「西の魔女が死んだ/児童文学小説からファンタジー青春映画脚本を書くには」
原作小説と映画脚本比較により脚本の書き方・成り立ちを探ります。ハリウッド脚本の極意、世界名作の秘密に迫ります。全体に「ねたばれ」の要素がありますので、要注意。

「西の魔女が死んだ」原作文庫 ■原作小説
「西の魔女が死んだ」
梨木香歩 著
2001年刊 新潮文庫刊

    
「西の魔女が死んだ」映画チラシ ■作品基礎データ
「西の魔女が死んだ」
2008年 日本映画
監督:長崎俊一
脚本:矢沢由美、長崎俊一  
出演:サチ・パーカー

  本作原作文庫
  本作映画チラシ





■脚本の書き方■
原作小説と映画脚本比較レビュー・インディスク


「ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛」原作=C.S.ルイス
「ライラの冒険 黄金の羅針盤原作=フィリップ・プルマン

「陰日向に咲く」原作=劇団ひとり
「ミッドナイトイーグル」原作=高嶋哲夫
「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」原作=J・K・ローリング

「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」原作=リリー・フランキー
「墨攻」原作=酒見賢一
「暗いところで待ち合わせ」原作=乙一
「プラダを着た悪魔」
原作=ローレン・ワイズバーガー
「夜のピクニック」原作=恩田陸
「ゲド戦記」原作ル=グウィン
「ダ・ヴィンチ・コード」原作ダン・ブラウン
「ナルニア国物語/第1章ライオンと魔女」原作C・S・ルイス
「博士の愛した数式」原作小川洋子
「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」原作J.K.ローリング
「亡国のイージス」原作福井晴敏
「宇宙戦争」原作H.G.ウェルズ
「四日間の奇蹟」原作浅倉卓弥
「アビエイター」原作ジョン・キーツ
「オペラ座の怪人」原作ガストン・ルルー
「ハウルの動く城」原作ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ターンレフト・ターンライト」主演:金城武
「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」 主演:ダニエル・ラドクリフ
「下妻物語」原作嶽本野ばら
「世界の中心で、愛を叫ぶ」原作片山恭一
「ジョゼと虎と魚たち」原作田辺聖子
「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」原作J.R.R.トールキン
「アイデン&ティティ」原作みうらじゅん
「精霊流し」原作さだまさし
「マッチスティック・メン」監督リドリー・スコット
「コンフェッション」原作チャック・バリス
「ソラリス」監督スティーブン・ソダーバーグ
「魔界転生」原作山田風太郎
「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」原作フランク・w・アバグネイル
「ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔」原作J.R.R.トールキン
「黄泉がえり」原作梶尾真治
「レッドドラゴン」原作トマス・ハリス
「マイノリティ・リポート」原作F・K・ディック
「ハリーポッターと秘密の部屋」J.K.ローリング著
「ザ・リング the ring」主演ナオミ・ワッツ
「アバウト・ア・ボーイ」原作ニック・ホーンディ
「タイムマシン」原作小説H・G・ウェルズ
「GO」脚本:宮藤官九郎
「ロード・オブ・ザ・リング」脚本ピーター・ジャクソン
「ハリー・ポッターと賢者の石」脚本スティーブ・クローブス
「PLANET OF THE APES/猿の惑星」監督ティム・バートン
「陰陽師」脚本福田靖
「ブリジット・ジョーンズの日記」脚本アンドリュー・デイヴィス
「バトル・ロワイヤル」脚本深作健太
「エクソシスト ディレクターズカット」主演リンダ・ブレア
「クロスファイア」脚本山田耕大
「ファイト・クラブ」監督デビット・フィンチャー
「共同警備区域JSA」原作小説パク サンヨン
「ナインスゲート」脚本:ジョン ブラウンジョン
「ハンニバル」脚本デビット・マメット
「ホワイトアウト」原作小説真保裕一
「リプリー」原作パトリシア・ハイスミス
「黒い家」脚本大森寿美男
「ISOLA多重人格少女」脚本水谷俊之
「シン・レッド・ライン」脚本テレンス・マリック
「魔女の宅急便」監督宮崎駿
「リング」脚本高橋洋
「コンタクト」監督:ロバート・ゼメキス
「L.A.コンフィデンシャル」脚本カーティス・ハンソン
「セブン・イヤーズ・イン・チベット」原作小説:ハインリヒ・ハラー
「さらば、わが愛 覇王別姫」監督チェン・カイコー
「バラサイト・イブ」脚本君塚良一
「アポロ13号」監督ロン・ハワード
「マディソン郡の橋」脚本リチャード ラグラベニーズ
「ショーシャンクの空に」脚本フランク・ダラボン
「フォレスト・ガンプ」脚本エリック・ロス
「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」原作小説アン・ライス
「ジュラシック・パーク」原作小説マイケル・クライトン
「シンドラーのリスト」脚本スティーブン・ザイリアン
「イヤー・オブ・ザ・ガン」原作マイケル・ミューショー
「ダンス・ウィズ・ウルブズ」脚本マイケル・ブレイク
「レナードの朝」主演ロビン・ウィリアム
「トータルリコール」原作小説フィリップ・K・ディック
「レッドオクトーバーを追え!」脚本ラリー・ファーガソン
「ワイルド・アット・ハート」脚本デイヴィッド・リンチ
「ミザリー」原作小説スティーブン・キング
「ダイ・ハード」監督ジョン・マクティアナン
「仕立て屋の恋」原作小説ジョルジュ・シムノ
「時をかける少女」脚本剣持亘
「ブレード・ランナー」原作小説フィリップ・K・ディック
「惑星ソラリス」監督アンドレイ・タルコフスキー
「犬神家の一族」原作小説横溝正史
「ゴッドファーザー」監督フランシス・F・コッポラ
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発表から今日に至るまで十数年もの間、
愛され読まれ続けてきた梨木香歩原作の小説「西の魔女が死んだ」。
累積153万部を売ったとされる本作は、
第44回小学館文学賞、第28回日本児童文学者協会新人賞、
第13回新美南吉文学賞受賞と数々の賞に輝く名作です。
『八月のクリスマス』の実力派・長崎俊一監督が映画化。
主演は、アカデミー賞女優シャーリー・マクレーンの娘で
日本映画デビューを飾るサチ・パーカーと、
半年にも及ぶオーディションで選ばれた13歳の高橋真悠。
まいのママにりょう。パパに大森南朋、郵便屋さんに高橋克実、
ゲンジさんに木村祐一を配役です。
撮影は、2007年の初夏に、山梨県清里にて敢行されました。
撮影監督はアメリカを拠点に活躍する渡部眞。
照明は『BABEL』の和田雄二、
録音は『誰も知らない』の弦巻裕。
そして、おばあちゃんの家と庭その一大オープンセットの美術を監修するのは、
『フラガール』の種田陽平、さらに種田が最も信頼する矢内京子が
メインのアートディレクターを務めています。
音楽は映画初挑戦のトベタ・バジュン。
主題歌を「ゲド戦記」の手嶌葵が
映画のエンディング謳いあげています。

