「犬神家の一族/探偵小説脚本の書き方」
原作小説と映画脚本比較により脚本の書き方・成り立ちを探ります。ハリウッド脚本の極意、世界名作の秘密に迫ります。全体に「ねたばれ」の要素がありますので、要注意

「犬神家の一族」文庫表紙 原作小説
   「犬神家の一族」
   角川文庫  横溝正史 著 昭和47年刊

    
「犬神家の一族」映画ポスター 日本映画 1976年 
   監督:市川崑
   脚本:市川崑 、長田紀生 、日高真也
   出演者:石坂浩二 高峰三枝子 島田陽子 あおい輝彦
        草笛光子 三國連太郎 加藤武 坂口良子

   ブルーリボン賞(1976年)第19回 助演女優賞(高峰三枝子)
   報知映画賞(1976年)第1回 作品賞 
   助演男優賞(大滝秀治)

 本作原作文庫
 本作映画チラシ





■脚本の書き方■
原作小説と映画脚本比較レビュー・インディスク


「陰日向に咲く」原作=劇団ひとり
「ミッドナイトイーグル」原作=高嶋哲夫
「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」原作=J・K・ローリング
「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」原作=リリー・フランキー
「佐賀のがばいばあちゃん」原作=島田洋七
「墨攻」原作=酒見賢一
「暗いところで待ち合わせ」原作=乙一
「プラダを着た悪魔」
原作=ローレン・ワイズバーガー
「夜のピクニック」原作=恩田陸
「ゲド戦記」原作ル=グウィン
「ダ・ヴィンチ・コード」原作ダン・ブラウン
「ナルニア国物語/第1章ライオンと魔女」原作C・S・ルイス
「博士の愛した数式」原作小川洋子
「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」
原作J.K.ローリング
「亡国のイージス」原作福井晴敏
「宇宙戦争」原作H.G.ウェルズ
「四日間の奇蹟」原作浅倉卓弥
「アビエイター」原作ジョン・キーツ
「オペラ座の怪人」原作ガストン・ルルー
「ハウルの動く城」原作ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ターンレフト・ターンライト」主演:金城武
「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」 主演:ダニエル・ラドクリフ
「下妻物語」原作嶽本野ばら
「世界の中心で、愛を叫ぶ」原作片山恭一
「ジョゼと虎と魚たち」原作田辺聖子
「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」原作J.R.R.トールキン
「アイデン&ティティ」原作みうらじゅん
「精霊流し」原作さだまさし
「マッチスティック・メン」監督リドリー・スコット
「コンフェッション」原作チャック・バリス
「ソラリス」監督スティーブン・ソダーバーグ
「魔界転生」原作山田風太郎
「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」原作フランク・w・アバグネイル
「ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔」原作J.R.R.トールキン
「黄泉がえり」原作梶尾真治
「レッドドラゴン」原作トマス・ハリス
「マイノリティ・リポート」原作F・K・ディック
「ハリーポッターと秘密の部屋」J.K.ローリング著
「ザ・リング the ring」主演ナオミ・ワッツ
「アバウト・ア・ボーイ」原作ニック・ホーンディ
「タイムマシン」原作小説H・G・ウェルズ
「GO」脚本:宮藤官九郎
「ロード・オブ・ザ・リング」脚本ピーター・ジャクソン
「ハリー・ポッターと賢者の石」脚本スティーブ・クローブス
「PLANET OF THE APES/猿の惑星」監督ティム・バートン
「陰陽師」脚本福田靖
「ブリジット・ジョーンズの日記」脚本アンドリュー・デイヴィス
「バトル・ロワイヤル」脚本深作健太
「エクソシスト ディレクターズカット」主演リンダ・ブレア
「クロスファイア」脚本山田耕大
「ファイト・クラブ」監督デビット・フィンチャー
「共同警備区域JSA」原作小説パク サンヨン
「ナインスゲート」脚本:ジョン ブラウンジョン
「ハンニバル」脚本デビット・マメット
「ホワイトアウト」原作小説真保裕一
「リプリー」原作パトリシア・ハイスミス
「黒い家」脚本大森寿美男
「17歳のカルテ」主演ウィノナ・ライダー
「ISOLA多重人格少女」脚本水谷俊之
「シン・レッド・ライン」脚本テレンス・マリック
「魔女の宅急便」監督宮崎駿
「リング」脚本高橋洋
「コンタクト」監督:ロバート・ゼメキス
「L.A.コンフィデンシャル」脚本カーティス・ハンソン
「セブン・イヤーズ・イン・チベット」原作小説:ハインリヒ・ハラー
「さらば、わが愛 覇王別姫」監督チェン・カイコー
「バラサイト・イブ」脚本君塚良一
「耳をすませば」
制作スタジオ・ジプリ
「アポロ13号」監督ロン・ハワード
「マディソン郡の橋」脚本リチャード ラグラベニーズ
「ショーシャンクの空に」脚本フランク・ダラボン
「フォレスト・ガンプ」脚本エリック・ロス
「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」原作小説アン・ライス
「ジュラシック・パーク」原作小説マイケル・クライトン
「シンドラーのリスト」脚本スティーブン・ザイリアン
「イヤー・オブ・ザ・ガン」原作マイケル・ミューショー
「ダンス・ウィズ・ウルブズ」脚本マイケル・ブレイク
「レナードの朝」主演ロビン・ウィリアム
「トータルリコール」原作小説フィリップ・K・ディック
「レッドオクトーバーを追え!」脚本ラリー・ファーガソン
「ワイルド・アット・ハート」脚本デイヴィッド・リンチ
「ミザリー」原作小説スティーブン・キング
   「ダイ・ハード」監督ジョン・マクティアナン
「仕立て屋の恋」原作小説ジョルジュ・シムノ
「時をかける少女」脚本剣持亘
「ブレード・ランナー」原作小説フィリップ・K・ディック
「惑星ソラリス」監督アンドレイ・タルコフスキー
「犬神家の一族」原作小説横溝正史
「ゴッドファーザー」監督フランシス・F・コッポラ
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日本映画界屈指の人気シリーズ「金田一耕助シリーズ」の第1作「犬神家の一族」。76年公開。
2006年に同じ市川崑監督によるセルフリメイク版が作られています。
「ビルマの竪琴」のセルフリメイクと同じく旧作の脚本がそのまま使われています。
ですから、以下の原作と映画比較はキャストの差こそあれ、原則的に2006年版と原作比較とイコールになります。


