photo by MDF

MAPLE

メイプル 2001/10月号 株式会社集英社

文/宮内知和子氏 撮影/中本徳豊氏

私はスターじゃない。だから普通でありたい。

宮内氏のインタビューが始まって、いつものカメラが苦手な真梨子さんのお話が進み、ヘンリーさんがフォローを入れてくれるというでだしである。

「・・・音楽は好きなのにそれを取り巻く環境が嫌いというジレンマがある。彼女はいつも一生懸命だし飾らないから、素直にはっきり言っちゃうのね。それで誤解されちゃう。だけど僕は、たとえ不器用でも話下手でも彼女にはこのままでいてほしいと思う。飾らないからこそ、心のなかの想いを歌で伝えることができるんだと思ってるしね。」

その後インタビューは進み、パートナーとしてのお二人のご様子、真梨子さんの動物好きの様子、そして真梨子さんが瞳を潤ませるような話が続く。お母様との若かりし頃の葛藤やもどかしさを、へンリーさんの大きな包容力が包みこむシーンが、このインタビューの中に描かれている。
そして、自然体について真梨子さんが語り始めた。素晴らしい宮内氏の構成である。

「20代や30代のころは、何が自然体なのかよくわからなかった。あるがままといっても。わがままになりすぎると、それはただのひとりよがりになって、結局違った方向に行ってしまうんです。この曲気に入らないなと思っても頭ごなしに決めつけないで、いやちょっと待てよと一回ブレーキをかけてみるの。そうしてよく考えてみると、私という存在を表現するにはこういう方法もありかもって思えてくる。私ね、自然体でいるって、人の言葉に耳を傾けたり、イヤだなと思うことでも視点を変えてトライしてみることだと思うんです。その柔軟性から、私らしさが生まれてくるんですよね。」

2001年以降の真梨子さんのコンサートで、真梨子さんの笑顔がたくさん観られるようになったことは明らかにこの心境の変化なのだろうと私MDFは思う。いや、変化ではなく、ありのままをだせるようになったと言ったほうがよいのだろうと僭越ながら思う。大スターであり、稀代のヴォーカリストであるにも関わらず謙虚さと心の素直さ、精進する努力の姿勢のある真梨子さんの素が語られている記事である。

またまた、撮影現場に行きたくなって(おいおいという声が聞こえてきた)、真梨子さんがそこにいた空気を体感してきた。新宿高島屋タイムズスクエアの5階から、アネックス紀伊国屋への連絡通路がその場所である。ここに行くには、おそらく高島屋の駐車場から5階に入ったに違いない。紀伊国屋アネックス店は私が「橋真梨子 とびらを開けて」(川上貴光著/文芸春秋)を何冊かまとめ買いした書店である。
それにしてもどうして撮影現場がわかるのか? 不思議とその前にそこに行っているからである。「偶然のような必然」がここでも登場してきた。









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撮影/中本徳豊氏