「L.A.コンフィデンシャル」/ハードボイルド脚本の書き方
原作小説と映画脚本比較により脚本の書き方・成り立ちを探ります。ハリウッド脚本の極意、世界名作の秘密に迫ります。全体に「ねたばれ」の要素がありますので、要注意

「L.A.コンフィデンシャル」小説表紙   原作小説「L.A.コンフィデンシャル」
   文芸春秋社刊
   ジェイムズ・エルロイ 著
   小林宏明      訳
   1995年発行

         
「L.A.コンフィデンシャル」映画ポスター   1997年 アメリカ映画
   監督:カーティス・ハンソン
       (「激流」「ゆりかごを揺らす手」)
   脚本:カーティス・ハンソン、ブライアン・ヘルゲランド
   出演者:ケビン・スペイシー 、ラッセル・クロウ 、
        ガイ・ピアース 、キム・ベイシンガー 、
        ジェームズ・クロムウェル 、ダニー・デヴィート

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今のハリウッドに綺羅星のごとく輝くスター達の夢の競演映画「L.A.コンフィデンシャル」です。
オールスターものは「オーシャンズ11」等のように
緊張感の無い顔見世作品になってしまいがちですが。
自らを“米国文学の狂犬”と称する作家、ジェイムズ・エルロイの描いた50年代の退廃と虚栄をテーマの
ハードボイルドの傑作を映画化を試みたプロデューサーの手柄でしょう。

原作は、イントロダクションでギャング ミッキー・Cの手下どもをロス署の面子が
郊外のドライブインで逮捕するくだりから入ります。
映画はゴシップ誌「ハッシュ・ハッシュ」の記者シド(ダニー・デヴィート)の語りによる
50年代初頭のロサンゼルス、というよりハリウッドと街に巣食うギャング達の紹介から始まります。
結局、原作のイントロのドンパチも、
このギャングらの抗争を具体的なエピソードとして見せているので、
どちらも狙いどころは同じです。

違っているのは、
原作が「ロサンゼルス」が舞台で、映画がロサンゼルスの中の「ハリウッド」が舞台だ、
ということです。
スターの暮らす映画の町ということを映画ははじめから色濃く打ち出しており、
原作にあるスラムの暗いイメージとは一線をきしています。
そして群像もののセオリーどおり、
個性豊な3人の刑事達がそれぞれエピソードをともなって
画面に登場します。

バド・ホワイト(ラッセル・クロウ「ビューティフル・マインド」)は女に暴力を振るう男を極端に嫌う、
というより憎む刑事です。
同僚とパトロール中、仮保釈の男の住まいを回ると窓外まで響く男の罵声と女の悲鳴。
バドは家に乗り込むと、男を叩きのめして手錠をかけ、
女にポケットマネーで当座の生活費を渡す。
原作にはこの前にもう別の場所で別の乱闘のエピソードが入るのですが、
映画ではドメスティックバイオレンスを憎むバドの人柄の紹介に徹しています。
暴力亭主を叩きのめしながら、むしろ彼自身の方が傷ついたような表情で女性をいたわる
ラッセル・クロウがセクシーです。

ジャック(ケビン・スペイシー「シッピングニュース」)は女と踊りながら登場します。
カメラが引くとそこは映画スタジオ。
新人の無名女優をくどくジャックの自慢は
テレビの刑事ドラマ「名誉のバッジ」の監修を勤めている事です。
原作でこの場面は存在しません。
冒頭で語りをやっていた記者シドが現れると女優は怒って行ってしまいます。
「雑誌でレズ疑惑特集の時に取り上げた女だなぁ」とシドはニヤニヤ。
原作はもっと地味に、ジャックの麻薬課にシドが電話をかけてきて、
二人の情報屋と記事提供者のなあなあの関係が明らかになります。
彼にはくすりをやりのながら捜査中に民間人をあやまって射殺したという過去があります。
それは遺族が宗教上の理由で司法解剖を拒否したため起訴を免れますが、
彼の人生の痛恨事でした。
麻薬とは縁を切り、仕事に打ち込んでいますが、
斜に構えた態度の遊び人風の雰囲気はこの時以来のものと思われます。
映画ではこの過去話は出てきませんが、
ケビン・スペイシーは原作を良く研究しているようで、
エピソードは無くともジャックという人物を魅力的に演じています。

エド(ガイ・ピアース「メメント」)はスミス警部(ジェームズ・クロムウェル「スペース・カウボーイ」)から
昇進試験が署内1の成績であった
事を告げられ刑事部への配属を希望する。


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