「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人/ファンタジー友情映画脚本の書き方」
原作小説と映画脚本比較により脚本の書き方・成り立ちを探ります。ハリウッド脚本の極意、世界名作の秘密に迫ります。全体に「ねたばれ」の要素がありますので、要注意。

「ハリーポッターとアズカバンの囚人」原作小説表紙 原作小説 
「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」
J.K.ローリング著
松岡佑子訳
静山社刊  2001年初版

    
「ハリーポッターとアズカバンの囚人」映画チラシ アメリカ映画 2004年
製作総指揮: クリス・コロンバス
監督 アルフォンソ・クアロン
脚本: スティーブ・クローブス
出演:ダニエル・ラドクリフ
  本作原作文庫
  本作映画チラシ





■脚本の書き方■
原作小説と映画脚本比較レビュー・インディスク


「天使と悪魔」

「ジェネラル・ルージュの凱旋」

「地球が静止する日」

「デス・レース」

「ホームレス中学生」

「容疑者Xの献身」

「パコと魔法の絵本」

「西の魔女が死んだ」

「ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛」
原作=C.S.ルイス
「ジャンパー」原作=スティーブン・グールド
「ライラの冒険 黄金の羅針盤」原作=フィリップ・プルマン

「陰日向に咲く」原作=劇団ひとり
「ミッドナイトイーグル」原作=高嶋哲夫
「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」原作=J・K・ローリング

「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」原作=リリー・フランキー
「墨攻」原作=酒見賢一
「暗いところで待ち合わせ」原作=乙一
「プラダを着た悪魔」
原作=ローレン・ワイズバーガー
「夜のピクニック」原作=恩田陸
「ゲド戦記」原作ル=グウィン
「ダ・ヴィンチ・コード」原作ダン・ブラウン
「ナルニア国物語/第1章ライオンと魔女」原作C・S・ルイス
「博士の愛した数式」原作小川洋子
「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」原作J.K.ローリング
「亡国のイージス」原作福井晴敏
「宇宙戦争」原作H.G.ウェルズ
「四日間の奇蹟」原作浅倉卓弥
「アビエイター」原作ジョン・キーツ
「オペラ座の怪人」原作ガストン・ルルー
「ハウルの動く城」原作ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ターンレフト・ターンライト」主演:金城武
「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」 主演:ダニエル・ラドクリフ
「下妻物語」原作嶽本野ばら
「世界の中心で、愛を叫ぶ」原作片山恭一
「ジョゼと虎と魚たち」原作田辺聖子
「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」
原作J.R.R.トールキン

「アイデン&ティティ」
原作みうらじゅん

「精霊流し」
原作さだまさし

「マッチスティック・メン」

監督リドリー・スコット

「コンフェッション」

原作チャック・バリス

「ソラリス」
監督スティーブン・ソダーバーグ
「魔界転生」

原作山田風太郎

「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」

原作フランク・w・アバグネイル

「ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔」

原作J.R.R.トールキン

「黄泉がえり」

原作梶尾真治

「レッドドラゴン」

原作トマス・ハリス

「マイノリティ・リポート」
原作F・K・ディック
「ハリーポッターと秘密の部屋」
J.K.ローリング著
「ザ・リング the ring」

主演ナオミ・ワッツ

「アバウト・ア・ボーイ」

原作ニック・ホーンディ

「タイムマシン」
原作小説H・G・ウェルズ

「GO」
脚本:宮藤官九郎
「ロード・オブ・ザ・リング」脚本ピーター・ジャクソン
「ハリー・ポッターと賢者の石」
脚本スティーブ・クローブス
「PLANET OF THE APES/猿の惑星」

監督ティム・バートン

「陰陽師」
脚本福田靖
「ブリジット・ジョーンズの日記」

脚本アンドリュー・デイヴィス

「バトル・ロワイヤル」

脚本深作健太

「クロスファイア」
脚本山田耕大
「ファイト・クラブ」
監督デビット・フィンチャー
「共同警備区域JSA」
原作小説パク サンヨン
「ナインスゲート」
脚本:ジョン ブラウンジョン
「ハンニバル」
脚本デビット・マメット
「ホワイトアウト」

原作小説真保裕一

「リプリー」
原作パトリシア・ハイスミス
「黒い家」
脚本大森寿美男
「ISOLA多重人格少女」
脚本水谷俊之

「シン・レッド・ライン」
脚本テレンス・マリック

「魔女の宅急便」
監督宮崎駿

「リング」
脚本高橋洋

「コンタクト」
監督:ロバート・ゼメキス

「L.A.コンフィデンシャル」
脚本カーティス・ハンソン

「セブン・イヤーズ・イン・チベット」
原作小説:ハインリヒ・ハラー
「さらば、わが愛 覇王別姫」
監督チェン・カイコー
「バラサイト・イブ」
脚本君塚良一
「アポロ13号」
監督ロン・ハワード

「マディソン郡の橋」
脚本リチャード ラグラベニーズ

「ショーシャンクの空に」
脚本フランク・ダラボン
「フォレスト・ガンプ」
脚本エリック・ロス
「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」
原作小説アン・ライス
「ジュラシック・パーク」
原作小説マイケル・クライトン

