メイキング「ベクシル 2077 日本鎖国」

「ベクシル 2077 日本鎖国」映画チラシ■作品基礎データ
「ベクシル 2077 日本鎖国」
2007年 日本映画
監督:曽利文彦
脚本:半田はるか 曽利文彦
出演:黒木メイサ
               

mixi(ミクシー)「独身社会人映画ファンコミュニティ」に入ろう!

21世紀初頭、世界市場を独占した日本のハイテク技術は危険視され、
国際規制の対象となった。
これに猛反発した日本は国連を脱退し、鎖国を強行。
それから10年間、ハイテクを駆使した完全なる鎖国により
日本の実像は厚いベールに隠された。
2077年、日本に潜入した特殊部隊の女性兵士ベクシル(声 黒木メイサ)は、
異様な光景を目撃する。

『ピンポン』で長編デビューを果たし、
『APPLESEED アップルシード』をプロデュースした曽利文彦によるSFアニメです。
ハイテク技術を極めた近未来を舞台に、
国際社会から孤立し完全鎖国を行う日本の姿を描きます。
声優陣には舞台の「あずみ」映画『着信アリFinal』の黒木メイサ、
『フラガール』の松雪泰子、
映画やテレビドラマなどで人気の谷原章介が参加。
VFXの第一人者、曽利監督ならではの質の高い映像は一見の価値ありです。

映画の掲示板の書き込みは結構辛いですが、
私は結構面白く見ました。
「アップルシード」で作った手書きアニメとCGの合成の映像を、
あれきりにさせてしまうのはいかにも惜しい。
では、あの先に何を描くのか?

トランスフォーマーのCGがロボットをリアルに見せるための“手段”
であったのに対し、「ベクシル」はCGで描くこと、それ自体にテーマがある。
―そういうひっくり返し方は、映画的で気に入りました。
マトリックスは、あんだけ映像でいろいろ見せていながら、
最後にネオはデウス・エクス・マキナと手打ちをして、
スミスとどつき漫才で3部作を終わらせちゃった。
「攻殻機動隊」は続編「イノセンス」で前に進むのではなくて、
個人的な世界へ入り込んで終わってしまっている。
人とバーチャル世界と、とことん戦ったら最後にどこへ行き着くのか?
「2077年 日本鎖国」というサブタイトルどおり、
強引に日本列島そのものをバーチャル空間に取り込んで、
徹底抗戦しています。

曽利文彦監督のインタビューによると
「見えないことに対する恐怖、それが歪みを生むのではと思ったんですね。
現在でもそういう国がありますが、
技術が進むともっと完全に情報をシャットアウトできるだろうと。
描かれているのは国レベルでの極端な舞台設定ではあるのですが、
今のテクノロジーの進歩というのは知らないうちにひとのつながりを絶っていく、
個人化・孤立化していってるなという恐れや警鐘も自分の中にあって、
それが映画のテーマにつながっています」
監督は、仮想現実が現実社会を飲み込んでいく、という発想から
スタートしているのではなくって、
もっと現実的な閉鎖社会をハイテクで実現しうるのではないか、
というところから出発しています。
では<アップルシードとはアプローチが違うのでしょうか?
「プロデュースを担当したCG作品『アップルシード』は、
技術的な部分や予算の関係でできなかったことがあって、
そこにチャレンジしたいという絵描きとしての欲求はありました。
メカや建物みたいなハードウェア、キラキラした世界はCGは本当に得意なんですが、
アナログ的なものは難しい。
そこにあえて突っ込んでいこうと。
そうすると、職人芸的なものでどんどんひとの手が必要になります。
しかし、山があれば登りたくなるんですよ」
予告編でもちらりと出て来るドヤ街の空撮映像のCGなんかが本当に良くできている。
屋台のラーメンをCGで見せようなんて、ハリウッドではありえない発想です。

「一見リアルでありながら、ロマンティックだったりするのが『ピンポン』。
男を主役にもってくると、ファンタジーになるんですよね。
逆に『ベクシル』は、女性主人公ですがまったく逆になって。
ロマンは潜んでいる程度で、すごくリアルになる。
ただ、SFでもアクションでも時代劇でも…みんなそれぞれ好きなんですが、
自分の関心があるのはいつも"ひと"なんですよね。
『ピンポン』でも、卓球の試合だけを描いたらつまらなかったと思うんですが、
試合の球筋に感情がのっていたから映画になりえたんじゃないかな。
そういう意味では、『ベクシル』のアクションでも、
感情のラインが見えるように気持ちがのっかるようにと作っています」

