「コンフェッション/業界暴露脚本の書き方」
原作小説と映画脚本比較により脚本の書き方・成り立ちを探ります。ハリウッド脚本の極意、世界名作の秘密に迫ります。全体に「ねたばれ」の要素がありますので、要注意。

「コンフェッション」原作小説 原作小説 「コンフェッション」
チャック・バリス著 雨海弘美訳
カドカワ文庫 2003年刊

    
「コンフェッション」映画パンフレット 映画「コンフェッション」
2003年 アメリカ映画
脚本:チャーリー・カウフマン
監督:ジョージ・クルーニー
出演者:サム・ロックウェル ドリュー・バーリモア ジョージ・クルーニー

  本作原作文庫
  本作映画チラシ





■脚本の書き方■
原作小説と映画脚本比較レビュー・インディスク



「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」「新コンテンツ」です。
原作J.R.R.トールキン

「アイデン&ティティ」
原作みうらじゅん
「新コンテンツ」です。
「精霊流し」
原作さだまさし

「マッチスティック・メン」
監督リドリー・スコット
「コンフェッション」
原作チャック・バリス
「ソラリス」
監督スティーブン・ソダーバーグ
「魔界転生」
原作山田風太郎
「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」
原作フランク・w・アバグネイル
「ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔」
原作J.R.R.トールキン
「黄泉がえり」
原作梶尾真治
「レッドドラゴン」
原作トマス・ハリス
「マイノリティ・リポート」
原作F・K・ディック
「ハリーポッターと秘密の部屋」
J.K.ローリング著
「ザ・リング the ring」
主演ナオミ・ワッツ
「アバウト・ア・ボーイ」
原作ニック・ホーンディ
「タイムマシン」
原作小説H・G・ウェルズ

「GO」
脚本:宮藤官九郎
「ロード・オブ・ザ・リング」脚本ピーター・ジャクソン
「ハリー・ポッターと賢者の石」
脚本スティーブ・クローブス
「PLANET OF THE APES/猿の惑星」

監督ティム・バートン

「陰陽師」
脚本福田靖
「ブリジット・ジョーンズの日記」

脚本アンドリュー・デイヴィス

「バトル・ロワイヤル」

脚本深作健太

「クロスファイア」
脚本山田耕大
「ファイト・クラブ」
監督デビット・フィンチャー
「共同警備区域JSA」
原作小説パク サンヨン
「ナインスゲート」
脚本:ジョン ブラウンジョン
「ハンニバル」
脚本デビット・マメット
「ホワイトアウト」
原作小説真保裕一
「リプリー」
原作パトリシア・ハイスミス
「黒い家」
脚本大森寿美男
「ISOLA多重人格少女」
脚本水谷俊之
「シン・レッド・ライン」
脚本テレンス・マリック
「魔女の宅急便」
監督宮崎駿
「リング」
脚本高橋洋
「コンタクト」
監督:ロバート・ゼメキス
「L.A.コンフィデンシャル」
脚本カーティス・ハンソン
「セブン・イヤーズ・イン・チベット」
原作小説:ハインリヒ・ハラー
「さらば、わが愛 覇王別姫」
監督チェン・カイコー
「バラサイト・イブ」
脚本君塚良一
「アポロ13号」
監督ロン・ハワード
「マディソン郡の橋」
脚本リチャード ラグラベニーズ
「ショーシャンクの空に」
脚本フランク・ダラボン
「フォレスト・ガンプ」
脚本エリック・ロス
「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」
原作小説アン・ライス
「ジュラシック・パーク」
原作小説マイケル・クライトン
「シンドラーのリスト」
脚本スティーブン・ザイリアン
「イヤー・オブ・ザ・ガン」
原作マイケル・ミューショー
「ダンス・ウィズ・ウルブズ」脚本マイケル・ブレイク
「レナードの朝」
主演ロビン・ウィリアム
「トータルリコール」
原作小説フィリップ・K・ディック
「レッドオクトーバーを追え!」
脚本ラリー・ファーガソン
「ワイルド・アット・ハート」
脚本デイヴィッド・リンチ
「ミザリー」
原作小説スティーブン・キング
「ダイ・ハード」
監督ジョン・マクティアナン
「仕立て屋の恋」
原作小説ジョルジュ・シムノ
「時をかける少女」
脚本剣持亘
「ブレード・ランナー」
原作小説フィリップ・K・ディック
「惑星ソラリス」
監督アンドレイ・タルコフスキー
「犬神家の一族」
原作小説横溝正史
「ゴッドファーザー」