「シンドラーのリスト」
脚本スティーブン・ザイリアン

「イヤー・オブ・ザ・ガン」
原作マイケル・ミューショー

「ダンス・ウィズ・ウルブズ」脚本マイケル・ブレイク
「レナードの朝」
主演ロビン・ウィリアム

「トータルリコール」
原作小説フィリップ・K・ディック

「レッドオクトーバーを追え!」
脚本ラリー・ファーガソン

「ワイルド・アット・ハート」
脚本デイヴィッド・リンチ
「ミザリー」
原作小説スティーブン・キング

「ダイ・ハード」
監督ジョン・マクティアナン

「仕立て屋の恋」

原作小説ジョルジュ・シムノ
「時をかける少女」
脚本剣持亘

「ブレード・ランナー」

原作小説フィリップ・K・ディック

「惑星ソラリス」

監督アンドレイ・タルコフスキー

「犬神家の一族」
原作小説横溝正史
「ゴッドファーザー」

監督フランシス・F・コッポラ

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『 ハリー・ポッターとアズカバンの囚人 』監督は
これまでのクリス・コロンバスにかわり『アモーレス・ペロス (1999)』の
アルフォンソ・クアロンが監督しています。
下馬評版ではスティーヴン・スピルバーグになるという噂も立ちましたが…。
(次の第4弾『 ハリー・ポッターと炎のゴブレット (2005)』は『ハイ・フィデリティ (2000)』『モナリザ・スマイル (2003) 』のマイク・ニューウェル監督)
脚本は『 ハリー・ポッター 』シリーズ通して
スティーヴ・クローヴス(『ベティ・サイズモア (2000)』等も)が当たっています。
 アルフォンソ・クアロンが招聘された時点で既にスティーヴ・クローヴスの脚本は完成していた模様です。

 映画も原作も前作と同じく、ダーズリー一家でのハリー(ダニエル・ラドクリフ)の受難の日々から始まっています。
自分の部屋でベッドにもぐりこみ、バーノンおじさんの目を盗んで魔法学校の宿題をしているハリー。
原作では、魔女の火あぶりの刑の無意味さについて論ぜよ、
というレポートを書いていますが、映画ではまず、ダーズリー家の外からハリーの部屋の
窓が明るくなったり暗くなったりする様子がカメラに捕らえられ、
カメラが窓から室内に入ると、ベッドの中でハリーが魔法の杖に向かって、「もっと強く光れ」「もっと強く」と明るい光を放立たせています。
 視覚的に分かりやすく訴えるのが映画の常套手段ですが、闇を光で照らすというのが作品テーマを端的に示す良いシーンでもあります。ちょっとした映画独自の演出ですが、ハリーが光をほとばしらせる毎におじのバーノンおじさんが部屋を覗いてはいらいらとドアを閉めています。
 
 原作ではこのあと同級生の親友ロンから電話がかかり、あろうことかバーノンおじさんが出てしまい、ハリーは取り次いでもらえないどころか雷を落とされたりしています。
ふくろう便がハリーのバースディに届き、ロンが一家こぞってエジプトへ旅行に、もうひとりの親友ハーマイオニーは両親とともにフランスに滞在している等の消息が分かります。ロンは かくれん防止機スニースコープを、ハーマイオニーは空飛ぶ箒のお手入れセットをプレゼントしています。
 かくれん防止機は実はハリーに身辺に迫る危険を知らせる小道具のひとつとなりますが、あとでロンの双子の兄より入手する忍びの地図とドラマ上結果的に役回りが同じとなりますので映画ではカットされています。
 森の番人ルビウス・ハグリッド(ロビー・コルトレーン『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ (1999) 』『 フロム・ヘル (2001) 』)が新しくホグワーツ魔法学校の先生に任命されたことも本人が送ってきたふくろう便からハリーは知ることになりますが、同封された「怪物的な怪物の本」というぶっそうな教科書ともども映画での登場はもう少し後になります。

 原作ではシリウス・ブラック逃亡のニュースがダーズリー家のテレビから流されています。彼はハリーの親の敵、ヴォルデモート卿の手先として悪事をなし、
人間界で追い詰められて魔法を炸裂、居合わせた12人の人間と1人の魔法使いを殺して逮捕されています。魔法省はガス爆発として人間たちの記憶を改ざん、ブラックをアズガバンの監獄に収容したのですが、厳しい看守の目をかいくぐって逃亡しています。
人間界に凶悪犯逃亡のニュースとして流し、魔法省の役人たちは魔法界以外にも捜索の手を広げているのでした。

