「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン/母子愛映画脚本の書き方」
原作小説と映画脚本比較により脚本の書き方・成り立ちを探ります。ハリウッド脚本の極意、世界名作の秘密に迫ります。全体に「ねたばれ」の要素がありますので、要注意。

「東京タワー」原作表紙 原作小説
「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」
リリー・フランキー 著
2005年刊 扶桑社

    
「東京タワー」映画チラシ 映画
「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」
2007年 日本映画
監督:松岡錠司
脚色:松尾スズキ
出演:オダギリジョー
  本作原作文庫
  本作映画チラシ





■脚本の書き方■
原作小説と映画脚本比較レビュー・インディスク


「ジェネラル・ルージュの凱旋」

「地球が静止する日」

「デス・レース」

「ホームレス中学生」

「容疑者Xの献身」

「パコと魔法の絵本」

「西の魔女が死んだ」

「ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛」
原作=C.S.ルイス
「ジャンパー」原作=スティーブン・グールド
「ライラの冒険 黄金の羅針盤
原作=フィリップ・プルマン
「陰日向に咲く」原作=劇団ひとり
「ミッドナイトイーグル」原作=高嶋哲夫
「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」原作=J・K・ローリング
「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」原作=リリー・フランキー
「佐賀のがばいばあちゃん」原作=島田洋七
「墨攻」原作=酒見賢一
「暗いところで待ち合わせ」原作=乙一
「プラダを着た悪魔」
原作=ローレン・ワイズバーガー
「夜のピクニック」原作=恩田陸
「ゲド戦記」原作ル=グウィン
「ダ・ヴィンチ・コード」原作ダン・ブラウン
「ナルニア国物語/第1章ライオンと魔女」原作C・S・ルイス
「博士の愛した数式」原作小川洋子
「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」原作J.K.ローリング
「亡国のイージス」原作福井晴敏
「宇宙戦争」原作H.G.ウェルズ
「四日間の奇蹟」原作浅倉卓弥
「アビエイター」原作ジョン・キーツ
「オペラ座の怪人」原作ガストン・ルルー
「ハウルの動く城」原作ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ターンレフト・ターンライト」主演:金城武
「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」 主演:ダニエル・ラドクリフ
「下妻物語」原作嶽本野ばら
「世界の中心で、愛を叫ぶ」原作片山恭一
「ジョゼと虎と魚たち」原作田辺聖子
「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」原作J.R.R.トールキン
「アイデン&ティティ」原作みうらじゅん
「精霊流し」原作さだまさし
「マッチスティック・メン」監督リドリー・スコット
「コンフェッション」原作チャック・バリス
「ソラリス」監督スティーブン・ソダーバーグ
「魔界転生」原作山田風太郎
「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」原作フランク・w・アバグネイル
「ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔」原作J.R.R.トールキン
「黄泉がえり」原作梶尾真治
「レッドドラゴン」原作トマス・ハリス
「マイノリティ・リポート」原作F・K・ディック
「ハリーポッターと秘密の部屋」J.K.ローリング著
「ザ・リング the ring」主演ナオミ・ワッツ
「アバウト・ア・ボーイ」原作ニック・ホーンディ
「タイムマシン」原作小説H・G・ウェルズ
「GO」脚本:宮藤官九郎
「ロード・オブ・ザ・リング」脚本ピーター・ジャクソン
「ハリー・ポッターと賢者の石」脚本スティーブ・クローブス
「PLANET OF THE APES/猿の惑星」監督ティム・バートン
「陰陽師」脚本福田靖
「ブリジット・ジョーンズの日記」脚本アンドリュー・デイヴィス
「バトル・ロワイヤル」脚本深作健太
「エクソシスト ディレクターズカット」主演リンダ・ブレア
「クロスファイア」脚本山田耕大
「ファイト・クラブ」監督デビット・フィンチャー
「共同警備区域JSA」原作小説パク サンヨン
「ナインスゲート」脚本:ジョン ブラウンジョン
「ハンニバル」脚本デビット・マメット
「ホワイトアウト」原作小説真保裕一
「リプリー」原作パトリシア・ハイスミス
「黒い家」脚本大森寿美男
「ISOLA多重人格少女」脚本水谷俊之
「シン・レッド・ライン」脚本テレンス・マリック
「魔女の宅急便」監督宮崎駿
「リング」脚本高橋洋
「コンタクト」監督:ロバート・ゼメキス
「L.A.コンフィデンシャル」脚本カーティス・ハンソン
「セブン・イヤーズ・イン・チベット」原作小説:ハインリヒ・ハラー
「さらば、わが愛 覇王別姫」監督チェン・カイコー
「バラサイト・イブ」脚本君塚良一
「アポロ13号」監督ロン・ハワード
「マディソン郡の橋」脚本リチャード ラグラベニーズ
「ショーシャンクの空に」脚本フランク・ダラボン
「フォレスト・ガンプ」脚本エリック・ロス
「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」原作小説アン・ライス
「ジュラシック・パーク」原作小説マイケル・クライトン
「シンドラーのリスト」脚本スティーブン・ザイリアン
「イヤー・オブ・ザ・ガン」原作マイケル・ミューショー
「ダンス・ウィズ・ウルブズ」脚本マイケル・ブレイク
「レナードの朝」主演ロビン・ウィリアム
「トータルリコール」原作小説フィリップ・K・ディック
「レッドオクトーバーを追え!」脚本ラリー・ファーガソン
「ワイルド・アット・ハート」脚本デイヴィッド・リンチ
「ミザリー」原作小説スティーブン・キング
「ダイ・ハード」監督ジョン・マクティアナン
「仕立て屋の恋」原作小説ジョルジュ・シムノ
「時をかける少女」脚本剣持亘
「ブレード・ランナー」原作小説フィリップ・K・ディック
「惑星ソラリス」監督アンドレイ・タルコフスキー
「犬神家の一族」原作小説横溝正史
「ゴッドファーザー」監督フランシス・F・コッポラ
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「東京タワー」はフジテレビで単発ドラマ、連続ドラマが先に作られており、映画で三度目の映像化ということになります。
それぞれ製作者の工夫があり、それぞれ泣かせる内容ですが、原作との距離感というと、
映画版が1番原作に近いように思われます。
原作は「ボク」の一人称で書かれているため、5W1H(いつ、だれが、どこで、なにを、どうした)がきちんと説明されていない主観描写がところどころありますが、うまく辻褄あわせがされており、映画ならではの演出もあります。
順番に見ていきましょう。