監督フランシス・F・コッポラ
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実在するアメリカの 1960 - 80 年代のテレビ界の名プロデューサー、
チャック・バリスの自叙伝が原作となっています。
昼は人気TV番組のプロデューサー、
夜はCIAの秘密工作員という奇想天外な原作の映画化を
ソダーバーグの製作総指揮下、ジョージ・クルーニーが初監督に挑んでいます。
チャック・バリスはTVの将来性に早くから注目し、
自らのアイディアで米国のテレビ界をリードした有名な存在です。
それまでなかった視聴者参加型番組を発案して大衆の喜ぶTV番組放映に大成功、
自らホストを務めた番組もあり、一般大衆にもよく知られた有名人です。
現在のバラエティ番組の多くが彼の影響を受けていると言われています。
 主人公チャック・バリスにサム・ロックウェル。
ジョージ・クルーニー、ドリュー・バリモア、ジュリア・ロバーツ出演のほかに
ブラッド・ピット、マット・デイモンがカメオで顔を見せています。


 映画の冒頭、米国TV界の重鎮ディック・クラークが先ず登場して、
天才プロデューサー、チャック・バリスのことをコメントしています。
そして画面は第 40 代米国大統領のロナルド・レーガンの大統領就任演説のラジオが
聞こえるホテルの部屋。
舞台は 1981年、 ニューヨークのフェニックス・ホテルの寂れた一室で、
全裸の男が髪と髭をぼうぼうにして虚ろな目をして立っている。
メイドさんが室内の清掃をしていてもお互いお構いなし。

男はチャック・バリス(サム・ロックウェル)、ここに"引き篭もり"の状態の
ようです。
恋人ペニー(ドリュー・バリモア)がドアの外から愛しそうに声をかけます。
「この場所は退屈でしょ。カリフォルニアに連れて帰ろうと思って来たの。
結婚してくれないの?待てないわ、愛してるのに…。」
しかし、チャックは返事もせず、その声を苦しそうに聞くだけです。
彼は全てが恐ろしく、自分の人生を恥じています。
今は、自分の人生を記録していくしかない。
だからこの部屋に篭って、机に向かって淡々と自叙伝を書き綴ろうとしているのです。

ところどころで当時の有名人のインタビューが挟まるのは、
映画ならではの演出です。

原作もチャック・バリス(サム・ロックウェル)が自伝を書き始めるところから
始まってまいす。
ただ、原作ではペニーが姿を見せるのはもっと後ろで、
チャックは事務所の秘書に電話で、
しばらく姿を消すと言って姿を消して一人自伝のタイプを始めています。

話は若い頃にもどります。

1929 年生まれのチャック・バリスが 11 歳の 1940 年、
フィラデルフィアの自宅でチャック(子役:マイケル・セラ)は、
大人のHコミックを読んで“その気”になり、
そばで遊ぶ妹の友達の8歳の少女テュヴィア(チェルシー・スシ)を卑猥な言葉で
誘います。
ここでの「 Strawberry Dick 」という隠語が後の展開の鍵になるのですが。
このテュヴィアが彼の初恋(初体験?)相手だと後日、彼はぬけぬけと語っています。
成長しても、女性とデートしてもなかなかうまくいきません。
当時はアメリカでは映画館がデートの場だったのか、
カップル達は映画も観ずに客席でみんなラブラブごっこ。
三人目のデート相手(メリッサ・カーター『マーシャル・ロー』)にも振られてます。

