「パコと魔法の絵本/舞台演劇からファンタジー映画脚本を書くには」
原作小説と映画脚本比較により脚本の書き方・成り立ちを探ります。ハリウッド脚本の極意、世界名作の秘密に迫ります。全体に「ねたばれ」の要素がありますので、要注意。

「パコと魔法の絵本」原作小説 ■原作
舞台「MIDSUMMER CAROL ガマ王子 VS ザリガニ魔人」
作 後藤ひろひと
小説「パコと魔法の絵本」
関口尚 著
2008年刊 幻冬舎文庫刊

    
「パコと魔法の絵本」映画チラシ ■作品基礎データ
「パコと魔法の絵本」
2008年 日本映画
監督:中島哲也
脚本:中島哲也 門間宜裕  
出演:アヤカ・ウィルソン

  本作原作文庫
  本作映画チラシ





■脚本の書き方■
原作小説と映画脚本比較レビュー・インディスク


「西の魔女が死んだ」
「ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛」原作=C.S.ルイス
「ライラの冒険 黄金の羅針盤原作=フィリップ・プルマン

「陰日向に咲く」原作=劇団ひとり
「ミッドナイトイーグル」原作=高嶋哲夫
「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」原作=J・K・ローリング

「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」原作=リリー・フランキー
「墨攻」原作=酒見賢一
「暗いところで待ち合わせ」原作=乙一
「プラダを着た悪魔」
原作=ローレン・ワイズバーガー
「夜のピクニック」原作=恩田陸
「ゲド戦記」原作ル=グウィン
「ダ・ヴィンチ・コード」原作ダン・ブラウン
「ナルニア国物語/第1章ライオンと魔女」原作C・S・ルイス
「博士の愛した数式」原作小川洋子
「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」原作J.K.ローリング
「亡国のイージス」原作福井晴敏
「宇宙戦争」原作H.G.ウェルズ
「四日間の奇蹟」原作浅倉卓弥
「アビエイター」原作ジョン・キーツ
「オペラ座の怪人」原作ガストン・ルルー
「ハウルの動く城」原作ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ターンレフト・ターンライト」主演:金城武
「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」 主演:ダニエル・ラドクリフ
「下妻物語」原作嶽本野ばら
「世界の中心で、愛を叫ぶ」原作片山恭一
「ジョゼと虎と魚たち」原作田辺聖子
「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」原作J.R.R.トールキン
「アイデン&ティティ」原作みうらじゅん
「精霊流し」原作さだまさし
「マッチスティック・メン」監督リドリー・スコット
「コンフェッション」原作チャック・バリス
「ソラリス」監督スティーブン・ソダーバーグ
「魔界転生」原作山田風太郎
「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」原作フランク・w・アバグネイル
「ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔」原作J.R.R.トールキン
「黄泉がえり」原作梶尾真治
「レッドドラゴン」原作トマス・ハリス
「マイノリティ・リポート」原作F・K・ディック
「ハリーポッターと秘密の部屋」J.K.ローリング著
「ザ・リング the ring」主演ナオミ・ワッツ
「アバウト・ア・ボーイ」原作ニック・ホーンディ
「タイムマシン」原作小説H・G・ウェルズ
「GO」脚本:宮藤官九郎
「ロード・オブ・ザ・リング」脚本ピーター・ジャクソン
「ハリー・ポッターと賢者の石」脚本スティーブ・クローブス
「PLANET OF THE APES/猿の惑星」監督ティム・バートン
「陰陽師」脚本福田靖
「ブリジット・ジョーンズの日記」脚本アンドリュー・デイヴィス
「バトル・ロワイヤル」脚本深作健太
「エクソシスト ディレクターズカット」主演リンダ・ブレア
「クロスファイア」脚本山田耕大
「ファイト・クラブ」監督デビット・フィンチャー
「共同警備区域JSA」原作小説パク サンヨン
「ナインスゲート」脚本:ジョン ブラウンジョン
「ハンニバル」脚本デビット・マメット
「ホワイトアウト」原作小説真保裕一
「リプリー」原作パトリシア・ハイスミス
「黒い家」脚本大森寿美男
「ISOLA多重人格少女」脚本水谷俊之
「シン・レッド・ライン」脚本テレンス・マリック
「魔女の宅急便」監督宮崎駿
「リング」脚本高橋洋
「コンタクト」監督:ロバート・ゼメキス
「L.A.コンフィデンシャル」脚本カーティス・ハンソン
「セブン・イヤーズ・イン・チベット」原作小説:ハインリヒ・ハラー
「さらば、わが愛 覇王別姫」監督チェン・カイコー
「バラサイト・イブ」脚本君塚良一
「アポロ13号」監督ロン・ハワード
「マディソン郡の橋」脚本リチャード ラグラベニーズ
「ショーシャンクの空に」脚本フランク・ダラボン
「フォレスト・ガンプ」脚本エリック・ロス
「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」原作小説アン・ライス
「ジュラシック・パーク」原作小説マイケル・クライトン
「シンドラーのリスト」脚本スティーブン・ザイリアン
「イヤー・オブ・ザ・ガン」原作マイケル・ミューショー
「ダンス・ウィズ・ウルブズ」脚本マイケル・ブレイク
「レナードの朝」主演ロビン・ウィリアム
「トータルリコール」原作小説フィリップ・K・ディック
「レッドオクトーバーを追え!」脚本ラリー・ファーガソン
「ワイルド・アット・ハート」脚本デイヴィッド・リンチ
「ミザリー」原作小説スティーブン・キング
「ダイ・ハード」監督ジョン・マクティアナン
「仕立て屋の恋」原作小説ジョルジュ・シムノ
「時をかける少女」脚本剣持亘
「ブレード・ランナー」原作小説フィリップ・K・ディック
「惑星ソラリス」監督アンドレイ・タルコフスキー
「犬神家の一族」原作小説横溝正史
「ゴッドファーザー」監督フランシス・F・コッポラ
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小説の冒頭は、ある雨の日
“ぼく”こと浩二の「お屋敷」に堀米老人が訪ねてくるところから
はじまっています。