映画の冒頭は、ボク(オタギリジョー)が病室でベッドに横になったオカン
(木樹希林)とともに
窓外の東京タワーを見上げるところから始まっていますが、
その時ボクのモノローグとして流れる背後の言葉は、
原作の始まりと一緒です。

“この話は、東京に弾き飛ばされ故郷に戻ったオトンと、
同じようにやってきて変えるところを失ってしまったボクと、
そして一度もそんな幻想を抱いたこともなかったのに、
東京に連れて来られて、戻る事も帰ることも出来ず、
東京タワーの麓で眠りについた、
ボクの母親のちいさな話です。”

1960年代の小倉。
ボクが3歳の頃。真夜中にオトン(小林薫)が玄関の戸を蹴破って帰ってくる。
酔っ払ったオトンはボクにいきなり焼鳥の串を食わせ、
オカン(内田也哉)にフライパンで殴られる。
オダギリジョーの「オカンとオトンとボクの3人で暮らした最後の思い出だった」
とモノローグが入りますが、
原作ではあと幾つかエピソードが重なっています。

映画ではオカンとボクはすぐさま筑豊のオカンの実家に戻っていますが、
原作ではオトンの姉の嫁ぎ先に何故か世話になっていた時期があったことが
書かれています。
オカンは鉄道路線を「とおりゃんせ」を歌い僕の手を引いて山道を歩きますが、
この場面はずっと後で回想シーンとなって出てきます。
このあと、荷車に魚を乗せて売っているおばあさんと会い、
オカンはすぐ荷車を押して手伝いますが、
ボクは山間に開けた筑豊の町並みの景色に心奪われます。
この場面は実際には宮城栗原市鴬沢でロケされたようです。
ぼた山が映っていますが、細倉鉱山の跡地です。
麓の鉱山施設と街は、
バッテリーリサイクルなどの精錬をしている細倉金属鉱業という会社の施設です。
煙突にCGで煙を描き込んだり、
また町並みもロケセットとして昭和四十年代の十分な装飾がなされており壮観です。