チャックはおのぼりさんみたいに放送局の中の見学者の一人となって、
館内を案内されているますが、時代の先を読むのが優れていたらしく、
チャックはテレビこそ、これからの時代をリードするメディアだと本能的に
感じ取って、すぐにマンハッタンのNBCへ就職。
暫くは、館内の見学者のガイドとして働きます。

女の子にもてたい一心で、2000人に 5 人という狭き募集枠に合格して、
晴れてテレビ局マンとして、スタジオ現場で働くようになります。

すると女性にももて始め、いい気になってくるのですが、
人員削減で首になり、同僚のガールフレンドにも振られておじゃん。

今度は米国テレビ界で番組をいくつもやってきた本物のジェイ・P・モーガンが
画面に出てきて、チャック・バリスの寸評をします。
この女性は「ゴング・ショー 」という米国の高視聴率番組の担当者です。
 
1961 年、フィラデルフィアに帰っているチャックは、
ABC放送の臨時社員に就いて、週末は若い女性を求めて遊園地めぐりをしています。
そしてデビー(マギー・ギレンホール『ドニー・ダーコ』)という会社の同僚と
身体だけの関係を続けているのですが、デピーの部屋で、
彼女のルームメイト、ペニー・パチーノ(ドリュー・バーリモア)と
運命的に巡り合います。
                    
性について発展家であると自称するペニーとチャックはすぐに意気投合、
出会ったその日から交際を始めることになります。 
互いに相手を縛ることのない奇妙な恋人関係を築きながら、
チャックに念願の新しいテレビショーのアイディアが、閃光のごとくひらめきます。

 綺麗な女性が壁に隠れて顔も見えない3人の男たちに質問を繰り返し、
その答えから自分のデート相手を選び、 
成立したカップルに局がデート代を提供する、その名もデート・ゲーム。

今までの番組にはない、視聴者が参加する形式の斬新なアイディアに自信があった
チャックは、テスト版を制作し、ABCの重役たちにブレゼンするのですが、
しかし、彼のアイディアは別の企画に押しのけられ、
成功の夢もつかの間の幻となってしまいます。

失意のチャックは昼間からバーでケンカ騒ぎを起こす日々。
そんなある日謎の男ジム・バード(ジョージ・クルーニー)にバーで声をかけられます。

数日前からチャックをつけ回していたその男は「孤独を好み頭が良く、
世間に怒りを抱く君こそピッタリだ…」と、高報酬の、とある仕事をチャックに
持ち掛けて来たのだ。
それはCIAの秘密エ作員になり、合衆国にとって都合の良くない人物を抹殺する
というものでした。

映画の展開も凄いですが、
原作はもっと凄くて、「新聞広告を見てチャックが事務所を訪ねると
CIAのエージェントの募集だった」というものです。
さすがにこれはあんまりですので、
映画ではジョージ・クルーニーが自ら尾行しています。

自伝の頭の部分でその面接が登場し、
チャックは出生から、学生時代、ABC潜り込むまでの経歴をしゃべっています。
ペニー・パチーノが登場するのも、
原作ではチャックはスパイの初仕事を終えた後の部分で、
回想で戻って、映画の内容が説明されています。

半信半疑ながら、仕事にあぶれたこともあり、
最終的に承諾してしまったチャックは、
数カ月の後、メキシコシテイにいます。
厳しい殺人特訓を受けた後で、
自らの手で初めての殺人任務をこなし、狼狽を隠せません。

原作では、
国内の黒人公民権運動についていく話が、最初の任務として出てきます。
およそ、華やかさがなく、つまらない仕事とチャック自身が罵倒してます。
メキシコ行きはその後です。
原作ではおかまの“ダック”と名乗る連絡員他、
チャック自身が使う協力者などが結構な人数出てきますが、
映画では整理し、特に前半ではジム・バードが連絡員と監督者の両方を兼ねてます。

 気分の悪いまま帰国した彼を待っていたのは、ABCの副社長からの電話でした。
「デート・ゲームを昼間に放送できるようになった。
君のカワイイ子どもを世に出すチャンスだ」
こうして、テレビプロデューサー、チャック・バリスの華々しいキャリアが
スタートします。