最近原作モノの映画化といえば、
500〜600ページもある長編を無理やり二時間前後の作品に
収めたダイジェスト作品が多かったりするのですが、
本作の原作は文庫版で僅かに190ページ。
登場人物は片手の数。
普通に考えれば、
原作をよほど膨らませないと映画化は無理なのですが、
そこは長崎俊一。
原作の世界観、人物像を上手く生かして映像化することに成功しています。
児童文学のバイブルとも言われる本作をどのようにして映画の文法に
置き換えて行ったか。
順を追ってみていきましょう。


「魔女が倒れた。もうダメみたい」 中学3年になった少女まいに、
突然の知らせが届きます。
おばあちゃんの家へ向かう車の中でママから聞かされたおばあちゃんの訃報。
“魔女”とはママのママ、英国人の祖母のこと。ママとまいだけの呼び名だ。
まいは2年前の日々へ想いを馳せる。

原作は、四時間目の理科の授業、からはじまりますが、
映画では、走る車の車中。
助手席の制服姿のまい(高橋真悠)とハンドルを握るまいのママ(りょう)の
ツーショットからはじまっています。
映画と文学、映画の方が説明調になりそうな気がしますが、
ここでは映画の方がぐっと状況を削り込んで描写し、
緊張感のある導入になっています。

中学校へ入学して間もないあの頃、ぜんそくで学校へ行くのが苦痛になってしまった
まいは、ママの提案で、西の魔女のもとで過ごすことになります。
原作のここまでの説明に具体的な映像の描写はありません。
あなたが監督なら、あるいは脚本家なら、
どのようなシーンを描きますか?
朝、マンションの居間。
パジャマ姿のまいと出勤姿のママ。
「わたしはもう学校へは行かない。あそこは私に苦痛を与える場所でしかないの」
部屋の中は静まりかえっていて、ママは超然とした様子で
「わかったわ、じゃあしばらく学校を休みましょう」
と承知してしまいます。
原作にもこのやり取りはあるのですが、
まいは、ママがすぐ承知したのに拍子抜けした、とありますが、
映画ではそんな描写はありません。
そもそもまいの家がマンションだなどとは一言もかかれていません。

ぜんそく、とあるのは原作のみの事です。
映画では後に出てくるいじめがピックアップされ、
そこだけがまいの口から理由として語られています。
原作でまいの不登校について、母子で口論などの葛藤がなかったことを
映画では最大限に誇張して、
人気のない高層マンションの一室だけに明かりがともるシーンと交えて、
ひんやりとした居間のテーブルで向き合う母子ふたりの姿だけが出てきます。
父親は単身赴任で不在なのですが、
そうした事情がわかるのは、
ドラマも中盤になってパパ本人が現れるまで説明がありませんね。
筆者はそれまで、母子家庭なのかと思ってました。
ママが電話で話している姿が逆光のシルエットで映されます。
まいの視点から見たママの姿のようですが、見つめているはずのまいの姿は
映りこんでいません。
重要なのはこの時のママの口から語られる内容です。
「昔から扱いにくい子だったわ」
「生きていきにくいタイプの子」と言った言葉が出てきます。
映画を見たとき、ママの話し相手はおばあちゃんとばかり思っていたのですが、
原作によるとパパです。
パパの声は聞こえず、まいは扱いにくい子と言われてかなり傷ついたようです。
原作ではママの話す言葉の中にずばり“登校拒否”というのが登場しているのですが、
映画では使われていません。
作品冒頭で“登校拒否”というレッテルを貼ってしまうと、
魔女修行というテーマを吹き飛ばしかねない…



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