FOREST
映画「化身」(当時宝塚を退団したばかりの黒木瞳さんのデビュー作)のテーマ曲として「黄昏人」がリースされています。もちろん映画用に作成されたものではありません。
アルバム「FOREST」は、どちらかというと不倫や情念、さだめといった色合いの濃い印象のあるアルバムです。エスニック調という当時のブームの中で、橋真梨子ならこう表現するという世界でした。でも、この中に『ブルースを聞かせて』や『二度目の恋人』などほっとする大人の時間が流れているのです。私は、当時のミュージックフェアで、『ブルースを聞かせて』を歌った貴重なVTRを保存していますが、何度見てもぞくぞくします。
86年のFORESTツアーは、まさに恋を包み込むような森をイメージした舞台でした。森の奥の方へ奥の方へと
入っていくと夜になってしまった。嵐にあい夜明けが来た。一筋の明かりが見えたときその妖精は朝もやの中に消えていった。そのステージを取り囲むように円形の照明リングがあり、かぐや姫の輝く竹の切り口のようなイメージの中に真梨子さんが立っていました。
名曲『レイトリー』
真梨子さんはMCの中で、「私はいろいろな歌を歌ってきましたが、楽器で一番必要なのはパーカッションだと思います。でも、そのリズム楽器なしで歌ってみたのがこの曲です。」と前置きし歌唱しました。
このFORESTでは、パーカッション担当の みさわまたろう さんが、真梨子さんのフラットな声質に合っているため、レコーディングの仮の歌詞入れから、コーラスまで担当していました。また、デジタル音源をほとんど使わず、ヘンリーバンドの演奏のみというのがコンサートの醍醐味を盛り上げました。真梨子さんがスカートに着替えたのもドラマチックでした。
最後のいたわり・・・
いろいろな情景が目に浮かんできます。
明け方家に帰る・・・その後ろ姿をみている3歳年上の彼女。
そんな感じ。思わずうしろからそっと抱き寄せ、やや栗毛のセミロングの髪に触れながら耳元にそっとキスをする。そんなソフトな別れのような気がします。
1986
ビクター音楽産業株式会社