相対論の概要を物理学基礎という本に習ってより砕いて説明します。
なるべく式を使わないで説明したいのですが、そうすると余計にわかりにくいと思われるので使っています。
結構長くなってしまいまして、読みにくい部分も多いかと思いますが理解してもらえれば仕合せなことです。
また、#の番号の付いているものは補足説明がありますので参考にして下さい。
エーテルを伝わる光の運動は、川を渡る船の運動にたとえられる。
まず、流れのまったくない穏やかな水上を速さ c で動く船を考えます。
この船が流速 u の川を下るとき、岸に対する速さは c + u 、逆にこの川を上るときは c - u となります。
この船がある地点から距離 L だけ下って、またもとのところまで戻ってくるのに要する時間 t1 は
@
となる。(図1参照。また、上式がわからない方はクリック。#2)
図1
図2
また、この船が幅Lの川を往復するのにかかる時間を t2 とする(片道はその半分の t2/2で行けるということ )。(図2参照)
船が川を岸から岸へと行くとき、川は流速uで流れているため川岸から垂直に出たつもりでも ut2/2 だけ下流に流されることになる。
なので真っ直ぐ進むためにははじめから ut2/2 だけ上流の地点に向かうつもりで出なければならない。したがって、
#3
から
A
という風に、t2 が求まる。
そして、@式の t1 と比べてもわかるように t1 と t2 明らかに異なる。
つまり、流れている川の中では同じ距離を動く場合でも、進行方向によってかかる時間が異なるということである。
話しを光の場合に戻すと、光に(上記の川のように)媒質が存在し、光は媒質に対していつも同じ速さで伝わるとすると、進行方向の違う光が同じだけの距離を進む時間は異ならなければならない。
しかし、現実はそうではなかった。
マイケルソンとモーレーは下図に示すような装置を使って、O→M→A→M→T と O→M→B→M→T を伝わる2つの光線が合流してつくる干渉縞#4を望遠鏡Tで観測した。
図3
この装置全体は水銀の上に浮いていて回転させることが出来る。 光に媒質があるとすると、公転と自転をしている地球上の装置は媒質に対して運動していると考えられるので、装置の向きを変えると2つの光線の到達時間には先ほどの船の場合のように差が生じることになる。 その時間差によって位相差が変化するため、干渉の縞もずれるはずである。 しかし、装置をどのような向きに置いても干渉縞に変化は見られなかった。 また、一年のどの季節に実験しても同じ結果が得られた。 この結果は、光の速さが進行方向や光源や観測者の運動(地球の公転と自転)によらず一定であることを示している。 すなわち、
『光の速さの測定結果は、観測者や光源の運動によらず一定である。』
ということになり、光(一般には電磁波である)を伝える物質としての媒質(エーテル)の存在は否定された。
電磁波を伝える電場と磁場は(エーテルのような)物質に付属する性質ではなく、空間(真空)の性質であることになった。
この一定な真空中の光の速さを、習慣的に c と書く。
ニュートンの築いた古典力学#5では座標系#6 O-xyz(以下、S系と呼ぶ)が慣性系なら#7、これに対して一定の相対速度 u で動いている座標系 O'-x'y'z'(以下、S'系と呼ぶ)も慣性系である。 アインシュタインはこの事実と光速が一定であるという事実、すなわち
(1) ある慣性系に対して一定の速度で運動する座標系は慣性系である。
(2) 全ての慣性系で光の速さはその進行方向によらず一定である。
という2条件を物理学の基本的原理と考えた。
図4の2つの慣性系 S, S' 内での物体の速度をそれぞれ v, v' とする。
図4
古典力学では
v' = v − u B
という関係があるので、光の速さもこの関係に従うとすると、上の2条件は両立しない。 光の速さは一定と決まっているはずなのに、上式では光速が座標系によって n だけ違うことになってしまう。 古典力学では相対運動している2つの慣性系SとS'では共通の時計が使え、同じように時間が流れていくと考えていた。 ゆえに2つの慣性系の時刻は同じで (t = t')、
x' = x - ut, y' = y, z' = z, t = t' C
からB式が導かれる。#8
このようにアインシュタインは、2つの慣性系SとS'では共通の時計が使えず、t と t' は同じではないとすればこの矛盾が解決されることを示した。
アインシュタインの相対性原理と呼ばれる上記の2条件に基づいた理論を特殊相対性理論という。
特殊相対性理論によって日常生活の経験とは異なるようなことが予言されました。
[動いている時計の遅れ]