角川映画第1作として莫大なメディア・ミックス展開などで話題をまいた作品。
私はこのシリーズものを当時読み漁りましたね。
「角川映画なんて知らないよ」と言う人でも
「金田一耕助をしらない」日本人はいないでしょう、と言うくらいのヒット作。
単独の作品の出来としては第二作「悪魔の手毬歌」が上だが、
怪奇とユーモアの交差する演出。耽美主義的な世界観。名探偵・金田一耕助の人物造形など
すべてのシリーズ要素がこの一作目にこめられているので、
シリーズ全体の代表として本作を取り上げます。

角川春樹が湯水のごとく制作費を注ぎ、
名匠市川崑監督を起用、石坂浩二 、高峰三枝子ら豪華キャストと
大野雄二(「ルパン三世」)の音楽など、
贅を尽くした作品作りがなされている。
莫大なメディア・ミックス展開は当時、「角川商法」などとパッシングされたが、
閑古鳥の鳴いて久しい日本各地の映画館に角川文庫を手にした観客が大挙して押し寄せ、
面白い映画を作ってしっかり宣伝すればお客は劇場に帰ってくる、ことを立証した。
社会派ミステリーの台頭でミステリー文壇の世界では、
一度は完全に忘れ去られていた探偵小説派の横溝正史は、
本作の大ヒットで第一線に返り咲き、亡くなるまで金田一シリーズの著作を続けた。
作家としては恵まれた晩年と言って良い。

さて映画は犬神財閥の当主・佐兵衛翁の数奇な半生の紹介から始まる。
これは原作もまったく同じで、
実に百五十分の長尺を誇る本作だから許された贅沢である。
那須の犬神家の大広間に一族を集めての佐兵衛翁の臨終でアバンタイトル。
暗転してメインタイトルとタイトロールがあって、
金田一耕助(石坂浩二)が、昭和22年の那須の町に姿を現すところがファーストシーン。

