1/f ゆらぎの音色

一時期、電器製品に1/f ゆらぎのリズムで、風を送る扇風機とかいろいろと話題になったことがあった。
ちょうど、「とびらを開けて」にも記述があるように、川上貴光氏が玉川大学の佐治晴夫先生を取材されている時期もよく取り上げられていた。
今回この分野では、草分け的な存在の東京工業大学名誉教授 武者利光先生の著書や、インターネットで発表されている記事を拝読し、簡単にまとめてみた。

自然界にある、規則的な動きの中にある、不規則な動き。実は、まだ謎だらけで、発生のメカニズムはわかっていないということである。自然界にあるものは、一定の規則正しさにあるのではなく、安定して揺らいでいる、この不安定さが、人に快い感覚を与えてくれているというものである。
たとえば、身近なところでは、ろうそくの炎、小川のせせらぎ、そよ風、波。音的にいえば、メトロノームのような規則正しいリズムと、ラジオノイズのザー音の中間音。そして、大きくみれば、天体の動き。
実験計測では、心拍数のリズム、眼球運動、脳のアルファー波の周波数もゆらいでいるということである。そもそも、神経細胞の生体信号としての電気のパルスが出てくるその間隔が1/fであったということである。(そもそも1/fとは、電気的な導体に電流を流すときの抵抗値のパワースペクトラムが、周波数のfrequencyに反比例するということ)


そして音楽。音楽の特徴は音響の振動数のゆらぎ方にあり、ほとんどすべての音楽は振動数の揺らぎが生体リズムのゆらぎと同じになるよう作られているのだそうだ。

真梨子さんの声は、一般人とは異なり、いろいろな音域で複数の人がハーモーニーしているような多重の波長を生み出しているということを何かで読んだ記憶がある。素晴らしい声帯の持ち主なのだ。そして、私がよく書いている、高音への声の伸びのときの緊張感とピッチがあったときの力の抜けの安堵感、声帯を使うのではなく、震わせて中間音で歌う発声の仕方。天性の才能と、歌唱の技術の努力。そして、なんといっても表現力。
おそらく、真梨子さんの曲を聴いて、元気づけられる、癒されるのは、多重化した1/fのゆらぎの波長リズムが、様々なところで音にのり、音色にのって心に届いてくるからであろう。
かつてコンサートの日記を書いているとき、弦楽器の声と記録したことがある。

さて、1/f のゆらぎ は実生活で取り入れることで、様々な快適な空間を作ることができる。規則正しいオフィス空間に、不規則な観葉植物をおく。木目の模様の板を使うなどはその一例。いろいろと工夫できそうだ。



以下は、自慢話。
なぜか、私の部屋は、木目のブラウンの床に、ベージュのカーペーット、そして規則正しい無機質な機械的なオーディオの配置、しかし木目のスピーカーとアーバンブラックのキャビネットの単品コンポに、メタリックグレーの機材が溶け込んでいる。そして、そう、不規則な観葉植物があるのだ。真梨子さんを聴いているうちに、自然と聴く部屋までもが、いつの間にか揺らいでいることに気づいた。そして、原音を正確に再生してくれる彼ら(オーディオ機材)が活躍してくれている。さらに、これは意図したものではないのだがオーディオの背面、床から150センチのところから天井まで、壁が傾斜している。スピーカーは、前面だけでなく四方に音を振動させていく。端的にいえば、上への音が本来、天井に上がるところ、その傾斜した壁に当たってリスニングポジションに跳ね返ってくるのである。
部屋の観葉植物も、真梨子さんの曲を聴いている。真梨子さんの声のゆらぎで、植物の生体リズムを刺激されているはずである。これからはもっと手入れをしてあげたい。そういえば、相模大野のコンサートの前に、小さな盆栽を買って、オーディオのそばに置いたのを覚えている。何人かの方が記憶している話。

ともあれ、私が選んだスピーカーは、弦楽器のような波動で伝わってくる真梨子さんのメゾソプラノを豊かに再生する、Technics 、JBL、DENONということになったのも自然である。
もちろん、システムもTecnicsのClassAAでそろえている。当然DATも必要である、ということだ。

これからは、小松崎純さんや、宮原恵太さんが制作した、環境音楽、癒しの音楽のCDをあらめて
ゆったりとした気分で聴いてみたいと思う。


参考  武者利光 「ゆらぎの発想」NHK出版    ゆらぎ研究所 「1/f ゆらぎとは」
     アットホームズ株式会社大学教授対談シリーズ こだわりアカデミー




2007/9/20