはジャズミュージシャンの坂田明、
状況劇場で一世を風靡した怪優、大久保鷹など個性派が顔を揃え、
人のいい遊び人の三ちゃん役で、浅野忠信が小栗組に初参加。
また、坂本スミ子が『楢山節考』以来、再び前歯を抜いておばあちゃん役に挑んでいる。
そうです。歯を抜くというのは、頭の毛を抜くよりずっと身体にダメージを与えると思うんですけどねぇ…。
そして、田中裕子、平田満、岸部一徳、中嶋朋子など、ベテランが脇を固めてます。
『死の棘』の松坂慶子が1シーン、友情出演していますのでかなりの豪華キャストです。

 大雨のあと、町のゲートボール場の崖が崩れて、“埋もれ木”と呼ばれる古代の樹木が地中から姿を現す。
夢と物語と現実とが少しずつ重なり始め、ファンタジーな世界が開けていく。
“埋もれ木”とは埋没林ともいわれるもので、火山噴火によって立ち木のまま地中に埋もれた古代の森である。
この町の地底に、それが脈々と生き続けていたのだ。
 埋もれ木の森に、町中の人々が集まり、カーニバルが始まる。
装飾性豊かに現実を昇華させた、
琳派のごとく艶やかな祭りの夜に、人々の夢と思いが集まる。夢がなければ、思いがなければ、
私たちは生きていけないのだから。

 撮影は、三重県鈴鹿市にあるNTT西日本所有の研修センター跡地に、
全スタッフ、キャストが合宿して行われたと報道されています。
その敷地は周囲6キロにも及び、1000坪、700坪、600坪の巨大倉庫、宿泊施設等があったそうで、
倉庫は遮蔽されてステージとなり、オープン・セットも含めて、地底の森など20を越すセットがここに建てられています。
つまりですねぇ、劇中に登場する村はどこかにモデルがあるのではなくて、
特設野外ステージにほとんど丸ごと建設されたということです。
よく考えれば、いえ、考えなくたって今までの日本映画と比べて壮大なスケールです。

CGも多用されていて、撮影後に手を入れられたカットは、全体の3分の1強に及ぶんだそうです。
大変な労力です。「やわらかなもの」を捕まえるって大変ですねえ。

美術の横尾良嘉、竹内広一、編集の小川信夫、スクリプターの鈴賀慶子が小栗組の常連。撮影の寺沼範雄、
ビジュアル・エンジニアの山ロ義彦、照明の豊見山明長、録音の矢野正人が技術パートのチームを組んでます。
VFXスタッフにはスーパー・バイザーとしてハリウッドのアート・デュリンスキーが『眠る男』に続いて入り、
VFXディレクターには、オムニバス・ジャパンの石井教雄。
冒頭のコミックスは人気の魚喃キリコが書き下ろしてますので注目。
音楽は現代音楽の作曲家で、
エストニア生まれのアルヴォ・ペルトのCD「Te Deum」の中から「シルーアンの歌」を使用しているんだそうです。
製作は劇団ひまわりが幹事会社となり、大手学習塾五社が連携して製作委員会をつくってます。
私は劇場公開時に渋谷で見ましたが、妙に子供のお客が多くってね。あれみんなひまわりの子達だったんだ。


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