では実際に声を当てる役者さんたちは3DCGアニメの世界をどう感じられたのか、
レオン役の谷原章介は、
「曽利さんの手がけられている作品は、
以前からいちファンとして楽しませていただいてました。
中学の時から士郎正宗さんの漫画が大好きだったこともあって、
その映画化作品である『APPLESEED アップルシード』には、特にやられましたね。
心の中に抱いていたヴィジョンがそのままスクリーンに出現した衝撃です。
なので、僕にとって、曽利さん率いるCG制作チームは憧れの存在。
一緒にお仕事できて光栄です」
「いつか人間の役者なんていらなくなる日がくるかも? 
今回の映像を観て、正直そう思いました。
このまま技術革新が進んで、
絵も声も監督の思い通りにコントロールできるようになるのであれば、
あるいは……いやいや、もちろん、
役者やスタッフみんなで作るからこそできることもある、
ということもわかってはいるので暗いことは言いませんが(笑)。
とにかく"もう、こんなことまでできるようになっているのか"と
その進化に驚かされました」
と素直に驚いています。

ベクシルの上司で恋人がレオンという男で、はじめは
この二人が主人公かと思っていたら、
ベクシルが潜入する日本の中でパルチザンとして抵抗している
グループのリーダー、マリアというのがいて、
彼女とベクシルの間に作品のテーマが存在している。
「ベクシルは、ハイテクの中に生まれ育った未来人ですが、
感情の起伏が激しい、古いタイプの人間なんです。
特に、所属する特殊部隊なんて感情をいかに押し殺すかという社会。
そういう中で居心地の悪さを感じていたのが、
鎖国下の日本に潜入して、
そこで初めて自分の感情の振れ幅にシンクロするような、
ひとの躍動感というかダイナミズムにふれて、活性化していきます。
 マリアはそれと対照的に見えます。
でも、実は彼女も激しいものを持っていながら、
自分の運命の中で感情を殺さざるをえない立場にいる。
単なる性格の違う人間ということじゃなくて、
元はとても近いふたりが環境でこうも違ってしまったというのが切ない部分です。
恋愛だとか、自分のパーソナルなことはすべて宿命・全体のために捨てて、
戦いを選ぶので。」

曽利文彦監督は実写とアニメの両方を手がけている。
監督にとってその違いとはどんなものなのでしょう?
「実写は思ったようにいかないんですよ。
アドリブ的な偶発性から練り上げていくものです。
集団、チームの中からうねってきてるものをつかむ作業。
だから、監督の想像と全然違うところへ行っちゃう可能性もありますよ。
CGでは、どのシーン、どのカットも監督の頭の中で描いたものに近い。
そこまでできるし、それを要求されるんですね。
実写は監督の思惑を越えたものができあがる、
CGはやはり監督のパーソナルな部分に近いものですね。
自分は、両方できて幸せだなと思います。
CG作品のときも、
実写映画の経験から実際に撮影できるアングルなどにこだわりますし、
逆に実写ではいろんな制約でできないこと、
アクションなんかでも、イマジネーションさえあればやりたい放題ですから!」

私自身は「ベクシル」を映像技術的にも、
テーマ的にも発展途上の作品であると感じました。
映像技術的なことだけでも、
サンドウォームを思わせる怪物が暴れるクライマックスは壮絶ですが、
機銃が火を噴く場面等、まだまだ工夫の余地があるし、
人物の動きもそうですね。
非情にデリケートな表情を表現出来ているかと思うと、
立ったり座ったりの場面が手書きのアニメよりぎこちなかったりする。
テーマのもって行きようは、
問題提示された問いかけが大きいので、
本来答えの出しようも無いところに行ってしまうのですが、
おとし前をなんとか付けようとするところに、
私は好感を抱きました。
人によってはこれがオチですか、と引いてしまった人も少なからずいたようですが。


以下はネタバレとなるのでmixi独身映画ファンコミュニティ
http://mixi.jp/view_community.pl?id=1299114
にて『ベクシル 2077 日本鎖国』の頁をご覧下さい。


トップページ(映画製作裏話、映画と原作比較レビュー)に戻る。