「耳をすませば/学園ものアニメーション映画脚本の書き方」
原作小説と映画脚本比較により脚本の書き方・成り立ちを探ります。ハリウッド脚本の極意、世界名作の秘密に迫ります。全体に「ねたばれ」の要素がありますので、要注意。
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原作 柊あおい「耳をすませば」 りぼん(集英社刊) 平成元年8月号〜11月号 連載 |
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映画 「耳をすませば」 1995年 日本映画 監 督:近藤喜文 脚 本・絵コンテ:宮崎 駿 声の出演:本名陽子 高橋一生 小林桂樹 露口茂 立花隆 |
| 本作原作文庫 本作映画チラシ ■脚本の書き方■ 原作小説と映画脚本比較レビュー・インディスク 「アビエイター」原作ジョン・キーツ 「オペラ座の怪人」原作ガストン・ルルー 「ハウルの動く城」原作ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 「ターンレフト・ターンライト」主演:金城武 「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」 主演:ダニエル・ラドクリフ 「下妻物語」原作嶽本野ばら 「世界の中心で、愛を叫ぶ」原作片山恭一 「ジョゼと虎と魚たち」原作田辺聖子 「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」原作J.R.R.トールキン 「アイデン&ティティ」原作みうらじゅん 「精霊流し」原作さだまさし 「マッチスティック・メン」監督リドリー・スコット 「コンフェッション」原作チャック・バリス 「ソラリス」監督スティーブン・ソダーバーグ 「魔界転生」原作山田風太郎 「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」原作フランク・w・アバグネイル 「ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔」原作J.R.R.トールキン 「黄泉がえり」原作梶尾真治 「レッドドラゴン」原作トマス・ハリス 「マイノリティ・リポート」原作F・K・ディック 「ハリーポッターと秘密の部屋」J.K.ローリング著 「ザ・リング the ring」主演ナオミ・ワッツ 「アバウト・ア・ボーイ」原作ニック・ホーンディ 「タイムマシン」原作小説H・G・ウェルズ 「GO」脚本:宮藤官九郎 「ロード・オブ・ザ・リング」脚本ピーター・ジャクソン 「ハリー・ポッターと賢者の石」脚本スティーブ・クローブス 「PLANET OF THE APES/猿の惑星」監督ティム・バートン 「陰陽師」脚本福田靖 「ブリジット・ジョーンズの日記」脚本アンドリュー・デイヴィス 「バトル・ロワイヤル」脚本深作健太 「エクソシスト ディレクターズカット」主演リンダ・ブレア 「クロスファイア」脚本山田耕大 「ファイト・クラブ」監督デビット・フィンチャー 「共同警備区域JSA」原作小説パク サンヨン 「ナインスゲート」脚本:ジョン ブラウンジョン 「ハンニバル」脚本デビット・マメット 「ホワイトアウト」原作小説真保裕一 「リプリー」原作パトリシア・ハイスミス 「黒い家」脚本大森寿美男 「ISOLA多重人格少女」脚本水谷俊之 「シン・レッド・ライン」脚本テレンス・マリック 「魔女の宅急便」監督宮崎駿 「リング」脚本高橋洋 「コンタクト」監督:ロバート・ゼメキス 「L.A.コンフィデンシャル」脚本カーティス・ハンソン 「セブン・イヤーズ・イン・チベット」原作小説:ハインリヒ・ハラー 「さらば、わが愛 覇王別姫」監督チェン・カイコー 「バラサイト・イブ」脚本君塚良一 「アポロ13号」監督ロン・ハワード 「マディソン郡の橋」脚本リチャード ラグラベニーズ 「ショーシャンクの空に」脚本フランク・ダラボン 「フォレスト・ガンプ」脚本エリック・ロス 「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」原作小説アン・ライス 「ジュラシック・パーク」原作小説マイケル・クライトン 「シンドラーのリスト」脚本スティーブン・ザイリアン 「イヤー・オブ・ザ・ガン」原作マイケル・ミューショー 「ダンス・ウィズ・ウルブズ」脚本マイケル・ブレイク 「レナードの朝」主演ロビン・ウィリアム 「トータルリコール」原作小説フィリップ・K・ディック 「レッドオクトーバーを追え!」脚本ラリー・ファーガソン 「ワイルド・アット・ハート」脚本デイヴィッド・リンチ 「ミザリー」原作小説スティーブン・キング 「ダイ・ハード」監督ジョン・マクティアナン 「仕立て屋の恋」原作小説ジョルジュ・シムノ 「時をかける少女」脚本剣持亘 「ブレード・ランナー」原作小説フィリップ・K・ディック 「惑星ソラリス」監督アンドレイ・タルコフスキー 「犬神家の一族」原作小説横溝正史 「ゴッドファーザー」監督フランシス・F・コッポラ |