金田一ものは実は、小説の連載当時にも一度映画化されているが、
当時の映画の金田一は、後期の明智小五郎のようにスーツ姿の二枚目だったそうで、
それがおどろおどろしいドラマとコントラストをなして、
それなりに好評であったそうだ。
が、角川版の金田一は、原作小説どおりよれよれの着物に長髪姿である。
原作には昭和2×年となっているが、これをはっきり終戦の年と特定し、
作品の世界観を統一している。
昭和五十一年の公開年の日本人には、終戦はすでに歴史上の出来事で、
主人公の風体を含めて、当時のスタイルにすることで和風ゴシックロマン調の
ムードを盛り上げるのに成功している。
横溝正史は、石坂浩二の金田一を「少し二枚目過ぎる」と評し、
むしろテレビシリーズの古谷一行を原作のイメージに近いとかっていた様だが、
飄々とした石坂・金田一は悲劇的なドラマのなかで、
どこかユーモアのある不思議な軽やかさと哀しみを保持しており、
得がたい適役である。

金田一が「那須ホテル」と言う名の宿に到着し、
覗いた双眼鏡で湖の野々宮珠世(島田陽子)のボートが沈み始めているのを目撃、
金田一が掛け付け、珠世を救助。
その間に宿にやってきた、調査依頼人若林が死亡する。
原作の金田一は、謎の犯人に依頼人を殺害されて探偵としての面子を潰され
大いにファイトを燃やすのだが、
映画の金田一は、依頼人若林の上司である古舘弁護士に再雇用されて
やれやれと喜んでいる。
那須までの交通費がフイにならずに済んで良かった、と。
ストーリーの流れは同じでも、金田一の印象がだいぶ違う。
原作は読者が金田一を他のシリーズで承知のものとした上で書いている。
映画は彼の3枚目ぶりをまず見せ、
場にそぐわぬ珍入者として、むしろ犬神家の人々の側に立って描写している。

古舘は犬神家の顧問弁護士で、佐兵衛翁の遺言状を預かっている。
その内容が剣呑なもので相続人の内紛は必死であり、
悲劇を回避するために探偵が必要と考えたのだ。

遺言状は長女・松子(高峰三枝子)の一子、佐清(すけきよ)の復員により
公表されることとなっている。
夜、黒塗りの車に乗って明らかに人目を避けて
松子は佐清を伴って屋敷にやってくる。
このシーンは原作では、古舘と金田一の対話の中で様子が語られるのだが、
映画では直接場面として出てくる。
金田一が遺言状公開で犬神家にはじめて乗りこむところで、
猿蔵と言う珠世の専属の下僕が金田一を迎えにくるのだが、
映画ではごく単純に古舘と一緒に車で屋敷に入る。

わずかな変更だが、シナリオ上の意味するところは重大です。
つまり、人物の登場順はミステリーの場合、
容疑者の特定順とイコールになることが多い。
猿蔵も小説において重要容疑者の一人となるが、
本来ドラマ上の役割は小さく、松子と佐清の方が遥かに大きい。
ここはドラマ上の序列をはっきりさせるため、変更されている。
原作は逆に容疑者の特定を読者にさせないよう、
意図的に順序をずらしている。

一族が集合、いざ遺言状公開というところで、古舘が頭巾を被ったままの佐清に
顔を見せるよう要求する。
母・松子は「戦争で顔を負傷したのだから」と激しく反発。
押し問答の挙句、佐清は頭巾を取ってゴムの仮面を見せる。
小説ではこの仮面は、表情のない精巧な作り物とされており、
おそらく着色まで施されたものと思われるが、
映画のそれは真っ白のゴム仮面だ。
更に佐清は自分でゴムをまくって見せ、
無残に鼻腔を押しつぶされたケロイドの塊と化した顔面を披露、
最初の恐怖シーンとしている。

製薬王・犬神佐兵衛が残した遺言状は
その莫大な遺産をすべて…

本作品の原作比較レビューの続きは
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