映画ではテレビの場面は無くて、ブラックの逃亡劇は魔法界の中だけの話となっています。
ハリーの天敵マージおばさんが現れるのはこの後です。ブルドックのブリーダーをしているマージおばさんはバーノンおじさんの姉でハリーとは血のつながりが無く、バーノンおじさんに輪をかけた魔法使い嫌いです。映画では展開が早いので分かりにくいのですが、
ダーズリー一家がハリーを嫌って出来るだけ口を利かないようにしているのに反して、
マージおばさんはハリーを常に監視下においてねちねちといじめます。
バーノンおじさんはマージに対してハリーがホグワーツ魔法学校の生徒であることを隠し、不良少年厚生院の生徒だなどととんでもない説明をしています。
ハリーは歯を食いしばって屈辱に耐えますが、調子に乗ったマージおばさんがハリーの死んだ両親を罵倒するにいたってキレてしまいます。
マージおばさんの身体は風船のように膨らんで空のかなたへ飛んでいってしまいます。

映画ではオープニングからここまで3分から5分の展開ですが、
原作ではマージおばさんは一週間滞在しており、最後の晩に騒動になります。
今回幸いにして筆者は日本語版と字幕版の両方を鑑賞できたのですが、
日本語版の上映では多くの家族連れと一緒でした。「ハリー・ポッター」は本来児童小説として執筆され、映画もファミリー映画として製作されています。
映画のすばやい展開は、単に小気味よい演出のためというだけでなく、
じっと椅子に座ってスクリーンを見つめていることの苦手な幼い子供たちに対して、
映画のなるたけ早い時点でアクションを見せようという配慮でもあることに
今回初めて気が付きました。
「ハリー・ポッター」はもともと子供たちのものであって
私たち大人は、ご相伴させてもらっているに過ぎないことを忘れてはいけません。
脚本に深みが無いなどという大人の映画ファンの評論は映画興業ビジネスシステムを
批判しているようで当人がエンターテイメント文化の基本を理解していない証拠です。

バーノンおじさんは「元に戻せ」とわめきますが、ハリーは断固拒否、スーツケースを引っさげ家を飛び出してしまいます。
映画では公園でしゃがみこんでいるハリーの前に死の魔犬、グリム(死神犬)がすぐ姿を見せていますが、原作ではその前にハリーは自分の無分別を後悔しています。
ハリーのような修行中の学生魔法使いは人間界での魔法の行使を禁止されています。
それを破れば学校退学で魔法界を追放されるか、逮捕されて監獄行きか。
いっそ逃亡してしまうかとも考えますが、
現金の持ち合わせが無いことと、人間界でも宿無しになってしまったこと等が脳裏をぐるぐる回ってハリーは街角に立ち尽くします。
これは映画でも押さえておいた方の良かった場面です。いえ、筆者が見落としただけでフィルムにはあったのかもしれませんが、グリムの方がインパクトがありすぎ、ハリーの感情の迷いが飛んでいるような印象を受けてしまいます。

迫るグリムに恐怖するハリーの横顔をバスのヘッドライトが照らします。
振り返ればグリムの姿は無く、目前に迫ったバスに慌てて飛びのきます。

迷子の魔法使いを望みの場所に送り届ける緊急お助けバス「ナイト・バス」です。
ハリーはとりあえず漏れ鍋に向かうことにし、
ダイアゴン横丁に行きたいと車掌に告げます。
原作ではここでもシリウス・ブラックの噂話が出ます。
映画では夜のロンドンを、人間のバスの間をすり抜けて走るバスの
疾走感が強調されています。

バスが止まってハリーが荷物を降ろすと、
漏れ鍋の店先で魔法省の大臣ファッジが待ち構えていました。
逃げるどころか自分で当局の最高責任者の前に立ってしまったのです。

ファッジはマージが無事回収され、記憶を消して無事解決したと明かします。
ハリーは魔法の無許可使用は重罪であることを指摘しますが、
大臣はハリーがおとなしくホグワーツ魔法学校で過ごせばいずれ無事、
ダードリー家に戻れると妙ななだめ方をして、
ハリーに「二度と戻りたいものですか」といわれてしまいます。
映画には無いのですが、原作ではハリーの言葉にファッジは静かに反論しています。
「なんといっても君たちは家族だからね。
ふかーいところでどちらも愛し合っておるのだよ」
なかなかに意味深長なセリフです。
本作品でダードリー家の人々のこれ以降の再登場はありませんが、
今後のシリーズの中で、ハリーとおじ家族のもっと深いレベルでのこころの葛藤が
あるのやも知れません。
ひとりのファンとしても期待したいところです。

映画では大臣はハリーに新学期開始までの部屋を漏れ鍋にとってあり、
新学年用の教科書までそろえてあるといいます。
で、翌朝には「怪物的な怪物の本」とハリーの格闘になり、
朝食をとろうと部屋を出て店に通じる階段をハリーが下りるとロンとハーマイオニーが
そこにいる、という展開になっています。

原作ではもう少しイントロが長く、
教科書はハリー自身が横丁を歩いて買い求めています。
そこで最新型の空飛ぶ箒ファイヤー・ボルトによだれを流さんばかりになったり、
カフェの店先でロンとハーマイオニーに再会、
ハーマイオニーがふくろうを購入しようとして気が変わり赤毛の猫、クルックシャンクスを購入するくだりが出てきます。


この続きの原作比較レビューは
まぐまぐプレミアム「映画VS原作本 映画脚本のヒ・ミ・ツ」で発表します。

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