Grand Piano に映ったひと
2008/6/14
よこすか芸術劇場
1-C-14というその席をいただいたのは、この理由があったからなのだと気づいた。
席は、グランドピアノの正面。ステージまで5m、真梨子さんまで8mの角度10度という感じの位置である。そして、マイクスタンドが真梨子さんを正面に右肩から縦に立っているように見えるため真梨子さんの顔に重ならない。そして、よく見せる右後ろに顔をひねりながら高音を出す時の緊張感のある表情がよく見える位置であった。
そして、ステージにはもう一人の まりこさん がいた。
グランドピアノが後方に移動してからの話である。
グランドピアノの右サイドの曲線部分に、スポットライトをあびた真梨子さんの肩から上の後ろ姿が鏡の反射のようにして映っていたのである。
おそらくそれは、以前、宮原恵太さんが言われた、コンサートの最中、真梨子さんは背中で歌っているというその姿なのだろう。
しかし私には、「地下鉄の窓に映った名前のない人」のように感じられた。
現実の世界の真梨子さんとピアノに映った異空間の真梨子さん
現実の生活そして本当の自分を見つめたときに現われる夢の世界への憧れ
カーネギーに行きたい、そしてたくさんのことを感じてきて、みなさんに報告したいそのように考えていたが、日常の素朴な生活の大切さ、そしてオフィシャルな仕事あってこそできる真梨子さんの応援、という理由で「行かない」と私は判断した。
そんな私にとって、真梨子さんがピアノに映って二人で優しく背中でいたわってくれたように思う。そんな思いが強かったからなのだろう、my little
song の編曲は変わったのだろうか? 間奏で宮原さんのピアノの音色が、まさにスイングしているような印象を受けた。その軽やかさと真梨子さんの笑顔が印象的であった。
初夏に聴く「星の流れに」は格別であった。
前回の川口リリアのレポートにもあるように、今回のコンサートは星が ひとつのモチーフになっている。そして、「星の流れに」を歌うとき、背景のmariko の文字が淡くなり赤い天の川のような色合いになるのである。
しかし、私には、20年前の11月ニューヨークに行った時、ANA機から見下ろしたカナダ上空の午前5時前の街の灯にも見てとれた。
ステージ前半の橋真梨子、後半の博多のライブハウスの高橋まり子
そして「ピアノの窓」に映ったもうひとりの たかはしまりこ。
「for you・・・」 のスカーレットの照明から、「ワンダフルナイトcinema」の満天の星へ。
その星が動きだすとき、現実の時間と世界が、穏やかで暖かい悠久の時間(とき)に変わっていく。
それは、真梨子さんの微笑みと同じくらい神々しく暖かい空間のように感じられた。
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