「オペラ座の怪人/舞台ミュージカルの映画版脚本の書き方」
原作小説と映画脚本比較により脚本の書き方・成り立ちを探ります。ハリウッド脚本の極意、世界名作の秘密に迫ります。全体に「ねたばれ」の要素がありますので、要注意。

「オペラ座の怪人」原作文庫表紙 原作
「オペラ座の怪人」
ガストン・ルルー著 三輪 秀彦 訳
1987年刊 創元推理文庫

訳本は角川文庫版、ハヤカワ文庫版、創元推理文庫版があるが、ここでは創元推理文庫版との比較をしている。

    
「オペラ座の怪人」映画チラシ 映画「オペラ座の怪人」
2004年 アメリカ映画
監督 ジョエル・シューマカー
脚本 ジョエル・シューマカー アンドリュー・ロイド=ウェバー
出演 ジェラード・バトラー エミー・ロッサム
  本作原作文庫
  本作映画チラシ





■脚本の書き方■
原作小説と映画脚本比較レビュー・インディスク


「ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛」原作=C.S.ルイス
「ジャンパー」原作=スティーブン・グールド
「ライラの冒険 黄金の羅針盤」原作=フィリップ・プルマン

「陰日向に咲く」原作=劇団ひとり
「ミッドナイトイーグル」原作=高嶋哲夫
「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」原作=J・K・ローリング

「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」原作=リリー・フランキー
「墨攻」原作=酒見賢一
「暗いところで待ち合わせ」原作=乙一
「プラダを着た悪魔」
原作=ローレン・ワイズバーガー
「夜のピクニック」原作=恩田陸
「ゲド戦記」原作ル=グウィン

「ダ・ヴィンチ・コード」原作ダン・ブラウン
「ナルニア国物語/第1章ライオンと魔女」原作C・S・ルイス
「博士の愛した数式」原作小川洋子
「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」
原作J.K.ローリング
「亡国のイージス」原作福井晴敏
「宇宙戦争」原作H.G.ウェルズ
「四日間の奇蹟」原作浅倉卓弥
「アビエイター」原作ジョン・キーツ
「オペラ座の怪人」原作ガストン・ルルー
「ハウルの動く城」原作ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ターンレフト・ターンライト」主演:金城武
「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」 主演:ダニエル・ラドクリフ
「下妻物語」原作嶽本野ばら
「世界の中心で、愛を叫ぶ」原作片山恭一
「ジョゼと虎と魚たち」原作田辺聖子
「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」原作J.R.R.トールキン
「アイデン&ティティ」原作みうらじゅん
「精霊流し」原作さだまさし
「マッチスティック・メン」監督リドリー・スコット
「コンフェッション」原作チャック・バリス
「ソラリス」監督スティーブン・ソダーバーグ
「魔界転生」原作山田風太郎
「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」原作フランク・w・アバグネイル
「ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔」原作J.R.R.トールキン
「黄泉がえり」原作梶尾真治
「レッドドラゴン」原作トマス・ハリス
「マイノリティ・リポート」原作F・K・ディック
「ハリーポッターと秘密の部屋」J.K.ローリング著
「ザ・リング the ring」主演ナオミ・ワッツ
「アバウト・ア・ボーイ」原作ニック・ホーンディ
「タイムマシン」原作小説H・G・ウェルズ
「GO」脚本:宮藤官九郎
「ロード・オブ・ザ・リング」脚本ピーター・ジャクソン
「ハリー・ポッターと賢者の石」脚本スティーブ・クローブス
「PLANET OF THE APES/猿の惑星」監督ティム・バートン
「陰陽師」脚本福田靖
「ブリジット・ジョーンズの日記」脚本アンドリュー・デイヴィス
「バトル・ロワイヤル」脚本深作健太
「エクソシスト ディレクターズカット」主演リンダ・ブレア
「クロスファイア」脚本山田耕大
「ファイト・クラブ」監督デビット・フィンチャー
「共同警備区域JSA」原作小説パク サンヨン
「ナインスゲート」脚本:ジョン ブラウンジョン
「ハンニバル」脚本デビット・マメット
「ホワイトアウト」原作小説真保裕一
「リプリー」原作パトリシア・ハイスミス
「黒い家」脚本大森寿美男
「ISOLA多重人格少女」脚本水谷俊之
「シン・レッド・ライン」脚本テレンス・マリック
「魔女の宅急便」監督宮崎駿
「リング」脚本高橋洋
「コンタクト」監督:ロバート・ゼメキス
「L.A.コンフィデンシャル」脚本カーティス・ハンソン
「セブン・イヤーズ・イン・チベット」原作小説:ハインリヒ・ハラー
「さらば、わが愛 覇王別姫」監督チェン・カイコー
「バラサイト・イブ」脚本君塚良一
「アポロ13号」監督ロン・ハワード
「マディソン郡の橋」脚本リチャード ラグラベニーズ
「ショーシャンクの空に」脚本フランク・ダラボン
「フォレスト・ガンプ」脚本エリック・ロス
「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」原作小説アン・ライス
「ジュラシック・パーク」原作小説マイケル・クライトン
「シンドラーのリスト」脚本スティーブン・ザイリアン
「イヤー・オブ・ザ・ガン」原作マイケル・ミューショー
「ダンス・ウィズ・ウルブズ」脚本マイケル・ブレイク
「レナードの朝」主演ロビン・ウィリアム
「トータルリコール」原作小説フィリップ・K・ディック
「レッドオクトーバーを追え!」脚本ラリー・ファーガソン
「ワイルド・アット・ハート」脚本デイヴィッド・リンチ
「ミザリー」原作小説スティーブン・キング
「ダイ・ハード」監督ジョン・マクティアナン
「仕立て屋の恋」原作小説ジョルジュ・シムノ
「時をかける少女」脚本剣持亘
「ブレード・ランナー」原作小説フィリップ・K・ディック
「惑星ソラリス」監督アンドレイ・タルコフスキー
「犬神家の一族」原作小説横溝正史
「ゴッドファーザー」監督フランシス・F・コッポラ

