雨の11時

その部屋の窓から外を見ると、綺麗な色のパラソルが動いていた。
ちょうど、これから先の不安にどうしたらよいか迷っていた時期、21才のときであった。
家庭教師先の生徒のその部屋から外を見ると、そのパラソルの赤の色が
片思いで失恋した彼女の傘に見えた。
宮本輝氏の「青が散る」にも、ラストのシーンで傘のシーンが出てきたように記憶している。
そのお洒落な色の感覚は、実はどうしようもない不安に悩む自分とは、住む世界が違うとすら思わせる象徴的なものであった。
別の日、午後4時くらいであったか、生徒の帰宅を待っていると、その部屋のステレオから、
「かもめはかもめ」が流れてきた。

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朝でもない、昼でもないこの11時の時間帯。
少し、上質な紅茶でも入れて、一息つきたい。
そんなシーンに真梨子さんのヴォーカルが流れてくる。

Rain
訪れ
真昼の愁い
忘れない

ネイチャーBOY
無伴奏
rainy street
真昼の別れ

my life
HEART
フェアウェル


まりさんが傘をさしているこの写真。
おそらく週刊明星だと思う。
1973年だと推測。

                                                             出典 掲載号不詳 撮影 村林真叉夫氏