実際の番組の世に出るまでの経緯は、原作でもう少し丁寧に追いかけられています。
チャックは最初、「人間ポーカー」という人をカードに見たてて、
互いの正体を当て合うゲームのパイロットを作りますが、
パイロット版の出来も、役員の評価も散々でした。
がっくりしたチャックは、テレビ局の食堂で隠れる様に、
それでも次のゲーム番組の企画書を書いていると、
通り掛かった副社長に「人間ポーカー」の悪口を言われますが、
その場で企画書原稿の説明を求められ、
チャックはティーンを主役にしたデートゲームの企画を話します。
福社長は興味をひかれた様で、その場で彼に尋ねます。
「どうしてティーン限定なんだ?」
そこでチャックの脳裏に電流の流れたようなショックがあって、
ついたて越しの3対3の質問合戦が、女独りに男3人という組み合わせに変更され、
上手い具合に再びパイロット版の作成にたどり着けます。

今度のパイロット版はまずまずの評価でしたが、
困った事に放送枠がなく、棚上げにされてしまいます。
チャックはわが身の不幸を嘆いて、スパイ活動にせいを出す事となりますが、
放送が決定した後で、ジムが現れ任務を命じられます。

3年の時が経ち、デート・ゲームは人気番組となり、
土曜夜のゴールデンタイムに放送されることが決定します。
そして再びバードが彼の目の前に現われます。
金はあるからもう殺しはしないと断わるチャックに、
「君は天性のハンターだ。金のために殺したのではないだろう…?」と怪しく畷き、
番組に新たなアイディアを提供します。
「番組で成立したカップルに海外旅行をプレゼントし、
付き添い人として彼らに同行した旅先で君は君の仕事をすればいいんだ…」
ゴールデンタイム版用の企画に七転八倒していたバリスはビルのアイディアに
飛びついてしまいます。

映画では、
あっさり3年分のエピソードが飛ばされていますが、
そうそう都合よくデート・ゲームがヒットになったわけではありません。
ウケを狙った素人出演者達がお構い無しに猥褻な質問やその答えをはじめ、
収録前に、「連邦通信委員会の委員」を登場させ、
倫理に反する反米的言動は厳しく処罰される、
と警告させるエピソードは映画にも登場しますが、
これは無名俳優の演技だと原作では種明かしされています。

ヒットしたらヒットしたで、騒動はつきもの。
出演者が実は、独身ではなかったという“やらせ疑惑”、
番組出演者のスカウトを装い婦女暴行を繰り返す“かたりスカウト事件”、
あげく毒舌評論家が番組出演を目論む、“評論家舌禍騒動”など。
映像化が見送られたエピソードです。

プロダクションの情報網を駆使して、
偽スカウトマンを探し出したチャックは、ムショ帰りの凄腕3人トリオとともに、
かたりを待ち伏せ、
そいつのナンパ用の高級車を目の前でスクラップにして、
「お次はお前だ」とすごみます。

毒舌評論家の時は、「お望みどうりにしてやろうじゃないか」と
その評論家を番組回答者として出演させてしまいます。
報復を恐れたディレクターは、必死になって反対しますが、
チャックは全米からえり抜きのブス3人を揃えて、ついたての向こうに座らせ、
評論家とその中の一人が“ご対面”した瞬間に、
………
―ふたりは永遠の恋に落ちたのでした。
数ヶ月後、2人の結婚式に招かれたチャックは祖母の言葉を思い出します。
「なにごともやってみなくちゃわからないもんよ」。