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今回のミュージカル映画「オペラ座の怪人」は
1986年に初演されたアンドリュー・ロイド・ウェーバーの
舞台「オペラ座の怪人」をヒットを受けて、その映画化として企画制作されたものです。

3 歳の時からヴァイオリンを始め、
十代の時にはミュージカルを作曲していたという
アンドリュー・ロイド・ウェーバー卿は、
世界的に有名なミュージカル作曲家の一人です。
  1970 年代、ロイド・ウェーバーは
英国演劇界に豪華な音楽と衣装、装置とスペクタクルあふれる
ミュージカルを次々と発表し、
「コーラス・ライン」に象徴されるリアリズム路線を歩む
アメリカのブロードウェイ・ミュージカルに対抗する
ロンドン・ミュージカルの潮流を生み出しました。
その彼の作品には、
初めて大きな成功を得たオクスフォード大学での学友、作詞家ティム・ライス
とのコラボ作品
「ジーザス・クライスト・スーパースター (1971)」、
南米の独裁者の妻エヴィータ・ペロンの半生を描いたフィクション
「エビータ(1978)」、
トニー賞を受賞した代表作「オペラ座の怪人(1986)」、
「アスペクツ・オブ・ラブ(1989)」、
「サンセット通り (1993)」等があり、
名作「キャッツ (1981)」はT・S・エリオットが作詞し、
ブロードウェイ史上最長のヒットを記録しました。
  1992 年にはナイト爵に叙され、
1997 年にはシドモントンのロイド・ウェーバー男爵となります。
2000 年にロンドンにある 10 の舞台劇場やホールを購入。
すでに所有していた3 つの劇場を併せると、
アンドリュー・ロイド・ウェーバーは、
世界で一番広い劇場地区の支配者となっているそうです。

  映画『 オペラ座の怪人』のプロジェクトは最初、
舞台ミュージカルの
オリジナル・キャストであるマイケル・クロフォードと
サラ・ブライトマンを起用して、1990 年に始まるはずでしたが、
アンドリュー・ロイド・ウェーバーと
ウェバーの二人目の妻であるサラ・ブライトマンが離婚したため、
頓挫してしまいました。
今回、ジェラード・バトラーとエミー・ロッサムという配役を得て、
映画化が実現しました。

 映画の冒頭は1905 年のオークション会場。
今は廃墟となったパリのオペラ座の舞台で、かつて使われた関係品、
ポスターや調度品などが競売にかけられています。
原作にはこのオークションの場面は無く、序章で作者が
「シャニュイ子爵事件の黒幕は“オペラ座の怪人”であった」
とぶちあげ事件の調査の苦労話などを披露しています。
映画で登場する貴族はシャニュイ子爵のみですが、
原作では子爵の兄、シャニュイ伯爵も登場しドラマの中で死亡しています。
ついでに書いてしまうと、
“ついさきごろオペラ座の地下工事現場から発見された身元不明の遺体は
オペラ座の怪人、その人に違いない“と結ばれています。