筆者は、小説を先に読み、そのあと映画を鑑賞しています。
よく、自分だったらどのように脚色するか、などと想像しながら読むのですが、
実際の映画で、この冒頭の「お屋敷」に
堀米老人が訪ねてくるところから始めるのは
かなり意外でした。

作品の語り口の体裁を整えるため、
おとぎばなしが「むかしむかしあるところにー」で
始まるように、大して重要性もないのに、
現在から過去の回想へと繋ぐイントロを設ける映画は古今東西少なくありません。

ですが、「パコと魔法の絵本」については、
オチが二段オチになっていて、
クライマックスにもうひとつどんでん返しがあるのですが、
そのどんでん返しを効果的に見せるため、
この過去回想のイントロがモノをいう仕組みになっています。
単にドラマの体裁を整えているわけではありません。
その手法は、該当部分をマガジン後編でじっくり解説します。

この「お屋敷」は浩二(加瀬亮)の父が、
ルワールと言う会社の社長を引き継いだ時に購入されたもので、
いまは浩二ひとりが住んでいて、
1階のフロアをフラダンス教室としてご近所の夫人達に貸し出されています。

映画では、「お屋敷」の登場シーンで、
フラダンス教室で踊り狂うおばさんの大軍が出てきて、
なにやら不思議な勢いで観客を非日常の作品世界に巻き込まれてしまいます。
特に本編とは関わりない人たちなのですが、
実はインストラクター役で後藤ひろひとが姿を見せています

歌と踊りは舞台の強力な武器ですが、
映画でも、それはまんまと生かれていますね。

映画では、主人公がアニメオタクらしく、
友人達コスプレした若い男女が、
浩二の部屋でごろ寝状態ですが、
この描写がドラマを語る上で有効なギミックになっているかどうかは、
やや疑問。

彼らはほとんどセリフもなく、
丸太が転がるように部屋にごった返しているのですが、
浩二が学生なのか社会人なのか、
社会人なら定職があるのか、かえって正体が分かりにくくなってしまい、
筆者としては買えないのですが、
ともかく先に進みましょう。

堀米老人(阿部サダヲ)の目的は、
大伯父の大貫先代社長の仏壇に納められているはずの
絵本「ガマ王子 VS ザリガニ魔人」です。
堀米老人はずっとその絵本を探しており、
その絵本にまつわる物語を語って聞かせたがっていました。
「聞きたいですか?」
「別に」
「とある病院で」
「(呆れて)話し始めているし」

映画では絵本が開いて、
飛び出す絵本の中に舞台になる病院が現れます。
これは演劇舞台では出来ない洒落た演出ですが、
でも絵本「ガマ王子 VS ザリガニ魔人」の一部と言う訳ではないので、
誤解を招きやすいといえなくもないです。

場面は転換して、元教会を改装した総合病院の夜の待合室に、
たむろするルワールの会長、へんくつじじいの大貫(役所広司)、
消防士の滝田(劇団ひとり)の前に看護婦のタマ子(土屋アンナ)が
消灯時間を知らせにやってきます。