楽屋落ちには違いありませんが、
現実味の無いスパイ活動を追いかれるより、
実際にあった(らしい)番組裏話の方が面白いと思ったのは、私だけではないのでは?
「デート・ゲーム」はいろんな国で模倣され、
日本でも「パンチ DE デート」等が作られています。
チャックはこの応用編として、新婚カップルに双方に質問を浴びせて、
互いの信頼度を伺う「新婚ゲーム」や「家族ゲーム」等をプロデュースします。
日本ではこれらから民放の「新婚さん、いらつしゃい」NHKの「減点パパ」などが
模倣されています。
 組織集団に応用したのが「娯楽大作戦」で、
これは各地の駐屯部隊の慰安番組の先駆けとなりました。
日本ではこの手の番組は皆無ですが、軍隊の特定の部隊を芸能人が訪問したり、
あるいは部隊同士をゲームや歌合戦などで競わせる公開番組は韓国などでも
人気番組で、中国の人民解放軍にも同種の番組があり、
社会主義国や軍制国家でもこの手の番組は政府の宣伝機関によって模倣されました。
 チャックはテレビ局の重役達の前で
「わが局の愛国心の高い事を世に訴えるのです」と
敬礼のパフォーマンスで姑息に売り込んでいます。

チャックは、ビルの提案どおり
自分の番組を秘密の生活に組み込むことになり、
ゲームで勝ったカップルのドリーム・デートの旅先も、
“とっても素敵なヘルシンキ”や“ロマンティックな西ベルリン”へと
変わっていきます。

同棲しているペニーも、TV局の誰も知らないうちに、
チャックは Sunny Sixkiller という暗号名で夜の殺しの稼業をし続けていきます。
今度の番組の賞品は北欧フィンランドの首都ヘルシンキで、
1967 年、真冬。
彼はスパイ活動マイクロフィルムをお尻の穴に入れて隠し持つ羽目に。

CIAの女性エージェントのパトリシア
(ジュリア・ロバーツ『エリン・ブロコビッチ  』)が登場します。
仕事上の名前はリディアという。彼女は暗殺の仕事を持ってきたのですが
二人は目が合っただけですぐに燃え上がってしまいます。

ABCテレビではチャックの仕事振りが認められて、彼は大金を手にします。
ペニーとオープンカーでドライブしていい土地を見つけ、家を建てます。
プールもあり、
豪華な家。ペニーとチャックは内装や飾り付けを楽しんで二人のお城を築いていくの
ですが、ペニーはまたも結婚話を持ち出してきます。
でもチャックは結婚に消極的です。
彼の幼い時の両親の不和が、ずっと後まで彼の心に巣くっているらしいのですが。
本当のところはチャック自身にも分かりません。

1970 年、「デート・ゲーム」の賞品でチャックは西ベルリンに来ていました。
CIAのジムからはトイレ内で指令を受け、パトリシアとも合流します。
この時のジュリア・ロバーツは銀髪のオカッパの鬘でイメージチェンジしてます。
彼女の指示でコルバート(ノーマン・ロイ)からスパイ服と武器を調達して、
暗殺の準備をするのですが、
ソ連の諜報機関KGBに襲われます。

鼻っ面をライフルの銃身で思いっきり殴られ、
チャックは捕まってしまうのですが、
KGB諜報員とのトレードのため生かされます。
チャックと入れ替わりにトレードされてソ連側の手に戻ったのは、
「デート・ゲーム」の出演者でした。
KGBに番組ごと一杯食わされたのです。

  1976 年、ロサンゼルズ。
チャックはテレビ界で安定した実力を維持しており、
米国の有名な番組「ゴング・ショー The Gong Show 」のホストを務めていました。

これは、素人が歌や踊りやかくし芸の類のものを真剣に披露して、
みんなの笑いを誘うというアメリカの伝統的な視聴者参加番組です。
へたで、もうやめさせる時に、大きなゴングを鳴らすので、
「ゴング・ショー」と呼ばれます。熱唱する青年もいればダンスする男性もいる。
番組には目立ちたがり屋や変り種たちが押し寄せていました。

 そんな時、ベルリンから電話がかかります。
すぐに暗殺の仕事に取り掛かれという指令です。
初老の先輩殺し屋スパイ、キーラー(ルトガー・ハウアー)が
不意にチャックのもとにやってきます。
もしかして彼は2重スパイで自分を殺しに来たのではないか?
レストランに呼ばれたチャックは疑心暗鬼に駆られますが、
キーラーは旧約聖書を引用して、
「墓には仕事も、愛も、知識も、知恵もない。」
「最初の殺人は初恋みたいなものだった。」などと語って、
殺人を「異なった世界に入るような気持ち。
異なった精神状態に生きるようになる。」と教え立ち去ります。
 1979 年、ニューヨーク。殺しの精神を教えたキーラーが自殺したと伝えられます。

