FOREST
何度か真梨子さんと接近遭遇したことがある。ニューオータニで、香港、代官山で。ヒールを履いて158センチという感じ。しかし、ステージに立つ真梨子さんは、170近くあるように思えてしまう。FORESTのアルバムジャケットの撮影で、スタイリストは肩幅の広いジャケットで長身の真梨子さんに「魅せて」くれている。
Digital時代のコンセプトアルバムとして、奇数の曲順の法則はそこにはない。音作りも、digitalならではのメリハリを利かせてくれている。もとより、真梨子さんの音作りは、ヴォーカルと楽器の音色がかぶさって、ヴォーカルを消さないように細心の注意が図られている。
不倫と別れいうコンセプトがこのアルバム「FOREST」に隠されている。そして真梨子さんは、さらっと歌う。
宝塚出身の黒木瞳さんの映画デビュー作「化身」を渋谷で見た。ラストの銀座のエレベーターのシーンから街並みが遠景で映し出される背景に「黄昏人」が流れてきた。
ただ、正直言って、高橋真梨子の世界をそのラインで表現することがよいとは少しも思わなかった。それは、2009年のカバーアルバム「NoReason」のキャッチコピーで、なぜか不倫や男の気まぐれをテーマにしたコピーが多かったことへの違和感に似ている。もちろん「黄昏人」の真梨子さんのヴォーカルは際立っている。
FORESTでの高橋真梨子の世界は、「ブルースを聞かせて」である。翌年87/5/3に出演した今とは全く違う落ち着いた時間帯に放送していたMUSIC FAIR87で、アレンジは異なるが「ブルースを聞かせて」を歌ってくれている。名曲である。
確かにお酒のCFに使われた「デスティニー」、FORESTといえばヘンリーバンドのバイオリンの中井一郎さんの演奏が懐かしいし、三沢またろうさんの真梨子さんの声質に似ているヴォーカル・コーラスも懐かしい。まさにアルバムのコンセプトツアーが展開していたステージであった。その意味では、「ノンフィクション」「二度目の恋人」も名曲である。また、アップテンポの曲も、今聴けば違和感がないが、「ジゴロに警告」という今となっては使わない、当時はやったジゴロという言葉で、軽い浮気を表し、「嵐が丘」で激しい情念という人の思いの渦を表現してきた。
FORESTという都会の森に見立てたということなのだろう。
これらの情念の燃える曲があるから、リズム楽器を使わない気持ちを抑えた「レイトリー」が生きてくる。真梨子さんでしか歌えない代表曲である。
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