舞台ミュージカル
(ここでは日本で公演の劇団四季版のことを言っています。
本国オリジナル版の脚本・音楽スコア・衣装・美術は
上演契約により日本公演版でも厳しく踏襲されています。)
もオークション場面から始まっていますが、
会場は特定されておらず、出品人、参加者ともに出番はこの一幕のみで、
あとのエピソードとのつながりは無いようです。

競売人(ポール・ブルック)はオペラ座の天井から吊り下げられていた
巨大なシャンデリアを暗幕を上げて披露します。
競売人は
「これがおよそ半世紀前にパリの芝居好きな人々の好奇心をそそった
“オペラ座の怪人”(ジェラード・バトラー)の奇妙な物語に由来する
シャンデリアです」と語ります。
其の時、シャンデリアに光がともり、
天高く舞い上がり天井をゆっくりと照らすと、舞台は五十年前のパリ、
オペラ座でした。

映画も舞台もこのシャンデリアを使った幻想的な時間跳躍の演出は同じで、
両方とも実際のオペラ座にあった巨大シャンデリアをモデルに作られた
重量2.3t、2万個のクリスタルガラスを散りばめた
シャンデリアが登場します。
舞台ではコンピューター制御のワイヤー操演で観客の頭上を、
生オーケストラによるテーマソングのインストゥーメンタル演奏とともに
華やかに舞って特設劇場の天井に納まり、
映画ではSFXにより廃墟のオペラ座が、
一挙に蘇るゴージャスな演出となっています。
特に映画では高名なスワロフスキー・クリスタルにシャンデリアが発注され、
高さ約5m、幅4m。
組み立てに4ヶ月、スタジオでの組み付けに丸4日を要したという1億5000万円
の予算がつぎ込まれた豪華シャンデリアが用意されました。

映画ではオークション会場に
老紳士ラウル・シャニュイ子爵(パトリック・ウィルソン)と
年老いたバレエ教師、マダム・ジリー(ミランダ・リチャードソン)の姿があります。
子爵は自動車に乗ってオペラ座に現れており、
すぐ後に出てくる五十年前のオペラ座には馬に乗ってやってきています。
舞台は貴族社会の末期と産業革命が始まる時代の両方にまたがっているのですが、
映画の方の貴族文化の黄昏を強調する演出の方が、
より優れています。

1861 年。
オペラ座の経営者、
ルフェーブル氏(ジェームズ・フリート)が
オペラ「ハンニバル」のドレス・リハーサルを中断し、
彼の後継者であるフィルマン(シアラン・ハインズ)と
アンドレ(サイモン・キャロウ)を俳優達に紹介します。
主役のソプラノ歌手、
カルロッタ・ジュディチェルリ(ミニー・ドライヴァー)が
新しい支配人たちのために「Think of Me 」をパフォーマンスすると、
突然、背景幕が床に倒れました。
危うくカルロッタは頭を負傷するところです。
舞台の上に「O(オペラ座)のG(ゴースト)より」と
署名された脅迫状がひらりと落ちます。

アンドレとフィルマンに宛てられたこのメッセージの中には、
ルフェーブル氏の時同様、以下のルールに従うべし
とする怪人からの要求が書かれていました。
“5 番のボックス席は怪人の専用席として売らずに残しておくことと、
毎月速やかに給料を支払うこと“
あたらしい支配人たちは、
「幽霊(ファントム)が金をほしがるのか、舞台を見たがるのか!?」と
一笑に付しますが、それは恐るべき報復を招き寄せるのでした。

舞台版では
コーラスやダンサーたちは、これが“オペラ座の怪人(ファントム)”の仕業だ
と口々に叫んでいて、
ルフェーブル氏はフィルマンとアンドレに単なる事故に過ぎないと主張しますがが、
舞踏教師のマダム・ジリー(映画ではミランダ・リチャードソンが演ずる)が、
オペラ座の怪人その人からのものらしいメッセージを取り出すという演出です。
映画では小さな手紙でもクローズアップで大きく見せることが出来ますが、
舞台ではその手は使えないので、
黒装束の“怪人の代理人”マダム・ジリーの登場に引っ掛けています。

