「ゼブラーマン」DVD脚本レビュー

「ゼブラーマン」ポスター★映画基礎データー★
「ゼブラーマン」
2003年 日本映画
監督 三池崇史
脚本 宮藤官九郎
出演:哀川翔 鈴木京香 渡部篤郎

               
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「ゼブラーマン」については、
どの掲示板でもほめてるし、うちのメーリングリストでも面白いって話しばか
っりだし、
実際劇場公開の時は大入りだしで、
「もし、つまらなかったらどうしよう」という変なプレッシャーを感じながら
見ました。
「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」も
原作読んで見ましたので、ストーリーは承知の上で見てますから、
情報は過剰にありましたが、そういうのと、
好評を知っているのとは、別なんだというのを今回感じました。

もちろん面白かったですが、まっさらな状態で見たほうが数倍楽しめたろうな
と思います。

2010年、横浜市八千代区。
50センチの巨大ザリガニが大発生し野鳥が変死を遂げアゴヒゲアザラシ1万匹が
川を登り、
UFOが墜落したらしい街。
それでも平凡な八千代区に、正義のヒーローが現れ、なぞの怪人たちと戦いを
はじめる。

ヒーローの正体は小学校教師・市川新市(哀川翔)、
子供の頃に見た番組『ゼブラーマン』に夢中になるあまり、
自分でコスチュームを作り、それを着て怪人 = 犯罪者・変質者と戦ってい
るのだ。

はじめはコスプレして夜の街を歩いていたところ行きがかりで人助けをし、
そのうち、困っている人がいると
勝手に後頭部の髪の毛が逆立ち、いてもたってもいられなくなってしまうから
だ。

そんな新市は転校生の浅野とその母・可奈(鈴木京香)と親しくなっていた。
自分以上に『ゼブラーマン』に詳しい浅野を尊敬し、凛々しい母・可奈に憧れ
を抱く。
妻は不倫、娘は援助交際、息子はイジメられ、自分の家庭が崩壊寸前の新市に
とっては、
理想の妻と子、自分が夫であれば、とも思う・・・。
時を同じくして、
八千代区に宇宙人がいて世界征服の拠点を築いている怪情報を入手した防衛庁

特殊機密調査部を設立する。
調査を任命された及川(渡部篤郎)と瀬川、二人は厳命を帯びる
「くれぐれも口外しないように」、「言いませんよ、バカだと思われるもん」
あきれ答える及川。
それでも町はどんどん深刻な事態になっていく。
宇宙人は本当にいるし、犯罪が絶えないのだ。
及川は自分たちが現場に駆けつけるより早く
宇宙人を倒している怪しいゼブラ柄の男がいることを知る。

ある日、遂に宇宙人が一斉に八千代区を侵略し始めた!
政府は米軍に八千代区に中性子爆弾を落とす結論を出し、街を隔離してしま
う。
ゼブラーマンは八千代区を、地球を守れるのか !!

そもそもこのけったいな映画がどのようにして企画されたのか?
2002年10月、三池監督と宮藤官九郎さんの初顔合わせの席で
「今回はなにかやっていない役を哀川さんにやってもらおう」と言うことだけ
決めて、
あとは会って話をしましょうという企画会議が開かれたそうです。
いくつかの案が出た後で、三池監督から「ヒーローものはどうでしょう?」と
いう提案を出しました。
宮藤さんが
「それ、おもしろいですね。普段はダメな小学校の教師で。家庭もこわれて
て...。」
ということで基本コンセプトが決まりました。
ただこの時点では、どんなヒーローになるかは決まっていなかったようです。

最初は架空のテレビヒーローでなく、
'70年代に実際に放送された番組のヒーローという案もあったそうですが、
宮藤さんに書いてもらうんだったら「木更津キャッツアイ」の「ヤクザ球団」
みたいに、
架空のものを作ってもらった方が面白いというプロデューサーの判断で、
オリジナル・ヒーローの創作にクドカンさんは取り掛かってます。

「デッド・オア・アライブ」の公開の1999年くらいから哀川翔さんは盛んに
「タイガーマスク」の主人公の伊達直人に憧れているということを
プロデューサーや三池監督に語っていたそうです。
哀川さんは実際に佐山サトルさんから貰った本物?のマスクももってるそうで
す。 

宮藤さんがシマウマを選んだ理由は、
 
1. 三池さんがタイガーマスクの話をしたので頭の中に縞模様が残ってい
た。
2. 以前宮藤さんはCMでシマウマと競演したことがあった。その時に「シ
マウマはとても臆病な動物だから絶対後ろに立たないで下さい.。両足で蹴られ
ますから。」と盛んに注意を受けた。
 
この、2つが発想の原点のようです。(本当のところはクドカンさん当人にし
か分からぬことですが。)
「ゼブラーマン」というタイトル、キャラクターとともに
「白と黒のエクスタシー」
「俺の背中に立つんじゃねぇ」
「ゼブラバックキック」などの決めセリフも同時に出来上がり、
あとは怒涛の製作になだれ込んだようです。

私は間違いなく仮面ライダー世代なのですが、
根っからのウルトラマン派で、等身大の変身ヒーローを下に見てました。
ですから、コスプレしたとたんに空を飛んだりするヒーローには正直、
感情移入し切れません。
M78星雲からやってきた宇宙人とか、最低限、超能力の根拠がほしい。
でも駄目ですね。それをいったらこの作品の世界観の根底を否定してしまう。
「ゼブラーマンは変身しない、自分の力で戦うんだ」
繰り返し語られるこのセリフはぐっときます。
“痛み”を普通の男が受け止めてそれでも戦う、それはヒーローの真髄です。

