コンサートが始まる時間は夕方である。
この夕刻は異空間へ誘う力がある。
車のスポットライトも、公園通りの街灯も、銀座の交差点も・・・・
すべてが真梨子さんの世界へ引き込まれていく。
そして、コンサートでよくあるように、真梨子さん自身がこの闇にとけこんでいく。
1980年の作品「ジャスト・ホールド・ミー」
なぜか、私は、この曲をリアルタイムに聴いていた。
この曲は、昼1:00のフジテレビの帯ドラマで使われていた。
もう少し具体的に書けば、女優市毛良枝さんのTVデビューのシリーズもので
「私は泣かない」「私は負けない」と続く、いわゆるメロドラマとは一線を画する家庭内での嫁と姑の葛藤も含めながら夫婦愛を描いた作品であった。夫役は、河原崎長一郎さん、そして、当時の新進俳優であった角野卓造さんが演じていた。そして、姑役としてははまり役の初井言栄さんというキャスティングであった。市毛さんは、このドラマでお嫁さんにしたい女優No.1という評判を得たのである。
ちなみに、メロドラマとは、歌をふんだんに取り入れた軽演劇から由来し、なかなか結ばれない恋愛のもどかしい筋書きでやきもきさせるドラマにその意を転じた。
英語表現では、この時間帯のドラマを「ソープ ドラマ」と表現した文化人類学者もいる。つまり、スポンサーが、TBSが花王で、フジがLIONという石鹸洗剤メーカーだから。この図式は、今でも同じである。
真梨子さんの曲は、はじめはLION、そしてしばらくしてカネボウ、花王ということになる。
というような細かい知識は別として、
この曲の舞台の場所はどこか、ある時期探していたことがある。
青山か赤坂か、表参道か・・・・
「Lonely Subway」は、青山通り沿いの表参道駅だと思う。
しかし、この曲は、そう渋谷の宮益坂近辺だと思う。
もっと具体的に言えば、明治通りを原宿方面に150メートルくらい向かい、
ちょうど地下鉄会館ビル(メトロ会館)にかかる歩道橋がその舞台だ。
85年ごろ、よくこのビルのモーツァルトというカフェレストランに行った。
歩道橋の上から、原宿方面を見ると、車のスポットライトが眩しかった。
アナログ録音のLPのよさが出ている曲で、間奏のギターの音色が泣かせてくれる。エレキギターが、もっとしなやかで切ない音色になっている。

夕刻といえば.、「君と生きたい」
初めて聞いたとき、実はなんとなく懐かしかった。
そう、この「ジャスト・ホールド・ミー」も竜 真知子さんの作詞である。
つまり、「君と生きたい」につながるモチーフがすでに発表されていたという風に私は考えたいのである。
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