ここは礼拝堂を改装した場所ということになっており、
実は、小説を読むまで筆者は待合室だとは知りませんでした。

外部からやってくる見舞い客は、
大貫の甥である浩一くらいで、
この待合室は、もっぱら患者たちのサロンとして劇中で機能しています。

自殺常習者の室町(妻夫木聡)が苦しみもだえて転がり込んできます。
服毒自殺未遂で、自分から病院にやってきたのです。
「同情を引きたくて騒ぎを起こしているんだろう」
と大貫に罵られますが、
タマ子が飛んできて、室町を診察室に連れて行きます。

ドラマはひとつの舞台に大勢の登場人物が集まる
グランドホテル形式。
邦画で言うなら「the有頂天ホテル」形式。(爆)

この物語は浩二が生まれる前、親の浩一の時代の話ですが、
時代考証は無視した美術や衣装の設定になっており、
ドラマ的にも特定の過去や歴史を意識したストーリーにはなっていません。
「ALLWAY 三丁目の夕日」の様な世界観とは別物です。

ただし、古い絵本のページをめくるイメージは、
映像的にも原作舞台よりはっきり意識されています。
しいて言えば、パコや大貫の衣装、
「お屋敷」に現れた堀米の衣装がクラシカル、というより
アンティークに近い趣味で、心地よい過去回顧調のメルヘンである事が
暗示されています。

夜の待合室は、
普通に登場人物の紹介場面ですが、
人物紹介は翌朝のシーンまでずれ込んで、
同じ待合室に滝田に中年オカマの木之元(國村隼)、
電話で話しているヤクザの龍門寺(山内圭哉)、
医師の浅野(上川隆也)が登場し、
浅野がサマークリスマスのお芝居をやろうと持ちかけて
嫌がられています。

小説でパコの登場は一番最後ですが、
映画では冒頭近くでもひとりで声を張り上げて絵本を読む
パコ(アヤカ・ウィルソン)の姿があり、
ピーターパンになりきった浅野が、金の粉を振りまくシーンがあって、
その窓下にパコがいます。

ヤクザの龍門寺役の
山内圭哉という人は、オリジナルの舞台
「MIDSUMMER CAROL ガマ王子 VS ザリガニ魔人」
で同じ役を演じています。

大貫が遅れて登場し、看護婦長の雅美(小池栄子)が
「どこに行っていたりか?」と尋ねると、
病院を抜け出してホテルで一泊していた、と法外な請求書を突きつけ、
雅美に支払いを迫ります。

そこに会社で暇人の浩一(加瀬亮の二役)が見舞いに現れ、
浩一と雅美が大貫の甥っ子夫婦で、
強欲な雅美はだめ夫の浩一を大貫が一代で築いた大企業
ルワールの社長の座に据えたくて、
大貫にこびへつらっている事がわかります。

小説を読む限りでは、雅美は強欲妻というだけですが、
映画版では牙を生やし、
感情的になると相手に噛み付いています。
解釈によっては、お色気むんむんで迫る女にもなった
筈ですが、ドラキュラのイメージを持ってきたことで、
この作品が親子で笑って見れる映画になることに貢献しますね。笑

余談ですが、
本作は07年4月10日にクランクイン、6月6日にクランクアップ、
ホストプロダクションを経て、
08年4月16日に完成しています。

公開が9月であったため、
宣伝に十分な余裕があり、
試写会などを繰り返しつつ、宣伝プランを検討したようですが、
当初、大人のファンタジーとして売り込むつもりでいたものが、
実際の試写会では子供達、親子連れに好評で、
全世代向けの一般映画として宣伝され、
公開直後の興業ランキングで、
「崖の上のポニョ」に次ぐ第2位の好成績で公開中です。

映画館で、土屋アンナのサド看護婦や、
オカマの國村隼が歌う姿に
子供達がけたけた笑う姿を見ると
「日本の明日は大丈夫か?」と
心配しないでもありませんが、(爆)
大人の映画ファンだけでなく、
親子連れも大挙して劇場に押しかける状況、
というので、
今年のおおばけ映画になるかもしれません。

大貫は、患者たちが皆でかわいがっている捨て猫を
蹴飛ばして怪我をさせ、みんなの顰蹙を買います。

(映像で動物虐待のシーンはありません。
動物スタントや特撮を使ってまで再現せねばならぬほど、
重要なシーンでもないし、
海外公開も想定されるなら、
映画どおり、セリフとイメージシーンだけで
暴力場面はないほうが良いです。)

非難に背を向けて自分の部屋に戻ろうとする大貫は
発作に見舞われ、
長椅子に手を置くと、なぜかそこに仕掛けられたブザーを鳴らし、
謎の入院患者・堀米(阿部サダヲ)を呼び寄せてしまいます。
堀米の悪いのは頭なんでしょうか?
「嫌だ、人間なんて」と喚く堀米に怒鳴り返そうとして、
中庭に立つ美少女、パコと顔をあわせます。…


この続きの原作比較レビューは
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