「黒い家/犯罪ホラー脚本の書き方」
原作小説と映画脚本比較により脚本の書き方・成り立ちを探ります。ハリウッド脚本の極意、世界名作の秘密に迫ります。全体に「ねたばれ」の要素がありますので、要注意
原作小説「黒い家」 角川書店・刊 97年単行本刊 貴志祐介著 |
松竹映画 99年 118分監督 森田芳光 脚本 大森寿美男(「39刑法第三十九条」) 出演 内野聖陽、大竹しのぶ 、西村雅彦 、田中美里 、小林薫 |
第4回日本ホラー小説大賞を受賞した貴志祐介「黒い家」を森田芳光監督が映画化してます。
毒物カレー事件というのがありましたよね。
保険金連続殺人の林夫婦が容疑者で捕まって、週刊誌・ワイドショーで連日大騒動でした。
この原作「黒い家」は、その保険金連続殺人事件をそっくり予言した小説として物議をかもした
作品です。
菰田夫婦と言うのがどう見ても林夫婦にしか見えない。
いえ、小説が書かれたのは事件より前ですから、
モデルにしたという筈は無いんですが、
警察関係者がどう調べても分からない、夫婦の狂気がかくあらんとばかりに描かれている。
この小説には、超能力も幽霊も出てません。
それでいてめちゃくちゃ怖い。
本当の恐怖と言うのは人の心の中にひそんでいる、というわけです。
原作小説を書かれた貴志祐介という方は、
第3回日本ホラー小説大賞で「ISOLA」で長編賞を取ってデビューしてますが、
それ以前は朝日生命に勤務されていたそうです。
森田芳光監督は『家族ゲーム』『それから』『(ハル)』
などで数々の映画賞に輝き、『失楽園』でしこたま儲けた売れっ子です。
「39刑法第三十九条」でも森田芳光監督とコンビを組んだ脚本家・大森寿美男が脚色。
原作は間違い無く傑作です。でも映画は怪作です。
怖いと言うよりおかしい。こわれている。
グロテスク、不気味ですが、一瞬にして爆笑もののシーンもある。
自分の感性がずれているのかと思って、いくつか掲示板の関連記事を読んだのですが、
見た人は概ね似たような意見でした。
当人の悲劇は、他人の喜劇である、という事を前提に演出されているとしたら、
監督は天才です。
でもすわりの悪さ、見終わった後の居心地の悪さが計算づくのものであることは確かです。
時代の狂気を盛り込もうとすると、むしろこうした作風になるのが当然かもしれません。
一筋縄では行きません。
さて、映画は昭和生命の金沢営業所から始まります。
原作は5月の京都営業所。映画は八月の金沢に変更。
これは特に意味は無いのですが、
それなりに歴史のある地方都市であることが必要条件です。
原作は菰田夫婦(大竹しのぶ 、西村雅彦)が登場するまでが結構長いです。
保険会社の窓口に保険金を請求にくる、へんてこな客たちの描写が続きます。
長期の不況で保険金詐欺を目論む魑魅魍魎が連日押しかけ、主人公・若槻慎二(内野聖陽)
を困らせています。
詐欺にもいろんな手口があり、
原作者が生保出身と言うこともあって、いろんな手口の紹介のページともなっています。
ほとんど「ナニワ金融道」のノリなのですが、
映画の方はあっさりとやり過ごしています。
悪質な請求者を保険解約させてしまう「潰し屋」三善(小林薫)などもあまり目立たぬ姿で
登場しています。
恋人・恵(田中美里)ははじめファックスの文章のみで存在するだけで登場シーンそのものがありません。
登場人物全員がなんだか薄暗い事務所の中でささくような小声で会話しています。
ささくような小声は全編を通じてそのままです。
内野聖陽という役者ははじめて見ますが、このささやくような台詞回しの上手い人です。
営業所に不信な問い合わせ電話があり、若槻が応対します。
受話器の向こうの女は「自殺に保険はおりるのか」と聞いてきます。
若槻は「免責期間後、支払われる。」と答えますが、
「自殺は家族を不幸にするから、もしそう言うつもりなら死なない方が良い」と
ひとの良いままに答えてしまいます。
原作では相手は声のみ。
映画では携帯電話を手にした黄色いワンピース姿の菰田幸子(大竹しのぶ)が
姿を見せています。
電話のあと、幸子はマイボールを手にしてボーリング場に。
このあとドラマの展開に関わり無しにボーリングをする幸子の姿が
全編で繰り返しインサートされてます。
翌日、支店のひとつから若槻を名指しで指名してきた客がいるとの連絡が入り、
若槻は一人出かけていきます。
面識の無い客からの呼び出しに不信がりながら、家を尋ねる若槻。
主、菰田(西村雅彦)は若槻を居間に上げておきながらぐずぐすと用件を告げようとせず、
奥の部屋にいると言う息子を呼びます。
「ちょっと襖を開けてくれ」という菰田の言葉どおり襖を開くと、
隣室には首を吊った小学生が。
期せずして菰田は死体の第一発見者になってしまう。
本作品の原作比較レビューの続きは
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