映画の出だしから、中盤にかけては文句無くはまりました。
自分でミシン掛けして作ったコスチュームを鍵付きの押入れに隠し持って、
夜な夜な鏡の前で着てみて、決めポーズなんかしてふふふと笑う。
馬鹿っぽいんですが、まあ、マニアとかオタクとかはそんなもので。
「スパイダーマン」のトビー・マグワイアもノートにコスチュームのイラスト
書いて
あれこれやってるしね。(決して悪口ではありません)

窓の外の自販機を見て、誘惑に駆られる。
「のど渇いたな、ちょっとだけなら良いよな?」
コスチュームのまま表に出たくなるのですね。
屋根から這い出て、地面に落っこちるところでは大いに笑わしていただきました。

同僚の先生、内村光良が哀川さんと繁華街をパトロールしながら
「変質者なんてゆるさないっ」ってうっちゃんが力んで、
コスプレが病みつきになってる哀川さんが「ばれたらクビだ」と夜うなされる
ところ、
「ばれたらクビだ」「ばれたらクビだ」「ばれたらクビだ」って先生方が連呼する。
悲鳴を上げるほど可笑しかったです。
中年に差し掛かった大人の男のじたばたさ加減がケッ作でした。
奥さんは浮気してるし、(浮気してるって設定らしいです)
娘は援助交際、息子はいじめにあってる。完全に家庭崩壊してるし、
勤め先の学校でもまるで影が薄い。
本人は自覚ないみたいだけど、ヒーロー狂いは現実逃避ととれなくも無い。
でも変に自覚してると話が暗くなるので、笑いのめしといた方がいい。
『ゼブラーマン』に詳しい浅野くんに感動して、「浅野さん、と呼ばせてくだ
さい」なんぞ言い出す。
ふざけてるのではなくて、まじりっけなしに感動してる。

哀川さんがミシンかけしながら見ている最近の変身ヒーローものが、
「放射能戦隊アレクサンダー」。
出てくる怪人が「貞子」で、アレクサンダーに井戸ごと吹き飛ばされてる。
私はげらげら笑ったんだけど、
哀川さんいわく「なっちゃいねぇ」。

7話で打ち切りになったテレビ版ゼブラーマンが出てきますが、
画面の荒れた感じといい、昔の仮面ライダーのムード満点です。
テレビ版ゼブラーマンの素顔・十文字譲を演じるのは、渡洋史さん。
実はこの方、特撮ファンなら知る人ぞ知るアクションスター!
宇宙刑事シャリバンや時空戦士スピルバンの主人公を演じていたお人です。
テーマソングを歌うは水木一郎!
エンドロールで確認しましたが、作詞はクドカンさん本人です。
ここいらへんの悪乗り気味のお遊びは楽しかったです。

渡部篤郎の演じる及川という防衛庁の調査官は、
いってみれば現実とフィクションの間を行ったり来たりするような役回りです。
どうやら宇宙人が地球侵略しようとしている、というのは本当らしい。
ちぇっ、やってらんねぇな。
彼の仕事をシリアスに見せるという方法論はありえたと思いますが、
三池監督は及川に、ゴジラシリーズのGフォースのような擬似リアリティを
装うようなことはさせてません。
一応潜入先のアパートはメカでぎっしりですが、
相棒のオタッキーの瀬川に嫌々付き合っている雰囲気。
チロリアン2号というレーダーつきの改造車に乗って、
八千代市をパトロールというか、徘徊させている。

クライマックスでバイクに乗って現れたゼブラーマンに「先生やるねえ」といって、
非常線を取り払って通してあげている。
彼は夢見ることを忘れた、あるいは諦めた男たちの代表なのですね。
「正義のヒーローなんだろ? ちゃちゃっとやっつけちゃってよ」
というのは何も面倒くさくなって言ってるんでなくて、彼なりにエールを贈っ
てると思いたい。

大杉漣のやっている教頭は、向こう側の人です。
ねたばれになるので改行します。








でも教頭の部屋に「ムー」のバックナンバーが並んでいるのは
不思議な演出です。
単にUFOが八千代市に落ちたという話がしたいなら、
フロッピーディスクにデータがあって、それをパソコンで読み出すとかでも
かまわなかったはずです。
「これはやっぱり、おたくの世界なんだよ」って
ねた晴らしの部分でもいちいち断っているようで、
なんとなく居心地悪いです。
監督やクドカンさんたちに、
確信犯的にクライマックスを突っ走ることに恥じらいがあったんでしょうか?

それとあの異性人のデザインですね。
巨大化しても漫画チックなキャラクターのままですが、
シリアスに怖い形態に変身してもいいはずですが、そうなってません。
ゼブラーマンがシリアスモードになるのにあわせて、
両方シリアスになると、絵ずらが変になるんでしょうか?

「飛ぶなんて無理、でも飛んでほしい」っていう可奈さんのセリフは
とどめをさすきめ台詞ですが、
巨大化した敵に空を飛んで対抗する、
力対力でケリをつけるということは、どうしても必要だったのでしょうか?
ヒーローファンの方に言わせれば、そこがヒーローものだから、ということに
なるのかもしれませんが、
体育館の中で戦って、天井がぬけるくらいの大乱闘をやってくれればそれで十
分ではないかと
思ってしまうんですね。
哀川さんが渓谷で飛ぶ訓練をしてますが、
あれはやっぱり無理がありすぎで、
新しい蹴り技の訓練くらいで良いんではないでしょうか?

心意気、こころざしのドラマですから、
アクションの部分でCG特撮で見せ場をつくらずとも良いだろうといってしま
うのは、
やはり私が変身ヒーローもののファンではないからかもしれません。

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