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オープニングでは、夜の街の風景をバックにカントリーロードの原曲 ("Take Me Home, Country Roads" 作詞・作曲:Bill Danoff,Taffy Nivert and John Denver)が流れます。 このカントリーロードは故郷に帰りたいと言う意味の歌詞です。 自然が豊かで、やさしいときの流れる「ふるさと」が懐かしいというほどの 内容です。あとで劇中でも触れられるように都会生まれの主人公、 雫(しずく 本名陽子)には、 原体験となるような「ふるさと」はないので、 こころのふるさとを探ることになります。 この映画の舞台となっている街は、 東京郊外に位置する多摩市の聖蹟桜ヶ丘駅付近から 多摩ニュータウンにかけての風景がモデルになっています。 そこに実際に存在する多くの風景が、オープニングから登場し、 かなり忠実に描かれています。 駅そばのコンビニから買い物袋ひとつさげて出てくる雫。 雫は1994年時点で中学3年生。 このコンビニは、現代の都会生活と、 そこに住むものの故郷の風景の一つとしての象徴的な役割を担っていると思われます。 雫の服装や街の様子から季節は夏。これは原作も一緒です。 が、原作の雫の家は庭木のある二階家の一戸建てですが、 映画では公団アパートの上の方の階になっています。 帰宅した雫にダイニングでテープを聞いていた母が、 「ありがとう」と声を掛けています。 雫はコンビニ袋から牛乳パックを取り出して冷蔵庫に入れます。 原作では自室で図書館から借りた本を読んでいた雫が 図書カードに目を留めるところから始まっています。 映画ではそれはもう少し後で、舞台設定や家族の状況が先に説明されています。 原作では父:靖也(立花隆)は図書館の場面で初登場していますが、 映画ではダイニングの奥でパソコンを操作しています。 姿を見せて靖也が 「わが図書館もついにバーコード化するんだよ。準備に大騒ぎさ」と 言っています。 現代の大型図書館では図書カードは過去のものとなっています。 雫は「やっぱり、変えちゃうの?私、カードの方が好き」といい、 靖也も、「僕もそうだけどね」とあいづちを打ちます。 主人公の本や読書に対するこだわりが この作品の世界観を支える要素のひとつになっているのですが、 それを端的に見せているのがこのセリフのやり取りです。 雫は図書カードを通じて天沢聖司の存在に気が付きます。 雫が読んだ三冊の本の図書カードには天沢聖司の名が雫より前に書かれていました。 いったいどんな人なのだろう、と好奇心を膨らませる雫。 そして夜は静かにふけていくのですが、 原作ではこれは昼間の話になっています。 映画では寝坊していた雫が姉、汐にたたき起こされる場面につながっています。 原作では高校生となっている汐は映画では大学生となっています。 姉妹のやりとりより、母が大学に通っており、その母を応援するため姉妹が家事に 協力する約束になっているのですが、 のんきものの雫は常に汐にはっぱを掛けられているようです。 原作では母は専業主婦のようですが、 図書カードに目を奪われて出かけようとしない雫に声を掛ける場面に出てくる のみで以降に登場場面はありません。 雫は朝起きて「もう、こんな時間。夕子と会うんだ」と言います。 そして、急いで準備するかと思いきや、朝食のパンまで食べています。 さらに、学校に着いても夕子との待ち合わせ場所に行くわけでもなく、 先に図書室に行ってしまします。 雫は結局、夕子に怒られます。雫は苦笑いをしています。 雫はウッカリ屋さんなのかも。この性格は母親に由来すると思われます。 母親の朝子も出かける時に財布を忘れていたり、 後に大学に遅刻しそうになったりしています。 学校図書館の司書の高坂先生に泣きついて 開けてもらうところは原作と一緒。 炎天下で待ちぼうけを食った夕子が腹を立てて現れるのも同様です。 原作では雫が待ち合わせ場所に来ずに図書館へ直行したことに 夕子は腹を立てていますが、 映画では「カントリー・ロード」の訳を雫が引き受けていて、 その打合せの約束で夕子と会うことになっています。 「カントリー・ロード」にまつわるエピソードはすべて映画のオリジナルです。 テーマソングにも使われるこの曲には、 オリジナルの故郷をしのぶ思いの他に若い主人公の明日に踏み出す 思いのようなものが歌いこまれるよう解釈されていくのですが、 それはまだ先の話。 