原作では、
チャックが「ゴング・ショー」の企画を立てるのは、
ベルリンから戻ってきた後になっています。
KGBに正体を知られたチャックは、CIAを休職扱いになります。
ビルもまた同様で、
チャックに地中海の友人のところへ身を寄せると言い残して姿を消しています。
孤独を感じたチャックはパトリシアに食事をしようと持ちかけます。
チャックは食事の席で口止めされていたにもかかわらずうっかり、
ビルが地中海にいる事をもらしてしまいます。
ビルの登場は、原作では彼がチャックと休職の話をした時が最後です。

1度は彼女と燃え上がったチャックですが、
ベットインをすませるとすぐさま浮気の虫が騒いで女子大生を追いかけ出したところを、
デート先で等のパトリシアと鉢合わせしてしまい、
以後は仕事のみの付き合いになってました。

プロデューサー稼業に専念する事となったチャックは、
在野の無名芸人の発掘番組の企画を検討しますが、
実際、集める事ができた無名芸人達は才能のかけらもなく、
“ゴミと狂人”ばかりのことを思い知らされ、
どう頑張っても「スター誕生」は望めない事を実感します。
いったんは企画を白紙撤回しますが、
素人起用の達人チャックは例によって逆転の発想で、
目立ちたがりの芸人志望者を集めてパフォーマンスを演じさせて、
つまらなければゴングを打ち鳴らして、
パフォーマンスの途中でも容赦なく退場を命ずるという番組を思いつきます。
クイズ形式で好きなことをしゃべらせる「デートゲーム」番組から、
さらに1歩進んで、好きなことをやらせて、ぶった切る素人起用番組は、
馬鹿ウケします。
日本では、同じ発想で「NHKのど自慢」「欽ちゃんの日本仮装大賞」
「タケシの誰でもピカソ」等が作られています。

チャックは「ゴングショー」で司会者を務め、全米に顔を売ります。
ペニーに「どうしてあなたが司会者なの?」と問われて
ベッドで大の字になって「欲からだ」と答えています。

番組中に消火器を使いたいという悪戯の誘惑に駆られて、
我慢できなくなったチャックが、火の輪くぐりの一輪車の出演者めがけて、
“みたこともない巨大な消火器”をぶっぱなし、
ステージの向こうに消し飛んだ出演者は、
客席のはじっこで合格の合図を出す係りの女の頭上に落下。
係りの女の子は肋骨に何ヶ所もひびが入る重傷を負います。

ゴングを鳴らされて途中退場させられた、自称“明日の大スター”が、
腹いせに爆弾をチャックの椅子に仕掛けてビルに立て篭もり、
パトカーや消防車がプロダクションの建物を包囲。
その様子がニュース番組で報道されると言う、
“自分がネタになっちゃったプロデューサー事件”などもあります。

映画では「ゴング・ショー」ではエルヴィス・プレスリー の
「愛さずにはいられない Can't Help Falling In Love 」を素人出場者が
エルヴィスになりきって平和に歌っていました。
このようにチャックは相変わらず、昼はTVマンとして勤めて、
ペニーと豪邸で甘い生活を送り、
夜はパトリシアと殺し屋を続ける毎日を送っています。
また、別の時、パトリシアは「 Strawberry Dick 」という言葉を口にしてます。

それから間もなく、「キーラーは自殺したのではなく、殺されたのだ。
身辺に注意しろ!」という手短な緊急電話がジムからチャックにかかってきます。
不安な気持ちのチャック。
ある昼下がり、チャックは新しい彼女と自宅の居間のソファで愛し合っている
ところに、ペニーが予想外に帰宅してきます。
ショックのペニーは自分たちで飾り付けて造ったホームなのにひどい!と泣いて、
赤いビートルに乗って去って行きます。
流石に、チャックはペニーの後を追って謝り、抱き合うのですが、
それでも結婚の話に乗る気配はありません。

