今月の【喜・怒・哀・楽】 曽我なぎさ
団体ニッポン
60代半ばの女性党首に「サナエちゃーん!」と叫ぶ中年女性の群れ・・・。何なんですかね、これ?。
そういえば昔、AKB48とかいうアイドルグループがいましたね。彼女たちの人気を増殖させた仕掛けが“選挙”でじたよ。一番素敵な娘を選ぶ人気投票なんですが、“有権者”になるためには、CDをいっぱい買ったり相当の貢ぎをしなければならない。思えば、これが“押し活”の始まりだったのですね。
まぁ、“選挙ごっこ”みたいなもので他愛ないものでしたが、最近は、これがホントの選挙に侵入してきて、すっかり民主主義政治の根幹である国政選挙まで一変させてしまったのです。「サナエちゃーん」と叫ぶおば様方は、“押し活”を楽しんでいるのだと思えばすべてがすっきりと腑に落ちるのです。
手書きのプラカードを用意したり、応援グッズなるものを持ったり演説会場はさながらアイドルコンサートの如く・・・。
多分、“欲求不満のはけ口”を求め、それなりの癒しを求めているんでしょうけれど、重要なことは集団埋没のカタルシスなんじゃないかな。一人で「サナエちゃーん」と叫ぶのは恥ずかしくあほらしくもあるんでしょうが、大勢の中なら何の抵抗もない。当の演説者も心得たもので、「皆さん、この選挙はワタシが良いのか、ノダさんやサイトウさんが良いのか選ぶ選挙なんです!」などと強調する。ああ・・・やっぱり“AKB48”だったんですね。政策なんかどうでも良いんです。どっちが可愛いか決めてよ、と言われれば、そりゃクタビレタおっさんより、彼らのイジメと戦いテッペンを掴んだヒロインにシンパシーが集まるのは理解できないことはないけれど・・・。
というわけで理解はしてみたけれど、これでいいんだろうか、と気持ちは晴れませんでしたよ。
暗澹たる私の気持ちのモヤモヤを救ってくれたのは、遠く北イタリアの山地で行われた冬季オリンピックでありました。
夏のオリンピックは汗まみれの印象だけれど、雪と氷を舞台にした冬季五輪は美しく清々しい。特に感動させてくれたのは、日本の団体競技。フィギュアの銀メダル、スキージャンプの銅メダルは良かった!
これってあくまで競技するのは一人一人の選手なんです。その成績が合算されて団体として優劣を競う訳ですから、選手たちは自分の成績よりも、団体への貢献や責任を強く意識する。自分が頑張って全体を引き上げようとする気持ちと、自分がミスしてチームに迷惑を掛けたらどうしようというプレッシャー。両面のどちらが強く出るかで結果は決まる。そしてどちらの面を出させるかは、そのチームの雰囲気なんでしょう。個々の選手の気持ちを落ち着かせる堂々たるリーダーもいれば、闘争心をかきたてるムードメーカーもいる。
たとえばジャンプチーム。ヒロインは高梨沙羅。何しろ前回大会で服装規定違反で失格になってチームの足を引っ張ったという心の傷をおってのリベンジ参加だった。一時は引退を考えたという彼女をここまで引っ張り再生させたのは、チーム全体の心遣いであり勝利への思いを共有する全員の闘争心だったのです。悲劇のヒロインの再生とチーム全体の栄光とが直線で結びつく強さを見せてもらえました。
それにひきかえ現実の選挙の光景の何という子供っぽさ。東北の某選挙区の大物候補者は、情勢調査で不利としるや仲間の応援演説の予定をすべてキャンセルして自分の選挙区に張り付いた末に落選・・・。党のリーダー格の大物が見せた醜悪なふるまい・・・。これじゃ勝てっこないよね。リーダーは自分のことを後回しにしてこそのリーダーなんですから。
歴史的完勝で316人もの大所帯になった自民党も、驕れば見苦しいことになりますよ。団体ニッポンの強さを、ぜひ政治の世界でも見せてほしい。もっともセンセイ方は選挙活動でオリンピックを見る余裕はなかったんでしょうけれど・・・。