舞台版では「ハンニバル」のリハーサルの舞台上からドラマが始まるのに対し、
映画では舞台裏の喧騒から始まっています。
オペラ座の表には馬車で貴族たちが現れ、
オペラ座の新しいパトロンである、
ラウル・シャニュイ子爵(パトリック・ウィルソン)も馬にまたがり、
颯爽とオペラ座地階の厩舎に姿を現します。
舞台となるオペラ座の表裏を紹介するためだけのシーンのように見えますが、
もう少し深読みすると、
劇場の表が貴族社会で、裏側が芸人たち下層階級の社会で、
両者を対比しているように見えます。

あとで怪人がヒロインの舞台上の歌声を地下で耳を澄まして聴いている
場面が出てきますが、
このオペラ座は、
縦方向にも階層社会の縮図になっていて、
舞台の上に役者たち、貴族の観客はそれを見下ろすボックス席におり、
舞台の袖、つまり下側には控えの役者に劇場スタッフ
(肉体労働者のなりをしている)。
それらのはるか下、排水溝のずっと下に怪人がいる。

原作や舞台版では特に言及の無いのですが、
ふたりの新しい支配人アンドレとフィルマンは
くず鉄業で財を成した(新興産業)資本家、とセリフで紹介されています。

映画の中盤でオペラ座の屋上が出てきて、
ヒロインと子爵のラブシーンが出てきますが、
そこが言ってみれば劇中の一番上の階層で、「天国」。
怪人はその天国に足を踏み入れますが、
愛を語らう二人の姿におののきます。
物理的に天国に入り込むことは出来ても、
そこに彼の居場所は無く、
地下の彼の住処(すみか)、「地獄」に戻るしかないです。

さて原作の第一章はもっとエピソードが混沌としていて、
序章の後、ごたごたが起きるオペラ座では、
新しい支配人フィルマンとアンドレの歓迎公演があり、
怪人の姿を見かけた踊り子たちが騒ぎ、道具方主任のジョセフ・ビュッケが
怪人の後を追って姿を消し、首吊り死体となって発見されます。
警察が登場し、パリの警視などがこのあと事あるごとに関係者の聞き込みを
していますが、たいした成果を挙げていません。
支配人室に“ペルシア人”とだけ呼ばれる謎の人物の姿があります。
この人物は劇場スタッフでも出資者でもないのですが、
氏素性が触れられておらず、ここでは正体不明です。
実は彼は警察とも劇場スタッフとも異なる独自の立場でオペラ座の怪人を追う
探偵役です。序盤から中盤にかけてまったく姿を見せず、
クライマックスの怪人追跡で活躍します。

休演したプリマドンナのカルロッタの代役として
「ロミオとジュリエット」のなかの
いくつかの曲を歌ったクリスティーヌが絶賛されています。
カルロッタの休演と、クリスティーヌの起用については、
“不可解な”とか“不思議な”という形容詞が使われていますが、
詳しいいきさつは説明されていません。
怪人の脅迫状が出てくるのはもっと後ろです。

映画と舞台版ではここがドラマ上のはじめの見せ場で、
危うく怪我をし損ねた
カルロッタは今夜のステージにどうしても出ることができないと言い張ります。
ジョセフ・ビュッケは天井近くに不審人物の影を見てすぐ追跡しますが、
ここでは見失っています。
カットが切り替わり、不審人物が怪人であることが観客には明かされます。
カルロッタは
代役が用意されていないのを百も承知でごねているのですが、
マダム・ジリーは、
群舞ダンサーのクリスティーヌ・ダーエ(エミー・ロッサム)が
代わりに役を演じてみたらと提案する。
アンドレとフィルマンは、
クリスティーヌにその場で歌わせてみると、
舞台周辺に居合わせたすべての人々が、
手を止め、振り返って聞きほれるほどの見事な歌声。
そしてその晩、クリスティーヌはエリッサの役を優れた表現力で演じます。
新しいオペラ座の支配人たちと同じように、
クリスティーヌの活躍を喜んでいる者がいました。
オペラ座の若いパトロンである、
ラウル・シャニュイ子爵(パトリック・ウィルソン)です。
ラウルはボックス席でクリスティーヌが幼馴染だと思い出し、感激します。

この続きの原作比較レビューは
まぐまぐプレミアム「映画VS原作本 映画脚本のヒ・ミ・ツ」で発表します。

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