ある慣性系Sのx軸上にたくさんの時計並べた状態を用意します。 そして、S系の観測者にはこれらの時計は全て同じ時刻 t を示すように調整しておきます。 また、S'系の原点に O' にも時計が固定してあり、こちらは時刻 t' を示している。 それぞれの系の原点、O と O' が同じ所にあるとき、全部の時計をゼロに合わしておく。 つまり、t = 0 , t' = 0 である。
図5
S'系はS系に対して x 軸方向を速度 u で動いているので、S'系の原点 O' は t 秒後に ut だけ動いたところにある。
このときS'系の原点 O' にある時計は
D
というように表され、S'系での時刻 t' はS系での時刻 tよりも遅れていることを示している。#9
図6
その証明を以下にします。
時間を測る手段として光の通過した距離を使います。
高速度で進む電車の中を横切って往復する光を考えます。
電車の車両幅を L とすると、電車の中で見た場合、光の走った距離は 2L です。(図は列車を上から見たもの)
図7
次に地上から見た場合、電車は速さ u で走っているので光の走った距離は
です。(A式参照、考え方は川を流れる船と同様)#10
図8
電車の中で見た場合(図7)、光の往復する時間 t' は距離から速さを割って t' = 2L / c ということがすぐにわかる。 地上から見た場合(図8)、光の往復する時間 t は #10 にも書いたようにA式にあたる。 したがって、光の往復する時間について以下のように二つの式が導かれたのです。
E
この連立方程式を解くと( L を消去)、先ほどのD式
D
が求まる。すなわちこの式は、動いている時計は遅く進むように見えることを表している。#9
このように、動いている時計は遅く進むように見えるので、互いに相対運動をする観測者は、異なった2つの場所で起こった現象が同時刻に起こったかどうか意見を一致させられない。
このことは、同時刻の相対性と言われます。
この原因は情報を伝達する電磁波(光)の速さが有限だからです。#11
<例> 光速に近い速さで動く電車があるとします。 電車の最前部と最後部、および地上にいる2人の観測者の合計4人の観測者を考え、列車の中央で光が発せられたときのことを考えます。 地上の観測者A,Bは、光が電車の最前部と最後部に達した瞬間に電車の最前部と最後部の真横にいるように立っている。 列車内の観測者C,Dは光が電車の最前部と最後部に同時に到達すると感じる。(図9、上から下の順に時間が進んでいる状態)
図9
地上の観測者A,Bは、光が放出された地点が2人の真ん中より後ろ寄りなので、光は最後部についた後、少し遅れて最前部に到達したと感じるはずである。(図10、上から下の順)
図10
この例は、2つの現象が同時刻に起こったか否かは座標系で異なるという同時刻の相対性の一例です。
[固有時]
運動している物体の刻む時刻をその物体の固有時とよびます。
ある慣性系に対して速さ u で動いている物体の固有時の進み方は、その完成系に静止している時計の進み方の
倍です。
運動している時計がゆっくり進むという相対性理論の結論は実験的に検証されています。
不安定な原子核や素粒子、固有時で測ったとき一定の平均寿命で崩壊します。
たとえば、静止しているミュー粒子の平均寿命は 2.2×10 -6 [秒] という時間です。
これに対して、速さ u で等速直線運動や等速円運動しているミュー粒子の平均寿命は、静止している場合の
倍であることが確かめられています。
[ローレンツ収縮]
速さ u で地上を高速運転している電車の中の時計は、地表上の距離Lを間に時間 L/u ではなく、
の時を刻むように見える。(図6参照)
したがって、電車の運転手には地表上の距離LはLではなく
に縮んで見えることになる。
すなわち、速さ u で動いている物体は、静止している場合に比べて、運転方向の長さが
倍に縮んで見えます。
これをローレンツ収縮と言います。
ちなみに、物体の運動方向に垂直な方向の長さは静止しているときと同じに見える。
[運動量保存則と相対性理論]
[質量とエネルギー]
ご存じ、リンゴが落下するのは何故か?という疑問から生まれたもので、物体の運動はその質量m、加速度a、かかる力Fの3つのパラメータで表されるというもの。
F = m × a
#2 時間、距離、速さ
ある物体の速さを求めるとき、距離と時間が与えられていれば
[速さ]=[距離]÷[時間]
で、求めることが出来る。
この場合、左辺に時間を持ってきたので
[時間]=[距離]÷[速さ]
と、書き直される。
つまり、船の進む距離Lを速さで割ることで、Lを進むのにかかる時間を求めることが出来、上りと下りを足すことによって往復にかかる時間を求めたわけです。
#3 直角三角形の基本的性質
直角三角形では、3辺のうち2辺の長さがわかっていれば残りの1辺を容易に求めることが出来る。
