この日の就職活動は,前日の5月1日から始まった…
翌日の朝の10時から東京の高田馬場でB社の最終面接があるので,この日の晩の高速
バス最終便で東京に行く予定だった。
B社の最終面接では面接だけでなく,プレゼンテーション課題が与えられてい
たので,この日は研究そっちのけで,この課題用の資料製作に躍起になってい
た。
課題は「柔軟な頭脳とは何か」
これを15分程度でプレゼンしなければならないのだ。
プレゼンの方法は,OHPでもPower Pointでも良かったので,私は経費節減のた
め迷わずPower Pointを使うことにした。
Power Pointを使ってのプレゼンは,卒業研究発表会以来であった。
資料製作で苦労したのは,内容を伝えやすくするための絵をどうするかだっ
た。
最初から絵はWeb上からかき集めてこようと思っていたのだが,なかなか思う
ような絵が集まらなかった。
最終的には何とか仕上げて,何回か練習をすることが出来た。
最終便の東京池袋行きの高速バスに乗った。
連休中のせいか,バスは満員だった。
隣に座っていたのは,松葉杖をついたおじいさんだった。
この人がまた良くしゃべるおじいさんなのである。
こっちは夜だから寝たかったのだが,おじいさんの話を聞かないわけにもいか
なかった。
でも,おじいさんはためになる話をするのだった。聞かないなんてもったいな
いくらいの。
このおじいさんは,幼い頃の骨折がもとで,足が伸びなくなってしまったた
め,松葉杖をついているのだそうだ。
昔の職業は床屋さんだったそうだ。
そして"おしゃべりおじいさん"はBeanに両親に感謝することの大切さを教えてく
ださった。
たまたまバスに乗り合わせた学生に,いろいろと教えてくださるのだから,本
当に良いおじいさんだった。
そして翌日…
今日は東京の高田馬場でB社の最終面接である。
就職活動大遠征最終日に2回目の筆記試験を受けた会社だ。
今日も朝5時半に池袋駅前で放置されたので,電車で高田馬場の24時間レスト
ランに向かった。
奥の席を陣取り,居座り大作戦であった。
今日は今までの教訓をもとに,レストランでいくつか作業を行うことにしてい
た。
まず第1にプレゼン内容の練習。そして第2に提出書類書きである。
提出しなければならない履歴書は,プレゼン準備のため書いていなかった。
書く内容は決まっているので,丁寧に書くだけなのだが。
きっとレストランの人は驚いただろう。
この女,何を始めたんだって。
だって,プレゼンのハードコピーを前にして,何かもごもご言ってい
るんですもの!
この日は,試験直前までレストランに居座っていた。
朝6時から午前9時まで!である。
レストランにとっては迷惑な客以外の何者でもないのは十分承知なのだが,何
しろ行くところがないのだから仕方がないのだ。
B社に着いたが,ずいぶんと早めに着いてしまったせいか,ずいぶんと待たさ
れた。
今日は"豊臣秀吉似の取締役"と,社長の2人の前でプレゼンと面接を行った。
プレゼンが終了すると,プレゼンの内容について質問され,続いて一般的な面
接に切り替わった。
面接では,自己PR,志望動機,自分の長所と短所について,他人から見た自分
について,趣味,大学の専攻を選んだ理由について,現在の専攻と違う職業に
つこうと思ったのはなぜか,などを聞かれた。
印象に残った質問は,ニュースの情報源はどこかという質問に続いての「最近
興味を持ったニュースについて教えて下さい」というものだった。
私は,醐醍寺の豊臣秀吉ゆかりの桜が老朽化しているので,最新のバイオテク
ノロジーを使って再生させようという試みがあるというニュースについて話し
た。
私がそのニュースを通じて言いたかったのは,先端技術の有益な利用の仕方に
ついて(技術の進歩は決して悪いことだけではないという実例として)だっ
た。
このニュースについて,社長は感心されていたようだった。
かなりいろいろな質問を受けた面接だったが,何とか終了した。
これでもう帰れるのかと思ったら,さらに筆記試験を行うというのである。
なんとも筆記試験の好きな会社だと思った。
一休みの後,Beanは部屋で"進行役のテープレコーダー"を前にして知能テストら
しい試験を受けた。
この試験は以前受けた4つの絵が並んでいて,その次に来る絵は何かという問
題だった。
予想外の筆記試験に,すっかり疲れ果ててしまった。
試験が終了し,会社を後にした。
やるだけの事はやったので,思い残す事はなかった。
すぐ近くのコンビニでお昼を買って,をとめ山公園のベンチで食べた。
連休とあってか,公園にいる人の人数が前に来た時とは違っていた気がする。
ベンチでのんびりしていたら,散歩途中のおばあさんが隣のベンチに腰掛け
て,私に話しかけてきた。
おばあさんは名古屋に住んでいるのだが,息子の家が公園のそばにあるそう
で,連休を利用して息子の家に遊びに来たのだそうだ。
いろいろと話して,私がバスの時間が近づいたということでさようならを言う
と,
「私がさっき近くの神社でお参りしてきたから,きっと良いことがあるわ
よ。」
と言ってくださった。
このおばあさんに予知能力があるのかは知らないが,この後本当に良いことがあったのである。
就職活動を通じて,いろいろな人と話すチャンスがあるのは面白いことだっ
た。
一期一会と言うのであろうか。
今回はバスを下落合から乗ることにした。
連休ということもあって,いつもは1台しか運行していないのだが,今日は4台
も運行していた。
Beanは4号車だったので,1号車が通過してからずいぶんと待たされた。
さすがに車内は満員だった。
Beanは練馬を過ぎたあたりから爆睡してしまい,高速に乗ったことも,関越ト
ンネルを通ったことも記憶になかった。
いつもであれば途中のバス停になんかほとんど止まらないのに,今日は連休中
だったこともあってか,県内に入ったら,全てのバス停に止まったのである。
そして,90%の乗客が新潟市外で下車したのだった。
これほど県内に入ってから時間がかかったと思ったバスはなかった。
翌日判明したことだが,公園で会ったおばあさんの予言は見事的中したのであ
る。
B社からの内々定の通知が来たのだった!