オカンは妹のブーブおばさんの小料理屋を手伝いながら女手ひとつでボクを育てます。
ボクはトロッコでザリガニやかえるをひかれさせるような、
やんちゃな遊びをする炭鉱町の腕白になります。
原作ではこれはトロッコに乗り込んで遊び、危うく事故を起こしそうになりますが、
子供が真似をすると困る為(?)か、線路遊びの話に変えられています。
ザリガニがかえるに、最後にウサギにとエスカレートしますが、
さすがにウサギを貨車でぺしゃんこにするのは可哀相過ぎるのか、
これは中止されて、ウサギは無事です。
ここで映像が現代に飛び、ウサギを抱くボクの姿がイラストになって、
成人してイラストレターになっているボクが登場します。
場所はオカンの入院している病院で、以後、
現在と過去を映画は行きつ戻りつします。
こうした行ったり来たりは映画独自のものですが、
原作の一人称はボクの成人した現代の視線から描かれているので、
全体が大過去の回想ドラマであるとも言えます。

夜、オカンは実家の一室で姉妹や近所の人々と花札に興じ、酔っ払っては、
付け鼻と髭の付いたメガネ姿で踊ったりします。
このへんてこなかくし芸は、上京後もオカンのかくし芸として続きます。
小料理屋にやってくる肉体労働者たちとは毛色の違うスーツ姿の男が
通うようになります。
男は赤玉ポートワインを頼み、ちょっと気取った感じです。
おめかしして鏡台の前で化粧するオカン。
「どこにいく?」とボクが尋ねると「お前も来るン?」とオカン。
ボクはオカンとその男とドライブしヘルスセンターに出かける羽目になります。
これは原作にも登場するオカンのボーイフレンドとのデートです。
原作はボクの視線で描かれているため、
オカンとセンターの中ではぐれてしまうと、ぐるぐるぐるぐるオカンを探して歩き、
その戸惑いが前面に描かれています。
映画もそれは大体一緒ですが、
探し出したオカンにボクが飛びつくと、オカンは優しく抱きしめ
(この場面が予告の抱擁シーンに使われている)
そのあとでため息混じりにオカンが「かえろっか」とつぶやいたり、
その夜中に漬物の糠床をかき混ぜながら、ボクに
「やっぱりオトンが好き?」と尋ねていたりします。
原作ではオカンもまだ若くて、女だった、といったニュアンスで描かれていますが、
完全な遊びというより、
真面目に再婚を考え、ボクが意に沿わぬ相手だから断念した、という風にも見えます。
もっともこの時点できちんとオトンと離婚していた訳ではないので、
まあ、どっちとも付かないですが。

学校が長い休みになるとボクはオトンのところに行かされ、夏休みをすごします。
一度、オトンはボクのために船の模型を作ってくれたことがある。
何事もやりかけで終わるオトンが作ってくれた船はやっぱり未完成品だったけど。
「これば1番父親らしい思い出だった」とモノローグが追加され、
この時の木の模型は大学時代の下宿の部屋にも、
社会人になってイラストレターと仕事を始めた部屋にも出てきます。
「時々、オトン」とタイトルにもある父の不在を埋めるかのように、
つねにボクの傍らにいる存在となります。

中学になるとボクとオカンはおばあさんの家を出て、
使われなくなった病院の病棟の一室に間借りします。
気の小さなボクはトイレに行くのも怖いのですが、
そんなボクをオカンは面白がってからかいます。
オカンが実家を出る経緯については原作にも詳しい解説はありません。
ただ、小倉のオトンのおばあちゃんと違って、オカンのおばあちゃんは子沢山の癖に
誰とも一緒に暮らさず、口下手で愛情表現も下手な人であったと述べられています。
映画でも夜、
ボクはオカンの指図でおかずをおばあさんの家に運んでいく場面等がありますが、
おばあさんは独り寂しく夕飯を食べています。
そしてオカンとボクがバスに乗って出て行く場面でも、
母と娘は言葉を交わさず手も振らずに別れています。
松岡錠司監督は単に母子もので泣きのドラマを作ろうとしたわけではなく、
もっと深い人生、生活を語りたかったともインタビュー等で述べています。
このおばあさんの描き方等もそうした洞察のひとつでしょう。

1970年代、筑豊の炭鉱も小倉の製鉄所も煙突から煙を上げなくなった頃。
中産になったボクは大分の美術高校に合格し、
ひとりで下宿生活をすることになった春の日、
駅まで見送りに来たオカンがボクに持たせた鞄には、新しい下着と弁当箱と、
1万円札を忍ばせた封筒が入れてあった。
列車の中、オカンのおにぎりと漬物をかみ締めて、15の僕は泣いた。…


この続きの原作比較レビューは
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