生きている自分を実感
アンのモノローグ
「これが私。雨の中で目を閉じる。
こんなことするなんて思ってもみなかった。
寒さに震えて、シャツにしみ込む雨を肌で感じる。
ぬかるむ大地を足の裏で感じる。
生命のにおい。葉を打つ雨の音。読んでいない本の物語。
それが私。他の誰でもない私よ。」
(「死ぬまでにしたい10のこと」より)
「死ぬまでにしたい10のこと」映画チラシ作品基礎データ
2002年 カナダ・スペイン映画
監督・脚本:イザベル・コヘット
出演:サラ・ポーリー

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 ある日突然、ガンで余命2ヵ月の宣告を受けた若い母親アン(サラ・ポーリー)。
アンは、
夜明けの寒々しいコーヒーショップでノートを開き、
23年の人生を振り返ります。
―17歳でファーストキスの相手ドン(スコット・スピードマン)と
子供が出来て結婚。
19歳で次女を出産。
母の家の裏庭で失業中のドンと共にトレーラー暮らし。
大学で清掃婦をしている。
父(アルフレッド・モリーナ)はもう十年も刑務所にいる。
ホテルの厨房で働いている母(デボラ・ハリー)は、
人生を呪っている。―
ほんの数秒で終わってしまいます。
気を取り直し、
生きているうちにしたい10個の事柄をリストアップした彼女は、
それを実行に移そうとします。
そのなかには、幼い娘たちに愛を伝え、
夫以外の男と恋に落ちることも含まれていました。

間近に迫る死期を知らされた若い母親の、残された日々を描く人間ドラマです。
残りわずかな生を、
家族や自分のためにするべき10個の事柄についやそうとするヒロイン。
そんな彼女の胸の内をナチュラルに捉えてゆきます。
『トーク・トゥ・ハー』のペドロ・アルモドバル監督が脚本を気に入り
製作を買って出たという注目作です。

紹介のセリフは映画冒頭、
雨の中に一人立つアンのモノローグです。
映画もこのセリフとともに始まり、
「my life without me」のメインタイトルが出ます。
邦題は「したい」ですか、原題はもっと主体的に「する」です。
幸福とはいいがたい人生が、
それでも彼女にとってはただ一度のかけがえない人生が
ある日突然、奪われようとするとき、
彼女は雨の中に独り立って、自分自身の喪の仕事にとりかかる
決意をしたかのようです。
その中には、子の母として立派なものもあれば、
ゆれる一人の女として、夫以外の男と関わりたいという願望もあります。

この映画はナンシー・キンケイドの短編
「Pretending the Bed is a Raft」
を原作にしていますが、その小説ではヒロインが病気を周囲に告白しています。
監督で脚本を書いたイザベル・コレットは、
「ヒロインが病気を秘密にしたらどうなるか」
という着想を得て構想を膨らませたそうです。

不治の病と人の死にまつわる起きて当然のごたごたを
かなり強引に話の外に押しやって、
ヒロイン自身が己の人生にどう決着をつけるかを、
じっと考える話が作りたかったんだと思います。

余談ですが、イザベル・コレット監督は村上春樹のファンで、特に
「ノルウェーの森」がお気に入りのようです。
この人がメガホンをとればとてもよい映画にしてくれそうです。


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