ふたりは校庭の木陰のベンチに腰を下ろし、 訳した歌詞を歌ってみます。 このときの訳は雫自身が 「やってみたけど、上手く行かないよ。英語のままでやったら」 と言います。雫が初めて訳したカントリー・ロードは、ほとんど直訳でした。 雫は「こんなのも作った」と言ってパロディである「コンクリート・ロード」を 夕子に見せます。夕子は「何これ〜!?」といい、雫と一緒に大笑いします。 完成度はともかく、 街のコンクリートジャングルをふるさとにする今の彼女らの 実感がこもっているといえば 言えなくも無い歌詞です。 夕子は雫に相談します。好きな人がいる、でもラブレターをもらったと。 原作では二人の相談事は人気の無い教室で話されています。 夕子は野球部員の杉村が好きなのですが、内気なので告白できない、 そしてラブレターをもらった別の同級生に告白を断る勇気がない。 ふたりは帰り道でも話をしています。 雫は「付き合ってみたら」とか半分茶化しぎみに言っています。 夕子は「やっぱり、もう少し考えてみる」と答えています。 雫は借りた本を校庭のベンチに忘れて来たことを思い出します。 学校に戻るとそこには少年が座っていて、雫の忘れた本をよんでいました。 少年は天沢聖司(高橋一生)なのですが、それが分かるのは後のこと。 聖司は本を見て月島雫の借りた本だと気付きます。 聖司は雫に興味を持っているのですが、さも、興味なさそうにしています。 雫に「コンクリート・ロードは止めたほうがいいぜ」などといいます。 原作では雫とはじめて顔を合わせた聖司がひどく驚いています。 雫は狼狽する聖司に逆に驚いています。 実は聖司は以前より密かに雫に好意を抱いていたことが後でわかりますが、 映画ではそのような表情のやりとりは飛ばされています。 セリフのないやりとりは誤解を招きやすく、また、特にそのようなリスクを 犯さなくとも話しは進めることが出来るので演出上飛ばされているのでしょう。 観客に対して何でもかんでも情報提供すればよい演出、というものではありません。 この程度の取捨選択はあって当然と思います。 雫は、知らない人間に検討中の訳のメモを盗み見られて、頭に来てしまいます。 「やなやつ、やなやつ」と、いいながら帰る時、 バックにコンクリート・ロードが流れ、ユーモラスな場面として演出されています。 原作では「コンクリート・ロード」が出てこず、 聖司は「今の時代に妖精でもないだろうに」 と本そのものを馬鹿にしています。…自分だって読んでいるのでしょうに。 映画ではふたりが顔をあわせるのは校庭のベンチですが、 原作では教室です。 クラスメートでもない雫の教室に聖司が入り込むのは本来変です。 好意的に解釈すれば夏休みのひとけのない教室に置き去りにされた本に 偶然気づいた聖司が手にとって読んでみた、ということになりそうですが。 (この教室は廊下側が大きな窓になっています。) コミックは必要が無ければ背景を描かなくとも良いわけで、 場所の不自然さは原作ではぞんがい気になりませんが、 映画の場合はアニメであっても唐突な省略は出来ませんので、 場所の変更は適切な演出です。 家に帰ってきて、雫は麦茶の一気飲みで気持ちを静めると、 すぐ読書に入り込んでしまいます。 姉の汐が帰ってきて、 朝食をかたずけていないのを注意されると雫は「今、やるとこ〜」といいます。 原作では汐のところへ“天沢航司”から手製の絵葉書が届いています。 “天沢航司”は聖司の兄で、汐の彼氏ですが、原作のみで映画には出てきません。 姉妹兄弟の三角関係っぽい展開が原作ではあるのですが、 いかにも少女マンガっぽい展開に近藤監督は魅力を感じなかったのか、 映像化を見送られていますね。 すぐ後の朝の場面で、団地を出て行く雫に階段の上から汐が手紙を投げ落として 投函するよう雫に頼むと、雫が「ラブレター?」と言って宛名を読もうとして 「見なくていい」と叱られるところがあり、 わずかに削除されたエピソードの痕跡がうかがえます。 よく朝、雫はお父さんへのお弁当配達を断りきれず、向原駅へゆきました。 雫はお弁当配達を嫌がっていたにも関わらず、足取りはいやに軽やかです。 玄関を出て下に降りた時、汐に郵便を出すように呼び止められましたが、 もう、ニコニコでした。好きな図書館へ行けるうれしさに違いありません。 原作では図書館がまず出てきて、父が初登場し、 (前にも書いたとおり、原作ではここが父の初登場場面です。) それから次の電車のネコの場面となります。 ですから原作では図書館からの帰り道でネコに会っていることになります。 映画では図書館の出てくるのが後ですので、 行きにネコに会っていることになります。 雫の乗った電車の客席の下からネコが姿を現します。 「ネコくん、ひとり? どこまで行くの」
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