前半のコンサートが終了しました。
MDFさんのご好意に甘えて、標記表題で寄稿させていただきます。
今年のコンサートツアータイトル「優美彩唱」、その歌から「色」を感じてもらえるような選曲とのMCでの話、また片岡鶴太郎さんの「色は音色である」との談話から、私なりの真梨子さんの世界を、色と音色から、述べさせて頂きたいと思います。
色彩の三原則は、赤、黄、青、それらをお互いに混ぜ合わせると、3色から6色、6色から12色更に24色の色相環が出来ますが、通常12色あれば絵画として表現することは十分可能だと思われます。
一方、音階について考えると、1オクターブにはピアノの白鍵、黒鍵を合わせると12の鍵盤があるように、12の半音によって構成されています。
この色彩の12色と音階の12半音階、両者には何か相通じるものを覚えざるを得ません。
この音階を使って楽曲表現する中で、肉声は最も優れた楽器だと、私は思っています。
楽器は普通一つか二つの音色で作られているものが多いのですが、肉声は各人の持って生れた声・質また肉声に含まれるノイズ音、歌唱に特徴的な倍音(1オクターブ上あるいは下の音)の響きこれらによって多彩な音色を醸し出すことが出来るのです。
そしてもう一つの大きな歌唱の特徴は、言うまでもなく歌詞があるということです。この歌詞の表現は音色とも密接に関係してきます。日本語は母音中心の言語であり、しかも5つしかありません。母音の中でも、「あ」の語彙が最も多く、重要な位置を占めます。普通に口を軽く開けて、声を発します。その音は「あ〜」なのです。
他の母音はそこから唇を変化させて、発することになります。ですから、「あ」の音色はその曲を表現する上で、重要なポイントになります。
ちなみに「そばにきて」の母音は「あ」が約30%、「い」と「お」はそれぞれ20%強、「う」と「え」が14〜15%となっています。従っていろいろな感情をこれらの言葉にのせて、「あ」を中心とした母音共鳴で如何に発声し音色を付けるかが、その歌を表現する上でたいへん重要になってくると思います。
メロディーや歌詞は、最初はまだテーマや素材でしかありません。それをシンガーは、各フレーズをデッサンし、そこに自分の声とその発声等で音色をつけて描いて(表現して)いく、そしてそこにその人独自のタッチで、一つの歌が出来上がっていくのです。そうした域を完成したシンガーは、どのような歌を歌っても、そのシンガーの世界が具現されるようになるのです。
「真梨子さんの世界」、それは類希な持って生れた声・音質(軟口蓋が柔らかく長時間のライブに対応できる声で、そのような歌手は真梨子さんと美空ひばりさん、と以前ある雑誌の記事で紹介されていました)とぶれのない正確な音程を大きな土台にして、母音共鳴を重視した「極端な色を声に乗せない」歌唱方法による音色で完成された世界だと思います。
シンガーは各人いろいろな音色の出し方で、自分の世界を創造していますが、それを聴く側もそれぞれ好みがあって、これは各個人の感性の問題で他人はとやかく言えない領域ですが、私は真梨子さんのこの「極端な色を声に乗せない」歌い方から表現される、またそれだから表現し得る彼女の歌唱に心酔しています。真梨子さんの彩唱を色に例えるなら、12色から24色、いやそのまた中間の色でしょうか。
真梨子さんの声・歌唱を三十数年聴いてきて、いまだに似た声・歌唱のシンガーに出会わないことが、そのように私に感じさせるところです。
文章は、BBSよりの転載です。タイトル、ページの構成、背景の色はMDFがデザインしました。真梨子さんの写真は、本文内容に関係ありません。真梨子さんが、ピアノの前で微笑んでいるのも英さんの今回の投稿にマッチしていると思い、MDFの判断で掲載いたしました。
出典 BeneBene2002/7/7発行 株式会社オレンジページ 撮影/染瀬直人氏
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優美彩唱 〜色と音色と〜
英さん(marys tours No.031) 2007/7/29投稿文