直角三角形の場合、以下の関係が成り立つからである。
(斜辺)2 = (辺1)2 + (辺2)2
今の場合、縦の辺が川に流される長さ、横の辺が川幅、斜辺が船の実際に進む距離。
したがって、上の三角形と同様に
となり、最終的にA式が求まる。
#4 干渉縞
波には位相といって、1周期内での波の進行段階を示す量がある。
この位相は時間とともに変化する量である。
2つの同じ波長の光が重なるとき、お互いの位相が異なると重ね合わせにより、波を強め合うところと打消し合うところが生まれる。
このような強弱が縞として現われる。
そして、縞のパターンは波の干渉の仕方、つまり位相の差によって変わってくる。
逆に言えば、位相(時間)に差がなければ縞のパターンは変わらない。
#5 古典力学
はじめにも述べたように、一般に物体の運動はニュートンの運動法則によって記述される。 しかし、亜光速な運動や、微視的な世界の運動はその運動方程式では正確に記述できなくなってくる。 そこで、現代では量子力学まで発展した現代物理学が構築されている。 その現代物理に対して、ニュートンが築いた力学を古典力学と呼ぶ。 一般的には高校生で習う力学が古典力学です。
#6 座標系
座標って何?って聞かれると困ってしまう。何となくわかるでしょ?こっちも説明しづらいんだけど、ちゃんと言うとこんな感じです。
3次元空間の場合、どこかに原点という基準となる点を決め、3本の直行する数直線の交点が原点になるようにする。
そうすると空間のあらゆる点は、これら3本の数直線の目盛りの数値の組み合わせで表すことが出来る。
それで座標系とは、座標の種類、原点や軸といったものの総称。
この場合 O-xyz とは、原点が O で3つの軸をそれぞれ x,y,z とした座標系、という意味です。
#7 慣性系
ニュートンの運動の第一法則は、力を何も受けていない物体は静止し続けるか、もしくは等速直線運動を行うというものでした。 この第一法則は慣性の法則とも呼ばれ、これが成り立つ座標系を慣性系という。 上の話では、ある座標系で慣性の法則が成り立つなら、それに対して等速運動をする座標系でも成り立つはずである、ということを言っているのです。 それは、全てが等速運動しているのであれば速さを差し引きしたところで等速運動であることに変わりはないからです。
#8 微分
力学では、位置を表す関数を時間で微分すると速度になる。
つまり、位置を表す関数を x としたとき
というものが速度を表す。
また、速度を時間微分すると加速度になる。
これは x を2階微分することになり
と書かれる。
微分する対象となる関数と同じもので微分する場合は、単純な数字のパズルのようなものである。 この微分をすると、微分される関数の次数が係数としてかかるだけである。 例を示すと、t2 を t で微分したとき、次数の2が t の前にかかり、その次数は1つ下がる。 つまり、( 関数 t は2乗から1乗となり)解は 2t となる。 t3 なら 3t2 となる。
#9 t > t'
D式から、なぜ t' が t よりも遅れている、すなわち小さい値をとると言えるのかを説明します。
まず、ルートの項ががなければ t' = t なわけでルートの中身が t' の大小を決めていることがわかると思います。
さらにルート内では、1から何かを引いているわけです。
この引いているものがなければルート1となり、結局 t' = t であるためその引いているものに注目する必要があります。
ここで、u はS'系の動く速度、c は光の速さです。
光より速く動くことは出来ないとすると、u は 必ず c より小さくなります。
したがって、この分数は0から1の値をとり得るわけです。
ゆえに、ルートの中身も0から1の値。
それを t にかければ t'は少なくとも t より大きくなることはなく u < c の場合、t' は t より小さくなります。
ついでに言うと、この式からは光速で動く系に対しては( u = c のとき)t' =0 となり時間が止まるということが言える。
#10
前の場合と同様に考えると、先ほどの船を光に、川の流れを列車に置きかえることが出来る。 そうすると、A式の t2 を t とすることで、この t は地上から見た光が列車を往復する時間を表すことになる。 この時間に光の速さ c をかけてやれば、上記のように光の走った距離が求まる。
#11
これは#9で述べている考え方を使うのだが、c が無限だとすると u は c に対して常に小さいわけで、さらにどれほどの速さを持ってしても無限に対しては取るに足らない大きさとなる。 ゆえに、あのルートの中身の u / c というのはゼロと考えることが出来、t' = t となって時間のずれは生じないことになる。 しかし、現実では光の速さが有限であるため、動いている時計に遅れが生じることは免れない。