今月の【喜・怒・哀・楽】  曽我なぎさ

公私混同


社会人としての自分とプラーベートな個人としての自分は別にしなければなりません。別の見方で言えば、社会人の自分と付き合いのある知人や仲間は、プライベートな自分と付き合ってくれているトモダチとは別の性格のものです。

これをゴチャゴチャにすると、世の中の秩序は崩れてしまいます。ちょっと新入社員向けの訓示のようになってしまいましたが、あえてこんな当たり前のことを言いましたのは、今のアメリカ大統領を見ていると、どうもこの基本が分かっていないのではないかと疑いたくなるからです。

イランとの停戦協議(パキスタンの首都、イスラマバードで行われました)で、イラン代表はガリバフ国会議長。アメリカ側の代表はバンス副大統領でした。私が解せないのは、アメリカ側の代表団の中に、トランプ大統領の娘婿とされるクシュナー氏が入っていたことです。

私は最初、この人は何か公的な職位があって、プライベートでは大統領の娘婿だという関係だと思っていました。しかし、どうもそうではないのですね。この人は公職についていない本当の私人なんです。だから、メディアもこの人を“大統領の娘婿”としか肩書報道できなかったのですね。

おかしいですよ! これは。あんな重要な会議に私人が参加しているということなんですから。

この人はビジネスパーソンで特にイスラエルとの関係が深いと言われています。だから中東情勢に詳しいから会議に同席させたかったというなら、一時的にせよ、“政府外交顧問”といった“公的な立場”を与えるべきでしょう。

どうもそういうケジメが緩んでいますよね、今のアメリカは・・・。よくニュース映像なんかで大統領執務室に大統領の家族が出入りしている様子が写されたりしていますが異常なことなんです、本来は。

家族を大切にする文化をアメリカが強く持っていることは、良く知られています。決して悪い文化ではないと思いますよ。少なくとも日本が“イエ制度”のなごりの文化を今も抱えていることに比べれば、ずっと健全な気もしますし。でも、それが度を越して大統領の家族は“準公人”のような扱いをするのが普通の感覚になっているのは怖いことではないでしょうか。

なぜあの会議にクシュナー氏が同席していたのか? 一説によれば、イランとアメリカが停戦交渉するのをイスラエルは反対だったようです。そこで、トランプ大統領はクシュナー氏を代表に加えるから悪いようにはしないと説得したらしい。クシュナー氏はイスラエルの“お目付け役”だったのですね。

表向きの会議内容だけでなく、微妙な会話の詳細をクシュナー氏がイスラエルに伝えていた、ということでしょうか。

最終的な合意は、トランプ大統領とイラン代表(これも実ははっきりしていないのですが)によってなされますから、別にクシュナー氏がいようがいまいが関係ないのかもしれません。

むしろ私が気になるのは、この会議に入り込むことで、クシュナー氏は“微妙な情報”を知りえたということなんです。和平合意が近いとみるか当面はないとみるかで、原油の先物取引なんかで極めて有利な立場を得ていたことは間違いないのです。

原油は経済の基礎物資ですからね、その動向は株式市場にも大きく影響します。それなら超大国トップファミリーによる“究極のインサイダー取引”ではありませんか。もともと、トランプ大統領自身のコロコロ変わる言動によって、原油も株も大きく値が動いているのです。それを狙って、大統領は言葉の“さじ加減”をしているというような噂さえあるのです。それが本当なら言語道断。すべては公人としての自分と私人としての自分が区別できなくなっていることから来ているように思えてなりません。高齢によって、その基本的な判断が麻痺しているなら、これは世界にとって危機的状況と言わねばなりません。我々は選挙によって我々の代表である政治家を選ぶことができます。あらためて選定基準を、政策や政治信条といった口先で語れるものから、公私を切り分けられる人物かどうかという基本に戻る必要があります。こんなことを言わねばならないこと自体、寂しい気がするのですが・・・。


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