35: いけす(生簀)の話 | ![]() |
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このコーナーのどこかで書いたかと思うのですが、私どもの店には生簀があり、年中、川魚が泳いでいます。 川向こうの岩不動さんから湧き出る水をこおろぎ橋を渡して引いています。
先日、毎月のようにおいでになる先輩でもあり友人でもある地元のお客さんが、鰻を追加注文されたことがありました。 この人は何年来うちの鰻やう巻きを贔屓にしていただいている方です。 後日、一緒にお酒を飲む機会があり、「鰻はいつでも言えば(注文すれば)、食べれるのか。」と聞かれましたので、「生簀に常時泳いでますから、2・30分いただければ焼けますよ。」と何気なく答えると、「お前のとこは生簀があるのか!」と、初めて知ったようです。 こっちの方がびっくりしました。 鮎や寒鮒も大好きなくせに、今までどう思っていたのでしょうか。
自分(店)にとっては当たり前のことが、ほかの人(お客)は、分ってくれていないことが多いんだなあと、改めて感じました。
さて、「いけす(料理)」と言うと、カウンターや調理場の脇にガラスのショーケースに鯛や平目・蟹にあわびが舞い踊る(?)イメージが強いのかも知れませんね。 それも活の良さのひとつの演出ですから、いいのかもしれません。
うちの生簀は調理場の流しの下に代々あります。 川魚は死んだら商売になりません。 生きているうちに調理するのが基本です。川魚を扱う者として生簀は欠かせません。 まして、冷蔵庫などの設備のない頃は必需品だったでしょうね。
おかげさまで、当店の鰻はみなさんに喜ばれています。夏場の鮎や冬の寒鮒なども自慢です。 それもこれも生簀に因るところは大です。
しかしお客様にとって、生簀があるか無いかは大した問題ではありません。 いかにおいしくいただけるかの方が大切です。 そのために当たり前のことをするのが私たちの仕事です。
今年は冬の雪でさくらだけでなく、多くの木々がダメージを受けています。 ちょっと心配ですね。
それにしても日本人はなぜこんなにさくらが好きなのでしょうか。 さくらの散り際の潔さが日本人好みだといわれる方もいますが、それだけではないと思います。
ちょうどこの季節には卒業、入学・入社など人生の大きな節目と重なります。人との出会いや別れが伴うためにいっそう印象深く感傷的になるのかもしれませんね。
私たち料理を提供する立場としても、季節感を演出する意味からも使いやすい素材です。 さくらの枝一輪でもいいのですが、桜葉や花を使ったお料理は香りもよく、明るく華やいだ雰囲気を醸し出してくれます。
写真の「さくら蒸」もそんな一品です。ぜひ、満開の春を召し上がれ。
37: 鰻の薀蓄(うんちく)
「江戸の背開き、上方の腹開き」と言うように、関東と関西ではさばき方が違います。 武士の都であった江戸では腹裂きでは縁起が悪いということで背開きにするようになったと言われています。 さばき方が違うのだから当然使う包丁もまったく違います。 串の打ち方なども違うのですが、決定的な違いは、焼きの工程で蒸すのか蒸さないのかということです。 江戸前の蒲焼は蒸すことによって余分な脂や臭みが抜け、やわらかく焼き上がると言います。 しかし、私は蒸すことにより、旨みも抜けないかと心配です。
どちらがお口に合うかは最終的にはみなさんの好みでしょうか。
うちの鰻は基本的には関西風です。 私は江戸包丁も持っていますが使ったことはありません。 関西風の包丁でさばきます。 しかし、(江戸風に)背開きにします。 なぜかわかりませんが、先代からの伝統です。 蒸さずに直にたれを掛けることで外がパリッとして香ばしく、かつ内側が柔らかく焼きあがると思っています。
今年は土用の丑の日が二度あります。7月21日と8月2日(二の丑)です。
明月楼では、国産の鰻のみを使っていますし、いつも生簀で泳いでいます。 鰻重や蒲焼のお持ち帰りもできます。 残念ながら地方発送はしておりません。
何はともあれ、おいしい鰻で暑い夏を乗り越えましょうよ。 土用じゃなくても鰻はうまい!