 夜、自宅のプール脇にCIAのジムが訪れている。
彼はチャックの知らない家族のことを話して、チャックはショックを受けます。
チャックには双子の姉妹がいて、一人がチャックのせいで死んでしまって、
チャックは恨まれていること。
父親は歯科医だが、
本当の父親はエドモンド・ジェームズ・ウィンザーという連続殺人鬼で、
チャックの母親もそれを知らなかった。
そして 1939 年に電気椅子で死刑になったと話すのでした。
それから、誰が敵だか、君なら利口だからよく観察して見つけるように言い残します。
話があまりにも衝撃的だったのか、
チャックはジムをその場でピストルで撃とうとするのですが。
が、よく見ると、プールが鮮血で染まっている…。
ジムはもう既に誰かにやられて、こうして死んでいく。
ジムにはそれが現実か、悪夢か、判断がつかなくなっていました。

前にも書いた通り、原作ではビルの最後の登場は、
人質交換のあとの休職の話が出たときが最後です。
原作には、プールサイドのエピソードそのものがなく、
チャックの出生の秘密も原作には登場しません。
残念ながら、私にはこの出生の秘密が、脚本の創作なのか、調べた事実なのか、
分かっていません。
ビルの死がここで示唆されていますが、
原作ではあとで、
ビルの後任の男のエージェントが現れ、
2重スパイがいてビルが殺されたとチャックに話しています。
チャックは大いに驚き、かつ怯えます。

 しだいにチャックは人格が変になって行きます。
テレビ局に行っても全てが虚しく、頭は狂い、冷や汗か脂汗をかいている。
テレビのセットを見ても、リアルなので本物と間違えて怯えて、
幼時の母や妹の姿、これまでに犯してきた殺戮のシーンが目の前に現れてくる。

原作では、チャックは狙撃されますが、
誰からも相手にされず、実際に狙撃されたのか、被害妄想に取りつかれているのか
判断つかなくなります。
自分のプロダクションの若い娘に入れ込んでストーカーまがいに追い回し、
ペニーの嘆きを尻目に求婚してははね付けられ、
その彼女が飛行機事故で急死した衝撃で、ホテルにこもってしまいます。

・・こうして、冒頭のニューヨークのフェニックス・ホテルでの引き篭もりの場面に
繋がります。
チャックは、パトリシアが2重スパイである事を見ぬき、
彼女がチャックを殺そうとして、映画では飲み物に入れた毒を逆に彼女に飲ませ、
原作では手っ取り早く部屋で射殺しています。
そののち、チャックはペニーと結婚します。
映画では挙式の直後、
「実はぼくはスパイなんだ」と告白してペニーに大笑いされ、
原作では、「ゴングショー・ザ・ムービー」が大こけして事務所をたたんで、
ペニーと結婚し、挙式の直後のハネムーンの車の中で
「新番組の企画を思いついたぞ」と叫ぶところで終わっています。

 映画のタイトルの言葉が最後に出ています。
こうしてホテルの部屋に篭ってチャックが書いている自叙伝の表紙の題が
「Confessions of a Dangerous Mind (危険な心の告白)」となっています。
「歌も作ったし、番組も作った。でも、それに加えて 33 人を暗殺してきた。」
2002 年、ニューヨーク。
チャック本人が登場し、
またTV番組を作るとしたら「 The Old Show (老人ショー)」というのを
作るつもりだとチャック・バリス当人が登場してうそぶきます。
「人生はどんなだったか、実績はどれほどあるか、夢はどれだけ実現できたか、
そんなことを訊いてみたい。
そして、老人三人に銃を持たせて、引き金を引いて残った者が
「勝者」で賞品の冷蔵庫をもらえる、というんだ」とアイディアを述べて
にやりと笑うところで画面は暗転、
最後は「ショーほど素敵な商売はない」の歌声がいやに明るく流れて
ジ・エンドとなっています。

チャック・バリスを熱演したサム・ロックウェルは、
本作品で第 53 回ベルリン国際映画祭最優秀主演男優賞に輝いています。


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